医学のあゆみ
Volume 224, Issue 11, 2008
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ARDSとインフルエンザ—呼吸器不全の病態と発症機構
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- 【インフルエンザ誘発のARDSと呼吸器不全の臨床】
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インフルエンザ(H5N1)によるARDSの病態と治療
224巻11号(2008);View Description Hide Descriptionインフルエンザ(H5N1)は,鳥インフルエンザとして家禽を中心に大流行を繰り返している.1997年に香港で最初のヒト感染例が報告され,間をおいて2003年からふたたび東南アジアを中心にヒト感染を発症し2007年末までに348例(215例死亡)がWHOに報告されている.ヒトインフルエンザ(H5N1)感染症では急激に進行するARDSが特徴で,死亡率の高さと発症年齢の低いことが大きな問題である.ウイルスの変異によりヒト−ヒト感染が成立した場合の被害の大きさが非常に懸念され,さまざまな対策がWHOを中心にわが国においてもとられつつある. -
インフルエンザウイルス感染後にARDSを合併した重症肺炎の病態と治療
224巻11号(2008);View Description Hide Description急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は,敗血症,重症肺炎,急性膵炎,外傷など種々の基礎疾患に引き続いて発症し,急速進行性で重篤な呼吸機能障害をきたす症候群である.その原因となる疾患は多岐にわたり,直接的あるいは間接的に肺傷害をもたらすものに大別される.直接的肺傷害の代表は肺炎である.肺炎はウイルス,細菌あるいは真菌などの多くの病原微生物の感染が契機となって発症するが,両側性の重症肺炎では陰影が病原微生物自体による病変なのか,それに伴う過剰なサイトカイン産生により生じた透過性亢進型肺水腫なのかは臨床的に鑑別困難である.そこで本稿では,ARDSを合併した重症肺炎の特徴と,インフルエンザウイルス感染症とARDSの関連性を中心に,その臨床像および最新の治療について自験例を呈示しつつ解説する. -
インフルエンザH5N1誘発ARDSの治療戦略—好中球エラスターゼ阻害を中心に
224巻11号(2008);View Description Hide Description好中球はARDSの発症・増悪に深くかかわっている.好中球のもつ生体防御のための強力な作用は,生体破壊にもつながる.好中球の中性プロテアーゼのうちの好中球エラスターゼは基質特異性が低く,きわめて強力で,しかも活性型として好中球から放出される.従来は好中球エラスターゼによる組織破壊のみが注目されてきた.最近,好中球エラスターゼがアポトーシスに陥った好中球の貪食を阻害する作用,サイトカインやケモカインを誘導する細胞間情報伝達作用をもつことが明らかにされた.これらの作用によって好中球エラスターゼは発症後のすでに完成したARDSのさらなる増悪にも関与する.ARDSの治療を目的として好中球エラスターゼ阻害薬が開発され,臨床応用されている.インフルエンザH5N1誘発ARDSは進行がきわめて早く,重篤な電撃型ARDSである.インフルエンザの診断のついた段階で,予防的にARDS治療を開始することが望ましい. -
- 【インフルエンザおよびSARS誘発のARDSとその要因の解析】
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- 【呼吸器不全の要因・機構解析】
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炎症性肺疾患におけるTh1/Th2バランスの異常—Th1/Th2細胞分化におけるToll様レセプターの役割
224巻11号(2008);View Description Hide DescriptionナイーブCD4 T細胞は,外来抗原の刺激により末梢リンパ組織でそれぞれ異なったリンフォカインを産生するTh1またはTh2タイプのメモリーT細胞に分化する.Th1細胞とTh2細胞はたがいにバランスをとりながら生体防御機構における中心的な役割を担っており,感染症やアレルギーの病態とTh1とTh2のバランスには密接な関係があると考えられている.また,最近になりこれまで知られていなかったTh17細胞とよばれる炎症性T細胞も同定された.代表的な炎症性肺疾患であるアレルギー性気道炎症は,Toll様レセプター(TLR)を発現する自然免疫系の細胞が関与して誘導される.樹状細胞にTLRを介したシグナルが入ると,MHC分子の発現やT細胞に対する補助シグナル分子の発現が上昇し,T細胞を活性化してTh1細胞分化を優位に誘導する.したがって,Th1/Th2バランスの制御におけるTLRの役割を解明することにより喘息症状の制御ができるようになるかもしれない. -
ALI/ARDSと自然免疫リンパ球
224巻11号(2008);View Description Hide DescriptionALI/ARDSは先行する各種基礎疾患に伴い急速に発症する低酸素血症で,胸部X線写真上両側性の肺浸潤影を認め,心疾患が否定できるものと定義されている.ALI/ARDSは直接損傷と間接損傷とに分類され,前者の基礎疾患としては肺炎,誤嚥が多く,後者では敗血症,外傷,高度の熱傷が重要である.一方,NKT細胞やγδT細胞のような自然免疫リンパ球は微生物感染などの際に非常に速やかに活性化され,獲得免疫が成立するまでの時期をつなぐ細胞として注目を集めている.本稿では,臨床的にもARDSを伴い重篤化することが知られている肺炎球菌感染におけるこれらの細胞の機能について述べるとともに,エンドトキシン投与によるALI/ARDSの動物モデルにおける自然免疫リンパ球の位置づけについて,これまでの報告を中心に概説する. -
肺の感染炎症病態におけるニトロ化ストレスとそのバイオマーカー
224巻11号(2008);View Description Hide Description一酸化窒素(NO)は,血管循環系や神経系のシグナル伝達に関与する一方,感染病態においては共存する活性酸素種との反応を経て活性酸化窒素種(RNS)に変換され,蛋白質・核酸といった生体分子を化学修飾し,生体内の幅広い生命現象にかかわっている.ウイルス性肺炎モデルを用いた解析で,RNSは抗ウイルス作用を発揮することなく,宿主の細胞・組織を傷害するストレス誘導分子として作用し,劇症肺炎の病態形成に寄与することがわかってきた.このようなRNSによる修飾生体分子には,3−ニトロチロシンや8−ニトログアニンといった芳香族化合物のニトロ化体,さらにチオール基の酸化・ニトロソ化体,不飽和脂肪酸の過酸化体やニトロ化体などがある.本稿ではとくにニトロ化修飾生体分子の生成メカニズムとその検出法,そして感染病態下におけるバイオマーカーとしての応用について概説する. -
肺胞マクロファージの分化とGM−CSF—PPAR−γの発現と抗炎症作用
224巻11号(2008);View Description Hide Description肺は生命体の維持に必要なエネルギーをつくるのに必須の呼吸機能をつかさどる大事な組織である.肺胞マクロファージ(Mφ)は経気道的に侵入する病原体や異物に対する生体防御を担う中心的細胞であるとともに,肺の呼吸機能に必須のサーファクタントのホメオスタシスの維持,肺組織の維持と修復を行っている.肺胞Mφの分化成熟に必須のGM−CSFはPU.1とPPAR−γの肺胞Mφ核内への発現を介して肺胞Mφの機能を制御している.とくに,肺の炎症は呼吸不全をきたし,生命維持の妨げになることより,肺に侵入した病原体や異物の肺胞Mφによる処理はなるべく炎症反応を伴わずになされることが重要であり,GM−CSFによる肺胞MφへのPPAR−γの発現誘導はまさに肺胞Mφのこうした特殊な機能を遂行するうえで必須のものである.PPAR−γの欠如はサーファクタント処理機能異常による肺胞蛋白症の発症のみならず,肺の急性および慢性炎症を引き起こす. -
- 【補 足】
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フォーラム
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- 医師不足と地域医療の崩壊—現状と展望 3
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TOPICS
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- 薬理学・毒性学
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- 免疫学
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- 消化器内科学
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注目の領域
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- 再考“レストア腎”移植 2
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