Volume 215,
Issue 12,
2005
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あゆみ 血液病理学の進歩と診断システム
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 933-933 (2005);
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 935-941 (2005);
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造血・免疫器官の構造と機能ならびに病的状態についての研究史は4期に分けられる.第 蠢期は血液病理学の揺籃期だ.第 蠡期は形態学の時代で,1832年のHodgkinによる剖検例の記載からはじまり,1960年代に至るまでおよそ130年間続いた.第 蠱期は臨床病理学の時代で,有名なRappaportの血液病理アトラスの出版(1966)によりはじまり,NCI国際分類(Working Formulation:WF)の出現(1982)までをいう.第 蠶期はそれ以後の現代で,それは形態学,免疫学,遺伝学,臨床病理や,治療法を含む臨床情報などをフルに活用するところから“統合の時代(age of integration)”とよんでよいであろう.本稿では誌面の制約のため,おもに第 蠶期について述べる.蠢 〜 蠱期の詳細については既発表の論考1)を参照願いたい.
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 943-946 (2005);
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悪性リンパ腫の診断にかかわる病理医の現状,および近未来における課題を論じた.とくに,病理診断のなかでの血液病理領域の専門性の内容について述べ,さらに血液病理医が医療に携わるなかで必要な留意点,後継者が血液病理学を習得するための条件や環境について,また地域における血液腫瘍学の基幹施設の充実の必要性を述べた.さらに,近未来の学術的な課題についても論じた.血液病理医なくして悪性リンパ腫の医療は成立しないのであり,さらに病理診断学のなかで血液病理の領域はもっとも客観的かつ科学的な診断を提供できることもあるなど,現代および近未来の血液病理は実に魅力的な領域でありつづけると思っている.
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 947-950 (2005);
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悪性リンパ腫の発生の原因となるウイルスは主として3種類,EBV(Epstein Barr Virus),ヒトT細胞向性ウイルス 蠢型(Human T lymphotropic virus type 蠢:HTLV− 蠢),ヒトヘルペスウイルス8(Human Herpesvirus 8:HHV−8)が知られている.これ以外にはC型肝炎ウイルス(HCV)も悪性リンパ腫の原因になるのではないかという説があるが,まだ確定には至っていない.ヒト腫瘍は一般的に,多段階(多因子)発癌およびクローンの選択のうえで発生すると理解されている.感染後のウイルス遺伝子存続は臨床的な観察では多段階発癌の一段階と理解できるが,この発癌段階において癌遺伝子の変化(たとえば,Bcl−2やC−mycなどの血液腫瘍関連癌遺伝子の染色体相互転座)にウイルス遺伝子の存続が対応するわけではない.また,EBV,HTLV− 蠢はOnco−geneをもたないが,不死化や形質転換に関与するウイルス遺伝子がin vitroではみつけられている.今回,HTLV− 蠢,EBVに関連したリンパ増殖疾患の多彩性も含めて最近の話題も紹介したい.
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 951-953 (2005);
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フローサイトメトリーの世界はフローサイトメーターという機器の開発にはじまり,その精度や機能の向上に伴って縦横無尽に広がってきた感がある.もちろんその結果,フローサイトメトリーは血液病理学や血液学のみならず,免疫学や腫瘍学を含む他の幅広い分野における基礎および臨床研究の発展に多大な貢献をしてきているのは揺るぎない事実である.現在,フローサイトメーターはハードとソフトの面からほぼ完成の域に達していて,とくに白血病や免疫病等の病態解析を目的とした臨床応用に関しては,フローサイトメトリーは一般の検査項目としてすでに定着している.しかしながら,悪性リンパ腫の診断への応用については,結果を表記するための方法(pattern expression system)がごく最近提唱されるなど,それまで病態を表現する手段に工夫が乏しかったため,いまだ一般的ではない.そのような臨床応用以外にもかなり多様な技をもつフローサイトメトリーの諸機能をすべて使いこなすことは至難の業であるが,それはどの分野においても今後の課題の一つといえよう.
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 955-959 (2005);
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分子生物学はその技術の進歩によってさまざまな領域に多大な影響をもたらしてきた.血液病理学の分野も例外ではなく,Southern blot法の開発はリンパ腫のモノクローナリティーを証明し,HTLV− 蠢やEBVなどウイルスとの関係を明らかにした.また,PCR法は微小病変における遺伝学的解析を可能にし,それまで混沌としていたHodgkin病のほとんどがB細胞由来で,かつHodgkin/Reed−Sternberg細胞がモノクローナルな増生をしていることを明らかにした.一方,白血病においてもPCR法は微小残存病変のモニタリングを可能にした.DNAチップによる網羅的遺伝子発現解析は,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫や急性リンパ球性白血病などのヘテロな疾患群の亜型分類に大きく貢献し,病因や予後の推測,治療戦略といった多面的な疾患の理解に役立った.こうした分子生物学的手法がもたらした進歩は日常の病理診断における免疫染色にもフィードバックされ,HE染色のみでは困難であったリンパ腫の診断,その亜型診断に不可欠なものとなっている.最後に,近年急速な進歩のみられるRNAiについても触れる.
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 960-963 (2005);
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染色体分析はゲノム全体を形態学的に解析する技術である.染色体分析の結果を解釈するには,異常が起こる部位と異常細胞が増殖する部位に分けて検討する必要がある.B前駆細胞腫瘍の染色体異常は,融合蛋白産生型で骨髄性白血病の病型もとりうる場合と免疫グロブリン遺伝子再構成前のリンパ球分化関連遺伝子の転座の場合がある.B細胞リンパ腫のおもな染色体異常は,免疫グロブリン遺伝子(14q32/IGH,2p12/IGK,22q11/IGL)を転座相手とする脱制御型である.今後,染色体転座から単離される疾患責任遺伝子は融合蛋白産生型であることが予想される.T前駆細胞腫瘍の染色体異常はT細胞受容体と転座する脱制御型で,T細胞リンパ腫の染色体転座はきわめて多様な融合蛋白産生型である.Hodgkinリンパ腫は二倍体が正常核型で多倍体に染色体異常をもつ.染色体分析により腫瘍化初期の異常を同定することが,治癒をめざした分子標的療法の開発につながる.
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 964-967 (2005);
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造血期疾患の診断は,疾患の特殊性から,その他の臓器の疾患と異なり,細胞病理学的に進展してきた.容易に腫瘍細胞の分離可能なことから,その細胞形質,遺伝子学的検索がもっとも進んだ領域である.また,それら病態解明が診断に直結してきた歴史がある.今日の腫瘍診断では,多くの臓器で造血器腫瘍の診断プロセスの踏襲,すなわち,形態,細胞形質,遺伝子的形質の総合的観点からの診断が主流となってきている.造血器疾患診断における病理組織学的意義は,従来決して高いものではなく,むしろ細胞学的診断に従属する検査であった.細胞学的検索での限界から,定量的視点での診断構築が基本となってきたが,腫瘍細胞の形質,その腫瘍としての局在診断に重要性が高まり,より定性性に優れた検査手技である病理組織学的検索が必要とされている.本稿では,造血器疾患の歴史的展開を通覧し,統合的造血器疾患における病理組織学的検索の意義について,その発展期応用を含め既説する.
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 968-972 (2005);
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リンパ腫の診断に有用な情報は,A.形態学,B.免疫形質,C.遺伝子変異,およびD.臨床症状である.病型や症例により軽重の差はあるが,基本的にはこれらすべての情報を勘案して得られる診断が適切な診断といえる.現在,リンパ腫の最終診断は生検にてなされている.生検で得られた検体より上記の A.〜 C. までの検索がなされる.解析法の詳細は本特集の他稿に譲るが,それでは個々の解析法に適した検体処理はどうすればよいのだろうか.漸次もたらされる解析結果をだれがどのように評価し,さらに臨床情報とともに統合し総合的に解釈し最終診断をするのか.このようなことを適正に効率よく具現化したものが診断システムといえる.本稿では,さまざまな施設や症例検討会,コンサルテーションおよび衛生検査所(検査会社)における病理診断での経験をもとに,現時点で考えうるシステム改善について考察してみたい.
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フォーラム
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 973-973 (2005);
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 974-975 (2005);
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 976-977 (2005);
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 978-980 (2005);
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TOPICS
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眼科学
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 981-981 (2005);
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 982-983 (2005);
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移植・人工臓器
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 983-985 (2005);
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連載 五感の生理,病理と臨床
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医学のあゆみ 215巻12・13号, 987-993 (2005);
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我慢と忍耐を美徳と考える国民性と,富国強兵を国是とした時代の流れのなかで,いつしか“痛み”も我慢すべき対象であるという認識が多くの日本人に定着してきた.このため,“痛みは我慢すべきである”,“鎮痛薬は使用しないほうがよい”という固定観念が最近まで患者や家族,医師にまで広く浸透していた.しかし,痛みは精神的に人を苦しめ,ときには自殺をも選択させる場合がある.また,痛みストレスが免疫系を抑制し,感染症や癌の進展,ときには発癌に関与する遺伝子などにも影響するといわれている.つまり“痛かったら死ぬ”のである.また,最初は単純な痛みでも長く放置すると痛みの程度は大きくなり,やがて隣接部位へ拡大し,さらに離れた場所にもあらたな痛みが生じてくる.ときにはニューロパシックペインといわれる難治性の痛みにまで発展することもある.痛みは放置することなく,早期からの適切に治療(疼痛管理)されなければならない.