Volume 219,
Issue 2,
2006
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あゆみ 多発性硬化症──最近の進歩
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医学のあゆみ 219巻2号, 119-119 (2006);
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医学のあゆみ 219巻2号, 121-124 (2006);
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視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)は視神経炎と脊髄炎のみを呈し,わが国のMSに特徴的な病型とされてきた.以前から記載されてきた典型的なOSMSは重症の視神経炎と長軸方向に長く伸長した横断性脊髄炎を呈し,髄液オリゴクローナルバンドが陰性で,欧米におけるneuromyelitis optica(NMO)と同一と考えられる.一方,OSMSのなかには脊髄病変が短く,古典的MSに類似の特徴をもつ比較的軽症例も存在する.OSMSがこの2群に分けられることの認識はその病態および治療を考えるうえで重要である.さらに2004年に,重症OSMSとNMOに特異的に検出される自己抗体(NKO−IgG)が発見された.その後,NMO−IgGの標的抗原は脳内の水分子チャネルであるaquaporin−4(AQP4)であることが見出された.ごく最近著者らは,AQP4がNMOの病変部位で消失していること,一方,同部位ではミエリンの染色性は保持されていることを発見した.すなわち,NMOではAQP4が病態における標的分子となっていること,そしてNMOは脱髄疾患であるMSと根本的に異なる疾患であることが明らかになってきた.
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医学のあゆみ 219巻2号, 125-128 (2006);
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多発性硬化症(MS)は中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患であるが,その病態は中枢神経のミエリン蛋白に対するTh1細胞による自己免疫反応であると考えられている.これに対して自己反応性T細胞に対して抑制的に働く免疫系細胞が存在し,免疫調節細胞とよばれる.MSへの関与が示唆されている免疫調節細胞としては,CD25陽性CD4陽性T細胞,NK細胞,NKT細胞などがあるが,MSの病態は自己反応性T細胞とこれら免疫調節細胞のバランスによって決定されると考えられる.本稿では,MSの病因・病態と治療を考えるうえで重要な免疫調節細胞に関する最近の知見を概説するとともに,これら拮抗する免疫系細胞のバランスという観点からMSの病態を論じる.
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医学のあゆみ 219巻2号, 129-134 (2006);
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多発性硬化症(MS)の全国臨床疫学調査はわが国において過去3回(1972年,1982年,1989年)実施されているが,1989年以来15年間は行われておらず,今回,わが国におけるMSの臨床的特徴を明らかにするために全国臨床疫学調査が実施されたので,その結果を概説する.推定患者数は9,900人〔95%信頼区間(CI):9,100〜10,700人〕と増加していた.発症年齢のピークは前回調査で30歳代であったが,今回20歳代と若年化していた.重度の視力障害を呈する症例が多いこと,横断性脊髄炎徴候を呈する症例が多いことなどが前回までの調査で特徴とされていたが,今回の調査でその割合は低下しており,軽症化していた.また,緯度が北に行くほど,視神経脊髄型MS(OSMS)の占める割合が低下しており,緯度の違いによる臨床病型の違いが明らかとなった.MS病像を決定する因子としては脊髄病変の長さが重症化に関与し,重要であるとともに,臨床病型が二次進行型への移行に関与することが明らかとなった.IFNβによる治療効果の検討では3椎体以上の長大な脊髄病変を有する場合や膠原病および膠原病類縁疾患を合併した場合に増悪する可能性が高く,使用にあたっては注意を要する可能性が示唆された.
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医学のあゆみ 219巻2号, 136-141 (2006);
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多発性硬化症(MS)が髄鞘を標的とする自己免疫性神経疾患とされてきた理由に,再発・寛解を繰り返すことや免疫抑制剤が再発防止に効果的であること,髄鞘が選択的に障害されること,あるいは髄鞘を抗原とした動物実験で類似の病変を再現できることなどがあった.最近,MSの剖検例,生検例の急性期病変の観察から,もっとも早期の変化はオリゴデンドロサイトのアポトーシスであるとする観察結果が報告された.髄鞘はこの細胞の,いわば胞体であることから,髄鞘の崩壊は細胞崩壊に伴う二次的変化ということになり,これまでの解釈とは異なる病態のあることが示された.初期病変について知ることは,病態解明と鑑別診断,およびそれに適合した治療法の開発にとっても重要なことである
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医学のあゆみ 219巻2号, 143-146 (2006);
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多発性硬化症(MS)の診断において髄液オリゴクローナルバンド(OB)の存在はもっとも重要な所見のひとつである.OBは髄液中に相対的に増加したIgGによるものである.従来OBの陽性率が低いとされてきた日本人MSにおいても,等電点電気泳動法に免疫固定法を組み合わせた高感度な方法でOBを測定すれば,古典型MSにおいて高頻度に陽性となるが,視神経脊髄型MSにおける陽性率は非常に低い.一方,視神経脊髄型MSは約6割の患者血清中でNMO−IgG(抗アクアポリン4抗体)が陽性となり,病態に関与する自己抗体の可能性が示唆されている.NMO−IgGが陽性の症例は失明や横断性脊髄炎を呈する頻度が高く,特徴的な脳病変を呈することもある.
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医学のあゆみ 219巻2号, 147-150 (2006);
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多発性硬化症(MS)は遺伝的要因に環境要因が加わって発症する.この遺伝的要因には複数の感受性遺伝子が関与する多遺伝子性疾患と推定される.わが国では患者−対照研究を用いた関連研究によって,HLAを含めたいくつかの遺伝子が疾患感受性遺伝子として報告されてきた.しかし,欧米を含めた複数の研究で疾患感受性遺伝子と確定されているのはHLA領域のみである.一方,MSの臨床病型,MS自体の臨床的多様性は周知であり,適正な選択基準のもとに集められた十分な症例に対する“遺伝的背景−臨床像の関連”を念頭においた解析が重要である.今後はゲノム全域での一塩基多型(SNP)解析による患者−対照研究を用いた関連研究が主流になろう.遺伝子多型の生物学的意味合いの理解は必須である.また,倫理的問題に対する十分な配慮は当然である.
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医学のあゆみ 219巻2号, 151-154 (2006);
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多発性硬化症(MS)の急性増悪期に行われる副腎皮質ステロイド薬の大量点滴静注療法は,神経症状の回復を早める効果がある.しかし,急性期に生じた障害の軽減を目的とする場合には血漿交換療法を考慮すべきである.従来のMS治療薬は再発寛解型MS患者の再発抑制という点に主眼をおいて開発が進められた.再発抑制薬のうち,IFN−β1bがわが国で承認されて6年経過したが,やっとIFN−β1aという選択肢が加わることになった.大量免疫グロブリン静注療法の治験が予定されているが,欧米で長く使用されているglatirameracetateの治験が行われる見通しはない.このように,治療の選択肢が少ない状況は患者にとって不利益である.さらに,10〜20%を占める一次性進行型MS患者の治療法は十分に研究が進んでいない.軸索障害の抑制や髄鞘再生促進などの観点からの新薬開発が課題である.
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フォーラム
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医学のあゆみ 219巻2号, 156-157 (2006);
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医学のあゆみ 219巻2号, 158-159 (2006);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 219巻2号, 163-164 (2006);
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免疫学
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医学のあゆみ 219巻2号, 164-165 (2006);
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感染症内科学
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医学のあゆみ 219巻2号, 165-166 (2006);
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内分泌・代謝学
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医学のあゆみ 219巻2号, 166-167 (2006);
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連載 現代医療におけるコメディカルの役割24
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医学のあゆみ 219巻2号, 169-173 (2006);
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