Volume 220,
Issue 10,
2007
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あゆみ ヒト生体試料バンク──現状と課題
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医学のあゆみ 220巻10号, 813-814 (2007);
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医学のあゆみ 220巻10号, 815-819 (2007);
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近年の医学・生物学研究の進歩はめざましく,研究材料も非常に多岐にわたってきている.そのようななかで,実験材料として今日でも中心的な役割を果たしているのが細胞材料である.細胞は最小単位の生命体であり,すべての生命現象は細胞個々の働きの総合体として構築・表出されている.したがって,細胞バンク事業が担う責務は今後もますます増大することが予想される.従来の細胞バンク事業では,培養細胞株が中心的な材料であった.しかし,近年の発生学・再生医学研究の隆盛に伴って,株化していないプライマリー細胞,とくにヒト由来の体性幹細胞などのプライマリー細胞に対する需要が非常に大きくなっている.本稿では培養細胞株が整備されてきた歴史的状況やヒト由来プライマリー細胞などに関する細胞バンク事業の現状を紹介する.
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医学のあゆみ 220巻10号, 820-823 (2007);
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脳ブレインバンクは,病院で死亡した患者の病理解剖により得られる脳などのヒト組織を医学研究のために保存する方法で,組織バンクともよばれる.脳バンクでは法律を遵守し,適切な患者承諾のもとにヒト組織を保存し,分子生物学の技術などを用いて直接ヒト組織を解析し,神経疾患の診断や治療の方法の開発に役立てる.脳バンクは重要な知的財産と考えられ,脳バンクを全国に整備しシステムとして管理・運営する必要がある.
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医学のあゆみ 220巻10号, 824-827 (2007);
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疾病発生への影響を検討する遺伝子多型研究は世界中で実施されており,多くの研究成果が発表されるようになった.わが国の遺伝子多型研究は“ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針”の対象となり,遺伝病遺伝子の研究と同列で取り扱われているが,両者は質的に異なる研究である.“日本多施設共同コーホート研究”Japan Multi−Institutional Collaborative Cohort Study:J−MICC Studyは遺伝子多型による遺伝子環境交互作用の探索検証を目的として平成17年2005度から開始された.全国で10の研究グループが協力し,5年間で10万人を登録し,その後20年間の追跡を行う.連結可能匿名化された生活歴データと血液バフィーコート,血清,血漿,追跡調査から得られた癌罹患と全死亡の死因は中央事務局に保管される.J−MICC研究での研究目的での検査結果の開示,検体保管方法,検体利用について概略を説明する.
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医学のあゆみ 220巻10号, 828-832 (2007);
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JCRB遺伝子バンクは厚生労働省の主導のもとに日本初の公的研究資源バンクとして1984年に設立され,疾患研究のための遺伝子資源を開発・収集し,多くの研究者に提供してきた.収集した資源は,癌遺伝子,ヒトゲノム解析用資材,遺伝子の機能解析のための完全長cDNAクローンなど,そのときどきの医科学研究のニーズを反映したものであった.疾患研究ではヒトのほか,モデル実験動物として使用されるマウス,カニクイザルおよびチンパンジーの研究資源の基盤を整備するため各種動物の複数組織より直接蛋白質に変換可能な完全長cDNAクローンを作製・収集して分譲を行っている.なかでもカニクイザルcDNAクローンについてはそれらの配列情報も解読してDDBJより公開しており,世界で唯一のcDNAコレクションとなっている.最近では疾患患者集団のDNAサンプルの寄託を受け,資源化して分譲することで疾患研究のより幅広い支援が可能となった.
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医学のあゆみ 220巻10号, 833-836 (2007);
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現在我々のまわりに存在する化学物質は約10万物質あり,また毎年多くの物質が新規登録され,市場に流通し一般に利用される.化学物質は現代文明において欠くべからざる科学技術の成果であるが,難分解性高蓄積性環境汚染物質POPsは化学的に非常に安定であるため分解されず,環境中に長期間残留する.我々は環境中に放出されたPOPsそのものを吸収するとともに,食物連鎖を経て摂取する.そのためPOPsのヒトへの蓄積およびその健康影響のリスク評価は急務である.合理的判断に基づく予見的対策立案や施策を要する環境汚染物質を速やかに選抜するためには,ヒト曝露動向を知ることが必要である.そのためには経年的・空間的試料が必要であり,全国の共同研究者とともに試料バンクの創設を行い,現在全血7,600検体,血清23,000検体,母乳3,000検体,食事3,400検体計37,000検体を保存し,運用している.
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医学のあゆみ 220巻10号, 837-840 (2007);
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ヒト組織を利用した研究の“倫理”への対応とは,“社会の懸念に配慮して利用者が踏まえるべき手順”を整理する作業である.先進国では大きく2つの潮流が観察でき,ヒト組織の取扱いを独自の規制対象として取り組むヨーロッパと,そうした判断がもっぱら個々人の判断に委ねられるアメリカとで,規制の枠組みの違いが如実に現れている.アメリカもヨーロッパもそれぞれ異なる価値の重みづけとともに研究活動の規制のあり方を追究してきたのであり,日本としていずれかを模倣してすむという類の問題ではない.すでに広範に展開しているヒト組織の利用への対応の事例として,これら海外の実績を分析したうえで,日本が対応すべき問題点を把握する必要がある.
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医学のあゆみ 220巻10号, 841-844 (2007);
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生体試料バンクは知的財産の基礎インフラとなるものであり,研究者個人では得にくい生物学的リソースを研究者に提供する媒体である.したがって,多くの環境研究,ゲノム創薬,ゲノム研究に重要な研究インフラとなる.バンクが本来の機能を発揮するためには,1試料の寄贈者への情報の還元,2バンクから利用者への公平なサンプル提供,3バンクの継続性と維持のため経済的支援,4バンクを利用した研究の潜在的需要の掘り起こし,の4点が重要である.すでに潤沢な支援を受けているnationalセンター的な公的バンクは別として,地道な努力で広報から供給,研究需要の掘り起こしまでを行っている機能の高いniche的な特色あるバンクが多く存在している.わが国が知的財産立国をめざすなら,こうしたバンクに対しても研究助成を行う必要があろう.
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フォーラム
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医学のあゆみ 220巻10号, 846-847 (2007);
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医学のあゆみ 220巻10号, 848-851 (2007);
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連載
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臨床研究のあたらしい潮流─わが国発の臨床研究推進に向けて
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医学のあゆみ 220巻10号, 860-866 (2007);
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いわゆる“ポストゲノム”時代に入った現在では,疾患の原因遺伝子をターゲットとした分子標的医薬などの蛋白製剤や抗体医薬,遺伝子治療,再生医療に使用される細胞治療,そして癌ワクチンなどのバイオテクノロジー技術を応用した医薬品生物製剤,あるいはバイオ医薬の研究開発が盛んとなっている.これらの新規剤型の研究開発は,従来の製薬企業による研究開発に加えて,大学などのアカデミアにおけるトランスレーショナルリサーチとして,医薬品候補物質シーズを開発ステージにあげることが有効なことが多いと考えられるようになった.わが国におけるアカデミア主導の効果的な研究開発のためには,医薬品審査・認可体制や知的財産の運用に関する基盤整備と,臨床医のみならず医薬品開発の支援を行う開発薬事などの人材養成が急務である.