Volume 222,
Issue 8,
2007
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あゆみ 機能性ディスペプシアの臨床
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医学のあゆみ 222巻8号, 509-510 (2007);
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医学のあゆみ 222巻8号, 511-514 (2007);
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胃もたれや心窩部痛などの上腹部愁訴をディスペプシア症状とよぶ.ディスペプシアとは本来“胃での消化過程が障害された感じ”を指す.このような症状が慢性的に出没し,その原因となる器質的病変が同定できないものを機能性ディスペプシアとよぶ.日本ではこのような病態に対して慢性胃炎に伴う上腹部愁訴あるいは慢性胃炎に伴う上腹部不定愁訴と呼称してきた.しかし,この病態は“胃炎”の病態とは区別すべき病態である.最新の調査では日本人成人の1/4の人が月に2回以上のディスペプシア症状を自覚しているといわれている.Rome国際委員会は2006年春に,機能性消化管障害の診断基準を一新したRome診断基準を発表した.そこでは機能性ディスペプシアを,食後愁訴症候群(postprandial distress syndrome:PDS)と心窩部痛症候群(epigastric pain syndrome:EPS)に分類した.あらたな基準をもとに,さらに新しい研究成果が発表されることを期待している.
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医学のあゆみ 222巻8号, 515-520 (2007);
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胃が痛い,胃が重いなどの上腹部を中心とする症状を訴える患者は多いが,このような症状を有する約半数の患者にはその原因を説明できる器質的疾患が認められない.このような症状発現の機序のひとつとして内臓知覚過敏の存在が指摘されている.胃の知覚は一般的に脊髄神経系を介する経路と,迷走神経を介する経路とが考えられているが,この2つの異なる経路の働きの違いなど,内臓知覚に対する研究は少なく,いまだ不明な点が多い.一方,MAPKの一員であるERKは細胞内情報伝達に関与し,その活性化が脊髄後根神経節や脊髄などで認められ,痛みの発生やそれに伴う変化に重要であるとされている.最近著者らは,ラットの胃に伸展刺激を加えると脊髄後根神経節および迷走下神経節においてERKの活性化が生じることを見出した.本稿では内臓知覚におけるERKの役割を中心に,脊髄神経系と迷走神経系の役割の相違について概説する.
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医学のあゆみ 222巻8号, 521-526 (2007);
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慢性胃炎はH.pylori感染に伴って胃粘膜に炎症細胞浸潤を伴う変化であり,器質的疾患を認めず上腹部症状を呈するディスペプシアとはまったく別な疾患概念である.慢性胃炎がディスペプシア症状と関連するのかをこれまでの成績をもとに検証する.ディスペプシア患者と対照におけるH.pylori感染率の比較ではRCT,メタ解析いずれにおいても拮抗する成績が示されており,慢性胃炎とディスペプシア症状の関連性は明確にはできなかった.H.pylori除菌による介入試験に伴うディスペプシア症状の推移についても一定の傾向を示さなかったが,メタ解析で約10%くらいの有効性が示された.今後はH.pylori除菌が有効なディスペプシア症例の絞り込み作業が重要となる.
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医学のあゆみ 222巻8号, 527-530 (2007);
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機能性ディスペプシアは,腹痛,腹部膨満感などの上腹部症状を慢性的に呈し,器質的疾患を認めない機能性疾患である.その病態生理には不明な点が多く,さまざまな因子が発症,症状出現に関与する.このうち消化管運動機能異常は古くから発症要因のひとつと考えられてきた.運動機能のなかで胃排出の遅延,前庭部の運動不全は以前より指摘されている.また近年,胃底部の適応性弛緩反応障害もクローズアップされている.一方,ディスペプシアと胃酸との関連も注目されている.最近,胃内あるいは十二指腸への胃酸の注入が胃の知覚過敏を誘発し,症状出現の要因となることがわかってきた.これらの機能異常はディスペプシア症状発現に至るメカニズムを解明するうえできわめて重要と思われる.
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医学のあゆみ 222巻8号, 531-536 (2007);
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Functional dyspepsia(FD)は,上部消化管である胃の粘膜に傷を有する代表的疾患である消化性潰瘍に相対する意味合いをもつなかで,1987年にnon−ulcer dyspepsia(NUD)として紹介された.それ以来,臨床の現場においてその疾患概念が頻繁に登場するようになってきた.その理由として,上腹部を中心としたさまざまな消化器症状を有する患者が相当数存在し,入り組んだストレス社会といわれる現代においてその数が増加傾向にあることが第1にあげられる.1999年にRome診断基準があらたに提唱され,わが国においても“NUD”や“機能性ディスペプシア”“機能性胃症”などがFDとほぼ同義語として使われている.さらに,2006年にはRome診断基準1)があらたに提唱され,従来複雑であったその診断や分類においてはいくぶんか明確になったような印象も見受けられる.一方,FDの病態生理については多施設からの数々の知見の積み重ねからいくぶん解明されつつあるが,単独ではなく複数の因子が複雑に関与していることも浮き彫りにされてきた.本特集では現時点でのFDの病態生理を中心に,FD治療に至るまで概説されるが,本稿では内臓知覚過敏について病態生理の観点からまとめてみたい.
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医学のあゆみ 222巻8号, 537-542 (2007);
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神経質な人がストレスにさらされると“胃が痛く”なるほど悩むことは理解できよう.性格や環境などの要因が胃のあたりの症状,すなわちディスペプシアを引き起こす原因のひとつであることは明らかである.ディスペプシア症状は食事に関係するもたれ感と胃のあたりの痛みに分かれるが,痛みには心理社会的な要因が関係し,胃の知覚が過敏になっているという興味ある報告がみられる.しかし,心理社会的要因,胃・十二指腸の働きの異常,ディスペプシア症状との関係は実に複雑である.慢性的なディスペプシア症状のために医療機関を受診し,検査で異常がみられない場合に機能性ディスペプシア患者と診断される.受診しなくても症状をもっている人は多い.症状に対する強い不安が受診動機になるという報告もみられる.心理社会的因子が関係している場合は症状が長期化し,生活の質の低下,過剰な医療費,欠勤による経済への影響など,個人から社会への影響が見逃せない.この視点からの対応を考える必要があるテーマといえる.
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医学のあゆみ 222巻8号, 544-547 (2007);
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機能性ディスペプシア(FD)の治療に関して,H2受容体拮抗薬やプロトンポンプインヒビターといった酸分泌抑制薬は偽薬と比較して有意に症状を改善する.消化管運動改善薬も同様に有効であるが,個々の薬剤に関しての有効性のエビデンスは少ない.H.pylori感染症に対する除菌療法,抗うつ薬,抗不安薬,胃粘膜防御製剤の有用性に関しては統一した見解が得られていない.FDの治療戦略として器質的疾患の除外,患者との良好なコミュニケーションのうえに成り立った十分な説明,そして第一段階の治療として酸分泌抑制薬の使用を推奨する.
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医学のあゆみ 222巻8号, 549-552 (2007);
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上腹部を中心に胃もたれなどの不快な症状を訴える機能性ディスペプシア患者は,ストレスの増加や食生活の変化とともに増加する傾向にあり,これに伴う生活の質の低下が問題となってきている.しかし,機能性ディスペプシアは病因・病態が十分に明らかとなっていない疾患であり,治療方法も確立されたものはないため,診療の場において困惑することが多い.上腹部症状を有する患者において,器質的疾患を否定するためには内視鏡検査などの精査は必要であるが,現実には患者の多さから考えても器質的疾患を有するリスクが低いと判断されれば,短期間の診断的治療が必要となってくる.実際には胃酸分泌抑制薬や消化管運動抑制薬などの薬物療法が治療の中心となるが,いずれもかならずしも満足のいく治療効果を有しておらず,臨床的エビデンスも十分ではない.今後,日本におけるエビデンスの蓄積と治療方針の確立が望まれる.
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フォーラム
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医学のあゆみ 222巻8号, 553-553 (2007);
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医学のあゆみ 222巻8号, 554-555 (2007);
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医学のあゆみ 222巻8号, 556-557 (2007);
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医学部卒業後,母校の衛生学教室に入室し14年目.2006年8月からWomen’s Healthと英語を学習するため家族4人でメルボルンへ.1年5カ月間の留学予定である.出会ったエピソードをもとにエッセイと,ちょっと役立つ(?)情報編に分けてご紹介.今回はメルボルンでの物件探しについての情報編.
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医学のあゆみ 222巻8号, 558-559 (2007);
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医学のあゆみ 222巻8号, 560-564 (2007);
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連載
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医療情報のIT化と医療情報学──電子カルテとどう付き合うか
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医学のあゆみ 222巻8号, 571-575 (2007);
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医療情報の安全管理は可用性,機密性,真正性を確保することによって達成されるとされているが,いずれを達成するためにも技術的対策では不十分で,利用者の運用に程度の差はあっても依存する.技術的対策を厳重に行えば運用は楽になるが,費用が嵩む.逆に運用を厳格に行えば技術的対策は軽く,システムも安価になるが,利用者への負担が大きい.バランスが重要である.また,安全対策に100%は通常はありえないが,評価が可能で,説明できなくてはいけない.技術的運用的安全対策を行ったらかならず定期的に評価・監査し,問題を発見すれば改善を試み,さらに評価・監査を行うという継続的改善がきわめて重要である.とはいっても,情報処理の専門知識をもたない医療機関にとって適切なバランスの安全対策や監査は容易ではないために,厚生労働省は“医療情報システムの安全管理に関するガイドライン”を用意しており,医療情報システムを管理する場合の参考になる.