Volume 226,
Issue 6,
2008
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あゆみ 禁煙科学の新展開
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 459-459 (2008);
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 461-465 (2008);
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日本国内におけるニコチン代替療法は,1994年にニコチンガム(ニコレット),1999年にニコチンパッチ(ニコチネルTTS)が使用を許可され,2008年からは内服薬のバレニクリン(チャンピックス)も認可された.2006年からは禁煙治療が保険適用となり,さらに2008年からはニコチンパッチの薬局販売もはじまるなど,禁煙治療のあらたな展開がみられている.
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 467-474 (2008);
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本稿では,喫煙の健康影響に関する個別の疫学研究の知見を統合したメタアナリシス・システマティックレビューの成果を解説する.アメリカ疾病予防管理センターによる『The Health Consequences of Smoking:A Report of the Surgeon General 2004』の概要を述べ,ついで近年注目されている喫煙と遺伝子の交互作用に関する疫学的知見を紹介する.喫煙の健康障害に関する個々の研究による疫学的エビデンスは,急速かつ膨大に蓄積されている.しかし,対象とする人口集団によって,その知見はかならずしも一定していない.質の高い個々の疫学研究の継続を基盤としつつ,単一研究から結論的知見を得ることの困難さから,これらのデータを集約するメタアナリシス・システマティックレビューの役割はより大きなものとなっていくであろう.今後,遺伝子との交互作用に関する疫学的知見の蓄積,評価においても“HuGE review”を中心とするメタアナリシス/システマティックレビューの方法論のあらたな発展が期待される.
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 475-478 (2008);
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2007年1月1日より日本のジョンソン・エンド・ジョンソン(株)メディカルカンパニーでは,全世界共通の“職場禁煙”ポリシーに加えて,独自の“所定労働時間内禁煙”ポリシーを全雇用形態の従業員1,800名に発動した.喫煙は個人の健康リスクだけでなく,たび重なる離席による生産性低下のリスクや,外でたむろする喫煙者の見苦しさという企業イメージのリスクなどがあり,企業として取り組むべき課題である.ポリシーの理解促進のために,1.トップダウンで明確な“禁煙ポリシー”を策定した後,十分な準備期間を設け,2.従業員を巻き込んで社内でさまざまなコミュニケーションを取り,3.それをへこたれずにやり続けた.この結果,より多くの喫煙者が“自分自身で禁煙を考える”ようになった.さらにつぎのステージ“完全禁煙”をめざして,今後も全従業員を巻き込んで禁煙の啓発活動を継続していきたい.
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 479-483 (2008);
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世界保健機関(WHO)総会において採択されたFCTC(WHO Framework Convention on Tobacco Control)“たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約”が,2005年2月27日に発効した.日本は19カ国目の締約国である.この条約はWHOの下で作成された保健分野におけるはじめての多数国間条約であり,たばこの消費などが健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし,たばこに関する広告,包装上の表示などの規制とたばこの規制に関する国際協力について定めるものである.その取り決めに従って各国は効果的な喫煙防止政策を推し進めなくてはならないが,国により状況はさまざまである.また,2008年2月にWHOより『WHO Report on the Global Tobacco Epidemic,2008-The MPOWER package』が発行された.世界的なたばこによる健康と経済への危機的現状と,それらをもたらすたばこ産業の役割が報告され,それらに対抗するものとして,MPOWERという新しいキーワードが提唱されている.
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 485-488 (2008);
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たばこをやめると体内のニコチン濃度が下がり,イライラしたり眠気が襲ってきたりする禁断症状が出るために,なかなか禁煙が成功しない.そこで,薬剤を用いてこの禁断症状を低減するために,禁煙補助薬とよばれる薬が用いられる.禁煙補助薬には,ニコチンを投与するニコチン製剤(ニコチンを含んだガムや皮膚に貼るパッチなど)がある.たばこに含まれるニコチン以外の発癌性の物質などがなく,受動喫煙の被害をもたらさないため有効ではあるが,ニコチンがもつ毒性自体には代わりはない.日本では許可されていないが,抗うつ薬の一種で禁断症状を抑える方法にも用いられる.最近になり,バレニクリンとよばれる脳内のニコチンが作用する部位に働きかける薬剤が使われるようになった.この薬剤はニコチンを含まないためニコチン製剤よりは安全であり,禁煙成功率も高いことがわかってきている.しかし,これらの薬は飲めば禁煙できるわけではないため,まず禁煙するという意識を高めることが重要である.
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 489-493 (2008);
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健康増進法が施行され,大学内においても今後,たばこ対策の確立は重要である.しかし,大学教職員や学生に対する系統だった禁煙支援体制は確立されていない.本学では喫煙教職員を対象として,ニコチンパッチとメールによる支援を用いたグループ禁煙教室を2003年より毎年行っている.キャンパス別や職種別に禁煙継続率の差は大きいものの,全体の1年禁煙継続率は52%と良好であり,本教室の有用性を実感している.一方,学生の禁煙指導では,目的意識がいまひとつはっきりしないことや,たばこによる健康被害に対する恐れの欠如など,種々の理由により教職員と比較して難しい点が存在する.これらを克服しながら地道な支援を継続していくことが肝要であるとともに,“吸うのをやめる”から“吸わないように指導”の重要性を改めて認識する必要がある.
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 494-497 (2008);
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呼吸器疾患のさまざまな病態に喫煙が関与している.COPD(慢性閉塞性肺疾患)では原因の95%が喫煙であり,プロテナーゼ・アンチプロテナーゼの不均衡,オキシダント・アンチオキシダントの不均衡,アポトーシスなどの病態が重要な位置を占めている.すべてのステージのCOPDに対して第一選択として禁煙が勧められる.気管支喘息では喫煙は肺機能の低下を進行させ,喘息症状の重症度を上げ,喘息治療に対する反応性を低下させる.間質性肺炎の亜急性のものでは禁煙のみで改善するものも多い.肺癌のうち, @平上皮癌がもっとも喫煙の影響を受ける.外科手術前の喫煙は手術後の急性肺障害を起こす可能性があり,喫煙は禁忌である.日本呼吸器学会では,2003年“禁煙宣言”を発表した.また,2008年には喫煙とCOPDとの強い関連性を念頭において,被験者の一秒量がどの年齢の一秒量と対応するかの指標として“肺年齢”の概念を打ち出し,たばこの肺機能に及ぼす影響についての市民キャンペーンを展開している.
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【関連トピックス】
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 498-499 (2008);
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 500-502 (2008);
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フォーラム
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 503-504 (2008);
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病理診断科標榜への期待 4
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 505-507 (2008);
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書評
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 508-508 (2008);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 511-512 (2008);
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内分泌・代謝学
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 512-513 (2008);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 513-514 (2008);
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環境衛生
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 515-515 (2008);
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連載
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定位放射線治療──最新動向16
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医学のあゆみ 226巻6・7号, 516-520 (2008);
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体幹部定位放射線治療は,転移性脳腫瘍に対するガンマナイフに代表される定位放射線治療の成功をその根拠としている.これは,がん病巣への放射線量の絞り込みが可能であれば,高線量を副作用なしに投与でき,周囲の免疫学的環境に悪影響を与えないため,高い治癒率と低い障害率が得られるだろうという“放射線治療の根本原理”に基づく.ただし,頭蓋内腫瘍と違い,肺がんの体幹部腫瘍では,金属フレームなどによる固定が困難で,臓器と腫瘍の生理的運動も問題となる.放射線治療は,こうした問題の解決をめざして,さまざまな技術的開発をはかってきた.体幹部定位放射線治療はまさに,高精度放射線治療の試金石なのである.幸いこれまでの臨床成績は,外科手術と同等以上のものとなっている.体幹部定位放射線治療での成功が,さらなる放射線治療の飛躍につながると期待する.