Volume 227,
Issue 8,
2008
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あゆみ 老年医学研究の最前線
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医学のあゆみ 227巻8号, 561-561 (2008);
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医学のあゆみ 227巻8号, 563-566 (2008);
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老化はすべてのヒトに起こる避けられない現象であるが,老化の進行は高齢になるにつれて個人差が顕著になる.高齢者に起こる疾患(老年病)の背景には老化が深くかかわっていることから,個人の老化度を表すバイオマーカーの必要性が古くから叫ばれてきた.また,有用な老化バイオマーカーの確立は,老化メカニズムを解き明かす基礎老化研究にとってもブレークスルーとなる可能性を秘めている.高齢化社会を迎えた現在,老化研究に対する社会的要請は年々増加しており,もはや老化バイオマーカー研究は待ったなしの状況といえよう.本稿では加齢と老
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医学のあゆみ 227巻8号, 567-572 (2008);
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ミトコンドリアは,エネルギーATP産生の際,有害な活性酸素種(ROS)を発生するため,生体組織や臓器を傷害し,老化や癌に関係すると考えられているが,近年,アポトーシスの司令塔として重要な役割もあることがわかってきた.ミトコンドリア内部にはその設計図であるミトコンドリアDNA(mtDNA)とよばれる小さな環状二重鎖DNAが存在するが,このDNAは母系遺伝するという特徴や,ひとつの細胞内に数十〜数百というmtDNA分子のコピーが存在するポリプラズミー(polyplasmy)という特徴などがある.mtDNAは,紫外線や薬剤,ROSなどで傷つき,時間の経過,すなわち老化に伴ってDNA変異として蓄積し,mtDNAの“質”が悪くなっていくと考えられている(mtDNAの変異蓄積説).また近年,老化によってコピー数が減少し,mtDNAの“量”も障害を受けるということがわかってきた.このレビューでは,mtDNAの変異蓄積やコピー数の異常と老化に関する最新の研究結果を紹介する.
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医学のあゆみ 227巻8号, 574-579 (2008);
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動物個体は恒常性を維持することによって,その生理機能,活動性を維持し,健康を保持している.ところが,加齢に伴い生体応答能が減退し,生理機能,活動性が衰える,すなわち老化する.液性(代謝)応答は生体恒常性維持にとって重要な機構であり,なかでもミネラル,脂質,糖・エネルギー代謝の恒常性維持は健康の保持にとってきわめて重要であり,その機能低下は老化,加齢疾患の発症に深くかかわっている.α-klothoは顕著な多彩な老化様症状を呈する変異マウスの原因遺伝子として同定されたが,最近のヒト・マウスの解析結果は,α-Klothoがカルシウム・リン恒常性を維持するための多段階の制御機構を統御する因子であることを明確に示している.すなわち,α-Klothoは“個体維持の遺伝子プログラムのひとつ”として進化を通して発展・継承されたものである.同時に,その副次的効果として老化にかかわり,その機能破綻が加齢疾患の発症にかかわると考えることはできる.しかし,このことから“α-Klothoは老化を制御する分子”と考えるのは,結果として起こることと本来の分子機能を混同している.本質的な分子機能の解明があらたな科学の発展をもたらす.
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医学のあゆみ 227巻8号, 581-585 (2008);
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老化は環境要因や遺伝的素因が複雑に絡みあって起こるものと考えられているが,ヒト個体老化の主要原因として有力視されているのが細胞分裂寿命を規定するテロメアの短縮である.また,ヒト個体老化の主要メカニズムとしては細胞分裂寿命による臓器萎縮とともに,細胞老化に伴う転写の変調が重要であると考えられる.さらに,そのほかに酸化ストレスや微小環境などもそれぞれ独立に,あるいはヒト個体老化の主要メカニズムにさまざまな影響を与えることによって,ヒト個体老化に関与していることが確立しつつある.
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医学のあゆみ 227巻8号, 587-590 (2008);
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カロリー制限の研究から明らかになったSIRT1に代表されるSirtuinの発見は,まったく新しい側面から老化の研究を展開できるきっかけをつくりだした.とくに,ミトコンドリアにおける作用や体内時計との関係は老化の根本的な機構にSirtuinが関与する可能性があり,興味深い.また,新しいSIRT1活性化低分子薬の開発はメタボリックシンドロームやさまざまな老年病の治療に有用である可能性があり,おおいに期待される.しかし,もちろんその安全性には最善の注意が必要である.
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医学のあゆみ 227巻8号, 591-596 (2008);
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加齢は心血管疾患の独立したリスクファクターであるが,老化がどのように有病率を増加させるのかについてはまだ明らかでない.老化のメカニズムについては諸説あるが,そのひとつが“細胞老化仮説”である.近年,動物モデルにより老化の分子メカニズムが明らかになり,老化や加齢に伴う疾患において細胞老化の重要性が示唆されている.たとえば,DNA修復にかかわるシグナルの障害は細胞老化を促進するが,ヒト・マウスにおいてその障害があると早老症の形質を示す.インスリンシグナルの低下は個体寿命の延長をもたらすのに対して,インスリンは細胞レベルの老化を促進する.今後,心血管系におけるこのような老化シグナルが明らかになっていくことによって,抗老化によるあらたな心血管治療の開発が期待される.
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医学のあゆみ 227巻8号, 597-602 (2008);
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老年期(65歳以上)での日本における認知症の内訳はAlzheimer病(AD)がもっとも多く,脳血管性認知症,Lewy小体病,前頭側頭葉変性症などがある.ADや前頭側頭葉変性症などでは家族性症例の解析からその原因遺伝子が同定され,また各主要病理の構成成分の同定から病態に重要な分子が明らかにされてきた.いま求められていることは,数としても多い弧発性の認知症の予防法・治療法の確立である.そのためには,認知症の病態における主要な分子が明らかになったからこそ可能になった,分子および細胞レベルのダイナミックなネット
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医学のあゆみ 227巻8号, 603-607 (2008);
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百寿者研究は1980年代後半からはじめられ,現在では人口動態学,医学生物学,心理社会学,遺伝学などさまざまな分野の研究者が参加する学際的研究分野として広がっている.とくに線虫においてdaf-16など寿命を制御する遺伝子が発見されて以来,ヒト長寿遺伝子の探索を目的とした研究が精力的に進められている.従来はcandidate gene approachに基づく関連研究によって長寿遺伝子を同定しようという試みが積み重ねられてきたが,再現性をもって長寿との関連が報告されているのはアポE遺伝子のみである.これに対し最近,ゲノム構造に関する基礎研究とSNPタイピング技術のめざましい進歩によりゲノム全体を網羅的に探索するGenome-wide association study(GWAS)が可能となり,糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病関連遺伝子の同定に威力を発揮しており,GWASによる長寿遺伝子同定が計画されている.著者らは,1百寿者に代わって105歳以上の超百寿者を対象とする,2比較対照群として剖検例や百寿者家族を用いる,など独自の戦略で長寿遺伝子研究に取り組んでいる.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち83
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医学のあゆみ 227巻8号, 609-609 (2008);
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医学のあゆみ 227巻8号, 610-612 (2008);
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女性医師による女性外来の開設があいつぎ,女性外来が全国的に広がっているが,診療科目,体制についてはさまざまである.そこで,女性外来の設置されている労災5病院(釧路・東北・関東・中部・和歌山)において,2005年4月から2007年3月に女性外来を受診した650名にアンケート調査を行い,多様な主訴で受診する女性外来のモデルシステムを検討した.
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医療関連死問題をかんがえる11
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医学のあゆみ 227巻8号, 613-615 (2008);
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医師法21条の異常死の届出は,本来は行政に対する協力法であったが,平成6年(1994),日本法医学会が“異常死”の定義を診療に関連するすべての死を届け出るべきであるとしたことから,今回の福島県立大野病院事件にまで発展してきた.今回のフォーラム連載,医療関連死問題を考える企画は時宣を得たものである.このたびの厚生労働省第三次試案が今後の医事紛争にどのような影響があるかについて,当協会の見解を述べてみたい.
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医学のあゆみ 227巻8号, 616-617 (2008);
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医学のあゆみ 227巻8号, 618-621 (2008);
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 227巻8号, 625-626 (2008);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 227巻8号, 626-627 (2008);
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神経内科学
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医学のあゆみ 227巻8号, 627-629 (2008);
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連載
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“大学病院”─課題と展望8
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医学のあゆみ 227巻8号, 630-634 (2008);
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いまや“フラット”な世界がもたらされ,情報の非対称性が解消されつつある.医療の質・医師の育成への関心は高まり,多様な社会状況に対応しつつ高い医療水準を実現する能力をもった医師の育成が急務である.こうした期待に応える人材を育成するために,メディカル・スクールの創設を提案したい.なぜ,適性の高い学生を,医学部は集めることができないのか.なぜ,医師にふさわしくないと思っている者が医学部を途中で辞めることができないのか.なぜ,日本の医学部は,質の高い臨床医を世に送り出すことができないのか.なぜ,日本の医師の質にはばらつきがあり,その評価が不透明なのか.医学部定員を増やすだけでなく,どのような医師を育てるのか.本質的な議論がいま,求められている.