医学のあゆみ
Volume 221, Issue 10, 2007
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あゆみ 医師主導型臨床研究・治験をいかに進めるか──そのコツとピットフォール
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行政的観点からみた医師主導型臨床研究・治験のインフラの整備
221巻10号(2007);View Description Hide Descriptionわが国でまだ適応について承認がされていない医薬品や,新規の蛋白製剤や抗体医薬,遺伝子治療,再生医療に使用される細胞治療,そして癌ワクチンなどのバイオテクノロジー技術を応用した治療用の生物製剤を使用する臨床試験は従来のような治験の方法論とは異なり,アカデミア・医療機関において積極的に推進していかなければならない部分が存在する.本稿では,規制や人材養成の観点からみた当該分野の発展のための環境整備の重要性について概説する. -
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高コレステロール血症における医師主導型臨床研究──MEGA Studyを参考に
221巻10号(2007);View Description Hide Description冠動脈疾患の死亡率が低く,コレステロール治療の有用性が不明であった日本人において,総コレステロール220〜270 mg/dlの文書同意のある男女について,無作為化比較試験を行ったMEGA Studyはきわめて参考となる.NECPのstep 1食事と,食事にプラバスタチン(10〜20 mg/day)併用した群で平均5.3年追跡した結果,総コレステロール11%,LDLコレステロール18%減少し,冠動脈疾患イベントは33%抑制され(NNT=119),脳卒中イベントは17%抑制された.コレステロール測定,イベント判定基準など標準化されているとともに,モニタリング委員会をおき,倫理性を高める努力がされた.癌発生,有害事象の発生など両群にまったく差はみられず,プラバスタチンの安全性も確認された. -
循環器疾患における医師主導型臨床研究を成功させる“コツ”
221巻10号(2007);View Description Hide Description医師主導型臨床研究も日本に定着してきつつあり,各学会でも取り上げられ,また一流のジャーナルにも掲載されるようになった.しかし,従来の欧米における大規模臨床試験にはある程度の限界があり,われわれはこれを考慮して日本人らしいエビデンスの構築を行うべきである.臨床試験をネガティブにとらえる患者が多いと考える向きもあるが,実際に行ってみるとむしろポジティブに考えて協力を惜しまない患者が多いこと,さらに患者・医師のコミュニケーションがかえってよくなることに感銘を受けた.今後のわが国における大規模試験の発展を願ってやまない.
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フォーラム
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第71回日本循環器学会総会・学術集会緊急レポート New Approaches to Heart Failure-from Pharmacogenomics to Drug Development
221巻10号(2007);View Description Hide Description最近十数年の慢性心不全治療薬の進歩は著しく,β遮断薬,ACE阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬,抗アルドステロン薬があらたに抗心不全薬として確立した.しかしながら,依然,「克服の道険し」の感は免れない. ファーマコゲノミクスとは患者のゲノム情報を解析し,特定の疾患群に対して有効かつ安全な医薬品を探索・開発する手法である.すなわち,特定疾患群の患者に共通な遺伝的特徴を把握し,その疾患に最適な薬剤を開発することに加えて,患者個々の遺伝的特徴の差異を把握することにより,その遺伝子の特徴に最適な薬剤の開発および最適な用法用量を確定させるものである.これはEBMが謳っている「個の医療」そのものである. 本シンポジウムではファーマコゲノミクスを活用した抗心不全薬開発の現状と将来展望について,5人のリーダーにご発表いただいた.以下に要旨を記す(発表順). -
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書評『別冊・医学のあゆみ 呼吸器疾患──state of arts Ver.5』(北村 諭・工藤翔二・石井芳樹/編)
221巻10号(2007);View Description Hide Description
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連載
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- 医療情報のIT化と医療情報学──電子カルテとどう付き合うか
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5.診療所の電子カルテ
221巻10号(2007);View Description Hide Description電子カルテ導入のために考慮すべき診療所の特異性がある.使用する医師と購入する医師が同一のためコストに敏感である.既存の診療所では膨大な紙情報を電子化する手間から導入を遅らせる傾向があり,新規開業の際に電子カルテを導入する医療機関が多い.また,SEなどを置く人的余裕がない.無床診療所の場合には,入院用の部分や給食や検査,放射線,理学療法など他職種にわたる入力インターフェイスが不要で,単科開業医のための特化が重要である.設置スペースが狭い.診療所の電子カルテには多数の異なる検査センターのデータを取り込む工夫がいる.レセコンはすでに診療所の大半に導入されており,ID情報・保険情報や過去の病名や薬歴なども保存されているデータベースなので,電子カルテ導入にあたって可能なかぎり利用すべきである.これを実現する参照型電子カルテを提案する.完全なペーパーレスは危機管理も必要で,現実的な解決として紙カルテとの併用を考慮すべきであろう.