Volume 218,
Issue 6,
2006
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8月第1土曜特集【輸血医療・医学の新展開】
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医学のあゆみ 218巻6号, 555-555 (2006);
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輸血の現状と課題
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医学のあゆみ 218巻6号, 559-564 (2006);
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輸血後肝炎などの副作用対策が進み,輸血用血液の安全性は著しく向上してきた.他方,輸血過誤によるABO型不適合輸血がなお繰り返されるなど,輸血療法総体としての安全性確保は十分とはいい難い状況にある.また,わが国の新鮮凍結血漿および血漿分画製剤の使用量はきわめて多く,今日もなおアルブミン製剤の約半分を輸入に頼っている.上記の現状に鑑み,平成15年(2003)7月施行の『安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液新法)』は血漿分画製剤を含む“血液の完全国内自給”を実現するために,“安全かつ適正な輸血療法”を医療関係者の責務と規定している.平成17年(2005)9月改訂の『輸血療法の実施に関する指針』および『血液製剤の使用指針』は“安全かつ適正な輸血療法”の実践に重要な輸血実施管理体制および適応基準を詳述している.さらに,血液新法と改訂指針の遵守を前提とする“輸血管理料”が平成18年(2006)4月より新設された.以上の血液新法,改訂指針および輸血管理料が“安全かつ適正な輸血療法”を具体化する趣旨で一貫している点を強調したい.
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医学のあゆみ 218巻6号, 565-570 (2006);
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『安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律』が施行され,薬事法の改正が行われた.安全対策として受付時の本人確認,NAT,白血球除去,新鮮凍結血漿の貯留保管,遡及調査などを実施しており,安全性は高まったが,感染リスクはゼロではない.HBV感染は年間約20例,HCV,HIV感染は数年に1例と推定された.輸血による細菌感染と推定された例はこれまで2例であった.NATのさらなる精度向上,白血球除去,初流除去などを予定している.輸血用血液の需要は適正使用の推進により減少している.季節的,型別,地域的な血液不足には地域間の需給調整を行っており,必要とされる血液は全体として確保されている.しかし,少子高齢化が急速に進み,近い将来の血液不足が危惧されており,若年献血者の確保,複数回献血者の増加などの対策を進めている.安全性向上,悪化した血液財政の改善,地域格差の増大などに対応するため事業の集約が必要となっており,検査などの業務集約を行っている.
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医学のあゆみ 218巻6号, 571-577 (2006);
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2005年9月に,安全で適正な血液製剤使用を実践するためのガイドラインとして,輸血療法の実施に関する指針と血液製剤の使用指針が改定された.また,2006年4月には診療報酬点数表に輸血管理料が新設された.輸血管理料の施設基準を満たすためには,輸血療法の実施に関する指針に提示されている,1輸血療法委員会の設置,2輸血責任医師の任命,3輸血部門の設置,4輸血担当技師の配置,5輸血検査の24時間化,の5つの条件を満たし,その成果として適正な血液製剤の使用が実践され,それらの使用量の基準を満たすことが必要とされる.国内医療機関の状況をみると,上記条件をすべて満たす施設はいまだ十分な数ではない.国内すべての医療機関で安全で適正な血液製剤の使用を推進するためには,各施設に専任の輸血責任臨床検査技師が従事する輸血部門(室)を設置し,そこを中心として輸血療法委員会を活性化していく必要がある.
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医学のあゆみ 218巻6号, 579-584 (2006);
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血液疾患などの内科系疾患では頻回あるいは慢性的な輸血が必要となることが多く,感染症などの副作用のリスクが高い.輸血は事前に測定した検査値に基づき行う.貧血に対する赤血球輸血の絶対的な基準値はなく,代償能力やQOLを考慮して個々の患者で決定する.一方,血小板の予防投与の基準は病状が安定した白血病などでは血小板数10,000〜20,000/μlで十分である.血漿製剤は凝固因子の補充を目的として出血の治療に限って用いる.また,血栓性血小板減少性紫斑病は血漿交換の適応である.造血器疾患では副作用回避のため,とくに抗HLA抗体による血小板輸血不応を予防するため,白血球除去製剤を使用する.
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医学のあゆみ 218巻6号, 585-592 (2006);
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血液製剤の安全性が向上し,無輸血手術が最重要課題であった時代から,安全性が高い確率で担保できる血液製剤をいかに効果的に利用できるかが外科周術期輸血の重要課題となりつつある.この流れのなかで,外科周術期輸血トリガー値を探索する臨床試験,とくにランダム化比較試験の報告が増加している.製剤ごとにこれら報告について,心臓血管外科手術周術期を中心に詳細に検討してみた.各施設で,主観ではなく客観的な根拠に基づいた血液製剤の適正使用を検討する参考となれば幸いである.
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医学のあゆみ 218巻6号, 593-598 (2006);
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10歳未満の小児に対する輸血の頻度はきわめて少なく,わが国では全体の3.2%程度であるために,対応は重視されてこなかった.未熟児早期貧血の治療に同種血回避の努力がなされ,エリスロポエチン(Epo)の投与は,貧血の亢進を抑え,輸血頻度をきわだって減少させた.新生児領域では輸血ルートの検討や分割使用しドナー数を減らす努力も続けられている.さらに,自己臍帯血の利用も検討され,同種血輸血を回避する努力が続いている.一方,交換輸血に使用する合成血の入手や小単位分割製剤の入手が困難な場合も多く,十分な対応が得られているとはいいがたい.本稿では,新生児・未熟児の輸血,心臓外科領域の無輸血手術および幼若小児に対する自己血採血を中心に,アメリカおよびイギリスの小児輸血ガイドライン,成人の輸血指針と比較して小児輸血の問題点を提示した.早急に解決すべき項目として小単位製剤の分割供給,手技料加算を自己血貯血同様4 ml/kgを1単位として換算することがあげられる.
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医学のあゆみ 218巻6号, 599-605 (2006);
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麻酔科領域における輸血は,厚生労働省が策定した『輸血療法の実施に関する指針(改定版)』と『血液製剤の使用指針(改定版)』に原則として従う.急性出血が起こったら,細胞外液系輸液剤や人工膠質液により循環血液量を回復・維持する.赤血球減少による酸素運搬能低下に対しては赤血球輸血を行う.輸血トリガーレベルはヘモグロビン値7〜8 g/dlとする.重症の心肺疾患があるような患者を除いてヘモグロビン値を10 g/dl以上に上げる必要性はない.循環血液量以上の出血が起こった場合には凝固因子不足や血小板減少症により出血傾向が起こる可能性が高い.プロトロンビン時間,部分トロンボプラスチン時間,フィブリノゲン濃度,血小板数を測定し,上記の指針に基づいて新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の輸血を行う.大量あるいは急速な危機的出血が起こった場合には,救命を第一義的に考えた輸血療法を行う.手術室,輸血部,日本赤十字血液センターが一体となった対応が必要である.
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医学のあゆみ 218巻6号, 607-611 (2006);
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血小板減少症では出血していなくても血小板輸血の予防的投与が行われ,10,000/μlが目安となっている.外科手技などではガイドラインが設定されているが,1回当りの適切な輸血量については決着がついていない.世界的に,細菌混入を防ぐため採血時の初流血除去などの対策が講じられ,培養試験が実施された製剤には有効期限を7日間に延長する国が増えている.製剤の低温保存はいまだ研究レベルにある.ほとんどの病原体に有効な不活化技術の導入はヨーロッパが先行しているが,アメリカは懐疑的である.不活化は輸血回収率に有意に影響するダメージを与えるので,必要な血小板量が2〜3割増えてしまう.その薬効原理(核酸の傷害)からと受血者血液センター職員に対する未知の副作用が危惧される.血小板輸血効果を高める因子と低下因子が同定されている.ABO血液型非一致血小板輸血は,HLA/HPA適合を優先させる場合などを除き,極力避ける.不一致輸血では効果不応や重症溶血の原因となりうる.血小板輸血は概して重篤な病態に行われているが,その効果は一様ではなく,また副反応を呈しやすく,いまもって多くの課題を抱えている.
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医学のあゆみ 218巻6号, 612-616 (2006);
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自己血輸血は,1術前貯血式,2術中回収式,3術前希釈式の3つに分類される.術前貯血式自己血貯血は簡便さもあり,全国的に普及している.自己血貯血の同種血輸血に対する優位性は,ウイルス感染症伝搬の防止,不規則性抗体をつくらない,不規則性抗体保有例で血液が準備できる,発熱/アナフィラキシーが少ない点である.一方,自己血輸血の同種血に対する不利点は,無理な貯血(とくに75歳以上の高齢者や循環器疾患では要注意)はリスクがあること,および採取した血液の細菌感染が同種血に比べて高い可能性がある点である.日赤血のウイルス感染症伝搬の危険性は以前より改善されたが,window期があるため完全には排除できない.また今後,血液の需給は逼迫することが予想される.そこで自己血輸血の利点・不利点を患者へ説明したうえで,より安全な自己血貯血を普及していくことが課題である.
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輸血副作用
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医学のあゆみ 218巻6号, 619-624 (2006);
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わが国では現在,輸血用血液の100%が献血により確保されている.しかし,戦後の“売血”,いわゆる“黄色い血”に依存していた時代では,かなりの確率で輸血後肝炎が発症することを覚悟しなければならなかった.肝炎のみならず輸血により梅毒に感染したという事故も大々的に報道されていた.そして皮肉にも日本の戦後復興の象徴ともいえる東京オリンピックが開かれた1964年に起こった“ライシャワー事件”により,輸血の安全性が当時の学生を中心とした売血追放運動とも相まって強く問われることとなった.そして閣議決定により日本赤十字社主体の献血制度の確立をはかっていくことになったのである.1968年には売血は姿を消し,さらに肝炎ウイルスの発見とその検出法の進歩により輸血後感染症は激減した.しかし,残念ながら今日でもその可能性はゼロではない.ここでは最近のデータをもとにして今日の輸血後感染症の実態について解説する.
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医学のあゆみ 218巻6号, 625-630 (2006);
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血漿分画製剤は数千〜数万人の供血者からの血漿を混ぜ合わせた原料血漿から製造され,最終的に数千〜1万本のまったく同一の品質を有する製剤となる.血漿分画製剤は高度に精製されているため,疾患の治療に必要な成分のみを補充することを可能にし,医療の発展におおいに寄与した.その一方,多くの供血者の血漿から製造されるため,原料となる血漿や最終製品にウイルスが混入する可能性は完全には否定できない.かつて凝固因子製剤によってHIVやHCVの感染が発生し,大きな社会問題になった.現在ではこのような感染を防止するために,1採血段階での問診や血液のスクリーニング(血清学的検査および核酸増幅検査)によって可能なかぎりウイルスが混入していない血漿を確保すること,2製造工程にすくなくとも2つ以上の異なる原理のウイルス除去・不活化工程を導入すること,が実施され,血漿分画製剤の安全性は飛躍的に向上した.しかし,ヒトの血液を原料としているため,感染症伝播のリスクを完全には排除することはできないことを認識し,適正使用することが重要である.
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医学のあゆみ 218巻6号, 631-635 (2006);
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平成16年(2004)9月厚生労働省は輸血前にHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体,HCV抗体,HCVコア抗原,HIV抗体を検査し,輸血後医師が感染リスクを考慮し,感染が疑われる場合などにHBV(NAT),HCVコア抗原,HIV抗体などの検査を行う必要がある,と『輸血療法の実施に関する指針』を一部改正した.これを受けて日本輸血・細胞治療学会は運用マニュアルを作成中であり,その概要を報告した.主要な点は以下の2点である.1輸血前に担当医が必要と判断する感染症検査を施行するとともに,別途に核酸増幅検査に耐えうる検体を凍結保存し,輸血後3カ月後をめどに指針で推奨されている項目を測定して感染を早期に発見することに努める.2輸血後マーカー検査の実施率を高めるためには医師へのガイドラインの周知徹底とともに,輸血前の患者へのインフォームドコンセントの際に輸血後感染症の説明をして輸血後検査を勧めることが必要である.
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医学のあゆみ 218巻6号, 636-641 (2006);
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輸血に伴う副作用のうち大半は非溶血性輸血副作用とよばれるものであり,多くは軽度から中等度の蕁麻疹,発赤,そう痒感,発熱,悪寒などである.輸血は同種移植の一種であり,免疫学的な個体の反応に関しては未解明な部分も多い.日本赤十字社に寄せられる副作用報告は比較的重篤なものに限られてはいるが,その約8割は非溶血性輸血副作用である.そのなかでも最近とくに注目を集めているのが,いままであまり関心をもたれていなかった重篤な副作用である輸血関連急性肺障害(transfusion−related acute lung injury:TRALI)である.TRALIはいわゆるALI/ARDS(acute lung injury/acute respiratory distress syndrome)とよばれる急性肺障害の範疇に入るものであり,1980年代にはすでにその概念は確立されていたが,ここ数年,感染症対策,輸血過誤防止策などにより輸血の安全性が高まってきたこともあり,未解決の問題としてクローズアップされてきた.
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医学のあゆみ 218巻6号, 643-648 (2006);
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輸血検査の目的は不適合輸血を回避すること,すなわち輸血を受ける患者がもっている抗体と輸血された赤血球との間で抗原抗体反応が起こらないことを確認することで,そのために行うべきこととは,患者のもつ抗体と反応しない抗原の血液を選択し確認することである.輸血に関する技術的な進歩は,自動化機器,コンピュータの導入により迅速性と高感度,合理性に基づいた技術により可能になってきているが,安全な輸血には検体の採取から検査の実施,払い出し,実際の輸血まで多くの過程が存在しており,検査法の進歩が単純に安全な輸血につながるとは限らない.検査のもつ意味を今一度十分理解し,実践することこそ安全な輸血につながるものと思われる.
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細胞療法・再生医療・バンク
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医学のあゆみ 218巻6号, 651-655 (2006);
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細胞療法(細胞治療)とは,自己または非自己の細胞を移植,輸注,注入などの方法で投与する治療法を総称したものであり,約1世紀もの歴史をもつ輸血療法やすでに広く普及している造血幹細胞移植のほか,近年トランスレーショナルリサーチが積極的に進められている細胞免疫療法や細胞を用いた再生医療などが含まれる.樹状細胞療法は,抗原提示細胞に癌抗原を認識させて癌特異的リンパ球の活性化をはかる新しい細胞免疫療法のひとつである.血管新生療法は,もっとも臨床研究が進んでいる再生医療のひとつであり,血液細胞中に存在する血管内皮前駆細胞を虚血肢や虚血心筋などの虚血部分に注入し血管新生を惹起させて虚血改善をはかる治療法である.これら細胞療法や再生医療は,無菌環境下で適正な手順のもとに細胞操作を行い,質的評価や無菌試験によって品質保証された細胞が確保できることが必須であり,細胞プロセッシング部門の設置と輸血部の関与が不可欠である.
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医学のあゆみ 218巻6号, 657-662 (2006);
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細胞療法・再生医療に用いられる原材料はヒトまたは動物の細胞,組織などに由来し,薬事法上これらの製品は生物由来製品として位置づけられている.これらの生物由来製品では感染リスクなどに特段の注意が必要であり,生物由来の特性に応じた共通の上乗せの安全規制を行う必要がある.本稿では原料採取および製造段階においてとくに留意しておかなければならないプロセッシングおよびウイルスの安全性について考察する.再生医療においては,安全性や治療効果もまだ完全に解明されていない探索的医療であるからこそ厳格な規制は必要であり,GMP準拠の規格を有するクリーンルームで,GMPの管理手順に従って扱う必要があると考える.さらに,ドナーから採取された細胞あるいは組織由来の製品について,十分なウイルスにかかわる安全性試験(ウイルス否定試験)の実施が必要である.
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医学のあゆみ 218巻6号, 663-668 (2006);
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日本骨髄バンク事業は,厚生労働省の主導のもと,(財)骨髄移植推進財団が主体となり日本赤十字社と都道府県の協力により行われている公的事業である.そして,ドナーやボランティアなどを含めた多くの方々の善意と協力のうえに成り立つ活動である.ドナー登録者数は2006年2月に24万人を突破,骨髄バンクを介した骨髄移植累計数も2005年12月に7,000例を超え,両者とも着実に増加してきている.骨髄バンクの組織や業務,コーディネートの流れはかなり確立されているが,造血器疾患等の治療として造血幹細胞移植を必要としながら血縁ドナーに恵まれないより多くの患者に,より速やかに非血縁間同種骨髄移植が行われるように,日本骨髄バンク事業のさらなる業務改善,基盤整備,啓発活動などがはかられている.
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医学のあゆみ 218巻6号, 669-674 (2006);
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臍帯血は幼弱な造血細胞を含み,造血細胞移植の源として使われるようになってから18年が経過した.臍帯血バンクは分娩時に採取される臍帯血の白血球分画を凍結保存し,移植施設からの要求に応じて供給するシステムである.わが国では11カ所の臍帯血バンクが非血縁者間移植の推進のために協力している.臍帯血移植ではドナーの負担やドナーコーディネートに必要な期間を考慮する必要がほとんどないために近年移植数が急増し,2005年においては非血縁者間造血細胞移植のうち42%が臍帯血移植であった.臍帯血バンクでは臍帯血の採取から調製保存,検査,ドナー基準の判定,“日本さい帯血バンクネットワーク”への登録,移植手続き,移植例追跡という直接的な業務とともに,バンク間の技術水準検定や手順の共通化,技術開発などについても継続的に検討している.
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医学のあゆみ 218巻6号, 675-680 (2006);
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従来の医薬品・医療機器,医療技術では達成できない治療効果が得られる可能性がある再生医療は患者が選択肢のひとつとして選択できるべき治療技術であり,その早急な実用化が待たれる.しかし,業としての製造・流通を前提とするならば,薬事法上の承認を必要とする.2004年4月独立行政法人化した医薬品医療機器総合機構には生物系審査部が設置され,遺伝子治療や遺伝子組換え製剤などバイオロジックス1)の審査の一部として細胞治療の評価を行っている.アメリカFDAでは2005年から自家・他家の細胞組織を用いた細胞治療についてFDAのCBER(バイオロジックス評価研究センター)による新規制がスタートした.アメリカでは死体からの組織が中心であるが,わが国では入手困難であり,培養細胞に期待がかかる.換言すれば国内で実用化されれば,スケールメリットを生かし世界を視野に入れることができるのではないか.そう遠くないことと思うが,現時点では承認された実例はなく,私見も交えた形で,その実用化への道について説明する.