Volume 226,
Issue 8,
2008
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あゆみ ポドサイトの生物学
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医学のあゆみ 226巻8号, 521-522 (2008);
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医学のあゆみ 226巻8号, 523-526 (2008);
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腎の最大の機能である血液濾過は,糸球体濾過障壁の精巧な構造によってなされる.その構成要素のうちで,蛋白漏出を制御するという重要な機能を担う糸球体足細胞(ポドサイト)は,高度に分化した終末分化細胞という特性を有し,その足突起間に形成されるスリット膜が,蛋白の濾過障壁として重要な役割を有すると考えられている.一方で,多くの糸球体疾患においてポドサイトの傷害は蛋白尿の発症に共通に関与し,さらにその傷害が持続すると足突起の消失や細胞の基底膜からの /離を引き起こし,最終的には糸球体硬化へとつながる,原疾患にかかわらない重要な糸球体病変進展要因と考えられている.近年,ポドサイトの研究が加速しているが,中心はスリット膜を構成する多くの分子の同定であり,その機能や分子間相互作用が解明されてきている.また,先天性ネフローゼ症候群の責任遺伝子として同定されたnephrin,podocin,α-actinin-4,CD2APをはじめとしてポドサイト関連分子の遺伝子変異が遺伝性ネフローゼ症候群の原因として報告され,注目されている.これら糸球体機能,病変の進展にかかわるポドサイトの機能は,その糸球体内での位置,構造,さらに分化維持機構などにより具現されている.本稿ではその基本である,ポドサイトの構造について概説する.
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医学のあゆみ 226巻8号, 527-533 (2008);
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ポドサイトは,核や細胞内小器官が局在する大きな細胞体と細胞体から伸び出した太い一次突起,さらに,一次突起から伸び出した細い足突起で構成され,非常に特殊な構造をしている.ポドサイトの主要な細胞骨格要素は,他の細胞と同じようにアクチン線維,中間径フィラメント,微小管の三者であるが,形態学的な検討から足突起はおもにアクチン線維により構造が保持されていると考えられている(図1)1).最近,足突起のアクチン骨格の制御について分子生物学的に解明されはじめている.本稿では,足突起におけるアクチン骨格のシグナル伝達系に焦点を絞り概説する.
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医学のあゆみ 226巻8号, 535-539 (2008);
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糸球体性蛋白尿の発症には,糸球体上皮細胞(ポドサイト)傷害による糸球体係蹄壁のバリアー機能異常が大きく関与している.ポドサイトの足突起間に存在するスリット膜を構成する分子がつぎつぎと同定され,先天性・後天性疾患ともにこれらの分子の発現低下や局在異常が原因として指摘されている.各分子間の相互関係やポドサイトの細胞内シグナル伝達系の研究も盛んである.スリット膜構造の中心的分子NephrinとPodocin・CD2APは,複合体を形成して機能していることが指摘されてきた.最近ではチロシンリン酸化キナーゼFynやアダプター蛋白Nckのほか,チャネル分子TRPC6などさまざまな分子がその複合体を構成していることが判明し,疾患の原因も連鎖的複合的に理解されつつある.また最近の研究で,シナプス小胞関連分子がポドサイトに発現しており,スリット膜構成分子の細胞内輸送に関与していることが明らかになった.蛋白尿治療はこれまでステロイドを中心とした免疫抑制薬の投与に終始してきたが,各分子に注目することであらたな治療法が開発される可能性がある.
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医学のあゆみ 226巻8号, 540-544 (2008);
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ネフロンの大部分は間葉上皮転換(mesenchymal-to-epithelial transition:MET)を経て間葉系細胞から発生し,ポドサイトを含めたネフロン発生には,Pax2,WT1,Pod1(capsulin/epicardin/Tcf21),MafB(Maf-1/Kreisler/Krml1),Imx1bなどさまざまな転写調節因子が関与する.最終分化したポドサイトは静的なイメージでとらえられがちである.しかし,濾過圧などポドサイト周囲の環境は動的に変化していることから,静的な姿でイメージされがちなポドサイトも,生体内ではさまざまなストレスに対応して機能や形態を臨機応変に変化させるはずである.その可逆的応答制御にかかわる細胞内情報伝達系をつまびらかにすることが,治療戦略を構築するうえでの貴重なアイデアの源となりうるであろう.ネフリン分子の転写制御機構の解析は絶好の手がかりと考えている.
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医学のあゆみ 226巻8号, 545-548 (2008);
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アンジオテンシン(Ang)Ⅱは糸球体輸出細動脈を収縮し,糸球体毛細血管内圧を上昇させることによって,その周囲に存在するポドサイトを過伸展し傷害を与えると考えられていた.実際,レニン-アンジオテンシン(RAS)系を抑制する薬剤は,臨床において蛋白尿を減少させ,腎保護作用を示した.しかし,最近の研究によりポドサイト自身にもすべてのRAS因子が存在し,ポドサイト自身が産生するAngⅡが細胞傷害性に働くこと,ポドサイトRASでは多彩なAngペプチド類が産生されていること,それら産生系の上流に(プロ)レニン受容体が存在し,細胞RAS全体を調整すること,さらに(プロ)レニン受容体による未知の細胞内伝達経路も存在する可能性があることなどが解明されてきた.本稿では,これらポドサイトにおけるRASについて解説する.
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医学のあゆみ 226巻8号, 549-553 (2008);
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近年,アルドステロンおよびその受容体であるミネラロコルチコイド受容体(MR)シグナリングが,腎臓を含む各種臓器障害に深く関与することが注目されている.本稿では,蛋白尿およびポドサイト障害におけるミネラロコルチコイドの役割に関して,その研究の歴史的経緯に触れるとともに,その最近の知見について,著者らのアルドステロン投与ラット,メタボリックシンドロームモデルラットを用いた研究成果を中心に述べる.また,その過程における酸化ストレスの意義についても言及したい.
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医学のあゆみ 226巻8号, 554-559 (2008);
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免疫学的機序を基盤に発症する(と考えられている)腎糸球体疾患の治療薬の主体は,いまなお糖質ステロイド薬を代表とする免疫抑制薬である.その臨床的な治療効果の判定は,蛋白尿阻止作用を指標として行われてきた.しかし,その抗蛋白尿作用の機序はいまだ不明である.最近,多くの病態の基盤に,エネルギー(ATP)の存在が必須である細胞内蛋白輸送系の障害がかかわっていることが判明しつつある.著者らは,ATP欠乏による細胞障害が糸球体蛋白バリアの主要成分であるネフリンの細胞内輸送を阻止することを明らかにした.興味深いことに,この障害モデルに対しグルココルチコイド,ミゾリビン,シクロスポリンAは,それぞれ明白に異なる作用機序により救済作用を発揮することが見出された.
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医学のあゆみ 226巻8号, 560-564 (2008);
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糸球体上皮細胞,たこ足細胞(podocyte)は特異な形態をとり,高度に機能が分化しており,非常に増殖しにくいなどの生物学的な特性を有しているために,種々の障害を受けると糸球体機能に影響を与え,糸球体硬化に深くかかわっている.したがって,近年ではこのpodocyte障害を臨床的に評価することが重要な課題となっている.このpodocyte障害を尿から評価することが可能となり,1.糸球体疾患のスクリーニング,2.糸球体障害の活動性の評価,3.ネフローゼ症候群における鑑別診断,4.糸球体腎炎における管外性病変の予知,5.糸球体硬化進行の予知,6.治療のマーカーとしての有用性,7.糖尿病性腎症での進行性のマーカーなどの臨床的有用性が示されている.慢性腎臓病(CKD)対策からも診断・治療指標となるような尿バイオマーカーの開発が望まれている現在,尿を用いたpodocyte障害を検出する検査は,こうした臨床的な要望に対応できる有用な検査法になりうるポテンシャルを有している.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち 80
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医学のあゆみ 226巻8号, 565-565 (2008);
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逆システム学の窓18
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医学のあゆみ 226巻8号, 566-569 (2008);
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遺伝情報はDNAの配列だけでなく染色体の修飾でも制御される.配列に変異がなくても遺伝子が働かなくなってしまうことをサイレンシングという.サイレンシングの代表例は,“斑入り”と呼ばれる植物の葉が白くなる現象である.“斑入り”が起こるには遺伝子が染色体のどこにあるかが重要で,ヘテロクロマチンと呼ばれる領域で起こることがわかってきた.赤い目の色素を作る遺伝子がサイレンシングされて“斑入り”となるハエの変異体の解析から,DNAを巻き付けるヒストンという蛋白質のメチル化がサイレンシングの鍵であることがわかってきた.ヒトゲノムから50種類以上のヒストンメチル化酵素が発見され,がんや生活習慣病の新たな特効薬になることが期待されている.
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医療関連死問題をかんがえる
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医学のあゆみ 226巻8号, 570-574 (2008);
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医学のあゆみ 226巻8号, 575-576 (2008);
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医学のあゆみ 226巻8号, 577-578 (2008);
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医学のあゆみ 226巻8号, 579-581 (2008);
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TOPICS
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 226巻8号, 585-586 (2008);
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神経内科学
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医学のあゆみ 226巻8号, 586-587 (2008);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 226巻8号, 587-589 (2008);
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連載
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定位放射線治療──最新動向17
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医学のあゆみ 226巻8号, 590-594 (2008);
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定位放射線照射の特徴として位置精度が正確なこと,小照射野を用いること,大線量を用いること,分割回数が少ないことがあげられるが,前3者が利点であるのに対し,後者は放射線生物学的には欠点といえる.小照射野により有害事象が減り大線量投与が可能となる一方で,少ない分割回数は,線量の制限や,放射線感受性に影響を与える細胞周期や酸素効果の点で不利に働く.すなわち,1回または少分割照射という放射線生物学的短所よりも高い位置精度と小照射野という長所が活かされる状況でよい適応になる治療法であるということを再確認し,今後のさらなる臨床応用にのぞんでいきたい.