Volume 226,
Issue 12,
2008
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あゆみ エリスロポエチンの臓器・血管保護作用
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医学のあゆみ 226巻12号, 1025-1025 (2008);
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医学のあゆみ 226巻12号, 1027-1030 (2008);
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腎はエリスロポエチン(EPO)の産生臓器であり,腎不全による腎のEPO産生能の低下が腎性貧血をきたす.EPOは貧血の改善を介して間接的に,あるいは腎に直接作用して腎保護作用を有すると考えられている.今後,従来の造血作用に加えて,腎保護を目的としたEPOの臨床応用が期待される.さらに,造血作用を有さないEPO製剤(CEPOやasialoEPO)が新しい腎保護製剤として臨床応用される可能性もある.
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医学のあゆみ 226巻12号, 1031-1035 (2008);
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エリスロポエチン(EPO)は約30kDaの糖蛋白質であり,赤血球造血に必須の因子である.EPOは赤血球前駆細胞に作用して,その生存を維持し,分化と増殖を促進する.成体では腎がEPOを産生し,腎性貧血の多くはEPO産生力の低下による.1987年に組換え型ヒトEPOの使用が認められ,それ以来腎性貧血の特効薬として広く使用されている.長い間赤血球造血だけがEPOの生理的意義であると信じられていたが,著者らはアストログリアがEPOを産生すること,ニューロンがEPO受容体を発現していることを発見し,EPOは中枢神経系で神経保護作用をもつことを証明した.これがきっかけとなり,EPOの神経系への作用に関する研究が急激に進展し,全身的に投与したEPOが血液脳関門を通過し神経細胞に作用すること,赤血球造血作用を失っているが,細胞保護作用を保持しているEPO誘導体が発見されたことなどから,神経疾患の治療薬として期待されている.
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医学のあゆみ 226巻12号, 1036-1038 (2008);
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心筋梗塞患者の予後改善のためには,心筋梗塞サイズを縮小し,梗塞後心室リモデリングを抑制する必要がある.動物実験にてエリスロポエチン(EPO)はいずれの過程にも作用し,心臓保護効果を呈することが示されている.さらに興味深いことに,EPOの心保護効果は再灌流時投与においても認められることから,臨床応用への期待が大きい.本稿では著者らのデータも含めて,虚血性心筋障害に対するEPOの心保護メカニズムについて述べたい.さらに,現在進行中であるEPOを用いた臨床試験についても紹介したい.
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医学のあゆみ 226巻12号, 1039-1043 (2008);
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心不全は患者のQOLを著しく下げ,死亡率も高い重大な症候群である.β遮断薬,ACEI,ARBなどによる神経体液因子調節により心不全の予後は改善しつつあるが,なお新しいアプローチも必要である.貧血は心不全患者に頻繁に合併するが,見落とされがちである.貧血の治療は慢性腎臓病患者の症状・予後を改善し,近年心不全患者でも同様の結果が発表されている.一方,エリスロポエチン(EPO)を使った貧血治療の有効性の機序の一部は造血外作用である可能性も考えられている.とくに不全心筋においては,抗炎症作用,抗酸化作用,抗線維化作用,さらには抗心筋細胞萎縮変性作用などを介して直接的な心筋保護作用を有することが明らかになってきた.したがって,EPOは有望な抗心不全薬のひとつといえる.EPOの不全心筋に対するより詳細な作用機序などの基礎的知見の蓄積,ならびにより大規模な臨床治験が待たれる.
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医学のあゆみ 226巻12号, 1044-1047 (2008);
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エリスロポエチン(EPO)受容体刺激による心筋細胞保護と短時間虚血によるプレコンディショニング(ischemic preconditioning:PC)ではその機序をトリガーする受容体は異なっているが,活性化される細胞内シグナル伝達には共通する経路が多い.ことにglycogen synthase kinase-3βのリン酸化がミトコンドリア透過性遷移を抑制することが,EPO,IPCいずれの梗塞抑制効果にも深くかかわっていると考えられる.一方,梗塞後リモデリングや糖尿病による細胞保護機構障害への感受性については,シグナル伝達の違いからEPO,PCで大きく異なっている.こうしたEPOによる心筋保護とPCの比較解析は,合併疾患がまれでない臨床例において十分心筋保護効果もたらすための治療戦略の構築に有用である.
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医学のあゆみ 226巻12号, 1048-1054 (2008);
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エリスロポエチン(Epo)の投与による内膜傷害血管の修復への促進効果を調べた.マウスにワイアによる内膜障害を作製後,リコンビナントヒトEpoを計6日間,1,000単位/kg腹腔内投与した.血管新生内膜肥厚はコントロールマウスに比べ,48%抑制され,それはNO依存性であった.さらに,Epo投与後14日目の傷害血管において再内皮化は1.4倍に増強された.Epoは,Flk-1+/Sca1+血管内皮前駆細胞の末梢血液中への動員をNO依存性に促進させ,GFPやβGalの過剰発現骨髄による骨髄置換モデルの検討で,Epoは骨髄由来の血管内皮前駆細胞の傷害血管局所への動員をコントロール群の2.5倍程度増加させた.また,EpoはAkt/eNOSのリン酸化促進,およびNOの産生を亢進させた.このように,EpoはNO依存性に障害血管における新生内膜肥厚を,障害血管内皮および血管内皮前駆細胞の動員を介して抑制した.
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医学のあゆみ 226巻12号, 1055-1060 (2008);
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エリスロポエチン(EPO)には脳・心・腎・血管などに対する組織保護作用があるが,血管新生作用はない.これまでにいくつかのEPO誘導体が開発されているが,そのうち血管新生作用をもつものはアシアロEPO(AEPO)およびカルバミル化EPO(CEPO)の2つである.EPOは3つのN型糖鎖と1つのO型糖鎖をもち,1分子当りのシアル酸の数は約12個である.分泌型EPOおよびエポエチン製剤の糖鎖は完全にシアル化されているが,すべてのシアル酸を取り除いてガラクトースを露出させたものがAEPO,リシン側鎖をカルバミル化したものがCEPOである.いずれも生体内投与での造血活性を欠きながら強い組織保護・血管新生作用を示すため,多血症などの副作用が軽減される.AEPOは生理的な糖鎖合成の中間産物であり,また分泌されたEPOの脱シアル化による代謝でも生じうる自然物であるのに対し,CEPOは非自然物であり,臨床応用にあたっては予測できない副作用の発現に注意を要する.
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医学のあゆみ 226巻12号, 1061-1064 (2008);
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エリスロポエチン(Epo)は腎において産生され,造血にきわめて重要な働きをもつ.近年,Epo受容体が心血管系をはじめとして赤血球系以外の細胞にも広く発現していることが報告され,造血作用以外のEpoの役割が注目されている.著者らは冠動脈インターベンションが成功した急性心筋梗塞患者において,入院時の血清Epo濃度が梗塞サイズを予測する独立因子であることを報告した.さらに,赤血球系の細胞以外ではEpo受容体を欠損するマウスを用いて,内因性Epo-Epo受容体系を介するシグナルが心筋虚血再灌流傷害,圧負荷による心不全発症,低酸素曝露による肺高血圧の発症,さらには下肢虚血に対して保護効果をもつことを示した.Epo-Epo受容体系は心血管病のあらたな治療標的として有望であるが,慢性腎臓病患者を対象とした最近の欧米の大規模臨床試験の結果をみると,ヘモグロビン濃度が上昇しすぎないような配慮が必要である.今後,心血管系のEpo-Epo受容体系に特異的に働きかけるあらたな治療戦略の開発が求められる.
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フォーラム
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医学のあゆみ 226巻12号, 1065-1066 (2008);
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医療関連死問題をかんがえる 4
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医学のあゆみ 226巻12号, 1067-1070 (2008);
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TOPICS
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 226巻12号, 1073-1074 (2008);
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心身医学
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医学のあゆみ 226巻12号, 1074-1075 (2008);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 226巻12号, 1075-1076 (2008);
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連載
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“大学病院”─課題と展望3
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医学のあゆみ 226巻12号, 1077-1082 (2008);
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国立大学病院の経営は,2004年の法人化以来の大幅な補助金カットによって苦境に立たされている.医療安全のクライシス,医局制度批判,医療費抑制政策などの逆風をバネに,国立大学病院はさまざまな改革を重ねてきた.今後の方向性として高度医療と効率経営を両立しつつ,さらに高いレベルの研究を実践するために徐々に体制の転換をはかるべきである.すべての医師に研究の義務を課すという従来型のシステムは,しだいに改められるべきであろう.診療と研究の役割分担が重要である.そのうえで,大学病院は研究重視の姿勢を崩すべきではない.基礎研究偏重から脱却し,臨床研究やトランスレーショナル・リサーチを積極的に進めることが求められる.産学連携を推進し,社会に貢献できる研究を実践しなければならない.個々の医師の意志や適性が尊重され,どの医師も満足のいくキャリアパスが歩めるように,国立大学病院は変貌していく必要があろう.