Volume 220,
Issue 7,
2007
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あゆみ 細胞シート工学による再生医療
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医学のあゆみ 220巻7号, 539-539 (2007);
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医学のあゆみ 220巻7号, 541-544 (2007);
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不全,欠損組織・臓器のあらたな治療方法として,近年再生医療が注目を集めている.そこで,組織工学tissue engineeringの技術を用いて細胞から三次元的組織を再構築し,治療に応用する研究がはじまっている.著者らは,シート状の細胞を単層のまま,あるいは重層化させたりして三次元組織を構築する細胞シート工学cell sheet engineeringを創出し,再生治療をつぎつぎに可能にしている.
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医学のあゆみ 220巻7号, 545-548 (2007);
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種々の組織中に存在する体性幹細胞のヒト臨床応用はすでにさまざまな組織ではじまっており,これらに続いてES細胞の臨床応用も徐々に現実のものとなりつつある.しかし,幹細胞はいぜんきわめて貴重な細胞であり,根治治療を可能にすることが期待されている再生医療の本格的実現には,今後,多くのブレークスルーが必要である.従来用いられてきた注射針を用いた細胞懸濁液移植が抱える問題点の克服を目的として,著者らは10年以上にわたって細胞シート工学の開発に取り組んできた.本稿では細胞シート工学を用いた幹細胞移植の優位性について概説する.
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医学のあゆみ 220巻7号, 549-555 (2007);
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著者らは患者本人の角膜上皮の幹細胞あるいは口腔粘膜の幹細胞を細胞源とした角膜上皮再生医療を開発し,臨床応用に成功した.本技術では,温度応答性培養皿を使用した細胞シート工学を応用している.角膜内皮細胞シート移植の開発も進みつつある.
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医学のあゆみ 220巻7号, 557-560 (2007);
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歯周疾患により失われた歯周組織の再生には歯根膜由来の細胞が重要な働きを果たしており,最近では幹細胞様の細胞が含まれていることも報告されている.著者らは温度応答性培養皿を用いて培養ヒト歯根膜由来細胞シートを作製し,この細胞シートには細胞外マトリックスが温存されており歯周組織の再生に有利に働く可能性があることを報告した.さらに,ビーグル犬の歯根膜シートを人工的に作製した裂開型歯周組織欠損部に移植したところ,セメント質や歯槽骨の再生を伴う歯周組織の再生が観察され,歯根膜シートの適用により歯周組織の再生が起こる可能性があることを報告した.また,歯根膜細胞培養の際に石灰化培地を用いることでセメント質様組織が形成され,歯根膜様組織の垂直的埋入を認めることも報告しており,現在あらたな歯周組織再生療法としての臨床応用に向けて準備を進めている.
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医学のあゆみ 220巻7号, 561-564 (2007);
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早期消化管癌の内視鏡治療において,従来の内視鏡的粘膜切除術EMRに加えて,内視鏡的粘膜下層 /離術ESDが開発された.この方法により広範囲の病変でも一括で切除することが可能となった.しかし,管腔の狭い食道では,内視鏡治療後に生じる広範囲の人工潰瘍に起因する瘢痕狭窄の問題が生じている.著者らは細胞シート工学を応用して,人工食道潰瘍の創傷治癒の促進および術後潰瘍瘢痕狭窄の防止を目的とした新規再生医療的治療法を開発した.培養自己口腔粘膜上皮細胞シートを潰瘍面に経内視鏡的に移植するという方法である.培養口腔粘膜上皮細胞シート移植は,人工食道潰瘍による瘢痕狭窄に対する新しいモダリティーとして期待されている.
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医学のあゆみ 220巻7号, 566-571 (2007);
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呼吸器外科手術では,気管支・肺から空気が漏れる気漏という特有の合併症が加わる.術中気漏に対しては直接縫合閉鎖,さまざまな閉鎖手技に加えて,フィブリン糊などの各種組織修復接着剤による気漏閉鎖が行われている.理想的な気漏閉鎖に対する組織修復接着剤には,呼吸運動に追従する伸縮性,柔軟性,生体親和性および気密性が高いこと,強力な接着力など多くのことが要求される.細胞シートが,1多数の細胞が細胞−細胞間接着で結合を有し,柔軟性も兼ね備えている,2培養の過程で蓄積した細胞外マトリックス成分,コラーゲン,フィブロネクチンなどが細胞下面に存在して接着剤の役目する,3細胞シート同士を接着することが可能で,積層して組織を重層化できる,などの特徴を有していることに着目し,細胞シート工学を用いた新たな術中気漏閉鎖法について述べる.
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医学のあゆみ 220巻7号, 573-576 (2007);
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近年,循環器領域においても機能不全の疾患に対し,患部組織を健康な組織へ科学テクノロジーを駆使し,再生・治療を行う再生医療が注目され,すでにいくつかの治療が臨床応用されている.再生医療には,細胞懸濁液の患部への直接注入や,組織工学的手法により作製した再生組織の患部への移植が含まれる.これまで,組織工学的手法による組織の再生のなかでも心筋組織の再生は心筋組織の形態・機能の点から非常に困難であると考えられていた.しかし,近年の優れた数多くの研究によりその再生が実現に近づきつつある.そのなかでも細胞シート工学による心筋再生は非常に画期的な研究であり,世界的な注目を浴びている.そこで,本稿では細胞シート工学による心筋組織再生研究を中心に,世界の動向や研究上の課題などについて紹介したい.
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医学のあゆみ 220巻7号, 577-580 (2007);
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重症心不全に対する新しい治療法として心筋再生型治療法が注目されつつある.心筋細胞は他の増殖細胞と異なり,terminal differentiationを呈する心筋細胞はほとんど分裂しないため,不全心筋において障害を受けた心筋細胞は最終的にアポトーシスなどにより死滅し,その数は減少する.しかし最近,心筋細胞などによる心筋への細胞移植は心機能を改善することが報告され,筋芽細胞による細胞移植の臨床応用も開始されわが国でも臨床試験が開始された.そこで,本稿では重症心不全に対する骨格筋芽細胞再生治療について,細胞シート工学による著者らの検討を報告する.
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医学のあゆみ 220巻7号, 581-586 (2007);
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生体内に第2の機能的肝臓を作製するという肝組織工学的再生医療は,まったく新しい治療分野としてその確立が期待されている.肝細胞は3,000以上の働きを行う高分化細胞であることから,肝組織工学に重要な細胞であるが,肝細胞のみのアプローチでは生体内で機能を長期間維持することは困難である.長期機能維持ならびに高機能化をめざすにあたり直面するさまざまなハードルを,バイオマテリアル技術と融合することで,ひとつずつ解決し発展している段階にある.本稿では,皮下部位において機能的肝組織を作製する技術を紹介し,夢の治療の実現化に向けた展望について概説したい.
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フォーラム
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医学のあゆみ 220巻7号, 588-591 (2007);
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医学のあゆみ 220巻7号, 592-593 (2007);
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連載
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臨床研究のあたらしい潮流─わが国発の臨床研究推進に向けて
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医学のあゆみ 220巻7号, 599-601 (2007);
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EBMが治療学に果たした功績の大きいことは疑いの余地がないが,負の側面も少なくない.その第1は商業主義によってEBMがゆがめられつつあることであろう.いまや医学雑誌は製薬企業の広告が主体で,本文がすみに追いやられているのが実情である.企業が自らの製品のエビデンスをつくりだす責務は当然としても,それを正しく評価し,解説して実地医家に届けるのは専門家の仕事である.