Volume 215,
Issue 14,
2005
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12月第5土曜特集【頭痛のすべて】
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医学のあゆみ 215巻14号, 995-995 (2005);
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■総論
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医学のあゆみ 215巻14号, 999-1003 (2005);
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2004年のWHOの調査では,プライマリケア医のもっとも多く遭遇する疾患は頭痛であるが,多くの頭痛患者・家族の悩み(burden of headache)が解消されないでいることが指摘されている.2005年10月京都で開催された第12回国際頭痛学会において,“頭痛からの解放”世界キャンペーンの一環となる“頭痛に関する京都宣言”が発表された.日本でも医学部卒前教育における一次性慢性頭痛の比重はきわめて低く,緊張型頭痛,片頭痛,群発頭痛について病名は知っているが,正確なイメージをもたないまま卒業する学生もかな
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医学のあゆみ 215巻14号, 1004-1008 (2005);
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片頭痛に関する知識はカッパドキアのAreteus(200 A. D.)に遡るといわれるくらい古いが,その歴史をたどることは,とりもなおさず神経病学の進歩の跡を顧みることにほかならない.ギリシャ・ローマ時代に,Galenusはすでに頭痛の一側性に注目し,hemicraniaという病名を用いた.その後,中世の長い暗黒時代を経て,17〜18世紀頃から現代における片頭痛の疾病概念が徐々に形成されてきた.とくに18世紀後半にhemicrania,次いでmegrimから派生してmigraineという病名が確立されるに
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医学のあゆみ 215巻14号, 1009-1011 (2005);
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国際頭痛学会の診断基準を用いた疫学調査で,日本における片頭痛の過去1年有病率は15歳以上人口の8.4%であった.片頭痛の有病率のピークは20〜30歳代にあり,性別でみると男性の3.6%,女性の12.9%が片頭痛を有していた.8.4%の片頭痛のうち,前兆を伴わない片頭痛が5.8%,前兆を伴う片頭痛が2.6%であった.緊張型頭痛の過去1年有病率は22.3%で,男性18.1%,女性26.4%であった.反復発作性緊張型頭痛は20.6%,慢性緊張型頭痛は1.6%であった.群発頭痛の有病率は報告によってさまざまである
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医学のあゆみ 215巻14号, 1012-1015 (2005);
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わが国においては2002年に日本神経学会により『慢性頭痛治療ガイドライン』が作成され,2005年には厚生労働省班研究によって『慢性頭痛診療ガイドライン』が発表された.これらは一次性頭痛である慢性頭痛診療のレベルの向上・標準化,および専門医だけでなくプライマリーケア医への普及を目的としてつくられている.実際に頭痛を主訴に来院した患者について鑑別診断をする際に重要な点は,まず二次性頭痛のなかでも危険な頭痛を除外することである.つぎに片頭痛をはじめとする一次性頭痛を診断する.頭痛診療を効率的に行うための迅速で簡
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医学のあゆみ 215巻14号, 1016-1020 (2005);
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日常生活に大きな支障をきたし,医療を必要とする頭痛患者は少なくないが,頭痛診療の現状は十分なものとはいいがたい.頭痛の診療には問診が重要であるが,多忙な診療時間に患者から十分な情報を得ることは困難であった.その背景には頭痛を疾患として十分認識していないという診療者側の問題もあるが,痛みをどのように表現してよいかわからないという受診者側の問題もある.そのような慢性頭痛の日常診療をサポートし,医師−患者の効果的なコミュニケーションを実現するために,さまざまな診療支援ツールが開発されている.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1021-1024 (2005);
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日常診療では数多くの一次性頭痛(片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛など)患者とともに,くも膜下出血などの二次性頭痛患者も診る機会があり,プライマリーケアにおいて頭痛はきわめて重要な疾患である.二次性頭痛では脳卒中の病診連携の一環としてかかりつけ医と専門医との関係が構築されている.しかし,一次性頭痛の病診連携の構築は遅れている.頭痛の病診連携により一次性頭痛患者,かかりつけ医,専門医の三者それぞれに多くのメリットがうまれる.すなわち,一次性頭痛患者にとってはかかりつけ医と専門医の二者から診てもらえるので,満足度と
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■頭痛の分類と診断基準
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医学のあゆみ 215巻14号, 1027-1031 (2005);
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頭痛の診療・研究は,その診断基準が不明確であったりするために多くの混乱があった.国際頭痛学会は1988年に頭痛の分類・診断基準を作成し,広く国際的に広まった.診断が共通化されることにより頭痛の診療や研究が進歩し,この国際頭痛分類はトリプタンの開発などに大きく貢献した.さらに,その後の頭痛研究の進歩により2004年に改訂版がICHD−IIとして『Cephalalgia』に掲載され,すでにその日本語訳も公開されている.このICHD−IIは頭痛の診療・研究の基本となるもので,本分類をベースとして今後,頭痛医療の
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医学のあゆみ 215巻14号, 1033-1038 (2005);
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国際頭痛学会の頭痛性疾患の分類と診断基準が2004年に『International Classification of Headache Disorders2nd Edition(ICHD−II)』として刊行された.片頭痛は,“1.1 前兆のない片頭痛”,“1.2 前兆のある片頭痛”をはじめとして全6個のサブタイプに分類され,それぞれがさらに下位のサブフォームに分類されている.前兆のある片頭痛は前兆の種類と頭痛のパターンなどにより,“1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの”,“1.2.2 典型的前兆に非
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医学のあゆみ 215巻14号, 1039-1042 (2005);
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2004年に公開された『国際頭痛学会分類改訂2版(ICHD−II)』は診断・治療に関してエビデンスを吟味し,反映させた分類であり,緊張型頭痛もこの基準に従って診断することが望ましい.今回の分類では頭痛をグループ,タイプ,サブタイプ,サブユニットに分類しているが,臨床の場で厳密な鑑別診断が困難な場合も多く経験する.しかし,注意深い問診と診察に加えて,頭痛日記をつけICHD−IIに従うことで,より可能性の高い診断を得られ,正しい治療法が選択できる.そのことは薬物乱用頭痛の発症を抑えることにもつながる.本稿では
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医学のあゆみ 215巻14号, 1043-1046 (2005);
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『国際頭痛分類第2版』において,群発頭痛は類縁疾患を含め新しい疾患概念のアプローチが行われた.すなわち,一次性頭痛のなかの“群発頭痛および他の三叉神経・自律神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalalgias:TACs)”のグループとしてまとめられた.群発頭痛の病態に三叉神経から自律神経への反射が関与しているとの考えが取り入れられたからである.眼窩部の激しい痛みが三叉神経第一枝から脳幹部に入り,反射弓をつくり副交感神経を活性化しているという概念が支持された.副交感神経系の機能亢進
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医学のあゆみ 215巻14号, 1047-1050 (2005);
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『新国際頭痛学会分類(ICHD−II)』の“その他の一次性頭痛”には,1.一次性穿刺様頭痛,2.一次性咳嗽性頭痛,3.一次性労作性頭痛,4.性行為に伴う一次性頭痛,5.睡眠時頭痛,6.一次性雷鳴頭痛,7.持続性片側頭痛,8.新規発症持続性連日性頭痛の8病型が含まれる.これらは病因不詳の一次性頭痛であるが,まったく同様の頭痛が二次性(症候性)に起こりうる.たとえば,咳嗽性頭痛の40%は症候性である.したがって,“その他の一次性頭痛”の診断ではつねに他疾患に伴う頭痛を除外する必要がある.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1051-1054 (2005);
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薬物乱用頭痛は一次性頭痛患者が,鎮痛薬,トリプタン,エルゴタミンなどの頭痛発作頓挫薬を3カ月を超えて定期的に頻回に使用することにより陥る状況であるが,患者・医師ともに認識が低いのが現状である.『国際頭痛分類第2版』により薬物乱用頭痛の定義がより明確にされたことから,頭痛患者の診療にあたってはつねに頭痛患者の薬物使用日数を把握し,薬物乱用をきたさないよう注意を払う.また,薬物乱用頭痛を治療していく過程で物質離脱による頭痛が起こりうることを認識し,治療計画を立てる必要がある.
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■頭痛の発症メカニズム
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医学のあゆみ 215巻14号, 1057-1062 (2005);
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片頭痛の病態を説明する仮説として血管説,神経説および三叉神経血管説の3説があり,以前はこれらの説がそれぞれ独立して唱えられていた.しかし,片頭痛患者において交感神経系の機能低下の存在することや,一部の遺伝性片頭痛患者において分子生物学的検討からCa2+チャネル異常による神経細胞機能の変調が存在することが明らかにされると,これらの結果から片頭痛患者では発作を増強するような特性を有している可能性が考えられるようになってきた.このような片頭痛患者の有するベースに,脳幹に存在するとされる片頭痛発生器からの興奮がs
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医学のあゆみ 215巻14号, 1063-1065 (2005);
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緊張型頭痛の原因はさまざまである.それは大きく分けると,筋収縮性頭痛,心因性頭痛,仮面うつ病になる.筋収縮性頭痛は長時間のうつむき姿勢が原因で,後頸筋の阻血性筋収縮が起こることによる.リスクファクターとしては,大きな頭と細長い首,頭を支える頸椎の支持性,ストレス,低血圧,貧血,背筋がしっかりしていないことがあげられる.心因性頭痛は心因が原因となり,前頭筋の筋収縮が一因となる.うつ病による頭痛(仮面うつ病)はこれらとは異なり,痛みが起こる原因は不明である.その痛みの性質はお釜をかぶったようで,頭痛というより
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医学のあゆみ 215巻14号, 1066-1070 (2005);
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群発頭痛は,自律神経症状を伴う一側性の重度からきわめて重度の頭痛が眼窩部,眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上に発作性・群発性・周期性に出現することを特徴とする.この周期性の特徴には,PETによる研究などより視床下部が関与することが明らかになっている.また,特徴的な頭痛と自律神経症状は三叉神経−副交感神経の活性化が起こり,内頸動脈の炎症・拡張が生じ,さらに二次的に交感神経の障害が出現していると考えられている.群発頭痛の疾患概念は従来の“血管性頭痛”から中枢神経系の異常を含めた“神経血管性頭痛”に大きく変
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医学のあゆみ 215巻14号, 1071-1074 (2005);
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片頭痛は日常診療でも多く遭遇する疾患のひとつである.おもに25〜55歳の社会的生産性の高い人にみられる反復難治性の疾患であるため,本症による生産性の低下は社会的問題でもある.トリプタン製剤の登場により急性期治療は飛躍的に進歩したが,発症のメカニズムには諸説があり,いまだ解明されているとはいえない状態である.本稿では片頭痛とこれに関与すると考えられる神経伝達物質について概説することとする.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1075-1079 (2005);
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一次性頭痛発症に遺伝因子が存在するかどうかに関しては,双生児研究や分離比分析などにより議論されてきている.一次性頭痛のなかでもとくに片頭痛においては遺伝因子の存在が確実視されており,いくつかのMendel遺伝性疾患は症候のひとつとして片頭痛,または片頭痛類似の頭痛を生じることがある.それらMendel遺伝性疾患の原因遺伝子が一般の片頭痛にどのように関与しているかを探求することは,メカニズム解明に重要な意味をもつ可能性がある.連鎖解析,関連解析ともまだ最終的な疾患感受性遺伝子にまでたどり着いていないものが多
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医学のあゆみ 215巻14号, 1081-1085 (2005);
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食物・天候・睡眠・内分泌と頭痛のかかわりは以前より注目されていたが,最近のサプリメントの普及などにより,とくに食物と頭痛との関係が注目されるようになった.食物のなかに含まれる血管拡張物質が片頭痛の誘発因子となることが知られるようになり,その血管拡張物質が特定されつつある.また,血管収縮作用を有する物質も頭痛の原因となることがわかっている.これらに加えてアレルギーとのかかわり,内分泌系,とくに性周期に関連したホルモンとのかかわりも注目されている.また,睡眠との関連では睡眠時無呼吸症候群が群発頭痛の原因となる
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■頭痛の診断と治療
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医学のあゆみ 215巻14号, 1089-1091 (2005);
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頭痛の問診は,頭痛の分類およびその頭痛がどのような状況で出現するかを明らかにすることを念頭におき,患者から巧みに真実を聞き出す粘り強さが不可欠である.この問診の巧みさが発症予防や治療の決定に大きく影響する.問診で機能性頭痛か,器質的疾患による二次性の頭痛かはかなり診断できるが,ベッドサイド検査は不可欠で,とくに急性の頭痛では意識障害,項部硬直,バイタルサインをチェックし,急性,慢性を問わず一通りの神経学的所見をとることを省略してはならない.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1092-1096 (2005);
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頭痛患者の診療では一次性頭痛か二次性頭痛かを見極めることが大切である.問診と診察で鑑別診断を進めることになるが,一次性頭痛では原則として持続的な神経症候は認めない.神経症候を認める場合は器質的疾患を疑い,診断確定のための必要な補助検査を実施する.さらに,診断に基づき迅速に適切な治療を行う.一方,一次性頭痛では問診がとくに重要で,片頭痛,緊張型頭痛などの病型診断を的確に行い,個々の症例の病状に応じて治療法を組み立てる.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1097-1100 (2005);
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外来を訪れる頭痛患者の多くは検査で異常のない機能性頭痛で,診断には問診と診察がもっとも重要である.しかし,器質性病変の発見と二次性頭痛の鑑別のためには検査が欠かせない.とくに注意を払う必要がある頭痛は,1.経験したことのない突発した頭痛,2.眼部などに限局する頭痛,3.身体的・神経学的所見が認められる頭痛,4.毎朝の頭痛で,器質性病変を疑って検査する必要がある.CTやMRIは器質性疾患の除外に有用であり,機会があれば一度は撮っておきたい.緊張型頭痛では頸椎に変形がみられることがある.髄膜炎,脳炎を疑ったら
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■EBMに基づいた頭痛治療
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医学のあゆみ 215巻14号, 1103-1105 (2005);
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片頭痛の急性期の治療は,患者個々の必要にみあった最善の治療法の選択が必要である.診断を確定し,治療効果を正確に確認するためには詳細な問診が欠かせない.また,治療効果を検討するためには,ダイアリーとして患者自身に記録させることも有効である.片頭痛急性期の治療の原則は薬物療法である.薬物の使用にあたっては発作の重症度にみあった薬剤を適切に選択し,頭痛が軽度であるうちに服用させること,薬物乱用頭痛を惹起させるような漫然とした薬物使用をしないこと,随伴症状などを考慮して薬物の併用も考慮することなどが重要である.ま
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医学のあゆみ 215巻14号, 1106-1111 (2005);
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セロトニン(5−HT)1B/1D作動薬であるトリプタン系薬剤は現在,世界では7種類が使われている.わが国ではスマトリプタン,ゾルミトリプタン,エレトリプタン,リザトリプタンの4種類5剤型が承認され,重症の頭痛や随伴症状の強い患者には頓挫薬として第一選択となっている.その片頭痛に対する作用機序としては,セロトニン受容体を介して,1.脳内血管の拡張防止あるいは収縮作用,2.三叉神経終末から硬膜動脈周囲への炎症性神経伝達物質の放出阻止,3.三叉神経節や関連する末梢神経から二次ニューロンへの神経伝達抑制などに基づ
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医学のあゆみ 215巻14号, 1112-1117 (2005);
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わが国において,2000年4月にトリプタン製剤のパイオニアであるスマトリプタン(イミグラン)注射剤が院内使用承認されて以来,片頭痛診療は劇的に変革しつつある.多くの片頭痛患者がトリプタン製剤の恩恵を受けており,その有用性が評価されている.スマトリプタン注射製剤の認可の後,翌2001年6月にその錠剤およびゾルミトリプタン(ゾーミッグ)錠が承認され,片頭痛患者の院外での急性期発作治療にあらたな1頁が加わった.さらに,2002年7月に第3のトリプタン製剤としてエレトリプタン(レルパックス)錠,2003年7月にリ
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医学のあゆみ 215巻14号, 1118-1122 (2005);
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トリプタン製剤がわが国で発売されてから5年が経過し,現在多くの片頭痛患者がその恩恵を受けている.有効性の高いトリプタンを安全に使うためには,副作用や禁忌について十分熟知することが重要である.トリプタンは血管収縮作用を有するため,虚血性の心血管,脳血管障害の既往のある患者には禁忌である.頻度の高い副作用は胸部症状と中枢神経系副作用であり,心・脳血管障害との関連が危惧されるが,血管障害の既往や危険因子のない症例においては虚血発作を誘発した報告はほとんどなく,きわめて安全であると考えられている.副作用を必要以上
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医学のあゆみ 215巻14号, 1123-1126 (2005);
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片頭痛の予防療法の目的は発作頻度の減少と発作重症度の軽減であり,結果として片頭痛患者の生活支障度を改善することにある.適応となるのは発作頻度が多い患者であるが,患者が予防療法を希望するかどうかは急性期治療の有効性と非常に関連がある.現在わが国での予防療法の中心となっているのは,プロプラノロール,アミトリプチリン,バルプロ酸,ロメリジンであるが,アンジオテンシンII受容体遮断薬やbotulinum toxin(BTX)が新しい片頭痛予防薬として期待されている.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1127-1131 (2005);
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日常生活に支障をきたす頻発型緊張型頭痛と慢性緊張型頭痛などの緊張型頭痛は治療すべきである.EBMに基づいた緊張型頭痛の治療法には急性期(頓挫)療法と慢性期(予防)療法があり,それぞれに薬物療法と非薬物療法がある.急性期薬物治療について述べれば,鎮痛薬,非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)の使用がもっとも勧められる(お勧め度A)が,胃腸障害,造血器障害などの急性期副作用と乱用によるさらなる慢性頭痛誘発が問題となる.予防的投薬として三環系抗うつ薬が推奨されるが(お勧め度A),口腔内乾燥,眠気,抗コリン作用の
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医学のあゆみ 215巻14号, 1132-1136 (2005);
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群発頭痛の治療は,血管に作動する薬剤とサーカディアンリズムに対する薬剤が中心となる.急性期治療はスマトリプタンの皮下注射,純酸素吸入である.頭痛発作期の予防治療は塩酸ベラパミルが基本となり,さらに短期予防薬として副腎皮質ステロイド,夜間のエルゴタミンが,長期予防として炭酸リチウムが有効である.難治性の慢性型群発頭痛に対しては,ガンマナイフ療法や視床下部に対する深部刺激療法が検討され,有効性が示されているが,長期予後などについては今後の課題である.群発頭痛の治療はEBMの立場からはまだ十分なエビデンスに乏し
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医学のあゆみ 215巻14号, 1137-1140 (2005);
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大多数の頭痛患者は医療機関を受診しておらず,そのぶん相補代替医療(CAM)に頼る者の割合が高い.具体的には,鍼療法や漢方薬療法などの東洋医学的アプローチ,フィーバーフュー,マグネシウム,ビタミンB2などのハーブ・サプリメント療法,一般用医薬品などが使用されている.これらのうち一般用医薬品については,その有用性を示す確かなエビデンスが存在するが,慢性連日性頭痛への移行に注意が必要である.そのほかについては明確なエビデンスが存在しているとはいいがたい.ただし,ビタミンB2については不十分ではあるが有力なエビデ
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医学のあゆみ 215巻14号, 1141-1145 (2005);
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頭痛の診断手順での原則は,定型的な頭痛の様相を十分理解したうえで患者を診察するということに尽きる.頭痛を扱う他の科の手順とペインクリニックにおける手順が異なることはけっしてない.一方,治療の面においてはペインクリニックは神経ブロックという特殊な療法を有しているので,他の科とは異なり,それを多用することが多い.しかし,神経ブロックをつねに第一選択としているわけではなく,患者の症状の強弱などを考慮して選択する.通常の診療では一般的な西洋医学的薬物療法を試み,つぎにやや特殊かもしれない漢方療法を試み,ついで神経
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医学のあゆみ 215巻14号, 1146-1150 (2005);
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あらたな頭痛に対する治療薬では,抑制治療としては非トリプタン系の5−HT作動薬の検討がなされている.全体的には現在のところトリプタンを越えるものはないが,限局的使用なら見込みのあるものが開発されつつある.予防治療としてはボツリヌス治療が最有力であるが,経口薬では抗てんかん薬など,検討する価値のある薬剤がある.
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■二次性頭痛の診断と治療
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医学のあゆみ 215巻14号, 1153-1158 (2005);
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2004年に15年ぶりに国際頭痛分類が改訂された(ICHD−II).症候性頭痛である二次性頭痛の分類にも増補・改訂が行われた.初版では「頭部外傷に伴う頭痛」であったが,第2版では頸部外傷も加えられ「頭頸部外傷による頭痛」として分類され,詳細な診断基準が呈示された.本稿ではこの分類に基づいて解説を試みる.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1159-1161 (2005);
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臨床診療で大切なことは,数多く存在する頭頸部血管障害による二次性頭痛のなかでも“誤診すると死につながる頭痛”を見落とさないことである.とくに雷鳴頭痛をきたす疾患は要注意で,的確に診断しなければならない.本稿では,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血,未破裂 *状脳動脈瘤,頸動脈または椎骨動脈の解離,脳内出血,脳梗塞,脳静脈洞血栓症,下垂体卒中の頭痛の特徴などを中心に述べる.とくに脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は,頭痛患者の初期診断における鑑別が最重要である.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1162-1165 (2005);
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二次性頭痛のなかで脳血管障害に関連して出現する頭痛は多彩である.脳梗塞あるいはTIAでは頭痛は発症と同時に出現し,持続的に締め付けられるような緊張型頭痛の特徴をもったものが多いが,拍動性の片頭痛の特徴をもつ頭痛もみられる.治療は脳梗塞急性期の治療が主体となり,頭痛自体には特別の治療を行わなくても自然経過で消退することが多い.脳静脈血栓症では発症早期より頭重感,頭痛がみられ,頭蓋内圧亢進症状と局所症状から本症を疑うことが大切で,原因に合わせた的確な治療が必要である.側頭動脈炎は中高年であらたに頭部に限局した
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医学のあゆみ 215巻14号, 1166-1170 (2005);
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低髄液圧症候群の病態は脳脊髄液減少であり,疾患名は脊髄液減少症と称したほうがよいと考える.この疾患は頭痛をはじめ頸部痛,腰痛,目のかすみ,光過敏,めまい,耳鳴,睡眠障害,記憶障害,倦怠など多彩な症状を呈し,画像診断が可能な疾患である.脳MRIで硬膜下拡大,小脳扁桃下垂,静脈拡張など脳脊髄液減少所見を示し,RI脳槽シンチやMRミエログラフィーで脳脊髄液の減少がみられる.特発性低髄液圧症候群は,起立性頭痛,髄液圧低下,脳MRIでのびまん性硬膜造影の三徴が知られているが,これらは急性期の所見であり,これにとらわ
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医学のあゆみ 215巻14号, 1171-1174 (2005);
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全身性感染症でも中等度の頭痛がみられうるが,鎮痛薬によく反応する.これに対し強い頭痛が鎮痛薬に反応せずに長く続く場合は髄膜炎や脳炎が疑われる.その場合,臨床的には診断のためにも経過をみるためにも項部硬直がもっとも重要な徴候であり,その診察法に習熟する必要があるが,全例に認められるわけではない.したがって,慎重に病歴・症候・経過を判断し,懸念が残る場合は陰性結果をおそれず速やかに腰椎穿刺を行うことが正診に至る途である.連日性頭痛をきたす肥厚性頭蓋硬膜炎,頸部痛をきたす軸椎炎,脳膿瘍などは画像検査(MRI)が
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医学のあゆみ 215巻14号, 1175-1180 (2005);
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1988年の国際頭痛学会分類の初版1)では“代謝性または全身性疾患に伴う頭痛”としてまとめられていたものが,今回の第2版2,3)では“ホメオスターシスの障害による頭痛”と改称された.その内容は表1のような項目からなっている.ホメオスターシスの障害による頭痛の診断確定には,その疾患を治療することによって頭痛が改善するか,あるいはその疾患の自然寛解後に頭痛が消失または著明に改善することが必要である.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1181-1185 (2005);
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頸性頭痛とは頸椎疾患由来の頭痛であり,後頸部から後頭部を中心とする疼痛である.その由来は頸椎のみならず後頭−頸椎移行部の腫瘍から胸郭出口症候群まで,いたるところに起因している.前者は大後頭孔腫瘍に代表されるが,初発症状は後頭−後頸部痛であることが多い.この領域の頭痛は筋緊張性頭痛と同様の領域に存在し,まれならず認めるが,根底に腫瘍,炎症疾患などの重大疾患のある可能性をつねに念頭において慎重な診断に努めることが肝要である.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1186-1189 (2005);
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Orofacial painとは,歯科におけるペインクリニックであり,眼,耳,脳などの固有の疼痛を除いた頭頸部の多様な疼痛を扱っている.Orofacial painに含まれる疾患には治療まで求められる疾患と治療すべき疾患との鑑別診断が求められる疾患があり,頭痛は鑑別診断が求められる代表的疾患である.頭痛ではもっとも頻度の高い緊張型頭痛のなかで頭蓋周囲の圧痛を伴う緊張型頭痛と筋性顎関節症は圧痛部位が共通しており,同一の病態であると考えられる.頭痛とorofacial painとは支配神経が共通して三叉神経で
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医学のあゆみ 215巻14号, 1190-1192 (2005);
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眼の器質的な疾患や機能的な障害による眼局所に限局する疼痛(眼痛;ocular pain,eye pain,eyeache)はもちろんあるが,三叉神経を介して疼痛は放散し(放散痛;radiating pain),一側の顔面へ(顔面痛;facialpain),または一側の頭部へ,あるいは頭部全体へ放散し,頭痛(headache)として訴える場合がある.緑内障が代表的で,脳神経外科や神経内科を経て眼科を受診するケースがある.さらに,眼以外の異常で頭痛が生じ,眼徴候や眼症状を伴い,眼科で発見される他科の疾患も多い
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医学のあゆみ 215巻14号, 1193-1196 (2005);
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耳鼻咽喉科領域の頭痛の原因としては鼻副鼻腔疾患がもっとも頻度が高く,他に耳疾患,咽喉頭疾患などがある.急性副鼻腔炎に伴う頭痛では投射痛として患側の前頭部痛が多く,朝から頭痛がある,頭部を前屈すると痛みが強くなるなどの特徴がある.副鼻腔炎による頭痛(sinus headache)は一般に考えられるほど多くはなく,片頭痛がsinus headacheと誤って診断されることが多いため,国際頭痛学会の基準では急性感染症の徴候があるときのみacute sinus headacheとしている.なお副鼻腔炎の画像診断と
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医学のあゆみ 215巻14号, 1197-1200 (2005);
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心療内科領域でみる頭痛は,心理社会的要因が一次性頭痛の経過に関与している,いわゆる心身症がもっとも多い.一方,精神疾患の部分症状としての頭痛や精神疾患が随伴した頭痛も少なくなく,心身両面からのきめ細かい患者理解が重要である.治療においては良好な医師−患者関係の構築に留意し,身体的サポートに並行して向精神薬の投与などの心理的サポートを行う.非薬物療法として認知行動療法やリラクセーション法も注目されている.
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■慢性連日性頭痛,頭痛救急診療,女性・小児・高齢者の頭痛,その他の話題
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医学のあゆみ 215巻14号, 1203-1206 (2005);
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ERの頭痛患者は一般外来に比べて,くも膜下出血患者(SAH)の占める頻度が高い.このためERでの頭痛診療の最初のステップは,SAHを除外することである.急性発症でいままでに経験のない頭痛を主訴に来院した患者でSAHが否定できないと判断した場合には,再出血防止の観点から血圧をコントロールしたうえでただちにCTスキャンを行い,診断を確定する必要がある.SAH以外の器質性疾患に対しても正確な診断を行ったうえで,病態に応じた適切な治療を開始する.また,機能性頭痛のなかでERを受診する頻度の多い片頭痛に対しても正確
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医学のあゆみ 215巻14号, 1207-1211 (2005);
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慢性連日性頭痛は最近の薬物の使用状況を問わず,1日に4時間以上の頭痛が1カ月に15日間以上,3カ月を超えて続くものとし,変容性片頭痛,慢性緊張型頭痛,新規発症持続性連日性頭痛,持続性片側頭痛の4型に分類する.1日に4時間以上というのは群発頭痛を除外するためであり,分類するうえで変容性片頭痛と慢性緊張型頭痛の鑑別が困難である場合があるが,もともとICHD−IIの診断基準を満たす片頭痛があり,経過とともに頭痛の強度は減少するものの,頻度が増加した頭痛と考えることができれば,変容性片頭痛と診断してよい.
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医学のあゆみ 215巻14号, 1213-1216 (2005);
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女性の片頭痛有病率は男性の3.6倍である.年齢別では20〜40代がもっとも多く,女性ホルモンと片頭痛の関与が考えられている.一般に片頭痛女性の60%は月経時片頭痛があるが,妊娠期間中(とくに中期と後期)と授乳期間中には片頭痛は改善するといわれている.しかし,片頭痛は妊娠可能年齢の女性に多く,妊娠・授乳中の治療については知っておくべきであろう.また,経口避妊薬やホルモン補充療法は片頭痛の誘因にもなり,片頭痛患者に使用する際には注意が必要である.閉経後は女性ホルモンの変動がなくなるため,頭痛は減少するといわれ
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医学のあゆみ 215巻14号, 1217-1220 (2005);
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『国際頭痛分類第2版(ICHD−II)』(2004)は小児片頭痛の特徴を考え,第1版(1988)に修正が加えられた.すなわち,小児では頭痛の持続時間が1〜72時間,部位は前頭部と側頭部であれば,両側性であっても片頭痛と診断される.さらに,小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)(1.3)として周期性嘔吐症,腹部片頭痛が第1版の小児良性発作性めまいに加わった.小児・思春期の片頭痛は成人に比べ軽く,薬剤を必要とするものは少ないが,日常生活が妨げられる強い頭痛にはまず鎮痛薬が使用される.鎮痛薬が無効の
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医学のあゆみ 215巻14号, 1221-1228 (2005);
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人口の高齢化に伴い,高齢者の頭痛に遭遇する機会は増えている.高齢になると,一次性頭痛では片頭痛,群発頭痛は減少するものの,緊張型頭痛は高齢者でも多く存在する.また,高齢になってからはじまる頭痛は一次性頭痛であることは少なく,二次性頭痛も考慮すべきである.高齢者の二次性頭痛では慢性硬膜下血腫や巨細胞性動脈炎のように高齢者に多い疾患や,くも膜下出血,脳腫瘍など生命の危機にかかわるもの,義歯不調による顎関節症,うつ病,頸部疾患,呼吸不全などによる頭痛がある.そのほか,帯状疱疹による頑固な頭痛もみられる.治療にお
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医学のあゆみ 215巻14号, 1229-1232 (2005);
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片頭痛と共通点のあるまれな,あるいは見逃されている頭痛,および関連が注目されている疾患について概説する.航空機搭乗による頭痛には,物理的な気圧の変化による副鼻腔痛,真空頭痛,気圧外傷のほか,片頭痛,群発頭痛などの一次性頭痛がある.一次性頭痛では気圧,酸素・二酸化炭素分圧,騒音,乾燥などの影響により副鼻腔粘膜の三叉神経が刺激され,頭痛が起こる可能性が考えられる.また,貨幣状頭痛,アイスクリーム頭痛,赤耳症候群,入浴頭痛,中華料理店症候群,ホットドッグ頭痛,および卵円孔開存症,ヘリコバクターピロリ感染と片頭痛
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医学のあゆみ 215巻14号, 1233-1236 (2005);
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Comorbidity(共存症)という概念は,同一の症例に2つ以上の病気が,いかなる時期にせよ存在する場合に用いられる.片頭痛のcomorbidityとして最近,脳卒中が注目されている.メタアナリシスの報告で片頭痛の虚血性脳血管障害発症の相対危険度(95%信頼区間)が2.16(1.89〜2.48)と高いとされているのと同時に,頭部MRI T2強調画像上の病変と片頭痛の関連について解析した報告では,片頭痛を有する女性は深部白質病変を有するリスクが健常対照群と比べて約2倍と高いとされ,その関連が示唆されている