医学のあゆみ
Volume 221, Issue 12, 2007
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あゆみ Drug eluting stent──その再評価
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冠動脈インターベンション治療の進歩:DES治療のインパクト──j-CYPHER Registry第5回中間解析結果(2年追跡から)
221巻12号(2007);View Description Hide Descriptionj−CYPHER Registry参加施設のCypherステントの使用頻度は20%以下の施設から80%を超える施設まで広く分布しており,Cypherステントの適応についてコンセンサスが得られていない現状が示されている.一方で,今回のj−CYPHER Registry 2年追跡中間解析結果では,欧米に比べステント血栓症の頻度は著しく低く(ARC definite/probable 1年0.62%),1年以降のステント血栓症の増加傾向も明らかではなかった(ARCdefinite/probable 2年0.73%).一方,複雑病変が対象とされることの多い日本の実地臨床でも再狭窄抑制効果は明らかであった.今後.追跡期間を延長し,追跡率を上げてデータの信頼性を高める必要があるが,現時点の日本の実地臨床ではCypherステントの安全性懸念を示唆するシグナルはなく,有効性は明らかである. -
薬剤溶出性ステントは従来のステントに比べ“死亡・心筋梗塞”を増加させるか──ヨーロッパ心臓病学会の報告を受けて
221巻12号(2007);View Description Hide DescriptionDrug−eluting sten(t DES)はヨーロッパでは2002年,アメリカでは2003年に使用認可を受け,急速に市場を拡大しているが,長期成績の是非について検証を行うべき時期となった.留置後1年以上経過しても内視鏡や外科手術などで抗血小板剤を中止することによって,(very)late stent thrombosis(遅発性ステント血栓症)を発症したとする報告があいついで,危惧されていたDESと長期的な血栓症の問題がクローズアップされるようになった.ステント血栓症とは,ステント留置部が血栓で閉塞してしまう重要な事象で,心筋梗塞や死亡に直結すると考えられる.そんな最中,2006年9月にバルセロナで開催されたヨーロッパ心臓病会議の発表を契機に,DESの長期安全性に関する論争が勃発した.総合医学誌の『N.Engl.J.Med.』で約60頁にわたって特集されたほど(2007年3月8日版),医療界を巻き込んだホットなトピックといえる.本稿では“DES留置後に死亡・心筋梗塞が増えるのか”という論争を紹介し,それぞれのエビデンスや論点について概説する. -
薬剤溶出性ステントは従来のステントに比べ“非心臓死”を増加させるか?─ヨーロッパ心臓病学会の報告を受けて
221巻12号(2007);View Description Hide Description2006年のヨーロッパ心臓病学会の特別セッションのひとつとして企画された最新臨床試験報告セッションのなかで,薬剤溶出性ステントの長期安全性に関する衝撃的なメタアナリシス結果が発表された.第一世代の薬物溶出性ステントであるCypher(sirolimus−eluting stent:SES),Taxus(paclitaxel−eluting stent:PES)と従来のbare−metal sten(t BMS)との長期予後を比較すると,薬物溶出ステント群のほうが死亡や心筋梗塞の頻度が高まるというものである.発症頻度が非常に少ない事象であるためその統計処理には多くのサンプルが必要となるわけであるが,今回の報告はこれまでに報告された無作為割付試験を対象とした十分なサンプルボリウムによるメタアナリシスの結果であったためにその反響が大きかった.本稿では,薬物溶出性ステントがとくに非心臓死(おもに癌死)を増加させるのかどうか,その研究データの妥当性について統計学的な問題点を踏まえて考察する. -
遅発性ステント血栓性閉塞発生率は薬剤溶出ステントの著明な再狭窄抑制効果から受容できる程度か
221巻12号(2007);View Description Hide Description薬剤溶出性ステント(drug−eluting stent:DES)は,虚血性心疾患治療の中心となっている冠動脈ステント植込み術の問題点とされてきた再狭窄の問題を劇的に改善し,2004年より日本でも発売されるやいなや冠動脈インターベンションの中心的デバイスとなった.しかし最近,頻度は高くないものの遅発性ステント血栓症というあらたな問題点が注目されている.DESによってほとんどの病変に対して50%以上の再狭窄率の低減が得られるが,従来から使用されてきたベアメタルステントではまれとされてきた植込み1カ月以降の遅発性ステント血栓症の発症が報告されるようになった.致命的となりうる遅発性ステント血栓症のリスクと再狭窄減少のメリットのバランスが重要と考えられ,ステント血栓症のリスクを抑制する努力と病変や患者ごとに評価してステントを選択していく必要がある. -
遅発性ステント血栓症のメカニズムとステントの新生内膜による被覆化の評価
221巻12号(2007);View Description Hide Description薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)の導入により,経皮的冠動脈形成術における最大の課題であった再狭窄率は劇的に低下した.しかし,留置後30日以降に発症する遅発性ステント血栓症が新たな問題点として懸念されている.遅発性ステント血栓症の発症に関しては,臨床的にはステント留置手技,患者および病変,抗小板療法,ステント・薬剤の種類など複数の要因が関与しているが,病理組織学的には露出したステントの新生内膜・再生内皮による被覆化の遅延・障害であると考えられている.近年,DES留置後のステントの新生内膜による被覆化に関して,血管内視鏡や新しいイメージングモダリティであるoptical coherencetomography(OCT)を用いた評価が行われるようになっている. -
薬剤溶出ステント時代における再狭窄ハイリスク病変──リアルワールドの現状
221巻12号(2007);View Description Hide Description薬剤溶出性ステントは,その圧倒的な新生内膜増殖抑制効果によりステント再狭窄率を劇的に減少させた.しかし,数々の臨床試験やリアルワールドのレジストリーデータなどにより,再狭窄ハイリスク病変ともいうべきいくつかの病変ならびに臨床背景の存在が明らかとなってきた.病変背景としては,小血管,びまん性病変であり,臨床背景としては糖尿病,慢性腎不全があげられる.治療後の所見としてはステント拡張不良が慢性期の再狭窄を予測する重要な要因である.特殊な所見としてはステント留置後にステントストラットが断裂を起こす例が少なからず報告され,一部の病変ではその断裂部分に一致して再狭窄をきたすことが知られている.また,分岐部病変などの複雑病変でも,やはり再狭窄率はいまだ高率である.これらは手技上の工夫により回避可能なものから回避不可能なものまでさまざまであり,今後これらのハイリスク病変をいかに治療するかが残された課題である. -
薬剤溶出性ステント再狭窄に対する治療
221巻12号(2007);View Description Hide Description薬剤溶出性ステント(drug−eluting stent:DES)は冠動脈インターベンション後の再狭窄を大きく抑制するデバイスであるが依然,数パーセントの確率で再狭窄を認める.しかし,これまでのデバイスとは異なり再狭窄してもその再狭窄病変が局所的で病変長が短いため治療は簡便に行える.DES再狭窄病変に対する治療はどのようなストラテジーをとっても再々狭窄率は高くないが,初回DES留置前の病変背景が冠動脈放射線治療後などの複雑なものであれば再々狭窄率は高くなる.今後はDES再狭窄の原因別の治療成績を検討していく必要がある. -
第二世代の薬剤溶出性ステント──今後のDESに期待されるもの
221巻12号(2007);View Description Hide Description本稿のテーマは第二世代の薬剤溶出性ステントであるが,このステントの世代をどのように区別していくのかについてはいくつかの視点がある.たとえば,驚異的な再狭窄抑制効果を示すポリマー被覆形のシロリムス溶出性ステント(いわゆるCypherステント)は,事実上,実臨床で成功を示したが,薬剤,ポリマー,そして,プラットホームとしてのステントによる構成の成功型である1).ところが,このなかでの薬剤のみが変更されていく可能性もあれば,この3要素のすべてをも兼ね備えないタイプの薬剤溶出性ステントが臨床的有用性を示す可能性もあり,実際にそのような試みも進んでいる.すなわち,将来的に,商業的に成功したCypherステントをもって第一世代の薬剤溶出性ステントと定義するのが妥当であるかは不明である.このようなことから,本稿ではCypherステント時代を中心にその以前,以後に分けて,それぞれについて現状の問題点や今後の展望などについて話を進めていくこととする.
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フォーラム
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連載
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- 医療情報のIT化と医療情報学──電子カルテとどう付き合うか
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7.医療情報システムの相互運用性(2)医療情報の電子化と用語・コードの標準化
221巻12号(2007);View Description Hide Description医療情報システムでは病名・症状症候名・手術処置名・医薬品名・検査項目名・看護用語など,さまざまな医学用語と用語に付されたコード情報が入力・保存・通信される.これらの情報が電子化されることによって情報の利用が容易になるメリットがあるが,その反面,用語やコードが異なるシステムでばらばらに入力・保存されてしまうと情報を正しくやり取りすることができなくなる.紙カルテの時代と異なり,電子化された情報システムでは用語やコードの一字一句の違いが,大きな問題を引き起こす可能性がある.そのため,これらの用語・コードを共通化・標準化することは,医療情報の電子化の基盤として大切な課題となっている.医学用語語彙の基本となる医学用語辞書をはじめ,病名など医療各分野の用語とコードの標準化作業が盛んに進められている.
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速報
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