Volume 223,
Issue 7,
2007
-
あゆみ 脳腸ペプチド
-
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 519-519 (2007);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 521-524 (2007);
View Description
Hide Description
肥満遺伝子産物(レプチン)は脂肪細胞より分泌される代表的なアディポサイトカインであり,視床下部を介して強力な摂食抑制とエネルギー消費亢進をもたらし,肥満の制御や体重増加を抑制する.先天的にレプチンを欠損する場合には満腹感を自覚することなく食べ続けるため,著しい肥満となる.現在までにレプチンの遺伝子変異を有する肥満家系が数家系知られているが,生理的血中濃度に相当する低用量のレプチンを皮下注射することにより,摂食量と体重が減少することが報告されている.一方,大部分の肥満者では体脂肪量に比例してレプチンの血中濃度が上昇しているにもかかわらず肥満の改善は認められないため,レプチンの作用障害(レプチン抵抗性)とされており,通常量のレプチンを投与しても十分な抗肥満効果は得られない.また,最近では視床下部のみならず,レプチンは末梢組織に直接作用することにより多彩な生物作用をもたらすことが明らかにされ,肥満や肥満合併症における病態生理学的意義が注目されている.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 525-528 (2007);
View Description
Hide Description
Neuropeptide Y(NPY)は中枢神経系に広く分布し,神経伝達物質として種々の脳機能の重要な調節因子である.とくに,視床下部のNPYは摂食増加作用およびエネルギー消費抑制作用を引き起こす.また,アルコール摂取抑制作用や痙攣抑制作用も有し,広範な中枢神経系機能を調節する神経ペプチドである.さらに近年,6種類の受容体サブタイプの存在が明らかとなり,それぞれの受容体サブタイプの分布や機能に関する研究が遺伝子改変動物を用いて精力的に行われている.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 529-532 (2007);
View Description
Hide Description
Peptide YY(PYY)およびpancreatic polypeptide(PP)は,neuropeptide Y(NPY)とともにPP familyを形成し,受容体にはY1,Y2,Y4,Y5,y6の5つのサブタイプが存在している.末梢のPYYおよびPPは迷走神経を介して視床下部にシグナル伝達し,摂食調節ペプチドを駆動させ,摂食を抑制する.肥満においては血中PYYおよびPPは低値,やせにおいては高値を示し,運動は血中のPYY,PPを上昇させる.これらは,PYY,PPが肥満ややせの予防や治療のターゲッ
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 533-538 (2007);
View Description
Hide Description
ソマトスタチン(SST)は30年以上前に成長ホルモンの分泌を抑制する視床下部ホルモンとして発見された.アミノ酸14個あるいは28個からなる2種類の活性ペプチドが知られている.数ある脳腸ペプチドのなかで,内・外分泌,腸管運動・吸収機能,内臓血流などの生体機能のほとんどに抑制的に働くユニークな性質をもつ.その受容体は5種類が知られており,サブタイプ2と5に親和性の高いSST誘導体であるオクトレオチドが,消化管ホルモン産生腫瘍,あるいは先端巨大症・下垂体性巨人症の治療薬として使用され,臨床応用が早くから進んでいる.SSTと構成アミノ酸の類似性,作用の共通性を有するコルチスタチンは,SST受容体のみならず,成長ホルモン分泌促進因子として1999年に発見されたグレリンの受容体にも結合する.消化性潰瘍,胃癌と関係するピロリ菌とSSTの関係も明らかにされた.すなわち,SSTは古くて新しい脳腸ペプチドのひとつといえよう.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 539-543 (2007);
View Description
Hide Description
Proopiomelanocortin(POMC)から生成されるメラノコルチンは,種々の生理作用をもつペプチド群である.そのなかでもα−MSHはメラノコルチン3型または4型受容体を介して摂食抑制作用を示す.メラノコルチン系はレプチン,ネスファチン,グレリンといった他の摂食調節因子とも機能連関しながら摂食やエネルギー代謝調節作用を示すことが明らかになっている.メラノコルチン系は肥満症,神経性食思不振症,悪液質などに対する新規治療薬のターゲットとしても研究が進められている.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 545-548 (2007);
View Description
Hide Description
モチリンは22個のアミノ酸よりなり,十二指腸から上部空腸に存在するクロム親和基底顆粒細胞より分泌される.空腹期にその血中濃度は90〜100分間隔で変動し,空腹期伝播性強収縮(IMC)に一致してピークを迎える.モチリンはIMCを発生させる消化管ホルモンと認識されている.モチリンによる強収縮は胃から生じ小腸へと伝播し,食物残渣や脱落細胞を肛門側に排出させ,つぎの摂食のための準備をする収縮と考えられている.このモチリンによる収縮は筋上の受容体に直接に作用する以外に,コリン作動性神経を介した作用が重要である.抗生物質であるエリスロマイシンがモチリンアゴニストであることが発見されて以来,モチリンアゴニストを臨床に応用する研究がなされ,多くのアゴニストが開発されたが,その作用機序の複雑さから,まだ臨床に用いられていない.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 549-553 (2007);
View Description
Hide Description
肥満症,糖尿病,消化管機能異常症(FGIDs)は,先進国で人口の1〜2割に達する重要な疾患である.過食を防ぐことは肥満症や糖尿病の予防につながるため,これまで摂食に関連する脳腸ペプチドの研究が活発に行われてきた.摂食と消化管運動は密接に関連しており,視床下部の神経ペプチドによって制御されている.グレリンは末梢から出て視床下部に作用し,摂食行動と消化管運動を変化させる代表的なペプチドであり,グレリンを中心にした腸−脳相関を知ることは,上記疾患の治療に直結すると考えられる.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 555-558 (2007);
View Description
Hide Description
アドレノメジュリン(AM)は副腎髄質由来の褐色細胞腫から発見された強力な動脈弛緩・血圧降下ペプチドであるが,中枢神経系や消化器系にも存在することが明らかとなってきている.AMおよびカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP),最近見出されたAM2/インターメジンは,構造上の類似性を示し,ファミリーを形成している.これらの生理活性ペプチドに対する受容体は,7回膜貫通型G蛋白質共役型受容体のcalcitoninlikerecepto(r CLR)と1回膜貫通型蛋白質のreceptor−activated modifying protein(RAMP)が複合体を形成することにより機能し,その結合特異性は3種類のRAMPアイソフォームにより規定される.AM関連ペプチドは中枢および末梢投与により,これらの受容体を介して摂食抑制作用や消化管運動抑制作用,胃粘膜保護作用など多彩な生理作用を示す.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 559-561 (2007);
View Description
Hide Description
ガストリンは胃幽門前庭部のG細胞で合成分泌される消化管ホルモンである.迷走神経刺激あるいは蛋白質分解産物などの化学的刺激によりガストリンは分泌され,血行性に胃壁細胞のCCK−B/ガストリン受容体に結合して胃酸分泌を促進する.近年,ガストリンには胃酸分泌促進作用のほかに,消化管粘膜に対する細胞増殖作用があることが報告されている.ガストリンは胃のECL細胞やprogenitor細胞の増殖に関与していると考えられる.ガストリン刺激は,ガストリン受容体を介してMAPKのリン酸化を促進することで直接的に細胞増殖に関与するほか,TGF−α,HB−EGF,Regなどの増殖因子を誘導することで,間接的に胃や大腸癌など消化管腫瘍の発育・進展に関与する可能性がある.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 563-567 (2007);
View Description
Hide Description
神経ペプチドのひとつであるコルチコトロピン放出ホルモン(Corticotropin−releasing hormone:CRH)はさまざまな生体反応に関連し,とくにストレス反応に重要な役割を果たすと考えられている.CRHは下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン分泌を調節し,副腎からの糖質コルチコイド分泌を中枢性に制御している.さらに,CRHは交感神経系にも直接作用し,末梢においても消化管運動・知覚・炎症などにも影響を及ぼす.過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)をはじめとする機能性消化管障害における中枢機能ならびに消化管機能の変化,症状発現にCRHが関連している可能性がある.2種類のCRH受容体機能はそれぞれ役割が異なっていると推測されており,今後CRH受容体に関する詳細な研究がIBSをはじめとしたストレス関連疾患の病態解明とあらたな治療法の開発につながるものと考えられる.
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 569-572 (2007);
View Description
Hide Description
PACAPはセクレチン・グルカゴンファミリーのVIPと高い相同性を示し,PACAP特異的受容体およびVIPとの共通受容体を介して,神経系,内分泌系,循環系,消化器系,免疫系など生体内のさまざまな器官において多様な機能を示す.とりわけ脳において脳腸ペプチドとして,PACAPはニューロトランスミッターあるいは神経栄養因子として機能するだけでなく,胃や小腸など消化管にも広く分布し,胃酸分泌の制御など消化管機能に関与することが知られている.
-
フォーラム
-
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 575-576 (2007);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 577-579 (2007);
View Description
Hide Description
医学部卒業後,母校の衛生学教室に入室し14年目.2006年8月からWomen’s Healthと英語を学習するため家族4人でメルボルンへ.1年5カ月間の留学予定である.出会ったエピソードをもとにエッセイと,ちょっと役立つ(?)情報編に分けてご紹介.今回は病院受診についてのエピソードの二つ目で,救急受診について紹介する.
-
連載
-
-
ファーマコビジランスをもっと身近に
-
Source:
医学のあゆみ 223巻7号, 587-592 (2007);
View Description
Hide Description
選択的セロトニン再取込み阻害薬は,抗うつ薬あるいは抗不安薬として広く世界中で用いられている.うつ病の症状には自殺企図や自殺念慮が含まれ,うつ病を抗うつ薬などで治療することにより,これら自殺に向かう症状は消失することが期待される.30歳以上の成人ではこのことが当てはまり,多くの自殺企図や自殺念慮をもつ患者を救ってきた.ところが最近,20歳以下の小児〜成年期のうつ病ではSSRIが逆に自殺関連行動を引き起こすことが明らかになり,パロキセチンについては一時期,小児に禁忌とされたこともあった.その後,さまざまな検討がイギリス,アメリカの規制当局で行われた結果,SSRIだけでなく,すべての抗うつ薬には共通して,小児期〜24歳以下の若年成人に自殺関連行動を増加させる,ただし自殺そのものは増加させないことが明らかにされた.したがって,小児〜若年成人に抗うつ薬を用いる場合にはリスク・ベネフィットを考慮し,慎重な観察のもと用いるべきである.