Volume 227,
Issue 7,
2008
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あゆみ 第二世代抗精神病薬による精神医療の進展
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医学のあゆみ 227巻7号, 495-495 (2008);
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医学のあゆみ 227巻7号, 497-501 (2008);
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第二世代抗精神病薬(第二世代薬)は統合失調症に対する治療薬であるが,第一世代薬で問題となった1錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用の発現や,2陰性症状への効果の乏しさを改良して登場したものである.このような効果が可能になった薬理学的機序は,第一世代薬が脳内ドパミンD2受容体を100%遮断するのに対して,第二世代薬は適度(70%前後)に遮断することによる.しかし,70%前後のD2受容体遮断を可能にする機序は薬物によって異なり,ドパミン神経に対するセロトニン神経の抑制を利用した薬物,D2受容体への低親和性を利用した薬物,あるいはD2受容体のパーシャルアゴニスト作用を利用した薬物などがある.本稿ではさらに,第二世代薬の薬理特性が動機づけや報酬などの意欲の維持に対しても保護作用を有することや,ドパミン以外の受容体を介した治療効果の可能性についても論じた.
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医学のあゆみ 227巻7号, 502-507 (2008);
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第二世代抗精神病薬あるいは非定型抗精神病薬に位置づけられるリスペリドンが登場して10年が経過したが,現在はそれに加えてオランザピン,クエチアピン,ペロスピロン,アリピプラゾール,ブロナンセリンの計6剤がある.それぞれの薬剤の特性情報は著しく諸条件が制限された臨床治験によるものであり,ときに臨床医の使用経験との乖離がみられることがある.実際の臨床状況に近い条件でのそれぞれの新規薬剤の臨床特性の情報は,そのままわれわれの臨床場面において活用性が高いものである.このような背景のもと大規模臨床試験が実施されるようになっている.慢性統合失調症患者に対するeffectivenessをおもに投与中止率で検討したCATIE研究,通院患者に対する有用性をおもに臨床全般改善度(CGI)で検討したSOHO研究,早期精神病患者に対する有用性をおもに陽性陰性症状評価尺度(PANSS)にて検討したCAFE研究を紹介する.
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医学のあゆみ 227巻7号, 508-512 (2008);
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統合失調症治療はこの10年間の間に大きな変化を遂げてきた.ひとつは呼称変更に伴う統合失調症という疾病概念の変化であり,このことによって治療可能な疾病群であることが明らかになった.もうひとつが第二世代抗精神病薬(second generation antipsychotic:SGA)の登場である.いまや統合失調症に対してはSGAによる薬物療法が第一選択であり,多くの精神科医に当たり前のように使われるようになってきている.このことによって統合失調症の治療目標は,単なる症状管理から本格的な社会参加を促すものへと大きく上向けられた.一方で現在,日本で処方可能なSGAは6剤にまで増えた.その選択にあたって参考とするべき治療アウトカム評価も,最近の統合失調症治療目標の変化を反映して新しいことばで定義されてきているが,その意味について臨床的な立場から理解しておく必要性がある.
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医学のあゆみ 227巻7号, 513-517 (2008);
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統合失調症では注意,言語性記憶,作業記憶,実行機能,視覚・運動処理能力などの幅広い認知領域が障害されており,これらは疾患の中核的障害であると考えられている.とくに社会復帰に深くかかわる言語性記憶は発症前の前駆期から障害され,病態の進行により認知機能が広範囲にわたって低下していくことが判明している.そのため最近は認知機能障害が薬物療法上の重要な治療標的であるとされ,膨大な数の研究成果が蓄積されてきた.現在までの認知機能障害に対する抗精神病薬の効果に関する研究を要約すれば,1第二世代抗精神病薬(SGA)は第一世代抗精神病薬と比較して若干強い改善効果を有し,2個々の薬剤は異なった認知機能の改善プロフィールを示す.本稿では,現在わが国で使用可能なSGA 6剤について,認知機能に対する効果に関する研究の成果を要約した.とくに初発エピソード症例に対する最近の大規模な二重盲検比較試験の結果に焦点を当てた.
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医学のあゆみ 227巻7号, 519-524 (2008);
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第二世代抗精神病薬(second generation antipsychotics:SGAs)は気分障害にも効果をもち,アメリカではすでにFDAから承認を受けており(表1),日本でも気分障害の治験が進行中である.Disrupted in schizophrenia1(DISC1)やG72など,統合失調症と気分障害ともに関連する遺伝子群が存在することから,両疾患の病態生理には共通部分があると考えられている(図1)11).最近,Liの作用点として知られるglycogen synthasekinase 3 beta(GSK3β)遺伝子が統合失調症45)と気分障害30)に関連し,SGAsがGSK3βのSer9リン酸化を促進することが報告された23,42).本稿では両疾患とGSK3β伝達経路の関係について述べたうえで,SGAsの気分障害に対する作用機序について考察する.
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医学のあゆみ 227巻7号, 525-530 (2008);
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近年,肥満・インスリン抵抗性が主体のメタボリック症候群型の2型糖尿病が急速に増加してきているが,統合失調症自体にも糖尿病の合併が多い.さらに,治療薬である第二世代抗精神病薬(SGA)治療中の耐糖能異常の報告は国内外で多数認められる.わが国ではolanzapineとquetiapineは,「糖尿病または糖尿病の既往がある患者には禁忌」,「糖尿病の家族歴,高血糖,肥満などの糖尿病の危険因子を有する患者には慎重投与」という緊急安全性情報がだされている.これは先行して発売されていた欧米よりも厳しい扱いで,現在日本では糖尿病患者には精神症状の改善のためには限られたSGAの選択肢しかない.臨床的課題は第1にSGA治療中の定期的かつ的確な耐糖能機能とそのリスクファクターへの検査プロトコールの作成と実施である.これらを施行することにより耐糖能異常を予防し,早期発見が可能となる.第2には耐糖能異常の重症度とその後のSGA治療の選択に関しての課題である.これらの点に関して,いままでの報告と自験例から考察を加え,その対策に関して提示する.
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医学のあゆみ 227巻7号, 531-534 (2008);
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抗精神病薬の開発の歴史は1950年代にさかのぼる.これまでの抗精神病薬の開発はドパミン仮説に基づいており,ドパミン系の伝達制御を効率よく,あるいは繊細に行うことをめざして改良が進んできた.同時に抗精神病薬の開発は統合失調症の治療目標を変化させ,陽性症状を制御することから,認知機能障害を改善して社会復帰をめざすことが治療目標となった.認知機能障害を改善する薬剤開発においてはドパミン仮説を超えた薬剤開発が求められており,現在グルタミン酸系に作用する薬剤,アセチルコリン系,セロトニン系に作用する薬剤などが検討されている.
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フォーラム
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ノーベル医学・生理学賞2008に寄せて
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医学のあゆみ 227巻7号, 535-537 (2008);
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子宮頸がんの原因ウイルスとしてヒトパピローマウイルス(HPV)を発見した功績に対し,元ドイツがん研究センター(DKFZ)総長のHarald zurHausen博士が,2008年のノーベル医学・生理学賞を受賞することに決まった.12月にはスウェーデンのストックホルムで授賞式が行われるが,来年の5月に同じくスウェーデンのマルメで開催される第25回国際パピローマウイルス会議の盛会が予想される.
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医学のあゆみ 227巻7号, 538-539 (2008);
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医学のあゆみ 227巻7号, 541-542 (2008);
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医療関連死問題をかんがえる10
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医学のあゆみ 227巻7号, 543-546 (2008);
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TOPICS
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神経内科学
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医学のあゆみ 227巻7号, 551-552 (2008);
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血管生物学
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医学のあゆみ 227巻7号, 552-553 (2008);
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連載
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医師のための臨床統計学2
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医学のあゆみ 227巻7号, 554-560 (2008);
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結論を適用する標的集団から,名簿と乱数表を用いてランダムにサンプルを抽出するのがランダムサンプリングであり,これにより結論の外的妥当性が保証される.ランダムサンプリングが実質的に不可能な臨床研究の場では,何らかの方法で選ばれた研究対象集団をランダム化することによって内的妥当性が保証される.いずれの方法でも正しく実行されて,はじめて正しい統計的推測が可能となる.p値とは,現実に得られたデータ以上に仮説からずれた観測結果が得られる“確率”であり,これが5%(片側)あるいは2.5%(両側)より小さい場合に“統計的に有意”と判断される.興味のあるパラメータ真値を“確率”95%で含む区間が95%信頼区間である.いずれの“確率”も仮想的な研究繰り返しに基づく相対頻度であり,この確率解釈に基づく統計学を頻度論とよぶ.