Volume 219,
Issue 1,
2006
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10月第1土曜特集【癌抗体療法】
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医学のあゆみ 219巻1号, 1-1 (2006);
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Overview
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医学のあゆみ 219巻1号, 3-6 (2006);
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血管新生を標的とする,VEGFに対する抗体医薬がいよいよ承認されようとしている.これまでの抗癌剤と異なって単独では効果がない,癌の栄養血管である血管内皮細胞が標的であるはじめての薬剤である.標準治療がスムーズに行われていてはじめて応用できる治療でもあり,現時点でのもっとも応用されるべき治療や今後の問題点,体制も含めて問題点を提起した.
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Bevacizumab
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医学のあゆみ 219巻1号, 9-12 (2006);
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抗VEGF抗体であるbevacizumabは,転移性大腸癌におけるfirst−line療法およびsecond−line療法において明らかな併用効果を示し,その有効性はゆるぎのないものがある.また,抗EGFR抗体cetuximabとの併用においても上乗せ効果が示唆されている.Bevacizumabはわが国においても早期に承認される予定であり,転移性大腸癌治療において中心的な役割を果たすと思われる.ただし消化管穿孔,血栓などbevacizumabに特異的な毒性が報告されており,治療時には細心の注意が必要である
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医学のあゆみ 219巻1号, 13-16 (2006);
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血管内皮細胞成長因子(VEGF)は数々の癌で発現しており,腫瘍の血管新生と血管透過性の亢進を促進する結果,腫瘍の増殖と遠隔転移に対して重要な役割を負っている.また,VEGFの発現の程度は予後に関連することが明らかになっている.BevacizumabはこのVEGFに対するキメラ型ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり,単剤での有効性に加え,他の抗癌剤と併用することでさらに高い有効性が得られることが報告され,現在欧米ではいくつかの癌腫で数々の臨床試験が進行中である.日本では結腸・直腸癌のほかにはbevaciz
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医学のあゆみ 219巻1号, 17-22 (2006);
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肺癌に対して有効性が期待されている抗体療法には,bevacizumab,cetuximab,matuzumab,panitumumab,trastuzumab,pertuzumabがある.このうちbevacizumabは血管内皮増殖因子(VEGF)の抗体であり,VEGFがその受容体に結合するのを阻害することによりVEGFの活性を抑制し,抗腫瘍効果を示す.Bevacizumabは @平上皮癌を除く未治療非小細胞肺癌に対する第㈽相試験の結果,カルボプラチン+パクリタキセルとの併用で有意な生存期間の延長が示された.しかし,5例の喀血死が認められており,投与にあたっては喀血に対する十分な配慮が必要である.多くの抗体療法のなかで肺癌に対して延命効果が証明されたものは,現時点ではbevacizumabだけであり,有効な抗体療法を確立するためにはさらなる臨床試験が必要である.
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医学のあゆみ 219巻1号, 23-26 (2006);
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Bevacizumabは抗癌剤との併用により大腸癌に対して治療効果を発揮するが,創傷治癒遅延,消化管穿孔,出血といった外科的処置が必要となる有害事象が起こりうる.また,bevacizumabはFOLFOXやIFLといったintensiveな抗癌剤との併用が(現状では)必須であり,患者の管理を“手術の片手間”で行うことはできない.これらの理由から外科医もbevacizumab療法に心してかかわり,治療効果が大きいこの治療法を安全に遂行するチームの一員となる責務があるであろう.
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Cetuximab
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医学のあゆみ 219巻1号, 29-33 (2006);
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EGFRの過剰発現は大腸癌をはじめ種々のヒト癌組織で証明されているが,EGFRが発現すると一般に化学療法に対する抵抗性が高くなる.また,EGFのEGFRへの結合を阻害すると腫瘍の増殖が抑制される.Cetuximabは悪性腫瘍においてEGFのEGFRへの結合を阻害し,腫瘍増殖を抑制する抗EGF抗体である.海外での臨床試験の結果,CPT−11不応例の治療としてcetuximab+CPT−11療法が位置づけられている.Cetuximab療法においてEGFR発現の程度と奏効率は相関がないことが明らかになっている一方で,特徴的な有害事象である皮疹は奏効率,生存期間との間に強い相関があるとされる.国内では承認に向け,臨床第㈼相試験が進行中である.わが国においてもcetuximabをはじめとした新規抗癌剤に対し可及的早期に承認が得られるようなシステムの構築や,多施設共同の臨床試験が迅速に実施できるネットワークの確立が求められている.
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医学のあゆみ 219巻1号, 35-42 (2006);
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近年の癌薬物療法に分子標的薬が登場し,乳癌,大腸癌,悪性リンパ腫,慢性骨髄性白血病,GISTなどにおいて画期的な成績が報告されるようになり,それが他癌腫にも波及しつつある.頭頸部癌に対しては上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)が高発現であることから,これを標的とした薬剤の開発が行われている.CetuximabはこのEGFRに対するモノクローナル抗体であり,おもに化学療法や放射線治療,化学放射線療法との併用による有用性が海外で報告されてきている.アメリカFDAはcetuximabを大腸癌と頭頸部癌に対して認可したが,わが国では大腸癌に対する治験が終了したものの,頭頸部癌に対してはこれから開始されようとしている段階である.このような薬剤の特徴を把握し,現状を見据え,海外に取り残されないようにしていく必要がある.
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血液腫瘍領域
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医学のあゆみ 219巻1号, 45-49 (2006);
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Gemtuzumab ozogamicin(GO,マイロターグ)は,抗CD33モノクローナル抗体に抗癌剤カリケアマイシン(calicheamicin)を結合させた新規の分子標的薬剤である.CD33を表出する急性骨髄性白血病(AML)が標的疾患であり,国内外の臨床研究を通して,その有用性が明らかになりつつある.単独療法では初回再発AMLに対して30%の奏効率を有し,既存の抗白血病薬との併用療法は80%を超える完全寛解率を有する.副作用として高度の肝機能障害や骨髄抑制を認めるが,臨床的に管理可能であり,GOを組み込んだ併用療法はAMLの治療成績の向上に寄与する可能性が示されている.
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医学のあゆみ 219巻1号, 51-56 (2006);
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2006年7月,CCR4陽性末梢性T細胞性リンパ腫患者を対象としたヒト化抗CCR4抗体の第Ⅰ相臨床試験が,わが国で開始された(Clinical Trials.gov Identifier:NCT00355472).悪性腫瘍患者を対象とした分子標的治療薬の第Ⅰ相臨床試験が欧米諸国に先がけてわが国で行われることは,史上初の画期的な出来事である.今日までの抗CCR4抗体の開発は,わが国の臨床医,基礎研究者,そしてわが国の企業(産),学術機関(学)の共同研究の賜物である.わが国で開発された抗CCR4抗体が近い将来,世界中の難治性T細胞性リンパ腫の治療の進歩に貢献するために,われわれにはさらなる努力の継続が求められている.
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医学のあゆみ 219巻1号, 57-60 (2006);
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CD20抗原を標的とする抗CD20抗体リツキシマブがアメリカにおいて臨床開発され,わが国でもDLBCLに対して2003年に保険承認された.リツキシマブの出現により,DLBCLの標準治療はCHOP療法からRCHOP療法に変わった.現時点で明確な根拠があるのは,高齢者stage㈼〜㈿,DLBCL,若年者低リスク群stage㈵bulky,stage㈼〜㈿,DLBCLである.Stage㈵,DLBCLの標準治療はCHOP3コース+放射線療法であり,若年者DLBCL,中高,高リスク(IPI=2,3)群では従来のCHOP療法のみでは治癒を望む可能性は低いため,CHOP療法で寛解に入った時点で自己幹細胞移植併用超大量化学療法を施行するのが日常臨床では主流である.これらの群にリツキシマブを使用する根拠は現在ない.また,リツキシマブを含むdose densityを高めた治療が,標準R−CHOP療法と比較して優れているかどうかも興味深いところである.
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医学のあゆみ 219巻1号, 61-66 (2006);
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放射性同位元素イトリウム90(90Y)またはヨード131(131I)をリンカーでマウス抗CD20抗体と結合させることにより,B細胞腫瘍特異的に放射線をデリバリーすることが可能となった.おもな毒性は一過性の血液毒性であり,マウス−ヒトキメラ型抗CD20抗体rituximab投与後再発または不応性のB細胞リンパ腫にも抗腫瘍効果をもつ.巨大腫瘤をもたず骨髄浸潤の少ない病初期に初期治療として用いられることにより,1回の投与により長期にわたり寛解が維持できることもありうる.リンパ腫細胞が多数骨髄浸潤している症例では血液毒性が重症化するので,化学療法を先行して骨髄の浸潤細胞を減らして微小残存病変の状態にしてから投与する方法も検討されている.
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医学のあゆみ 219巻1号, 67-70 (2006);
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ここ数年以内のB細胞リンパ腫に対する治療成績の著しい改善は,キメラ型抗CD20モノクローナル抗体(rituximab)によってもたらされている.しかし,rituximab耐性症例やrituximab投与後の再発・難治症例がいまだ多く認められ,さらなる治療の進歩や新薬の開発が求められている.ヒト化抗CD22モノクローナル抗体(inotuzumab)は,成熟正常Bリンパ球とB細胞性非Hodgkinリンパ腫の多くの細胞表面に発現している分化抗原のCD22抗原を標的とする抗体であり,抗体にlinkerを介して化学療法薬であるcalicheamicinが抱合されたinotuzumab ozogamicin(CMC−544)がアメリカWyeth Research社により開発され,前臨床試験に引き続いて臨床試験が開始された.CD22抗原はrituximabが標的とするCD20抗原と異なり,骨髄系細胞の分化抗原であるCD33抗原と同様に,抗体との結合により細胞内への取込み(internalization)が生じるため,抱合した薬物を細胞内に取り込んで作用させるのに適した抗原である.前臨床試験ではrituximabとの併用効果が報告され,rituximab投与歴も含む再発難治性のB細胞性非Hodgkinリンパ腫を対象とした臨床第㈵相試験では最大耐容量が1.8 mg/m2と決定され,28例中7例に完全奏効あるいは部分奏効が得られた(奏効割合25%).今後,わが国も参加してのglobal同時参加の多国籍治験が開始される可能性があり,臨床第㈵相試験の中間解析で示されたこのpromisingなデータが確認され,早期承認されることが期待される.
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医学のあゆみ 219巻1号, 71-76 (2006);
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CD20を標的分子としたリツキサンを皮切りに,HER2/neuに対するハーセプチンなど,続々と新しい抗体療法が臨床の場に出てきている.その効果により抗体療法の重要性は認められているものの,高価な薬剤であるために適応は遵守されるべきである.また,抵抗性/耐性の解明は薬剤の効果を改善するだけでなく,どのような症例で使われるべきかを教えてくれる.本稿では抗体療法の作用機序であるアポトーシス誘導,増殖抑制,補体依存性細胞傷害,抗体依存性細胞性細胞傷害の観点から抵抗性/耐性について考えたい.
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Trastuzumab
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医学のあゆみ 219巻1号, 79-81 (2006);
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ハーセプチン〔Herceptin.一般名:トラスツズマブ(trastuzumab)〕はヒト化抗p185HER2モノクローナル抗体の静脈注射用抗癌剤で,乳癌を進行させる腫瘍細胞増殖因子受容体であるHER2をターゲットとし,それを阻害することによって腫瘍細胞増殖を抑制する世界で最初の抗体分子標的治療薬である.現在,乳癌と同様にHER2過剰発現を認める胃癌を対象に,5FU系薬剤(5FUあるいはcapecitabine)+CDDPへのハーセプチンのon/off効果をみる第㈽相臨床試験が進行している.
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医学のあゆみ 219巻1号, 82-88 (2006);
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ヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブは,悪性度が高く予後不良とされるヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)を過剰発現した乳癌に対する分子標的治療薬である.HER2陽性転移性乳癌に対する臨床試験において,化学療法との併用により無増悪期間,奏効率および全生存期間の改善が認められている.トラスツズマブはコスト高で心障害のリスクもあるが,HER2陽性再発転移性乳癌においては標準的治療となった.トラスツズマブを術後補助療法に用いた最近の大規模臨床試験では,無再発生存期間および全生存期間の有意な改善が認められた.トラスツズマブは,欧米ではHER2陽性早期乳癌患者の術後補助療法における標準的治療として位置づけられている.
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あらたな抗体療法とその課題
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医学のあゆみ 219巻1号, 91-96 (2006);
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癌は高頻度に骨転移を合併し,骨痛,病的骨折,神経麻痺などの骨合併症のために患者のQOLを著しく低下させることが多い.骨転移の形成・進行には破骨細胞による骨吸収活性の亢進が重要であることが明らかになっている.RANKL(receptor activator of NF−κB ligand,リガンド)/RANK(レセプター)/OPG(デコイレセプター)系が破骨細胞の主要な活性調節系であることが明らかになり,RANKL活性の抑制は骨転移に対するあらたな治療法として期待される.ヒト型RANKLモノクローナル中和抗体(denosumab)の臨床試験が開始され,骨転移患者における皮下注射のphase㈵,㈼試験において著明な骨吸収マーカー低下が得られ,また重篤な副作用がみられないことが報告された.現在,骨合併症の減少をエンドポイントとしたビスホスフォネートとの大規模比較臨床試験が開始されている.
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医学のあゆみ 219巻1号, 97-100 (2006);
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近年,多くの“分子標的薬剤”が癌治療に取り入れられるようになってきた.その多くは単独で用いられるか,従来の抗癌剤と併用で用いられることが多い.一方,最近では分子標的薬剤どうしの併用も試されるようになり,血管新生阻害薬とヒト上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬の組合せが期待される.癌抗体療法の中心であり,血管内皮成長因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体であるベバシズマブとEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるエルロチニブとの併用は,そのなかでも非小細胞肺癌や腎癌の治療法として期待されている.
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医学のあゆみ 219巻1号, 101-104 (2006);
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マウス−ヒトキメラ抗体であるrituximabの開発が成功して以来,つぎつぎに抗体医薬が開発され,臨床試験後に実地医療に用いられている.抗体医薬と抗癌剤の併用による各癌腫の治療成績の向上はめざしいものがあり,薬物療法の現場では欠かせない存在となっている.しかし,残念なことに日本での抗体医薬の臨床試験は海外に比べて遅れがちであり,適応が待たれる癌腫も多い.せめて現在適応がある抗体医薬に対して正しく理解し,臨床の現場で的確に使用されることが期待される.各代表的な抗体医薬の特徴的な副作用を把握し,速やかな対処法を判断することが,今後,薬物療法専門医に要求される知識である.本稿では代表的な抗体医薬の適応と簡単な作用・副作用について列挙する.
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その他TOPICS
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医学のあゆみ 219巻1号, 107-113 (2006);
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特定機能病院を中心に導入された包括評価では,もっとも医療資源を投入した傷病から診断群分類(DPC)を決定し,DPCごとの1日当り点数に入院日数と医療機関別係数を乗じて診療報酬が決められる.この制度自体は医療に関する情報の標準化と透明化を目的としており,結果的に医療費は平均化される.しかし,抗体医薬は一般の抗癌剤に比べて高額であること,リツキシマブのように多様なプロトコールに組合せが可能であることから,DPCのなかで適切な評価が得られるようにするのは難しい.リツキシマブについては3回の改訂を経て入院初期加算を高く設定するようになったが,単剤投与やR−CHOPでは入院日数が短いため包括点数が低く,このような薬剤費が包括評価を上まわるような短期入院化学療法は,外来化学療法をはじめとする包括外へと移行がうながされることになる.
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医学のあゆみ 219巻1号, 115-117 (2006);
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