Volume 220,
Issue 6,
2007
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あゆみ 腎の再生医学
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医学のあゆみ 220巻6号, 469-469 (2007);
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医学のあゆみ 220巻6号, 471-476 (2007);
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腎は血液中の老廃物を尿として排出するとともに,体液の浸透圧を調節する臓器である.また,レニンを産生して血圧を調節する内分泌器官であり,造血作用をもつエリスロポエチンを産生する臓器でもある.まさに“肝腎”という言葉のとおり,腎は恒常性を維持しながら生きていくための重要な臓器である.ヒトの腎は握りこぶしほどの大きさがある.このなかに,老廃物を濾過して水分や無機塩類を再吸収する装置,ネフロンが100万個以上も含まれている.腎の発生はたった1個のネフロンでできた前腎にはじまる.だが前腎はすぐに消滅し,ネフロンの数を増した中腎があらたに形成される.この中腎もやがて退化し,最終的には後腎,いわゆる腎が完成する.腎がつくられる過程では上皮と間葉との相互的な誘導作用が重要であるが,その分子メカニズムもしだいに明らかになってきた.ここでは前腎から後腎に至るまでの腎の発生過程とその仕組みを概説する.
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医学のあゆみ 220巻6号, 477-480 (2007);
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腎は老廃物の排泄や体内の恒常性の維持などの重要な役割を担い,必要不可欠の臓器であるが,自然には再生しない.現在の腎不全治療は多くの問題を抱えており,これに代わる新しい治療法として再生医療が注目を浴びている.腎再生を実現するためには腎の発生を理解することが重要である.本稿では腎の発生機構をおおまかに述べ,Sall1の腎発生における役割,およびSallファミリーであるSall4の機能,さらにSall1を使った腎前駆細胞の同定について解説する.
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医学のあゆみ 220巻6号, 481-484 (2007);
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近年の幹細胞研究の進歩により,われわれの骨髄のなかには造血幹細胞以外にも間葉系幹細胞などの多分化能をもった幹細胞が存在することが明らかとなってきた.これらは患者本人の骨髄から採取可能であり,ここからつくられる組織臓器は拒絶反応のリスクのないクローンとなりうるため,再生医療実現に向けた細胞ソースとしてもっとも期待されている.著者らはこれまでヒト骨髄由来間葉系幹細胞を用いた腎臓再生が可能か検討してきた.動物はもともとひとつの受精卵であったものが胎内ですべての臓器をもつ個体へと変貌分化するため,この変貌のプログラムを異種の胎仔から拝借し“臓器工場”として用いることで自己の骨髄幹細胞からクローン腎臓作成を試みている.今回,この骨髄由来細胞を用いた再生医療の腎疾患適応へのチャレンジを総説するとともに,著者らが開発しているクローン腎臓作製法を紹介し,これまでの成果および今後の課題について概説する.
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医学のあゆみ 220巻6号, 485-489 (2007);
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胚性幹細胞,すなわちES細胞を用いて目的とする細胞へと分化誘導させる試みが,神経や膵,肝,心筋などの幅広い分野で数多くなされ,それら分化能を有したES細胞を実際動物モデルでの移植に利用して病態の改善が得られないかという研究がなされている.著者らは,腎分野におけるES細胞を使用した再生医療への応用を念頭に研究を重ねてきた.しかし,腎を構成する細胞は20種類以上にも及ぶことから,分化誘導を行う細胞の候補として腎尿細管細胞と足突起細胞に絞り分化誘導を試みた.今回,データを若干示しながら,そこに生じる問題点なども含め記述する.目的とする腎構成細胞,とくに尿細管細胞と足突起細胞に関して,それぞれどこまでが可能で,何が弊害として生じるのか,さらに今後の展望として何が期待できるかを言及する.
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医学のあゆみ 220巻6号, 491-495 (2007);
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本来,腎はさまざまな障害を受けても自然に回復する能力を備えている.臨床的には急性腎不全がその一例である.障害を受けて一過性に尿細管壊死に陥っても,反応性に周囲の正常な細胞が増殖・遊走・分化することにより,成熟したあらたな尿細管上皮が再生されると考えられている.最近,著者らはこの尿細管再生において中心的な役割を果たす細胞の存在を明らかにした.この細胞は虚血・再灌流後の回復過程でごく初期から分裂を開始し,その後増殖を繰り返して最終的には成熟した尿細管上皮へ分化する,という腎幹細胞的な役割を果たす細胞であることがわかった.さらに,この細胞は管腔形成能や多分化能を合わせもつ非常にユニークな細胞であることも判明している.今後,この細胞の増殖・分化を調節する因子あるいは選択的に活性化する因子などを見出すことができれば,腎再生医学のさらなる発展が期待できるものと思われる.
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医学のあゆみ 220巻6号, 497-500 (2007);
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急性腎不全急性尿細管壊死後の尿細管修復・再生における再生細胞の由来や修復機序に関しては不明な点が多い.近年,腎内にも幹・前駆細胞が存在し,尿細管再生へ関与する可能性が注目されている.著者らは,近位尿細管細胞は障害刺激に反応し速やかに増殖活性を示し局所修復をするが,傷害が強く多くの近位尿細管細胞が死滅する状況では近位尿細管遠位部に存在する前駆様細胞が動員され,広範な修復に関与する可能性を見出した.また,急性腎不全後の回復期に一致して浸潤マクロファージやミオフィブロブラストの再生尿細管周囲への一過性の出現が尿細管修復に重要な役割をなすことから,急性腎不全後の尿細管修復・再生は創傷治癒の一形態としてとらえうることを提唱している.尿細管前駆細胞の同定とその制御機序の解明により致死的な急性腎不全における尿細管修復・再生療法への道が開けることが期待される.
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医学のあゆみ 220巻6号, 501-506 (2007);
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腎再生の実現には安全かつ効率よく幹細胞の能力を引き出すことが必要であるが,臨床応用へ向けた幹細胞培養法はいまだ試行錯誤の状態である.再生医療領域でもっとも期待されているヒトES細胞の培養においても,異種であるマウス線維芽細胞がフィーダーとして用いられ,多くの培養素材にも動物由来物質が含まれており,臨床応用へ向けた安全性は確保されていない.著者らは,工学的に合成されたハイドロゲルを用いることにより,動物由来物質を完全に排除した霊長類ES細胞培養や,腎体性幹細胞の機能制御に成功しており,今後高機能三次元培養素材開発を中心とした医工学の応用が,腎再生医学にブレークスルーをもたらすものと期待している.
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医学のあゆみ 220巻6号, 507-510 (2007);
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腎の再生医療を考えた場合に幹細胞を用いた細胞療法に比べ,再生にかかわる因子を探索し,それを標的とした治療を行う方法のほうが実現性が高い.器官形成と組織の修復再生には多くの共通点があり,再生にかかわる遺伝子の探索方法として既知の“発生関連遺伝子”の創傷治癒・再生段階における発現パターンを検討するのが有効である.腎の再生は難しいと考えられているが,急性尿細管傷害後には,近位尿細管S3セグメント,Henleの太い上行脚には強い再生能を認める.急性尿細管傷害後の尿細管細胞の再生において“腎の発生関連遺伝子”である白血病阻止因子LIF,Wnt−4,アクチビンなどの再発現が認められ,腎の再生現象にかかわっていると考えられている.これらの分子を標的とした腎の再生医療が検討されている.
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医学のあゆみ 220巻6号, 511-515 (2007);
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1992年,大阪大学の富田らは核酸分子をHMG−liposomeに包み,腎動脈を経由して投与することにより腎への遺伝子導入が可能であるというラットのデータを報告した1.15年を経て,いま,われわれが必要としているのはヒトの臨床現場で現実に応用可能な技術である.実践的な視点からみれば,1徐放化したplasmidDNAを腎実質に直接投与し遺伝子導入する,2ホストとなる細胞種を問わず腎臓内に持続高発現させることを目的とする,3産生された蛋白分子は局所濃度が高いことで腎保護効果あるいは修復促進効果を発揮する,4産生された蛋白分子は高い安全性をもつ,などが要件といえるであろう.現時点で,カチオン化ゼラチンとエリスロポエチン遺伝子の組合せは条件にかなり合致する候補である.
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フォーラム
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医学のあゆみ 220巻6号, 517-519 (2007);
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医学のあゆみ 220巻6号, 520-521 (2007);
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連載
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臨床研究のあたらしい潮流─わが国発の臨床研究推進に向けて
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医学のあゆみ 220巻6号, 531-537 (2007);
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CASE−J試験は,ハイリスク高血圧患者での心血管系イベントの発症を指標に,もっとも繁用されているアンジオテンシン受容体拮抗薬のカンデサルタンとCa拮抗薬のアムロジピンの有効性を比較検証したわが国初のHead−to−Headの臨床試験である.主要評価項目は複合心血管系イベント突然死,脳・心・腎・血管イベントで,副次評価項目は,全死亡,心肥大退縮効果,糖尿病の新規発症,離脱率とし,intention−to−treatの原則にてPROBE法で解析した.登録症例4,728例の平均追跡期間は3.2年間で,フォローアップ率は97.1%であった.主要評価項目には両薬剤間に有意な差は認めなかったが,カンデサルタン群はアムロジピン群に比べて,BMI高値例での全死亡および糖尿病の新規発症を有意に抑制し,左室肥大退縮率も有意に大であった.降圧治療においては症例の背景因子を検討することで予後を改善する可能性がある.