Volume 225,
Issue 8,
2008
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あゆみ グライコミクスの世界
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医学のあゆみ 225巻8号, 621-621 (2008);
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医学のあゆみ 225巻8号, 623-628 (2008);
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糖鎖研究は敷居の高い研究として研究者からは避けてこられた.しかし,糖鎖構造は細胞の分化成熟度を見事に反映することは古くから知られていた.癌細胞は成熟細胞が未熟化したものであり,劇的に糖鎖構造が変化する.そのほか,免疫細胞の活性化,再生医療における細胞の分化,生殖細胞の成熟など,多くの生命現象に糖鎖構造が深く関与していることが予想される.糖鎖研究を分子論的に開始するためには,以下の3要素の開発が必須であった.1.細胞内における糖鎖構造を生合成する機構の解明,2.その機構を解明した後,自在に糖鎖を合成する技術の開発,3.合成した糖鎖を標準物質として糖鎖構造を簡便に同定する技術の開発.この三大基盤技術の開発の後,はじめて糖鎖機能の解明が可能となるはずである.産業技術総合研究所糖鎖医工学研究センターでは,この三大技術をこの7年間で開発してきた.糖鎖機能の解明は,言い換えれば,白黒テレビで生命現象を理解しようとしている時代から,カラーテレビで鑑賞する時代へと大きく世界を転換させることになる(東京大学薬学部入村達郎教授談).糖鎖がかかわる重要な生命現象である癌,免疫,感染症,再生医療などにおける糖鎖の役割の解明,ひいてはそれらに関連する病気の早期診断,予後判断,治療指針の判断,新薬ターゲットの同定などにつながっていくと考えられる.
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医学のあゆみ 225巻8号, 629-632 (2008);
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糖鎖研究はいまや臨床応用に向けたフェーズを迎え,なかでもプロテオミクスでは解決の難しい糖鎖関連腫瘍マーカーの開発に期待が寄せられている.しかし,数百にも及ぶ糖転移酵素がつくりだす複雑・多様な糖鎖構造へのアプローチはいぜん容易ではない.近年の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)やマススペクトロメトリー(MS)に代表される構造解析技術のめざましい進歩をもってしても,生体試料そのものを直接取り扱うことはいまなお困難である.有用なバイオマーカーの開発にあたっては,臨床検体への実応用を大前提として感度やスループットに秀でた方法論の選定がまず求められよう.そのためには,糖蛋白質から糖鎖を切り放すことなく解析できる技術基盤であることが不可欠である.本目的に適うと期待されているのが,レクチンマイクロアレイを用いた比較糖鎖プロファイリングである1).本稿では,最近著者らが開発した微小領域組織切片を用いた高感度・ハイスループットな解析手法について述べる.
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医学のあゆみ 225巻8号, 633-636 (2008);
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細胞表面を覆う糖鎖は本来細胞内のGolgi体で機能を発揮するわけであるが,一方で糖転移酵素の切断された可溶型酵素が体液中に存在すること,癌や炎症反応の際に特定の可溶型糖転移酵素が量的に変動することが古くから報告されてきた.実際に可溶型ガラクトース転移酵素に特異的な抗体は卵巣癌診断薬として広く用いられてきたが,可溶型糖転移酵素の生理的意義や形成機構は不明であった.本稿ではシアル酸転移酵素ST6Gal㈵の切断・分泌機構について述べた後に,可溶型酵素の肝疾患マーカーとしての可能性を論じるとともに,可溶型N-アセチルグルコサミン転移酵素㈸自体に見出された血管新生促進作用など,最近得られたユニークな知見を紹介したい.
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医学のあゆみ 225巻8号, 637-641 (2008);
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腸管は人体最大の免疫臓器であり,つねに食物,病原体と接している.腸管免疫の破綻が炎症性腸疾患の発症にかかわることが想定されており,その腸管において,接着分子であるセレクチンなどの糖蛋白が免疫制御に深くかかわることが知られている.免疫グロブリンも糖鎖構造を有し,炎症性腸疾患患者において免疫グロブリン付着フコシル化糖鎖にガラクトース欠損が高頻度に起こっていることが確認された.このガラクトース欠損は炎症性腸疾患のあらたな疾患マーカーとなり,疾患の活動性とも相関することが明らかとなった.免疫グロブリンの糖鎖以外にも潰瘍性大腸炎患者において,腸管上皮から産生されるムチンの糖鎖に変化が認められることが報告されている.さらに,糖鎖を認識するGalectin群が炎症性腸疾患の改善・増悪に関与することが,動物実験レベルで報告されている.炎症性腸疾患における糖鎖のかかわりはほとんど未解明の分野であるが,本稿では炎症性腸疾患における糖鎖のかかわりについて,著者らの知見を交えて概説する.
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医学のあゆみ 225巻8号, 643-649 (2008);
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癌細胞の血管内皮細胞との接着は腫瘍血管形成や血行性転移において重要な役割を演じる.この接着においておもに働く細胞接着分子は血管内皮のセレクチンであり,癌細胞にはセレクチンのリガンドであるシアリルルイスa(シアリルLea)やシアリルルイスx(シアリルLex)が強く発現している.癌細胞におけるシアリルLea/x糖鎖の発現誘導には,一部の糖鎖合成遺伝子のエピジェネティックな転写抑制と低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor:HIF)による一部の糖鎖合成遺伝子の転写誘導とが複合的に働いてい
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医学のあゆみ 225巻8号, 651-654 (2008);
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リンパ球ホーミングは多段階の分子シグナルによって精密に制御されているが,その最初のステップは,血流中のリンパ球が二次リンパ組織に存在する高内皮細静脈という特殊な細静脈の内腔面をローリングし,その速度を落とす反応からはじまる.このローリングはリンパ球表面に発現しているLセレクチンと高内皮細静脈内腔面に発現している硫酸化シアリルルイスX(sLex)糖鎖との結合によってもたらされる.このメカニズムが生理的状態のみならず,慢性炎症におけるリンパ球浸潤においても用いられているであろうことは想像に難くない.実際,これまでに種々の慢性炎症性疾患において硫酸化sLex糖鎖を発現した高内皮細静脈様血管の誘導が報告されている.
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医学のあゆみ 225巻8号, 655-659 (2008);
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エボラウイルス(EBOV)はフィロウイルス科に属する(-)鎖RNAウイルスであり,ヒトを含む霊長類に感染し重篤な出血熱を引き起こす.現在までに,ヒトで有効なワクチンは開発されておらず,ウイルス感染メカニズムもよくわかっていない.EBOVは表面に糖蛋白質(GP)を有しており,宿主細胞のレクチンを介して感染が増強することが報告されている.なかでも,著者らはマクロファージや樹状細胞に発現しているマクロファージガラクトース型C型レクチン(MGL)に着目し,この分子がEBOV感染に重要な宿主細胞表面分子であることを見出した.MGLを介したEBOV感染メカニズムを解明することは感染治療に直結すると考えられる.
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医学のあゆみ 225巻8号, 660-664 (2008);
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癌組織における糖鎖の異常な発現亢進や発現低下はよく知られ,解析されてきた.この現象が注目を集める理由は,腫瘍マーカーの発見につながるだけでなく,癌細胞の転移能という重要な悪性形質にもかかわるからである.著者らの着目したSda糖鎖は正常消化管粘膜によく発現しているのに対して,胃癌・大腸癌においてはほとんどの組織・細胞株で検出不可能である.これはSda糖鎖合成経路の最終段階を担う糖転移酵素B4GALNT2の発現が低下していることによるもので,正常型糖鎖の生合成が妨げられた結果としての糖鎖不全現象のひとつである.癌細胞にB4GALNT2を強制発現してSda糖鎖の発現回復を行うと,同時にE-セレクチンのリガンドであるシアリルルイスx/a(sLex/a)の発現低下が起こり,内皮細胞への接着および遠隔転移能が低下した.さらに,著者らは癌組織でのB4GALNT2サイレンシングの機構として,DNAメチル化による発現制御を見出した.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち 77
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医学のあゆみ 225巻8号, 665-665 (2008);
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医学のあゆみ 225巻8号, 666-667 (2008);
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第72回日本循環器学会総会・学術集会レポート4
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医学のあゆみ 225巻8号, 668-670 (2008);
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心筋症の病因遺伝子解析の進展は著しい.一方,肥大型・拡張型・拘束型・不整脈源性右室心筋症の各臨床病型の病態形成機構や,それぞれの病型におけるgenotype-phenotype correlationなどについては,さらなる検討が必要である.今回のシンポジウムを通して,今後解明されるべき課題についての理解が深まれば幸いである.
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医師不足と地域医療の崩壊──現状と展望 10
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医学のあゆみ 225巻8号, 671-675 (2008);
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医学のあゆみ 225巻8号, 676-677 (2008);
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医学のあゆみ 225巻8号, 678-681 (2008);
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TOPICS
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病理学
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医学のあゆみ 225巻8号, 689-690 (2008);
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産科学・婦人科学
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医学のあゆみ 225巻8号, 690-691 (2008);
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眼科学
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医学のあゆみ 225巻8号, 691-693 (2008);
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連載
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定位放射線治療──最新動向9
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医学のあゆみ 225巻8号, 696-702 (2008);
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定位的放射線治療は,高線量一括照射で病変部に対して,高いエネルギーで治療効果をもたらす.その一方で,正常脳組織,神経組織の脳機能に対する修飾的変化をきたすことが明らかとなってきた.そのひとつに機能的脳疾患である三叉神経痛の治療がある.三叉神経痛のなかでも“本態性三叉神経痛”がガンマナイフ治療の適応となる.“本態性三叉神経痛”と診断後,まずは十分な薬物治療を行う.効果不十分(薬剤耐性,アレルギーなど)であった場合にガンマナイフ治療を考慮している.三叉神経痛のガンマナイフ治療において,当科では三叉神経のretrogasserian regionをターゲットとし,最大線量を90 Gyに設定し治療を行っている.初期除痛率は98.1%に及び,除痛効果として非常に高い数字をあげる一方,治療後合併症もみられている.至適線量,ターゲット,治療適応,治療時期について,今後さらに慎重な検討が必要であると考えている.