Volume 223,
Issue 8,
2007
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あゆみ 変貌する細菌感染症
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医学のあゆみ 223巻8号, 593-593 (2007);
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医学のあゆみ 223巻8号, 595-599 (2007);
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黄色ブドウ球菌は,ヒトに種々の化膿性疾患,腸炎,肺炎など非常に多様な疾患を引き起こす病原菌である.この多様性は本菌がさまざまな病原性因子を有することにあり,これまでに多くの因子が同定されている.また近年では,宿主の免疫力に対する抵抗性因子についても明らかになってきている.本感染症の治療の際には化学療法剤が頻用されるが,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の治療に有効とされるバンコマイシンに対しても,低感受性あるいは耐性を示す菌の出現が報告されている.また,これまでMRSA感染症の多くは院内感染型であったが,入院などの医療行為の既往のないヒトに感染症を起こす市中型MRSAの出現も問題視されている.現在,黄色ブドウ球菌の全ゲノム解読が数株についてなされ,未知の病原性因子の解明や網羅的な遺伝子解析がなされており,今後黄色ブドウ球菌感染症の研究にあらたな展開がもたらされることが期待される.
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医学のあゆみ 223巻8号, 601-605 (2007);
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A群レンサ球菌(GAS)は咽頭炎や皮膚の膿痂疹,猩紅熱などの化膿性疾患の原因菌であり,続発症としてリウマチ熱や急性糸球体腎炎を誘引することがある.特殊な例として高度な組織侵襲性を示す,きわめて致死性の高い劇症例が日本を含む世界各国で報告されている.このようにGAS感染症は多様な病変を示すが,ゲノムデータベースに基づく研究の進捗を受けて,病態発症の機構が徐々に明らかとなってきた.たとえば,GASは巧みにヒトの分子を利用し,上皮細胞にシグナルを伝達させることによって細胞内に自身を取り込ませる.さらに,体内においてもヒトの免疫機構を複数の分子によって無力化し,タンパク分解酵素やスーパー抗原などの病原因子により組織破壊を惹き起こす.本稿では近年明らかになってきたGASの病原因子および発症機構を中心に解説する.
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医学のあゆみ 223巻8号, 606-610 (2007);
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バンコマイシンはMRSA感染症に対する特効薬として使用されてきた薬剤で,これに耐性となった腸球菌をバンコマイシン耐性腸球菌とよぶ.腸球菌は元来病原性が弱く,強い病原体とは考えられていないが,臨床で分離されるバンコマイシン耐性腸球菌は多剤耐性化しており,有効な抗生物質が存在しないことがある.そのため抵抗力の低下した患者に対して日和見感染を起こし大きな問題となっている.欧米ではすでに臨床で大きな広がりを見せているが,わが国では限定的にしか報告されていない.しかし,この菌による感染の報告件数はすこしずつではあるが年々増加しており,感染対策上最大限の注意を払わなくてはいけない耐性菌である.腸球菌がバンコマイシン耐性を含め,多くの抗生物質に対して耐性となりうるのは,この細菌が外部から耐性遺伝子を効率よく取り込むことができる接合伝達性プラスミドをもっているからである.
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医学のあゆみ 223巻8号, 611-614 (2007);
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結核は年間約200万人が死亡する最大級の細菌感染症である.結核菌は脂質に富む細胞壁を基本バリアとして病原因子を分泌し,宿主の殺菌機構に抵抗する.通常,結核菌と宿主の戦いは宿主優勢で発病しないが“よい勝負”で,宿主が感染菌を駆逐することもない.その結果,無症候の感染者が現人類の1/3に達している.宿主の抵抗力の低下とともに菌が再増殖し発症するが,これを二次結核とよぶ.感染時に発病する一次結核と合わせ,感染者の約10%が結核を発症する.結核病変は基本的には慢性の肉芽腫性炎であり,肉芽腫形成,壊死,陥落,空洞形成と推移する特異性炎である.巨大な肉芽腫は組織破壊を招き個体の死を招来するが,肉芽腫形成は本来宿主の防御応答で,結核菌の増殖をおもに酸素を遮断することで停止させる,いわば“苦肉の策”である.本稿では結核の歴史と現状,結核病態の形成機構,現在の対策研究の動向について概説した.
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医学のあゆみ 223巻8号, 615-618 (2007);
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大腸菌(Escherichia coli)は正常な腸管細菌叢のひとつで,腸管にいるかぎり特に病気を起こすものではない.しかし,一部の大腸菌は,ファージやプラスミドなどにより外来性遺伝子を取り込み,病原性を獲得し,腸管にいながら病気(主として下痢)を引き起こすようになった大腸菌の存在が知られるようになった.現在これらは下痢原性大腸菌,あるいは広義の病原性大腸菌と総称される.それぞれがもつ病原因子の特異性により, 1狭義の病原性大腸菌,2腸管侵入性大腸菌,3毒素原性大腸菌,4腸管出血性大腸菌,5腸管凝集付着性大腸菌,などに分けて考えられる.本稿では,先進国(欧米や日本など)でも問題となっている腸管出血性大腸菌感染症の現況について述べる.
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医学のあゆみ 223巻8号, 619-622 (2007);
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コレラ菌,腸炎ビブリオは急性胃腸炎を起こす病原性ビブリオの代表的な菌であるが,1992年の新型コレラの出現や1996年以降の腸炎ビブリオ感染症の世界的流行など,あらたな動向がみられている.コレラ菌,腸炎ビブリオともにゲノム解析が完了し,進化の過程で外来性の病原因子遺伝子を獲得してきたことが明らかになってきた.また,腸炎ビブリオは,他のいくつかの病原細菌の病原性に重要な役割を果たしている3型分泌装置をもつことが明らかにされ,その病原性研究にあらたな展開を見せている.
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医学のあゆみ 223巻8号, 623-627 (2007);
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熱帯地を含む発展途上国では人口の約8割,全世界人口の半数以上の人びとがHelicobacter pyloriに感染している.感染者の大多数のヒトは無症状で経過し,感染した一部のヒトに胃炎,消化性潰瘍,MALTリンパ腫,胃癌などの消化器疾患を発症させる.通常,胃粘膜での炎症は病原菌を排除するように働くが,本菌は排除されることなく持続感染し,自然に除菌されることはほとんどない.感染にかかわる多くの病原因子(CagA,VacA,NAP,γ−GTPなど)があり,除菌によって症状の改善する胃外の疾患も明らかになりつつある.
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医学のあゆみ 223巻8号, 628-632 (2007);
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レジオネラは自然界の水系・土壌に広く生息するグラム陰性桿菌で,ヒトの肺炎(レジオネラ肺炎,在郷軍人病)やインフルエンザ様の熱性疾患(ポンティアック熱)の原因菌である.レジオネラ症患者から分離される菌種の90%以上はLegionella pneumophilaで,その8割以上を血清群1に属する菌が占めている.本菌が病原性を発揮するうえでもっとも重要な性質は,生体防御の第一線で働くマクロファージの殺菌に抵抗し,そのなかで増殖し,結果的にその細胞を殺す能力をもっていること(細胞内増殖能)である.レジオネラは原核生物であるが,30を超える真核細胞類似蛋白を産生することがレジオネラのゲノム解析からわかってきた.これらの真核細胞類似蛋白が感染細胞に働きかけ,ファゴソームとリソソームの融合を阻害するなど,宿主の細胞機能を調節している可能性が示されている.巧妙な菌の戦略が分子レベルで解明されつつある.
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フォーラム
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医学のあゆみ 223巻8号, 633-633 (2007);
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医学のあゆみ 223巻8号, 634-636 (2007);
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医学部卒業後,母校の衛生学教室に入室し14年目.2006年8月からWomen’s Healthと英語を学習するため家族4人でメルボルンへ.1年5カ月間の留学予定である.出会ったエピソードをエッセイと,ちょっと役立つ(?)情報編に分けてご紹介.今回は“病院に行く”の情報編として,知っておきたい救急車の呼び方と,一般的な受診の流れなどについて紹介する.
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医学のあゆみ 223巻8号, 638-639 (2007);
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医学のあゆみ 223巻8号, 640-642 (2007);
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TOPICS
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眼科学
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医学のあゆみ 223巻8号, 645-645 (2007);
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連載
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ファーマコビジランスをもっと身近に
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医学のあゆみ 223巻8号, 647-652 (2007);
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関節リウマチ(RA)に対する生物学的製剤は画期的な有効性が期待される一方で,未知で重篤な副作用の誘発が懸念され,その市販承認にあたって5,000例の全例登録と6カ月の追跡調査が義務付けられた.この調査はわが国では前例のないRA患者の前向きコホート調査であるとともに,とくに有害事象について真の発生頻度に近い情報が得られた貴重なものであった.しかし,この調査によって悪性腫瘍などの低頻度の有害事象を検出することは困難である.さらに,日本人患者における生物学的製剤の有効性と安全性を十分に評価するためには生物学的製剤を使用しないRA患者のデータが対照群として必要であるが,わが国には該当するシステムが欠如している.したがって,大規模で長期の安全性調査や,RA患者全体を対象とするデータベースの構築が必要であり,そのための臨床医の意識向上と参画促進が今後の課題である.
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注目の領域
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医学のあゆみ 223巻8号, 653-657 (2007);
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