医学のあゆみ
Volume 219, Issue 8, 2006
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あゆみ 腎病理診断標準化──その現状と将来への展望
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日本の腎病理医に内在する問題点──腎病理診断向上のために
219巻8号(2006);View Description Hide Description腎臓病理学の大きな目的のひとつは,腎不全をいかに防ぐかにある.腎不全の阻止には腎炎に対する的確な治療が必要であるが,治療戦略の選択を決定するうえで,腎生検による病理診断のもつ意味は重い.治療成績を判定するためには診断の標準化は不可欠である.腫瘍に関しては早くから『取扱い規約』の形で標準化がなされていたが,炎症の分野では遅れていた.腎炎も例外ではない.ようやく,『腎生検病理診断標準化への指針』が刊行されて普及活動が動きはじめたが,まだまだ課題も多い.普及がはじまった『標準化への指針』自身にも問題が残っているが,根幹にある腎病理診断の問題について腎病理医の立場から考えてみた. -
IgA腎症の組織活動性評価と国際分類化への視点
219巻8号(2006);View Description Hide Description腎生検は,IgA腎症の診断,治療および予後判定に重要な臨床検査である.とくに,腎疾患の早期診断と早期の適正治療の判断に組織活動性病変の評価が重要である.しかし,腎生検が科学的証拠に裏づけされた根拠のもとに十分に治療の実践に活用されているとはいいがたい.それは,定量的な把握にあたりどのような項目をどのように定量化するかについての統一した見解がなかったことによる.定量性が周到に表現されると腎生検の病理診断情報に互換性が生まれ,腎病理診断法の標準化が可能となる.そのとき,標準的な治療指針作成のためのEBM(科学的根拠に基づく医療:evidence based medicine)づくりが大規模臨床試験によって行われ,臨床に役立つ組織学的分類の作成にはじめて貢献できる.2005年に立ち上がったIgA腎症国際分類のプロジェクトやわが国のIgA腎症組織学的予後分類の改訂に期待がかかる. -
IgA腎症の組織活動性評価と臨床情報との相関
219巻8号(2006);View Description Hide DescriptionIgA腎症では上気道炎に引き続き起こる肉眼的血尿症例にみられる半月体形成や,ネフローゼ症候群で発症する症例にみられる巣状分節性糸球体硬化など,臨床症候と病理所見に関連がみられる場合がある.また,IgA腎症の腎病理所見のなかには疾患活動性を示すのみでなく,ステロイド治療やレニン−アンジオテンシン系阻害薬による治療に対する反応性の良し悪しを予測させるものがあり,これらの治療法の適応を決定する際に役立つ.IgA腎症に共通する独立した進展予知因子は広範な糸球体硬化(分節性ならびに全節性硬化)と高度な間質線維化であることは周知の事実であるが,あらたな進展予知因子も免疫組織学的に同定されつつある.これらの腎組織学的活動性指標と臨床情報との関連性を理解することはIgA腎症の予後の推定のみならず,長期予後の改善をめざした治療を選択するうえで非常に重要と考えられる. -
ループス腎炎の組織活動性評価と改訂国際分類
219巻8号(2006);View Description Hide Descriptionループス腎炎の病理学的特徴は,多様な活動性の病変が秩序なく巣状分節性に現れることである.また,治療により組織像はときに大きく変化する.腎生検による組織活動性の評価は,腎合併症の予後の推定と治療法選択という重要な臨床的判断の拠り所となるため,その評価は正確でなければならない.腎生検病理標準化は組織標本から病変の質と量とを再現性高く抽出できるように定義づけが重要で,クラス分類は臨床的意義があるかどうかが検証される必要がある.ループス腎炎のクラス分類は1960年代に提起され,最初のWHO分類が1974年につくられ,その後改訂されながら臨床との相関についての研究が展開されてきた1,2).しかし,もっとも基本となるべき標本からの抽出作業の均一化に重要な,病変の定義についての詳細な記載がなかったために,活動性評価は観察者間で食い違いがあることが指摘されていた.2003年のループス腎炎改訂分類は詳細な定義を設け,分類が容易になったという点で評価できる一方で,いくつかの課題を残している.本稿では,ループス腎炎組織活動性の再現性のある評価に必要な病変の定義について解説し,改訂分類の問題点について述べる. -
ループス腎炎患者のための腎組織評価と臨床情報との関連性──新しいループス腎炎組織分類の有用な使い方の現状と問題点
219巻8号(2006);View Description Hide Description新しいISN/RPSループス腎炎組織分類の腎生検病理所見と臨床像の関連性に関しては,これからの課題である.新しいループス腎炎組織分類は,まだ十分に浸透しているとは言い難く,それに対応する臨床所見との解析も,現状あるいは将来の臨床に役に立つ検討でありたいと考えている.私どもが行っている過去のループス腎炎症例の腎生検組織を用いた検討を進めるなかで,得られているデータや問題点をここに述べた.今後,1膜型いわゆる上皮側に沈着物を認めるループス腎炎(class㈸,class㈽+class㈸およびclass㈿+class㈸)と増殖性活動性病変(class㈽,class㈿)の長期的治療方針の立て方や,2 A:activeとC:chronic病変の評価を治療にどう反映するかなど検討していかなければならない.現在でも明らかなことは,いかなる腎組織所見であっても,尿異常を軽減・消失させ,再燃しない副作用の少ない治療を継続していくことが重要である. -
腎尿細管間質病変と血管病変の標準化への提案──バンフ分類の応用と革新
219巻8号(2006);View Description Hide Description移植腎拒絶反応のバンフ分類を使って尿細管間質病変(間質炎,尿細管障害,間質線維化)と血管病変(とくにANCA関連腎炎,悪性腎硬化症,腎動脈狭窄などの具体例を挙げ)について,その程度や広がりをみるうえで移植腎に限らず通常の腎生検でも十分に応用できることを示唆した.その応用の一端を紹介し,それぞれの病変のチェックリストを具体的に表し,腎病理診断標準化の今後の方向性と展望を述べた. -
“バーチャル顕微鏡”に期待するもの
219巻8号(2006);View Description Hide Descriptionバーチャル顕微鏡とは,顕微鏡組織標本の精細な画像を高性能のCCDカメラで撮影し,デジタル情報としてコンピュータに取込み,ディスプレイ上にこの組織標本の画像を描出し,専用のソフトウェアによってこの画像を自由に移動させたり拡大,縮小させたりして観察することができるシステムである.顕微鏡なしにPCのディスプレイ上で顕微鏡に匹敵する組織像を観察できる.取込んだデジタル情報はサーバーを設置したネットワークを経由することにより,多数のPCからのアクセスが可能であり,また各種の記憶媒体へのコピーが容易であるため,広い用途への応用が考えられている.腎病理組織診断の標準化を推進するうえでは情報の共有化ということが重要であるが,各施設で保有している腎生検組織標本をバーチャルスライド化し,大規模な腎病理組織データベースを構築するなどの可能性が考えられ,この新しい方法論への期待が大きい. -
『腎臓学用語集』と『腎生検病理診断標準化への指針』の改訂に向けて
219巻8号(2006);View Description Hide Description腎疾患の診断や病態の把握には病理組織学的検索が不可欠である.わが国は諸外国と比較しても腎生検の普及率は高く,得られた腎生検情報を臨床の現場で十分に生かすことが望まれているが,臨床と病理の間で,あるいは腎病理医間においても,個々の所見に対するとらえ方はかならずしもつねに一致しているとはいいがたい.こうした現状を踏まえ,日本腎臓学会内に腎病理診断標準化委員会が発足し,その成果の一部が『腎病理診断標準化への指針』としてまとめられた.腎病理組織の標準化においてもっとも重要な点は用語の定義であると考える.ある特定の
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フォーラム
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TOPICS
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- 免疫学
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- 脳神経外科学
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- 公衆衛生
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連載 現代医療におけるコメディカルの役割(最終回)
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注目の領域
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