医学のあゆみ
Volume 222, Issue 5, 2007
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8月第1土曜特集【老化と疾患──病態の理解と診断・治療の進歩】
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- ■老化と老化制御の基礎的理解
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老化および寿命関連遺伝子
222巻5号(2007);View Description Hide Description寿命が延長する線虫C.elegansの突然変異体age−1の発見を機に,多くの老化や寿命に関連する遺伝子が同定され,老化の分子レベルの解析が飛躍的に進んできた.そのなかでもインスリン・シグナル伝達経路やカロリー制限が関係する“エネルギー代謝”と,ヘリケースやテロメアが関係し,細胞老化や癌化につながる“細胞分裂”に集約されてきた.エネルギー代謝の副産物としてミトコンドリアから産生される活性酸素がこの両者を結びつける重要な鍵となっていることも明らかになってきた. -
Klotho分子ファミリーが制御する生体の恒常性維持機構
222巻5号(2007);View Description Hide DescriptionKlothoマウス(kl/klマウス)はその発見以来,1つの分子の欠損が引き起こす老化に似た多様な表現系のため,ヒトの老化モデル動物として個体における老化研究の場を提供してきた.また,その発現臓器が限局されているにもかかわらず,kl/klマウスでは多様な表現系が認められることから,kl/klマウスで認められる現象を解釈するためにもKlotho蛋白質が調節する分子メカニズムを明らかにすることは発見以来の重要な課題であった.本稿では,2つのノックアウトマウスの表現系の一致より明らかになったKlotho蛋白質の膜蛋白質としての機能とその意味合い,加えてこの発見がきっかけとなり明らかになりつつあるKlotho分子ファミリーが制御する循環性FGFシグナルとの関連性について簡単に紹介したい. -
老年医学領域における再生医療
222巻5号(2007);View Description Hide Descriptionきたるべき高齢社会においては,薬剤や手術だけでは治療できない疾患が多く出現する.細胞の変性とその機能不全がもたらす老年病は,従来の治療法では治すことができない.再生医療は変性した細胞の代りに活性の高い幹細胞を補充し,その機能を引き出すことで組織・臓器の再生をはかる.まさに老年疾患の根治療法として期待が寄せられている.本稿では再生医学,再生医療の現状を概説し,なかでも老年病として高頻度にみられる運動器,循環器,中枢神経の研究の最新情報を記した.一方,再生医療の臨床研究は歯科と形成外科の領域が突出して進んでおり,これらについては症例を供覧しつつ現状を紹介した.再生医療は研究が本格化してから20年以上たち,その研究進捗程度には大きな開きがある.したがって,再生医療の実施にあたっては進捗の程度に応じた適正な法律の枠組みを整備し,一刻も早く臨床応用の行える体制を構築すべきである. -
ホルモン補充による老化の制御
222巻5号(2007);View Description Hide Description加齢に伴う性ホルモンや成長ホルモンなどの分泌低下は老化を促進する一因と考えられている.これらの低下したホルモンを外から補充すれば,老化のスピードを遅らせることができるのではないかという考えに基づいてアンチエイジングを目的としたホルモン補充療法(HRT)が欧米を中心に盛んに行われている.しかし,無作為比較臨床試験によれば老化制御効果が明確に立証されたHRTは少なく,当初期待されたほどの効果は上がっていない.一部のホルモンはサプリメントとして容易に購入できるため,個人で施行されていることも多いと推測されるが,長期のHRTは悪性腫瘍を含む副作用の出現が危惧されているため,専門医による評価とフォローアップが不可欠である.今後,長期にわたるHRTの臨床データの蓄積と投与法の確立が期待される. -
高齢者の定義を見直そう──高齢者の定義は65歳以上でよいか?
222巻5号(2007);View Description Hide Description現時点では一般に,暦年齢が65歳以上の人を高齢者と定義している.しかしその根拠は不明で,一説によると100年以上も前に,ドイツ帝国の宰相ビスマルクが年金制度をつくった際に設定したといわれている.人生80年代を迎えた現在ではこのような定義は変えるべきであるとの世論の動向を踏まえ,著者は東京都老人医療センターと老人総合研究所において,これまでに蓄積された長期縦断疫学調査,臨床病理のデータを医学的・社会学的・人文学的視点から総合的に解析し,エビデンスに基づいて高齢者の定義についの見直しを試みた.その結果,健康な高齢者の身体機能は最近の10年間で男性では約5歳,女性では約10歳,高齢糖尿病患者の自立機能は最近の8年間に約15歳若返っていること,高齢者の脳動脈は最近の14年間に男性では約20歳,女性では約10歳若返っていることが明らかとなった.以上の成績から65歳以上を高齢者とする現行の高齢者の定義をかえ,75歳以上を高齢者と定義し,高齢社会にふさわしい社会全体の仕組みを構築すべきであると考えている. - ■老年疾患──病態の理解と診断・治療の進歩
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Alzheimer病研究の進歩と治療戦略
222巻5号(2007);View Description Hide DescriptionAlzheimer病は,記銘・記憶,思考,判断力の低下などの認知機能障害を中核病態とする神経変性疾患である.高齢社会に突入したわが国では現在約170万人の認知症患者がいると推定されるが,その約半数はAlzheimer病患者であり,今後もその数は増大すると考えられており,予防・治療法の開発が急がれている.Alzheimer病の病理学的特徴はアミロイドの沈着と神経原線維変化形成であるが,近年,原因遺伝子の同定とその機能解析が進み,加齢や遺伝子変異に伴って,脳内で凝集・沈着するアミロイドβ蛋白が引き金となってシナプス障害,神経原線維変化(タウ病変),神経細胞脱落を引き起こし,やがて認知症を引き起こす(アミロイドカスケード仮説)と考えられている.現在,この仮説に基づいた治療法の開発が複数試みられている. -
Alzheimer病の早期画像診断──発症前診断をめざして
222巻5号(2007);View Description Hide DescriptionAlzheimer病発症機構の分子レベルの解明と治療法の進歩により,早期診断の重要性が強調されている.Alzheimer病のもっとも初期に現れる病理変化は老人斑と考えられ,その主成分であるβ−アミロイド凝集体の画像化は,βシート構造に親和性のあるThioflavin誘導体などの放射性標識化合物により可能となってきている.このアミロイドイメージングは,発症前の変化をもっとも早期にとらえることのできる検査法として注目を集めている.老人斑の蓄積とその後の神経原線維変化の進展に伴い,シナプス活動性の低下,引き続き神経細胞の脱落による脳萎縮が進行すると考えられ,その時点で,糖代謝を測定するFDG−PETや脳血流SPECT,さらにMRIを用いた容積測定法が病態の推移を評価するうえで重要性をもつと考えられる.本稿においてはAlzheimer病の早期診断に重要と考えられる画像診断法を紹介し,その位置づけ,今後の展開について述べる. -
高齢者脳卒中の再発予防とその問題点──増加する心原性脳塞栓に対して
222巻5号(2007);View Description Hide Description高齢者にみられる脳血管障害は,人口の高齢化,生活様式の欧米化に伴って変容し,心房細動からの心原性脳塞栓,アテローム硬化による脳梗塞が増加している.これらの予防として抗血栓療法(抗凝固療法,抗血小板療法)の有用性が確立されているが,その施行にあたっては正確な病態診断が前提となる.また,危険因子の除去も重要で,これらに対する標準化された管理も策定された.しかし,高齢者では特有の病態,たとえば脳卒中が些細な誘引で発症すること,脳血管障害の再発・多発や深部白質病変が認知症,歩行障害,嚥下障害などの老年症候群を招くこと,他の疾患との併発で症状が相互に修飾され,経過も長いこと,軽微な症状は見逃されやすいことなどが存在する.したがって,高齢者の脳血管障害を扱うには,正確な病態診断とともに広い視野に立った老年医学的管理が重要となる. -
誤嚥性肺炎の新しい治療・予防法──温度感受性受容体を介する新戦略
222巻5号(2007);View Description Hide Description誤嚥性肺炎の治療においては肺炎そのものの治療とともに,誤嚥に対する対策をしっかり行うことが肝要である.高齢者の嚥下反射はたとえ障害されていたとしても温度感受性である.体温付近においてもっとも嚥下反射が遅延し,温度がそれから離れれば離れるほど嚥下反射の潜時が短縮する.その温度刺激による嚥下反射改善は温度感受性TRPチャネルを介する.したがって,温かい温度の温度受容体であるTRPV1のアゴニスト刺激であるカプサイシン入りトローチの投与は,遅延した嚥下反射を改善する.また,冷温度受容体であるTRPM1のアゴニストであるメンソールを含んだ食品の投与も嚥下反射を改善する.さらに,非常に意識レベルやADLの低い人や高度な摂食・嚥下障害の人には,ブラックペッパーの匂い刺激が使いやすく嚥下反射を改善する.これらを組み合わせることにより,高齢者の摂食・嚥下障害にかなりの効果が期待できる. -
骨粗鬆症治療薬の動向
222巻5号(2007);View Description Hide Description骨折防止効果の観点から2006年にわが国において骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインが作成され1),骨粗鬆症治療薬の選択に一定の指針が示された.以前はカルシウム製剤や活性型ビタミンD製剤による補充療法が骨粗鬆症治療薬の中心薬剤であったが,最近ではビスホスホネートや,ラロキシフェンによる本格的な薬物治療が主流となってきた.高齢者では大腿頸部骨折防止の意味からビスホスホネートが望ましいが,服用の煩わしさからか,海外に比べてラロキシフェンの処方の増加の程度が大きい. -
血管石灰化の基礎と臨床
222巻5号(2007);View Description Hide Description高齢者の循環器疾患では心血管組織石灰化が大きな問題となる.とくに,血管石灰化は,“Monckeberg型血管中膜石灰化”と“粥状動脈硬化巣内のアテローム硬化性石灰化”の2つに大別される.血管石灰化は従来,動脈硬化の終末像として動脈壁の変性・壊死過程で受動的なミネラル沈着によると考えられていたが,近年,血管壁細胞,とくに血管平滑筋細胞がさまざまな因子によって能動的に石灰化促進方向へと作動することがわかってきた.なかでも腎不全によく認められる高リン血症を主としたカルシウム・リン代謝異常は血管平滑筋細胞に対して石灰化促進に働き,その機序のひとつにリン共輸送担体(NPC)を介した骨芽細胞様形質転換の関与が示唆されている.著者らはそれだけでなく,リン刺激により誘導される細胞死(アポトーシス)が石灰化現象の初期段階に大きく関与していることを解明した.血管石灰化に対して確立された治療法はいまだないが,従来の動脈硬化危険因子の厳格な管理に加え,スタチンは多面的作用(pleiotropic effect)のひとつとして血管石灰化抑制効果をもちあわせ,今後の血管石灰化治療の選択肢のひとつとして期待される. -
高齢者における糖尿病,高脂血症(脂質異常症の治療方針)
222巻5号(2007);View Description Hide Description糖尿病および高脂血症(脂質異常症)は動脈硬化の主要危険因子で,高齢社会を迎えたわが国ではこれらの総合的管理が動脈硬化性疾患予防のためには重要である.高齢者の糖尿病,高脂血症(脂質異常症)では治療の基本は生活習慣の改善であるが,個々の患者の病態に配慮しQOLを損なわない治療を行う必要がある.薬物療法の際はつねに“3S”(Simple,Small dose,Slow dose−up)を心がけて行うことが肝要である.高齢者糖尿病の耐糖能異常は食後高血糖を特徴とし,動脈硬化と糖尿病特有の代謝異常による血管障害の阻止が重要となる.薬物療法では低血糖には注意が必要である.また,“高脂血症”から名称変更された“脂質異常症”では一次予防ではリスク重積に応じた治療が,二次予防では厳格な薬物療法が必要で,高齢者では特にスタチン使用による横紋筋融解症には注意を要する.しかし,後期高齢者に対する脂質異常症治療の意義は明らかではなく,今後の研究の進歩が期待されている. -
高齢者の尿流障害の診断と治療──症状から診断へのアプローチ
222巻5号(2007);View Description Hide Description従来,“排尿障害”という言葉は非常に広い意味で使われてきた.医学の進歩とともに徐々に細分化され,あらたな概念や言葉が加わってきたこともあり,従来の排尿障害という言葉が混乱を招くこともある.現在では排尿機能についてすくなくとも,1尿を溜める機能である蓄尿機能と,2尿を出す排尿機能の2つに分けて考える必要がある.また,排尿障害の原因疾患も全身状態と関連することもあり,非常に多岐にわたる.排尿機能への理解を深めつつ,排尿機能障害をきたす疾患を器質的疾患・機能的疾患に分けるなど病態の把握をしながら,どのように診断し,また,どのような治療があるのか,典型的な疾患である前立腺肥大症などを例にあげながら触れてみたい. -
高齢者の歩行障害と転倒防止
222巻5号(2007);View Description Hide Description高齢者において歩行の意義は大きい.なかでも歩行速度は,将来における生活機能の低下,転倒の発生さらには生死に関する予後などの予知因子となっていることが,内外の高齢者を対象とした縦断研究から明らかとなっている.このような高齢者の歩行能力を障害する原因はさまざまである.中枢神経疾患,末梢神経疾患,感覚器障害など疾病そのものに基づく場合以外に,加齢に伴う筋力・バランス機能の低下などによっても歩行障害は発生し,これらをまとめて運動器不安定症としてくくることが最近提唱されている.高齢期における歩行能力の減衰とともに問題となるのは,転倒・骨折が増加することである.したがって,高齢者では歩行能力を維持することにより転倒・骨折を予防するという基本的戦略が大事となる.そのためにも筋肉量減少(サルコペニア)を防ぎ,身体機能を維持することが重要である. -
歯周病と老年疾患
222巻5号(2007);View Description Hide Description人はたくさん歯のある状態で老年期を迎えるようになった.1989年には80歳の平均残存歯数は4本(8004)であったのが,2005年には8010にまでなり,8020達成者は20%を超えた.しかしこの間,歯周病罹患率は変わらず,現在65歳以上では重度の歯周病罹患者が増加している.歯周病の多くは歯周局所のバイオフィルム(プラーク)に生息する細菌による感染症で,炎症が歯肉に限局する歯肉炎と深部の歯根膜・歯槽骨に拡大した歯周炎に分けられる.老年者の場合は,歯肉に初発した炎症が長期にわたり歯肉炎として存在した後,深部へ拡大した慢性歯周炎であることが多い.老年者では歯周病の病態自体は若年者と変わらないが,口腔内が複雑でバイオフィルムが付着しやすいうえ,上手に清掃できないことも多いので,歯周病に罹患しやすく,治癒しにくい.喫煙や糖尿病は歯周病のリスクファクターとされており,また歯周病と菌血症,心内膜炎,誤嚥性肺炎などとの関連が考えられている. -
高齢者における薬物療法ガイドライン
222巻5号(2007);View Description Hide Description高齢者では薬物の代謝・排泄能低下や多剤併用を背景として薬物有害作用が出現しやすい.また,高齢者を対象とした大規模臨床試験は少なく,薬物の有効性に基づいたガイドラインの整備も遅れていた.しかし,患者層の高齢化に伴い,高齢者を対象とした大規模臨床試験やガイドラインの必要性が叫ばれるようになった.これまで作成された高齢者対象の薬物療法ガイドラインとしては,エビデンスに基づいて何度か改訂されてきた“高齢者高血圧のガイドライン”,やはりエビデンスをもとに作成された“高齢者高コレステロール血症診療ガイドライン”,有害事象予防の観点から高齢者医療の現実的対処法として作成された“高齢者の安全な薬物療法ガイドライン”が挙げられる.今後,他の疾患についても高齢者対象のガイドラインが作成されることを期待する. -
高齢者における漢方薬の使い方
222巻5号(2007);View Description Hide Description高齢者医療では“老年期症候群”という概念の示すとおり,多くの症候,障害を抱えるひとりの人間を全体としてしっかり受け止める診療が求められる.漢方には,認知症や誤嚥性肺炎など深刻な老年期症候群の症候に対するエビデンスが報告されているが,それ以上に“腎虚”という加齢の臨床概念が歴史的に確立していることにも注目したい. - ■老化の制御とアンチエイジング医学
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アンチエイジング医学の現状と展望
222巻5号(2007);View Description Hide Descriptionアンチエイジング医学の目標は健康増進して生活の質を向上し,健康長寿を達成することにある.そのために個々の状態に即したアンチエイジング療法が実践される.老化の仕方は人それぞれに異なり,老化を促進させる危険因子もさまざまである.個々の状態は老化度(筋・血管・神経・ホルモン・骨の機能年齢)と老化危険因子(免疫能・酸化ストレス・心身ストレス・生活習慣・代謝機能)の評価を行うと,老化の弱点が明確になる.弱点の是正を優先させ,全体の調和をはかる.アンチエイジング医療は新しい概念であるが,大学病院・企業検診・地域検診,皮膚科や歯科領域に広がりつつある.酸化や糖化に関する研究成果もアンチエイジング医療にいかされるであろう.このような先駆的医療を実施する際には,医療を行う側も受ける側もデータの蓄積をめざして最大限努力をする必要がある.検査方法・評価方法を標準化し,共通データベースに積み上げていく体制をつくりたい. -
抗加齢ドックの試み──センターオープンから1年を通してみえてきたもの
222巻5号(2007);View Description Hide Description2007年2月14日愛媛大学医学部附属病院に,国立大学としてははじめての抗加齢センターがオープンした.本センターは抗加齢ドック(アンチエイジングドック)を行う施設であり,壮年者・高齢者が健康長寿をすごせるように,動脈硬化度の診断および認知機能検査などを行うことで受診者の血管年齢を評価し,個人のデータに基づいた医療(オーダーメイド医療)を実践することを目的としている.検査項目は,1身体測定,2各種血液検査,尿検査,3頭部MRI・MRA,4頸動脈エコー,5内臓脂肪定量および大腿部筋肉量の測定,6脈波伝播速度検査,7骨密度測定,8重心動揺検査,9認知機能検査,などである.2007年3月31日現在で約400名のドックを施行した.これまでの成果として3テスラ(T)MRI・MRAを用いた脳ドックでは5mmを超える動脈瘤が5名にみつかり,このうち4名は当院脳神経外科で外科的手術(クリッピング)を施行された.また,無症候性ラクナが約8%に認められ,T2スター強調画像では微小脳出血が7%で認められ無症候性ラクナの有無と相関していた.認知症スクリーニングでは約5%でAlzheimer病と診断された.血液検査では約1%では治療の必要な甲状腺機能低下症患者がみつかり専門医に紹介した.また,無症状ながらBNP100 pg/m以上の異常高値も3%にみられた.現在も新規ドック受診者は増加しており,得られたデータをもとに加齢バイオマーカーのスクリーニングをはじめとした研究を行っていく予定である. -
抗加齢外科治療の現況──全身の若返りは可能か?
222巻5号(2007);View Description Hide Description抗加齢外科治療(anti−aging surgery)の対象としては,老人様顔貌,老人性眼瞼下垂,乳房下垂,巨大乳房,しみ治療,腹部脂肪過多症などがある.老人性顔貌に対して現在なされている治療法としてはしわとり(除皺)術,眼瞼皮膚弛緩症に対しては余剰皮膚を切除する上・下眼瞼しわとり(除皺)術がある.今後考えられる方法としては,生きた脂肪による頬部陥凹の修正(血管柄付き脂肪弁移植術)がある.老人性眼瞼下垂に対しては眼瞼挙筋機能障害が軽度であれば眼瞼挙筋前転法,挙筋機能障害が重度であれば上眼瞼吊り上げ術の適応になる.最近なされはじめている異物・神経毒などによる治療法は術後感染,アレルギー,長期の効果が期待できないなどの問題点がある.乳房下垂と巨乳症には乳房吊り上げ術(乳房固定術),乳房縮小術,シリコンバッグ挿入術,血管柄付き脂肪弁移植術などが行われる.腹部脂肪過多症には腹部皮膚脂肪切除術,脂肪吸引法がなされる.
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