Volume 223,
Issue 4,
2007
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あゆみ 自己抗体が関与する急性脳炎・脳症
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医学のあゆみ 223巻4号, 263-264 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 265-269 (2007);
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中枢神経系において興奮性の速い神経伝達を担うグルタミン酸受容体(GluR)チャネルは,グルタミン酸の結合により陽イオンを透過するとともに,神経細胞内にシグナル伝達を行う分子である.GluRチャネルは神経回路発達,記憶・学習などの生理機能にかかわるのみならず,その異常な活性化は,急性・慢性の脳疾患で観察される神経細胞死に関与する.遺伝子クローニングによりGluRチャネルの分子実体が解明され,GluRチャネルサブユニットの分子的多様性,構造,機能が明らかにされた.一方,急性脳炎や難治性のてんかんの病態にGluR自己抗体が関与していることが示唆され,その発症における役割が検討されている.抗GluR抗体の存在を検討し,その抗体認識部位の構造や抗体の機能,ならびに抗体産生機構を明らかにすることが,これらの病態の解明と治療につながると考えられる.
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医学のあゆみ 223巻4号, 271-275 (2007);
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ウイルス直接侵襲によらない急性脳炎の病態メカニズムには不明な点が多い.神経症状出現時に意識障害が軽度で辺縁系症状で発症する限局性脳炎型症例と,初発直後より重度の意識障害がみられる広汎性脳炎型症例に分類し,グルタミン酸受容体(GluR)に対する自己抗体を検討した.限局性脳炎型の髄液中の抗GluRε2抗体は発病初期に陽性となり,N末端エピトープを含むのに対し,広汎性脳炎型では回復期・慢性期に陽性化する症例が多い.以上より,限局性脳炎型では感染により産生された抗体がGluRε2分子とも反応する特性を有し,血管の透過性亢進などにより中枢神経系に至り脳炎病態の一部に関与している可能性がある.
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医学のあゆみ 223巻4号, 277-280 (2007);
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甲状腺疾患に伴う脳症の原因としては,甲状腺機能低下症に伴う粘液水腫脳症以外に“自己免疫性橋本脳症”の可能性を念頭におく必要がある.橋本脳症は早期の診断と適切な治療により軽快する“treatable encephalopathy”であり,抗甲状腺抗体の測定のみならず,抗NAE抗体(α−エノラーゼのN末端領域に対する自己抗体)の解析が特異的な血清診断として有用である.橋本脳症の臨床徴候は多彩であるが,急性脳症型が大部分を占める.しかし,うつや統合失調症,辺縁系脳炎,Creutzfeldt−Jakob病(CJD),脊髄小脳変性症と類似した病態を呈することもあり,鑑別として重要である.
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医学のあゆみ 223巻4号, 281-285 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 286-290 (2007);
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傍腫瘍性辺縁系脳炎(paraneoplastic limbic encephalitis:PLE)は,担癌者に生じる亜急性経過の精神症状,痙攣,意識障害を呈する一群である.神経症状は腫瘍発見に先行することが多く,肺癌,睾丸癌,乳癌,Hodgkin病,未分化奇形腫,胸腺腫などを背景とする.PLEと背景腫瘍の診断に威力を発揮する血清・髄液中の自己抗体が知られており,抗Hu・Ma/Ta・CV2/CRMP5・amphiphysin・voltage−gated potassium channe(l VGKC)抗体の頻度が高い.最近,卵巣奇形種や胸腺細胞腫に合併したPLEで,novel cell membrane antigens:EFA6A,NMDA受容体に対する抗体を有する例が報告された.一部の例では腫瘍の治療により神経症状が改善する.
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医学のあゆみ 223巻4号, 291-294 (2007);
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急性辺縁系脳炎・脳症の剖検報告は少なく,まだ十分に解明されていない.非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(NHALE)の原因は不明であるが,病理学的にはMRIでの急性期の異常所見はおもに浮腫を反映している可能性が高く,慢性期にはいわゆる海馬硬化に類似した病理を示すものと思われる.海馬硬化自体は種々の病因で生じるので,この病変からは病因は推定できない.若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎(AJFNHE)の病理所見では辺縁系に限局した病変はみられず,小血管周囲のリンパ球浸潤は軽度であり,むしろミクログリア/マクロファージの大脳での広範な活性化がおもな所見であり,ウイルス自体の感染による脳炎よりも何らかの原因に反応した病変(脳症)が示唆される.解明のためには今後の剖検例の集積が必要である.
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TOPICS
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医学のあゆみ 223巻4号, 295-296 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 297-298 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 299-299 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 300-301 (2007);
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フォーラム
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医学のあゆみ 223巻4号, 303-303 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 304-305 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 307-308 (2007);
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医学のあゆみ 223巻4号, 309-312 (2007);
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連載
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ファーマコビジランスをもっと身近に
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医学のあゆみ 223巻4号, 323-329 (2007);
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レフルノミドの副作用のなかで,“間質性肺炎”はわが国特有の有害事象であった.調査の結果,ニューモシスティス肺炎などの日和見肺感染症が1/3混入していた.さらに,日和見肺感染症を厳密に鑑別するための検査が実施できなかった症例が多数あったため,全容の解明と危険因子の解析は困難である.世界に類をみない事態に至った理由として,特殊な薬物動態,体重差が20 kgもある欧米人と同じ用量が投与されたこと,MTX肺炎の既往歴や既存の肺病変をもつ患者に多用されたことがあげられる.肺病変のある症例には禁忌と改訂以後,発症率は減少し,抗TNF製剤と同頻度となった.他の新規抗リウマチ薬の市販後全例調査の結果,欧米に比べてわが国にはニューモシスティス肺炎がきわめて高頻度にみられることが明らかとなり,この点も特殊性を反映したと考えられる.レフルノミド肺障害の教訓は,新規抗リウマチ薬導入の際に生かされねばならない.