Volume 225,
Issue 11,
2008
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あゆみ 慢性咳嗽の診断と治療UPDATE
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医学のあゆみ 225巻11号, 1133-1133 (2008);
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医学のあゆみ 225巻11号, 1135-1142 (2008);
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わが国においては咳喘息,アトピー咳嗽,副鼻腔気管支症候群,かぜ症候群後咳嗽がおもな慢性咳嗽の原因疾患であり,近年,胃食道逆流症が増加傾向にある.一方,欧米においては上気道咳嗽症候群(従来の後鼻漏/鼻炎),咳喘息,非喘息性気管支炎,胃食道逆流症が慢性咳嗽の主要な原因疾患である.咳嗽反射の求心路はAδ線維のRARsからはじまり,C線維は神経末端からのタキキニンがRARsを刺激することにより咳嗽反射を惹起する.咳受容体はTRPV1とよばれる陽イオンチャネルから構成され,カプサイシンのほか,酸,熱刺激,アナンダマ
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医学のあゆみ 225巻11号, 1143-1148 (2008);
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慢性咳嗽の診断は問診,検査,治療的診断の3つのステップからなる.ルーチン検査としては喀痰検査,スパイロメトリーと気道可逆性試験があり,おもな特殊検査として気道過敏性試験,咳受容体感受性試験がある.気道過敏性は咳喘息で軽度亢進し,咳受容体感受性はアトピー咳嗽,アンジオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽,胃食道逆流症,感染後咳嗽などで亢進する.これらの検査と組み合わせて気管支拡張薬,H1受容体拮抗薬,ステロイド吸入薬,プロトンポンプ阻害薬,マクロライドなどを用いた治療的診断を段階的に行って診断する.とくに受診初期の段階での呼吸機能検査は,長期ステロイド吸入が必要になる咳喘息を鑑別するために有用である.また,複数の病態が合併する場合もある.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1149-1154 (2008);
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咳喘息は咳のみを症状とする喘息の亜型で,慢性咳嗽の主要な原因疾患である.喘鳴を伴う典型的喘息と同様に,気道過敏性亢進,気道の好酸球性炎症や気道リモデリングなど共通の病態生理学的特徴を有する.経過中約30%程度が典型的喘息に移行し,第一選択薬の吸入ステロイド療法で喘息への移行は減少する.診断には気管支拡張薬の有効性を確認することが重要であり,診断が確定したら吸入ステロイド薬を中心とした治療を開始する.咳優位型喘息,アトピー咳嗽および非喘息性好酸球性気管支炎などとの鑑別も重要である.咳優位型喘息との差異は軽度の喘鳴を認めるかどうかであり,臨床像や病態はきわめて類似している.いわゆるアトピー咳嗽や非喘息性好酸球性気管支炎は好酸球性気道炎症を特徴とするが,気道過敏性がなく,気管支拡張薬の効果がない.また,典型的喘息への移行が少ない点などが咳喘息と異なる.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1155-1158 (2008);
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非喘息性好酸球性気管支炎(nonasthmatic eosinophilic bronchitis)は欧米より提唱された疾患概念である.喘鳴を伴わない慢性咳嗽を症状とし,喀痰好酸球増多を認めるが,喘息の生理学的特徴である変動性気流閉塞や気道過敏性亢進を欠き,吸入ステロイド治療が有効な病態である.わが国で提唱されたアトピー咳嗽は本症と類似点が多い疾患であるが,差異もみられる.咳だけを症状とする喘息の亜型である咳喘息も含めて好酸球性気道疾患の疾患概念を対比し,共通点と相違点について考察を加える.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1159-1162 (2008);
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胸部X線写真上,明らかな肺病変が認められない,鎮咳薬が無効な慢性咳嗽の原因疾患として,耳鼻咽喉科領域では後鼻漏,喉頭アレルギー,気管支異物,内科との境界領域にある逆流性食道炎などがあげられる.耳鼻咽喉科の日常診療において,湿性咳嗽や咽喉頭異常感,痰を訴える患者が後鼻漏を伴っていたとき,後鼻漏の除去,副鼻腔炎などの後鼻漏をきたした原因疾患を治療することにより,これらの症状が改善することに比較的多く遭遇する.湿性咳嗽の原因として後鼻漏の重要性を経験上理解している耳鼻咽喉科医は少なくない.本稿では後鼻漏と咳嗽の関係について,その代表的な疾患である副鼻腔炎の基礎,臨床を含め,文献的考察を加えて報告する.副鼻腔炎患者の約80%に後鼻漏を,そのうち約30%に咳嗽を認める.咳嗽はほとんどが湿性で,夜間に多く,期間は8週間以上が多い.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1163-1167 (2008);
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わが国における3週間以上続く遷延性乾性咳嗽,8週間以上続く慢性乾性咳嗽で,非喫煙,ACE阻害薬を内服していない,胸部X線写真に異常所見のない症例の主要な原因疾患は,1.咳喘息,2.アトピー咳嗽,3.かぜ症候群後咳嗽,4.胃食道逆流による咳嗽単独,または 5.これらの疾患の合併である.胃食道逆流(GER)はその名のとおり,“胃内容物が食道に逆流する”ことである.胃食道逆流は生理的現象である.胃食道逆流症(GERD)は胃食道逆流により何らかの症状や組織障害を伴う場合に使用される.胃食道逆流による咳嗽では,咳嗽をおもな症状とし,胸やけなどの胃食道逆流症状の訴えがはっきりしない場合がある.臨床像は高齢,女性に多い.検査成績では食道バリウム検査で,患者を臥位にし腹圧をかけさせると,内服したバリウムが胸部中部食道以上に逆流する.上部消化管内視鏡検査では逆流性食道炎がみられることが多い.食道pHモニターでは食道内がpH4以下になる,つまり胃食道逆流がみられるときに咳嗽もみられる.気管支鏡検査による気道生検では気道粘膜の @平上皮化生,基底膜の肥厚,粘膜下リンパ球浸潤,粘膜下浮腫がみられ,非好酸球性の慢性気道炎症がみられる.これらの変化は可逆性で,治療により咳嗽が軽快すると正常化していた.気道過敏性は亢進していない.カプサイシン咳感受性は亢進している.診断には24時間食道pHモニターが感度,特異度ともに優れている.しかし,侵襲的検査であり,わが国では一般臨床上普及していない.他の遷延性・慢性咳嗽の原因が否定され,empirical therapyとしてのプロトンポンプ阻害薬(PPI)で咳嗽が改善する場合,胃食道逆流による咳嗽と診断する.治療ではプロトンポンプ阻害薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬などを使用する.加えて食事療法,生活習慣の改善,危険因子の除去を行う必要がある.治療は2〜3カ月は行ってみる必要がある.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1168-1170 (2008);
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心因性咳嗽は「何らかの心理的機制により発作性あるいは持続的に乾性咳嗽が生じるもの」と定義される,慢性咳嗽を主症状とする疾患概念である.診断は慢性咳嗽をきたしうる器質的疾患の除外による.治療法は確立されていないが,心理社会的問題の関与を評価したうえで,心身医学的アプローチ,抗不安薬・抗うつ薬の使用などを検討する.治療が進展しない場合や,精神疾患が疑われる場合は,早めに専門家に相談することが重要である.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1171-1174 (2008);
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種々の気道感染後(普通感冒,気管支炎)に咳嗽が遷延することがあり,感染後咳嗽とよばれる.胸部X線写真上は異常がなく,通常乾性咳嗽が数週間持続し自然に寛解する.これの原因となる微生物には呼吸器ウイルス,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア,百日咳菌などがある.とくに成人の百日咳は遷延性〜慢性咳嗽の原因として,また乳幼児への感染源の可能性があることより,近年注目を集めている.感染後咳嗽は成人の遷延性および慢性咳嗽のかなりの部分を占めていると思われるが,鑑別診断の困難なことが多く,見逃されている可能性が高い.マイコプラズマ,クラミジア,百日咳によるものは感染初期には抗菌薬投与が有効である.遷延したものでは有効な治療法がなく対症療法となるが,自然軽快傾向も強い.欧米では,成人において百日咳のワクチン再接種も検討されている.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1175-1179 (2008);
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慢性気道感染症では慢性的に下気道に存在する喀痰を喀出するために生体防御反応としての咳嗽が生じるため,慢性湿性咳嗽が主症状となる.わが国の場合,慢性気道感染症の代表的疾患は副鼻腔気管支症候群(SBS)であり,慢性咳嗽,とくに慢性湿性咳嗽をみるうえでSBSは重要な疾患群である.一般に,SBSは慢性・反復性の好中球性の気道炎症を上気道と下気道に合併した症候群と定義される.SBSには,慢性気管支炎,気管支拡張症,びまん性汎細気管支炎などのさまざまな病態が含まれるが,治療法として14・15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬などの薬物療法が有効という点で共通した特徴がある.また,SBSに対するマクロライド系抗菌薬の作用は抗菌薬としてというよりは,むしろ気道上皮細胞の水分・粘液過分泌の抑制やIL-8などの好中球走化性因子の産生抑制など広い意味での“抗炎症作用”により効果を示しているものと考えられている.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1181-1184 (2008);
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慢性咳嗽の原因は日常生活か職場環境のいずれかに存在しており,言い換えれば大気汚染や室内汚染が職場で起こるか,住居内で起こるかによる程度の違いで共通の原因物質が多い.アレルギー性物質ではダニ,ハウスダスト,ペットの毛と排泄物,昆虫,花粉,真菌胞子,薬物があり,非アレルギー性では大気汚染物質,エンドトキシン,ヒューム,粉塵(アスベスト,ベリリウム,コバルト,mixed dustなど)があり,咳喘息,アトピー咳嗽,後鼻漏と咽頭アレルギー,副鼻腔気管支症候群,慢性気管支炎などを起こす.本稿では,環境・職業因子の総論と,著者らの行った北海道太平洋岸における酸性霧による咳嗽とキノコ胞子吸入による職業性慢性咳嗽について述べたい.
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医学のあゆみ 225巻11号, 1185-1188 (2008);
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小児の慢性咳嗽を診断する際には成人と共通の原因がある反面,成人とは異なる特徴があることを理解しておく.とくに年少児では呼吸器系の先天異常に基づく疾患や異物誤嚥など,成人ではまれな原因がある.また,成人では慢性咳嗽の原因として咳喘息とアトピー咳嗽が多いとされるが,小児ではこれら,とくにアトピー咳嗽はきわめてまれであり,典型的喘息の一部分症状として咳嗽が慢性的に認められる場合が多い.また,鼻炎,副鼻腔炎などによっても喘鳴や慢性咳嗽をきたしやすい.このため,咳嗽の治療薬は漫然と投与するのではなく,治療効果を確認しながら治療継続の可否を決定することが大切である.
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フォーラム
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医学のあゆみ 225巻11号, 1189-1191 (2008);
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書評
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医学のあゆみ 225巻11号, 1192-1192 (2008);
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第72回日本循環器学会総会・学術集会レポート5
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医学のあゆみ 225巻11号, 1193-1195 (2008);
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わが国の心疾患死亡数は17万人で総死亡数16.0%(死因の第2位)を占め,増加傾向にある.一方,臓器移植法制定以後10年間のわが国の心臓移植数は52例にすぎない.心臓移植は標準的な重症心不全治療となりえていないのみならず,60歳以上の心疾患死亡症例15万人(91.31%)はその恩恵を受けられず,小児心臓移植も法的要因により海外渡航に依存している.それゆえ,わが国では心臓移植代替治療として,先端的医療システムを駆使した非薬物治療構築の必要性はきわめて高い.本シンポジウムでは,多様化する難治性心不全に対する非薬物療法の最近の進歩について活発な議論をもった.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 225巻11号, 1197-1198 (2008);
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環境衛生
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医学のあゆみ 225巻11号, 1198-1199 (2008);
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連載
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定位放射線治療──最新動向10
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医学のあゆみ 225巻11号, 1202-1210 (2008);
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転移性脳腫瘍の治療では,全脳照射か手術(全脳照射の併用)が標準治療と考えられてきていた.しかし,この10数年来のガンマナイフ治療の普及は,転移性脳腫瘍治療に劇的な変化をもたらしてきている.さらに,ごく最近では化学療法の効果も認識されるようになってきており,転移性脳腫瘍の治療戦略にはparadigmshiftが起こりつつある.端的にいえば,全脳照射が必要な例は激減してきており,手術が必要な症例は減少しつつある.それに対してガンマナイフ治療の役割は,飛躍的に増大しつつある.化学療法に関しては,いましばらくは動向を見極める必要はあるが,将来的にはその役割が相当に増大していくことが期待される.