Volume 227,
Issue 6,
2008
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あゆみ 維持透析療法−治療・管理の進歩
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医学のあゆみ 227巻6号, 419-419 (2008);
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医学のあゆみ 227巻6号, 421-425 (2008);
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わが国の透析患者の生命予後は世界でもっとも良好であるが,その平均余命はいぜん健常人の半分に満たない.さらに,透析患者数の直線的増加,一般人口を大きく上まわる高齢化,合併症の多い糖尿病性腎症の急増などにより,透析患者の生命予後改善は頭打ちとなりつつある.このような困難な状況ではあるが,臨床研究で得られた知見の集積により,透析患者の生命予後に影響を及ぼす因子が徐々に明らかになってきた.透析患者の生命予後規定因子は,1年齢,性別,腎不全原疾患などの患者背景因子のような変容困難な要因と,2透析療法や合併症管理など医療者側の介入などによる変容の比較的可能な要因,に大別される.これらの因子が透析患者の生命予後に関与する程度と,その変容の容易さを勘案して,よりよい患者アウトカムが得られるような最善の診療が模索されている.
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医学のあゆみ 227巻6号, 426-433 (2008);
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遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)が市販され,ほぼ20年を迎える.この間,欧米を中心に治療ガイドラインが作成され,改訂が繰り返されている.わが国では2004年に血液透析(HD)患者に対するガイドラインが作成された.2008年10月には2004年版の改訂とともに,腹膜透析(PD),保存期慢性腎臓病(ND)患者,小児慢性腎臓病患者に対するあらたなガイドラインが加えられ完成した.欧米のガイドラインと対比して本ガイドラインの独自性として,以下の点があげられる.1 HDとPD,ND患者の目標ヘモグロビン(Hb)値が異なる.2腎性貧血を“内分泌疾患”ととらえ,腎機能(糸球体濾過量:GFR)の低下のみに帰することなく,腎障害に伴う内因性エリスロポエチン産生障害とされた.この結果,GFRが高値でも腎性貧血と診断することが可能となった.3目標Hb値の設定には,可能なかぎりわが国のエビデンスが重視された.4鉄剤の投与に関して,欧米のエビデンスを勘案しながらも,鉄過剰投与によるマイナス面が重視された.
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医学のあゆみ 227巻6号, 434-437 (2008);
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慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常は,易骨折性,骨痛などにより患者のQOLを損ねるのみならず,それによる血管の石灰化が心血管疾患を引き起こし,生命予後に重大な影響を与えることが明らかとなり,世界的に疾患概念の大きな変化が起こっている.わが国でも新しい概念に基づいて“透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン”が発表され,骨病変よりも生命予後を重視する観点から,まず血清リン値,カルシウム値の管理を行い,目標範囲に到達した場合のみ,血清PTH値のコントロールを行うこととなった.しかしその後,あらたな薬剤の登場により,血清リン値,カルシウム値の管理が困難な症例でも血清PTH値を低下させることが可能となるなど,この領域の治療戦略はたえず進化しており,ガイドラインのさらなる改良と発展が期待される.
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医学のあゆみ 227巻6号, 438-442 (2008);
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なぜ透析にかかわる医療関係者が,ここまで心臓病のことを探求しなければならないのか.それは透析患者の多くが心臓死するからにほかならない.しかし,ただ漫然と心疾患について教科書的なことを把握しても日頃の透析の現場では生きてこない.たとえば,透析患者が心筋梗塞を起こしたとき,教科書では当たり前のように記載してある“胸痛”を訴えて受診することは少ない.さらに,典型的な心電図変化も認められないことが多い.こういった透析患者の特殊性を意識することこそ,現場での実践につながってくる.本稿ではいくつかの心疾患を取り上げ,透析患者の特殊性を詳述するとともに,臨床現場で誤解を招きやすい病態を解説することとする.なお誌面の都合上,限られた疾患にとどまることをお許し願いたい.
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医学のあゆみ 227巻6号, 443-450 (2008);
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近年,透析患者の高齢化や糖尿病性腎症患者の急増により,脳・心血管障害,末梢血管障害などの血管合併症が増加し,その治療・管理の重要性が増している.脳血管障害(CVA)の管理では急性期に透析による脳浮腫増悪を予防することが重要で,できるだけ緩徐な透析法を選択し,透析中に抗脳浮腫治療を行うことが推奨される.近年,透析患者で高率に無症候性脳出血(microbleeds)が認められることが明らかとなり,抗血栓療法を行う際には注意が必要である.一方,末梢動脈疾患(PAD)は血管内治療の技術革新や細胞移植療法・遺伝子導入治療などあらたな治療法が開発されてきたが,透析例での成績は不良である.PADの管理では脳・心血管病変の評価,血管スクリーニングによる早期発見,早期治療,フットケアによる感染予防などが重要である.CVAやPADによる重傷下肢虚血病変はいったん発症すると生命予後に大きく影響する合併症であり,発症予防のための患者教育と関連する複数科の医師やコメディカルがチームを編成して治療を行うことが望ましい.
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医学のあゆみ 227巻6号, 451-455 (2008);
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多くは外来で生活され,来院して集団で治療を受けていながら易感染性である血液透析患者の感染症管理の進歩は,実際的な感染予防策の普及によるところが大きい.もちろん医療者側の手洗い,手袋着用といった標準予防策がその中心となる.これに加え,患者を含め,その治療区域に入る者全員による手洗い,咳エチケットという衛生概念の教育とその実践は,患者が行えば医療者の手洗いも遵守され,医療者が行えばまた患者もつねに守るという,よい相互刺激が生じて接触感染予防に対し効果的であった.さらに,処置用の物品をシングルユースとすることによる,摂子やペアン・包交車といった汚染区域内で共通利用する清潔扱いの物品の廃止や,血液汚染物の動線管理により,血液媒介感染は劇的に減少した.抗凝固薬やエリスロポエチン製剤など透析療法でつねに用いられる薬剤のシリンジへのプレフィルド化は,動線管理を容易にし,感染予防に大きな貢献を果たした.新興感染症やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)対策を含め,これらの対策は透析室のみならず,すべての施設で応用可能であると思われる.
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医学のあゆみ 227巻6号, 456-459 (2008);
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透析患者の栄養障害はprotein-energy wasting(PEW)に代表され,骨格筋などの体構成蛋白の減少と血清蛋白成分の減少に特徴づけられる.PEWは透析患者の約30%に出現し,同患者の合併症発現と強く関連している.つまり,PEWは動脈硬化や心血管病変の発症・進展,免疫能低下などと密接に関連するため,同患者の入院や死亡に直結した重要な患者予後規定因子である.このことは透析患者の予後向上にPEWの管理・対策が重要な位置を占めることを示唆している.
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医学のあゆみ 227巻6号, 460-465 (2008);
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CAPD療法は,腹膜という生体膜を用いた透析療法である.血液透析(HD)療法と比較して腹膜透析(PD)療法では溶質除去と水分除去に限界がある.残存腎機能(RKF)の低下に伴い,溶質除去の点でもCAPD療法単独では不十分となることが多い.対照的に血液透析では,残腎機能が廃絶したとしても十分な透析量(溶質除去)を確保でき,透析膜(人工腎はdisposableゆえに)の劣化などは当然のように起こりえない.加えて,腹膜透析液は生体適合性に優れておらず,長期の腹膜透析療法において限外濾過不足からencapsulating peritonealsclerosis(EPS)までの腹膜の劣化を念頭におくべきである.つまりCAPD療法の施行においては,腹膜の劣化を回避し,残存腎機能(RKF)を可能なかぎり保持し,限外濾過と溶質除去を確保することがきわめて重要となる.CAPD療法の長期間継続施行例が多いわが国においては,溶質除去,残腎機能の保護,本治療法での生命予後に影響を及ぼすEPS回避もきわめて重要となる.現在,溶質除去,残腎機能保護のみならずEPS回避のためのCAPD中止基準を含んだ,わが国独自のCAPDガイドラインが,日本透析医学会(腹膜透析ガイドラインワーキンググループ)において作成されつつある.
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フォーラム
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医学のあゆみ 227巻6号, 467-468 (2008);
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逆システム学の窓20
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医学のあゆみ 227巻6号, 469-473 (2008);
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医療現場と同様,金融市場というものも経済の血液であるお金を動かす,社会の中で特別の意味をもつ場である.アメリカ発の金融恐慌の波は世界を覆い尽くそうとしている.崩壊寸前の日本の医療にこの経済危機のもつ意味は大きい.経済困難がうまれると人間は様々な作為に走ろうとする.しかし,金融市場をよく分析すると現在の危機の本質は“信頼の喪失”であることがわかる.日本医療が経済危機の中で崩壊にいたらない鍵は,専門知識にもとづく診療からの信頼感の醸成しかない.経済的作為にもとづく成果主義こそが危機をまねくことを知っておく必要がある.
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医療関連死問題をかんがえる9
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医学のあゆみ 227巻6号, 475-478 (2008);
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TOPICS
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神経内科学
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医学のあゆみ 227巻6号, 483-484 (2008);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 227巻6号, 484-485 (2008);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 227巻6号, 485-485 (2008);
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連載
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医師のための臨床統計学
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医学のあゆみ 227巻6号, 486-487 (2008);
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医学のあゆみ 227巻6号, 488-493 (2008);
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データあるいは研究結果のバラツキは,正確度・精密度から評価される.正確性の欠如がバイアスの存在であり,疫学・臨床研究においては選択バイアス,評価バイアス,交絡バイアスが重要である.それぞれを克服するためのおもな手段は対照との比較,盲検化とITT解析,そしてランダム化であり,すべての研究の基本に測定の信頼性の確保がある.“誤差”は一種のモデルである.統計的には,誤差を制御可能なバイアスに転換させバラツキを減少させることが科学・技術の目標であり,ランダムサンプリングとランダム化はバイアスを“誤差化”する研究方法論である.