Volume 223,
Issue 3,
2007
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あゆみ microRNAと癌
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医学のあゆみ 223巻3号, 201-201 (2007);
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医学のあゆみ 223巻3号, 203-207 (2007);
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小分子RNAによって引き起こされる遺伝子発現抑制機構をRNAサイレンシングという.近年,RNAサイレンシングに関与する小分子RNAの研究がめざましい勢いで行われている.その結果,たとえばRNAサイレンシングのトリガーの代表例であるmicroRNA(miRNA)が,どのように生体内でつくられるか,どのように標的遺伝子発現を抑制することによってアポトーシスや細胞分化,発生,癌など多様な生命現象,ひいては生命そのものが巧みに操作されているか,が明らかとなってきた.miRNAの作用機構の全貌が解明されれば,生命現象の分子レベルにおける理解につながるだけでなく,効果的な疾患治療への応用も期待される.
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医学のあゆみ 223巻3号, 208-212 (2007);
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マイクロRNA(microRNA:miRNA)は20〜24塩基からなる低分子量RNAであり,蛋白をコードしない,いわゆるnon−coding RNAの一種である.近年,miRNAが標的メッセンジャーRNAの3′非翻訳領域に結合し,その翻訳を抑制することが明らかになった.ヒトにおいて,すでに400種類以上のmiRNAが同定され,個体の発生,分化,増殖に深くかかわる“低分子機能性RNA”であることが示された.miRNAの発現異常が癌の発生・進展に寄与する場合も示されるようになり,どのような癌細胞でどのようなmiRNAが産生されているのかを,網羅的に解析する手法が求められている.一方,miRNAは1〜2塩基の違いでも異なった遺伝子になってしまうため,きわめて特異性の高いmiRNA配列の検出法が必要になる.本稿では,現在可能なmiRNAプロファイル決定法の特徴を概説した.
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医学のあゆみ 223巻3号, 213-218 (2007);
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造血細胞は多能性幹細胞から多種多様な血球細胞へと分化していく.血球分化システムは,1 in vitroでの分化誘導が容易,2表面抗原によって各分化段階の追跡が可能といった特徴があり,細胞分化の研究に格好の材料である.血球分化を調節するmicroRNA(miR)の研究は造血組織に特異的発現を示すmiRの単離にはじまり,分化前後で発現程度に差があるmiRの網羅的解析を経て,遺伝子改変マウスでの解析へと進んでいる.一方,造血器腫瘍にみられる染色体の欠失・増幅・転座にはmiRもかかわっている.慢性B細胞性白血病にみられる13q14欠失や悪性リンパ腫にみられる13q31−q32増幅の責任領域は長く同定されなかったが,いずれもmiRをコードするゲノム領域の異常であった.今後,miRを含めた細胞内ネットワークの解明が造血器腫瘍のみならず,原因不明の血液疾患に対するあらたな診断・治療に寄与するであろう.
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医学のあゆみ 223巻3号, 219-222 (2007);
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DNAメチル化は遺伝子サイレンシングに重要な役割を果たす.これまで,癌において細胞周期チェックポイント遺伝子やアポトーシス関連遺伝子が,異常メチル化により不活化されることが明らかとなっている.最近,癌において発現が低下し,癌抑制的に働くmicroRNAのなかに,DNAメチル化によりサイレンシングされるものがあることが明らかとなりつつある.癌において発現が上昇している細胞周期や細胞増殖に関連する遺伝子のなかには,その遺伝子を制御しているmicroRNAのエピジェネティックな異常が関与するものがあることが示唆され,興味深い.microRNAのメチル化は癌の診断や治療の標的として重要であると考えられ,今後さらに詳細な研究が必要である.
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医学のあゆみ 223巻3号, 223-226 (2007);
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1〜2塩基の違いを正しく認識する必要があるmicroRNA解析用マイクロアレイは,hybridizationを基本原理としながらも,わずかな状態差を正確に識別する必要がある.固体基盤上にキャプチャープローブを配したような従来型の二次元平板アレイでは限界があるものの,RNA/DNAハイブリッドにおけるわずかな状態差を鋭敏に感知できるように設計製造されたフォーカストアレイを用いれば,異なる臓器間のmicroRNA発現プロファイルを解析して,ある組織や細胞にとくに強く発現して特徴づけるようなmicroRNAの存在を観察することが可能である.とくに三次元ゲル型マイクロアレイでは,1枚のマイクロアレイと1つのサンプルによりhybridization後の洗浄条件をいくつかのステップに分けて連続的に洗浄し,それぞれのステップごとに検出したデータを比較することによって正確なデータを取得することができる.
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医学のあゆみ 223巻3号, 227-230 (2007);
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Small RNAは,転写抑制,RNAの分解,翻訳抑制を通した配列依存的な遺伝子発現制御に働いている.哺乳類のsmall RNAといえばmicroRNA(miRNA)がよく知られているが,最近,small interfering RNA(siRNA)とpiwi−interacting RNA(piRNA)とよばれるsmall RNAも存在していることがわかってきた.siRNAは21 nt程度のsmall RNAで,細胞内で生じたdsRNAから,miRNAと同様にDicerの切断により生じ,Argonaute蛋白質に取り込まれる.マウスではおもに卵で発現しており,レトロトランスポゾンの抑制,およびmRNAの発現量の調節に働いている.ヒトの培養細胞でもレトロトランスポゾンの配列をもったsiRNAが発現しているという報告があり,多くの組織で遺伝子発現調節に働いている可能性がある.piRNAは,Piwi蛋白質に取り込まれる24〜32 ntのsmall RNAである.発見されて間もなく不明な点も多いが,生合成経路がmiRNAやsiRNAとはまったく異なること,精巣の生殖細胞で発現し,レトロトランスポゾンの抑制に働いていることがわかってきた.本稿ではsiRNAとpiRNAの機能と生合成経路について概説する.
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医学のあゆみ 223巻3号, 231-235 (2007);
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microRNA(miRNA)は約22ヌクレオチドのRNAで,標的遺伝子のmRNAの翻訳を抑えることで,発生や分化の調節にかかわると考えられている.miRNAの機能の異常がヒトの疾患,とくにがんの発生にかかわることが最近明らかになってきた.がん化にかかわるmiRNAは過剰発現してがん遺伝子として働くmiRNAと,欠失することががん化の要因となるがん抑制遺伝子として働くmiRNAに分類できる.これらのmiRNAの機能を標的とした治療法が現在模索されている.過剰発現したmiRNAではその発現を抑え,不足しているmiRNAは補うことで治療が可能となることが予想される.miRNA阻害剤としてアンチセンスオリゴヌクレオチドが,あるいはmiRNAアゴニストとしてはmiRNA dsRNAが有望である.これらの低分子RNAは将来,がんをはじめとする疾患の治療薬となることが期待される.
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フォーラム
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医学のあゆみ 223巻3号, 237-240 (2007);
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医学のあゆみ 223巻3号, 242-243 (2007);
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医学のあゆみ 223巻3号, 244-245 (2007);
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医学部卒業後,母校の衛生学教室に入室し14年目.2006年8月からWomen’s Healthと英語を学習するため家族4人でメルボルンへ.1年5カ月間の留学予定である.出会ったエピソードをもとにエッセイと,ちょっと役立つ(?)情報編に分けてご紹介.今回はオーストラリアの小学校と保育園に関する情報編.
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連載
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ファーマコビジランスをもっと身近に
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医学のあゆみ 223巻3号, 253-258 (2007);
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ゲフィチニブによる間質性肺炎は,数年前大きな社会問題となった.この問題を通して,医薬品の副作用が承認時にどのように審議されるか明らかにする.抗癌剤の承認では国内相試験で承認されるため,日本人の安全性データは十分ではない.抗癌剤以外の薬剤に関しても海外臨床試験成績を用いた申請により,日本人の安全性データが極端に不足する場合がある.これを補うための市販後の安全性データの集積は重要な意味をもつ.市販直後に安全性データの集積のないまま発売数が極端に増加する状況は,ときとしてここに示すような問題を引き起こす可能性がある.医師,医療関係者はこの事例を教訓として,承認時の問題や安全性データを知る必要がある.
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注目の領域
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医学のあゆみ 223巻3号, 259-262 (2007);
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“文化的対応能力(cultural competence)”の提唱者は,民族・人種集団によって医療に対する考え方が異なるということについて,医師が十分な知識をもつよう求めている.しかし,この知識が患者に対する医師の偏見のもとになったり,患者の行動を度の過ぎた一般化によって説明づけたりする格好の手段となる場合が多い.“文化的対応能力”をめぐるこうした問題点があるにもかかわらず,これまでこの問題点について議論した文献は少ない.そこで,本稿ではこの問題点を克服するために“関係的主観性”という概念を提示したい.“関係的主観性”とは,他者との相互作用の過程に注意を払うことによって他者の意図を理解しようとすることである.たとえば,“関係的主観性”を備えた医師は,患者との相互作用の3つの基本的要因である,1コミュニケーションの言語的・非言語的なスタイル,2個人の先入観,3周囲の状況(患者の情動的状態,患者との関係の近さ,患者の家族の有無など)に注意を払う.このような医師は文化的相違についての知識を適切に用いて,異なった文化的背景をもつ患者を理解することができるであろう.