医学のあゆみ
Volume 215, Issue 7, 2005
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あゆみ がん分子標的薬──開発から臨床への最新動向
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分子標的治療薬の現状と展望──研究の進展と成功のために
215巻7号(2005);View Description Hide Description1980年代にはじまった分子生物学の急速な進歩は,医学におけるベーシックサイエンスの進展を促した.その結果,細胞の特性を規定する分子機構が明らかにされるにつれ,それらの機構に関与する分子を明確にし,その機能を制御することによって診断,治療,予防に結びつけようとする動きが盛んになった.そして現在,これら分子を標的として特異性をもって作用する薬剤,分子標的薬剤の開発が進んでいる.本稿では分子標的治療薬の現状と将来の展望,課題について述べたい.分子標的薬剤については将来科学的エビデンスに基づく投与が可能となり, -
血管新生阻害剤
215巻7号(2005);View Description Hide Descriptionがんは自己増殖する能力を有しているが,ある一定以上の大きさになるためには血管による栄養の供給を必要とする.したがって,がんでつくられる新生血管を標的とした治療薬は,がんの増大を阻害することが期待される.さらに,血管新生ががんの浸潤や転移と密接に関連していることから,血管新生阻害剤が転移を阻害することも期待されている.最近,代表的な血管新生因子VEGFを標的とした抗体治療薬Avastinが,抗がん剤との併用で進行性大腸癌をはじめ難治性がんに有効性が報告され,多大の注目を集めている.がんの血管新生のメカニズム -
増殖因子阻害剤
215巻7号(2005);View Description Hide Description多くの癌で,増殖因子レセプターの過剰発現や突然変異によるチロシンキナーゼの恒常的な活性化は,細胞癌化の主要な原因のひとつとなっている.したがって,過剰発現のレセプター型チロシンキナーゼに対する抗体,あるいはチロシンキナーゼ活性を阻害する低分子化合物が癌の分子標的治療薬になる可能性がある.ErbB群に対する抗体医薬としては,トラスツヅマブ,セツキシマブなどが開発され,チロシンキナーゼ阻害剤としてはゲフィチニブ,エルロチニブ,FLT3阻害剤,イマチニブなどが開発されている. -
シグナル伝達・細胞周期因子阻害剤
215巻7号(2005);View Description Hide Description多くの癌細胞で細胞内シグナル伝達系や細胞周期に関連する因子の異常が見出されている.それらのなかで,Ras−ERK経路,Akt,cyclin−dependent kinase(CDK)の活性化の頻度は高い.これらは癌細胞の増殖やアポトーシス抵抗性に関与すると考えられる.これらに対する種々の阻害剤が開発され,その有効性が検討されつつある.また,checkpoint kinase(CHK)の阻害剤は癌細胞特異的に従来の抗癌剤の作用を増強する可能性がある.今後,これらの選択的阻害剤が癌の分子標的治療薬として臨床応 -
浸潤関連因子阻害剤
215巻7号(2005);View Description Hide Descriptionがん制圧には発癌抑制,増殖抑制,浸潤・転移抑制が必要である.癌の浸潤・転移は細胞外マトリックス(extracellular matrix:ECM)分解と細胞運動が協調的に作用することで成立する.細胞周囲に存在するECMは物理的保持を担うだけではなく,細胞に種々の情報を伝達することで細胞機能を調節している.ECMや細胞増殖因子による細胞刺激はMAPK(mitogen−activated protein kinase),PI3K(phosphatidylinositol 3−kinase),Rho famil -
破骨細胞を標的とした癌骨転移治療薬
215巻7号(2005);View Description Hide Description骨転移は多くの固形癌に高率に発生し,疼痛,病的骨折,神経圧迫や高カルシウム血症などのさまざまな合併症を引き起こすことにより,患者のquality of life(QOL)を著しく低下させる病態である.骨転移の成立および進展には癌種を問わず破骨細胞による骨吸収(骨破壊)が深くかかわっている.近年,破骨細胞の機能を強力に抑制するビスホスホネートが,骨転移治療において有用であることが示されているほか,破骨細胞形成に必須なreceptor activator of NF−κB ligand(RANKL)とその受容 -
Bevacizumabの臨床開発──現状と展望
215巻7号(2005);View Description Hide Description抗がん剤の開発は分子標的薬剤へその重点がシフトし,とくに血管新生は重要な標的のひとつである.血管内皮成長因子(VEGF)はもっとも重要な血管新生促進因子であり,ヒト化抗VEGFモノクローナル抗体Bevacizumabは,昨年の進行大腸がんの結果に引き続き,本年(2005)のアメリカ臨床腫瘍学会議(ASCO)において進行非小細胞肺がんおよび進行乳がんに対して従来の抗がん剤との併用の有用性が報告された.さらに,さまざまな固形がんにおいても有効性が期待されるが,ベネフィットを受ける適切な患者選択についても,さら -
がん分子標的薬による個別化医療
215巻7号(2005);View Description Hide Description分子標的薬による個別化医療の実現には感受性と副作用の予測法確立が必要である.非小細胞肺癌に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(ゲフィチニブ,エルロチニブ)の感受性は腫瘍細胞のEGFR発現ではなくEGFRの活性型変異と相関があること明らかとなり,感受性予測が可能となってきた.しかし,変異のない症例でも2割程度の症例に奏効がみられることから,現時点ではEGFR変異のみによってゲフィチニブの投与の適応を決めるべきではないと考えられている.その他の感受性因子として,EGFR遺伝子の増幅やAktの活性化が耐性因子
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フォーラム
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TOPICS
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- 生化学・分子生物学
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- 疫学
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連載 五感の生理,病理と臨床
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15.温熱療法──慢性疼痛に対する温熱療法の効果
215巻7号(2005);View Description Hide Description半年以上にわたる痛みで,日常生活が制限あるいは障害されている慢性疼痛患者に神経ブロック療法や薬物療法,認知行動療法やリハビリテーションが実施されているが,遷延・難治化して多施設への受診を繰り返している例がある.このような症例に,遠赤外線乾式サウナを利用した温熱療法を併用したところ,自分が受けた治療への満足度が高く,怒りの感情がやわらぎ,痛み行動が減少した.治療終了後2年経過した時点で仕事に復帰した割合は,従来の治療法の50%に比べ77%であった.以上より,難治性の慢性疼痛患者の治療のひとつとして温熱療法は
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