Volume 221,
Issue 9,
2007
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6月第1土曜特集【アルドステロン研究の新展開】
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医学のあゆみ 221巻9号, 689-689 (2007);
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■総論:アルドステロン作用と制御の新しい視点
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医学のあゆみ 221巻9号, 693-697 (2007);
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ミネラロコルチコイド受容体(MR)は高親和性コルチコステロイド受容体としての特性を有し,グルココルチコイド(コルチコステロン・コルチゾール)とアルドステロンがほぼ等親和性に結合する.細胞レベルでは,海馬神経細胞や心・血管平滑筋細胞などの興奮性細胞でグルココルチコイド受容体とともにイオンチャネル遺伝子などの基礎発現に関与し,細胞の興奮性維持に寄与しているほか,個体レベルではグルココルチコイド不活化酵素11βHSD2の発現する腎尿細管・腸管などの上皮細胞で,アルドステロン受容体として塩類の輸送・保持に重要な役割を果たしている.非上皮性細胞におけるアルドステロンの臓器障害作用が近年注目を集めているが,アルドステロン単独では効果がなく塩分負荷が同時に必要である理由,また高濃度のコルチゾール・コルチコステロン存在下でアルドステロンが単独で直接効果を発揮しうるか否かなど,障害の分子機序に関してはいまだ不明な点が多い.
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医学のあゆみ 221巻9号, 698-702 (2007);
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アルドステロンは,腎遠位尿細管などのミネラロコルチコイド受容体に作用する単なる電解質調節因子であると考えられてきた.ところが最近の研究結果により,アルドステロンは心血管系臓器や腎に存在しているミネラロコルチコイド受容体に直接作用して酸化ストレスや細胞内情報伝達シグナルの活性化を生じ,さまざまな障害作用を示すことが明らかとなってきた.すでに実際の臨床においてもミネラロコルチコイド受容体拮抗薬の臓器保護効果が報告されており,新しい治療ターゲットとして注目されている.アルドステロンとミネラロコルチコイド受容体による臓器障害,ならびにミネラロコルチコイド受容体拮抗薬の薬理学的作用機序について,今後の詳細な分子生物学的検討が望まれている.
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医学のあゆみ 221巻9号, 703-708 (2007);
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医学のあゆみ 221巻9号, 709-715 (2007);
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医学のあゆみ 221巻9号, 716-720 (2007);
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アルドステロンの作用にはMR,遺伝子の転写調節を介するゲノム作用と,比較的迅速に認められ転写活性を介さない非ゲノム作用に区別される.非ゲノム作用の細胞内情報伝達系として,Ca2+,cAMP,PI3キナーゼ,Na+−H+交換輸送とそれに伴う細胞内pH上昇,ERK1/2の活性化などの関与が血管細胞などにおいて報告されている.血管平滑筋に対しては細胞内Ca2+上昇を介する収縮作用,内皮に対してはPI3キナーゼを介した血管拡張反応などが報告されているが,結果はかならずしも一致していない.今後,アルドステロンの非ゲノム作用の病態生理学的側面の解明が望まれる.とくに,心不全・高血圧など心血管病の発症・進展にいかに関与しているのか,redox state/食塩とMRシグナルとの関係,組織アルドステロン産生との関連,長期のゲノム作用といかに協調しているのかなど,解決すべき課題は多い.エプレレノンの臨床よりあらたに得られる情報も期待される.
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■各論:アルドステロンと病態形成
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医学のあゆみ 221巻9号, 723-726 (2007);
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心疾患の病態においてレニン−アンジオテンシン系の果たす役割がきわめて大きいことは,これまで多くの報告から明らかとなっている.一方,レニン−アンジオテンシン系を阻害するだけではアルドステロンの働きを抑制できない,いわゆるアルドステロンブレイクスルー現象も知られている.アルドステロンは腎遠位尿細管の鉱質コルチコイド受容体(MR)を介して作用し,Na再吸収,K排泄促進による体液貯留をもたらすと従来から考えられていた.しかし近年,心血管系にもMRが存在することが示され,アルドステロンが心血管系において直接の作用をもつことがわかってきた.本稿ではアルドステロンの心血管系における直接作用,および心疾患においてアルドステロンが果たす役割を,抗アルドステロン剤の効果にも注目して述べたい.
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医学のあゆみ 221巻9号, 727-731 (2007);
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アルドステロンは副腎から多く分泌されるが,心血管系組織(心臓や血管)においても微量ながら合成されている.その生理学的意義はいまだ不明であるが,いくつかの解釈がなされようとしている.生理的なレベルの組織アルドステロンから病的なレベルへ増加すると心血管傷害性に働くことは間違いないであろう.副腎由来の循環アルドステロンとともに組織アルドステロンの心臓への作用を阻害することは,治療手段として間違いなく有益であろう.アルドステロン研究はそれ単独でももちろん興味深いテーマであるが,おそらくナトリウム利尿ペプチドとの関連において,その意義は今後ますます重要視されてくるであろう.
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医学のあゆみ 221巻9号, 733-738 (2007);
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レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系は心血管疾患発症に大きな役割を果たしていると考えられている.大規模臨床試験(RALESおよびEPESUS試験)において,ミネラロコルチコイド受容体阻害薬(抗アルドステロン薬)の追加投与により心血管イベントの発症リスクが大幅に減少し,とくに突然死が抑制されることが報告され,アルドステロンの催不整脈作用に関心がもたれている.アルドステロンは本来,副腎で産生され,腎の遠位尿細管のイオンチャネル・トランスポーターであるENAC(上皮性Naチャネル)・Na+/K+ATPase(Na+/K+ポンプ)に作用して,Na+・K+・H2O代謝を調節するホルモンであると考えられてきたが,最近では心臓でも産生され,心筋イオンチャネルへの作用も報告されている.本稿では,アルドステロン・ミネラロコルチコイド受容体の心筋イオンチャネルへの作用,不整脈とのかかわりについて概説する.
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医学のあゆみ 221巻9号, 739-742 (2007);
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アルドステロンが直接,心血管組織のミネラロコルチコイド受容体(MR)を介して血管壁に炎症を惹起する,いわゆる“アルドステロン誘導性血管炎”という概念が提唱されている.血管障害の発症・進展には血管内皮障害が大きな病因的意義を担うことが知られており,これまでの動物実験や臨床研究からも,アルドステロンが血行動態とは独立した機序で血管内皮機能を障害し,MR拮抗薬の投与により可逆的に血管内皮機能が改善することが示されている.また,培養血管内皮細胞や動物実験モデルでの検討からNO産生阻害,局所性レニン−アンジオテンシン系の賦活,酸化ストレス誘導などの関与が示唆されており,アルドステロンが直接,血管内皮細胞を標的として血管障害の発症・進展に寄与する可能性がある.
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医学のあゆみ 221巻9号, 743-746 (2007);
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アルドステロンは血管に直接作用し血圧上昇や血管のリモデリング,内皮機能障害,酸化ストレスの増加,炎症などを引き起こすことが近年明らかになってきた.血管に対する作用はゲノムを介する作用とnongenomic作用があり,non−genomic作用に関しては研究がかなり進み,血管平滑筋細胞における情報伝達経路としてc−Srcやp38MAPキナーゼ,NADPH oxidase,Big MAPキナーゼ1,PKC,NHE,G6PDなどが明らかにされている.しかし,その作用はミネラロコルチコイド受容体を介するものと介さないものがあり,詳細はいまだ不明である.また,高食塩食による臓器障害やレニン−アンジオテンシン系阻害薬使用時には組織におけるアルドステロンがその病態に関与していると考えられるが微量であり,さらなる検討が必要である.
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医学のあゆみ 221巻9号, 747-751 (2007);
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肥満には高血圧が伴うことが多く,肥満,血圧高値,血清脂質異常,空腹時高血糖などの動脈硬化危険因子は,単独で存在するよりも,軽度であっても特定の個人に重積すると心血管病の発症率が高まることが明らかにされており,これらの病態は近年,メタボリックシンドロームとよばれている.肥満に伴う高血圧の治療では交感神経系,レニン−アンジオテンシン系,ミネラルコルチコイド受容体のいずれかを阻害することにより改善することが知られているが,その詳細な分子機構は不明である.また,近年脂肪組織から分泌される,アルドステロン放出因子やリノレン酸酸化物などが副腎に作用してアルドステロン分泌過剰を引き起こすことが報告され,肥満高血圧におけるアルドステロンの役割が注目されている.しかし,ヒトにおける臨床研究では血漿アルドステロン濃度とウエスト周囲径との相関については肯定,否定の両方の報告があり,現時点では明らかではない.本稿では肥満高血圧とアルドステロンの関連に関して最近の文献と自験例を踏まえて現状を概説する.
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医学のあゆみ 221巻9号, 753-758 (2007);
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メタボリックシンドローム,とくに病的状態の脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインとアルドステロンはたがいに他の生理作用に影響を与えていると思われ,肥満,高血圧症,メタボリックシンドロームの病態を考えるうえでそれらの関連を理解するのは大切である.脂肪組織はもともとグルココルチコイド受容体(GR)が豊富に存在し,11β−HSD1が共存し,グルココルチコイドの標的組織と考えられてきた.最近,脂肪組織にミネラルコルチコイド受容体(MR)も存在することが報告されているが,脂肪組織におけるMRの役割をはじめ,その生理的なリガンドは何なのかなど不明な点がまだまだ多い.脂肪細胞とアルドステロンの関連はようやく注目され,今後の研究結果が待たれる分野である.
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医学のあゆみ 221巻9号, 759-765 (2007);
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アルドステロンは従来,腎尿細管上皮細胞のミネラロコルチコイド受容体(MR)を介してNa再吸収を促進し,体液量増加および血圧上昇がおもな作用であると考えられていたが,近年,血管内皮細胞やメサンギウム細胞などの非上皮系細胞においてMRの存在が示され,アルドステロンの血管障害作用が明らかとなってきた.腎障害動物モデルにおいてアルドステロンは,ゲノム,非ゲノム作用を介して血圧やアンジオテンシンとは無関係に独立して糸球体硬化などの腎障害を惹起する因子であることが証明された.ヒトにおいても慢性腎臓病患者や2型糖尿病性腎症患者に対してMR拮抗薬を投与することで蛋白尿や微量アルブミン尿が改善することが報告され,アルドステロンの腎障害作用が示されると同時にMR拮抗薬の腎保護効果が証明されている.
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医学のあゆみ 221巻9号, 767-771 (2007);
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医学のあゆみ 221巻9号, 772-776 (2007);
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肥満を中心にメタボリックシンドロームが注目されている.日本人のメタボリックシンドロームの特徴は高血圧の頻度が高い点である.一方,高血圧症診療は,最近の新薬の開発とともに格段の進歩を遂げている.その結果,降圧治療が容易となったが,単に血圧を下げれば事足りるわけではなく,その病態の基礎または本体を十分検索すべきである.すなわち,二次性高血圧症の存在をつねに意識しながら日常診療で鑑別診断を行う癖をつける必要がある.すなわち,原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)はけっしてまれな疾患ではなく,なおかつかならずしも低カリウム血症の頻度が低いため,高血圧のみが主症状である.したがって,高血圧症例をスクリーニングし,低レニン性高アルドステロン血症を示す高血圧症患者を的確にスクリーニングする必要がある.酸化ストレス発生の原因である過剰アルドステロン血症は,心血管傷害の発症進展を促す.積極的なスクリーニングを行い,PAの的確な診断後に外科的処置などの早期治療が望まれる疾患である.
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医学のあゆみ 221巻9号, 777-779 (2007);
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医学のあゆみ 221巻9号, 780-786 (2007);
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医学のあゆみ 221巻9号, 787-792 (2007);
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医学のあゆみ 221巻9号, 793-798 (2007);
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■展望
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医学のあゆみ 221巻9号, 801-804 (2007);
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■AYUMI Glossary of Terms
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医学のあゆみ 221巻9号, 805-808 (2007);
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医学のあゆみ 221巻9号, 809-811 (2007);
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