Volume 228,
Issue 3,
2009
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あゆみ プロバイオティクスと疾患
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医学のあゆみ 228巻3号, 197-197 (2009);
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あゆみプロバイオティクスと疾患
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医学のあゆみ 228巻3号, 199-202 (2009);
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プロバイオティクスとは,口腔から肛門に至る広義の消化管に定住する常在細菌群に働きかけて,あるいは単独で,生体に有益な効果をもたらす生きた菌のことを指す用語である.健常人の腸内フローラは有益な常在菌の作用により,1.消化管内の有害菌(および病原菌)を直接抑制する,2.難消化性多糖類などの消化および代謝を促進し,宿主の必須栄養素であるビタミン類や,腸管上皮細胞の栄養となる短鎖脂肪酸を供給する,3.消化管機能(吸収,運動など)の発達および組織再生を促進する,などの生理的役割を果たしている.プロバイオティクスは直接あるいは間接に,これら腸内細菌のもつ有益な役割を代替あるいは賦活するものである.現在,プロバイオティクスは感染,炎症,免疫アレルギー分野の多くの疾患への応用が試みられている.今後,肥満および老化の分野での研究開発が期待される.
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医学のあゆみ 228巻3号, 203-207 (2009);
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腸管は生体内に存在する器官であるが,広大な粘膜面で外界と接しており,腸管内に侵入してくる外来抗原(食品成分,腸内共生菌,病原性微生物など)に常時曝されている.そのため,腸管免疫系という生体にとって最大の粘膜免疫組織が存在し,宿主の感染防御やアレルギーの制御に重要な役割を担っている.さらに,この腸管に存在する膨大な数の腸内共生菌は,腸管免疫系の発達・維持に強くかかわりながら生体の恒常性維持に役立っている.とくに,腸内共生菌は感染防御に重要な免疫グロブリンA(IgA)産生の誘導に強く関与しており,その一方で,食品として摂取した蛋白質に対するアレルギー反応を制御する機構にもかかわっていることが徐々に明らかになってきている.したがって,近年では腸管免疫系にとって有益な腸内共生菌をプロバイオティクスとして応用しようとする研究も展開され,詳細な作用機序の解明とともにさらなる発展が期待されている.
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医学のあゆみ 228巻3号, 208-212 (2009);
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ヒトの腸内にはさまざまな細菌が常在し,腸内細菌叢を形成している.この腸内細菌叢には,腸管感染症の防止,免疫系の発達,栄養摂取など宿主にとって有益な働きと,発癌物質の産生などの有害な働きがあることが知られている.プロバイオティクスおよびプレバイオティクスとよばれるものは,この腸内細菌叢を構成する細菌のなかで有用な細菌を積極的に投与したり,また,選択的に有用菌の増殖を促進させて宿主の健康に有益な効果をもたらそうとするものである.腸内細菌叢の有益な働きのひとつに免疫系への関与があるが,本稿では腸内細菌叢がウイルス感染において宿主の獲得免疫に関与しているということを,CD8+メモリーT細胞の分化・維持という観点から紹介し,プロバイオティクスを用いたCD8+メモリーT細胞の維持の可能性について述べる.
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医学のあゆみ 228巻3号, 213-216 (2009);
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Helicobacter pylori(H.pylori)は,慢性胃炎患者の胃粘膜より分離培養されたグラム陰性の桿菌である.わが国におけるH.pylori感染者は6,000万人とも推測され,50歳以上の感染率は70%以上と考えられている.本菌の除菌により胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発が防止されることが明らかにされて,除菌療法が消化性潰瘍再発防止の治療として一般化している.H.pylori陽性の慢性胃炎は無症状であることも多いが,H.pyloriは胃癌,胃MALTリンパ腫などの胃悪性疾患との関連が指摘されている.そのため,慢性胃炎に対する治療も大きい問題として残されている.最近になり,胃に有益に働いてH.pyloriを抑える乳酸菌が発見された.プロバイオティクス単独摂取ではH.pylori菌量が抑えられるものの,除菌はされない.一方,抗生物質による除菌療法への併用は除菌率の向上と副作用の軽減に有用であると報告されている.
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医学のあゆみ 228巻3号, 217-221 (2009);
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小児アレルギー疾患におけるプロバイオティクスの応用は,乳幼児アトピー性皮膚炎の治療効果,発症予防を中心に行われている.治療効果としてのプロバイオティクスは,とくに食物アレルギー合併例,アレルゲン陽性例で皮疹改善効果がみられている.この臨床効果の程度は小さいが,乳児期の腸内細菌叢の是正による抗炎症・抗アレルギー作用に働く局所免疫の発達を通して,湿疹への改善に役立っていると考えられる.発症予防効果では,生後の便中ビフィズス菌の減少がアレルギー疾患発症に関連している可能性が指摘され,母子への乳酸菌投与によるリスク児の発症予防効果の検討がなされてきた.アトピー性皮膚炎発症予防効果はあると評価されているが,乳酸菌の種類,投与期間,対象などにより効果に差がみられている.内在性のビフィズス菌増殖効果のあるオリゴ糖によるプレバイオティクスには同様の湿疹発症予防効果があることが報告され,今後の応用が期待される.
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医学のあゆみ 228巻3号, 223-226 (2009);
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従来の“ストレスと腸内フローラ”にかんする研究は,主としてストレスが腸内フローラの構成にどのように影響しているかという方向(ストレス→腸内フローラ)からアプローチされてきた.一方,著者らの最近の研究により,腸内フローラが成長後のストレス応答に影響していること(腸内フローラ→ストレス)が明らかになりつつある.つまりストレスと腸内フローラとの関連は一方向性ではなく,双方向性に作用しているということになる.本稿ではこれまでの研究結果を踏まえて腸内フローラとストレス反応について概説する.
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医学のあゆみ 228巻3号, 227-232 (2009);
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炎症性腸疾患の発症や増悪に腸内細菌が関与している.欧米食に偏ると腸内細菌に変化が生じ,乳酸産生菌の減少がみられる.腸管内の乳酸産生菌の減少は腸管免疫を異常にし,炎症性腸疾患が発症すると考えられる.乳酸産生菌を組み合わせたプロバイオティクスの経口投与により腸内環境を改善できる可能性があり,炎症性腸疾患の治療法になりうると考えられる.
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医学のあゆみ 228巻3号, 233-236 (2009);
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歯周病は,デンタルプラーク(プラーク)中のPorphyromonas gingivalis,Tannerella forsythensis,Treponemadenticolaなどの歯周病原菌の増加によって引き起こされる組織破壊性の慢性炎症性疾患である.歯周病においても歯周病原菌に対してプロバイオティクスを応用する試みがなされており,Lactobacillus salivariusTI2711(LS1)が歯肉縁下プラーク中の歯周病原菌を抑制すると報告されている.腸管だけでなく口腔内においても,病原性の高い細菌叢に対しプロバイオティクスを用いることにより,病原性が低い状態へのフローラコントロールが可能であると考えられ,新しい歯周病の予防あるいは再発防止の有効な手段になるものと期待される.
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フォーラム
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医学のあゆみ 228巻3号, 237-241 (2009);
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医療関連死問題をかんがえる 15
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医学のあゆみ 228巻3号, 243-246 (2009);
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 228巻3号, 249-250 (2009);
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内分泌・代謝学
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医学のあゆみ 228巻3号, 250-251 (2009);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 228巻3号, 252-253 (2009);
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連載
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“大学病院”−課題と展望9
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医学のあゆみ 228巻3号, 254-258 (2009);
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地域医療においてとくに地方の大学が果たしてきた役割は大きく,大学からの医師派遣なしには地方・過疎地医療は成り立ち得なかった.一方,特殊な状況にあぐらをかいて,地域医療を支える医師の養成を真摯に考えてこなかった大学自身にも反省すべき点は多い.しかし,長年続いてきた,“医師養成削減政策”,“医療費削減政策”,国立大学を中心とした“教員の定員削減,法人化による運営費交付金のマイナスシーリング”は大学の教育力を大きく削いできた.さらに,平成16年(2004)からはじまった“医師臨床研修制度”が地方大学からの地域医療支援体制を瓦解させ,地域医療崩壊へと進ませたのである.本稿ではこれらの問題を歴史的流れから整理し,現状の問題点と今後のあり方について概説する.
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医師のための臨床統計学6
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医学のあゆみ 228巻3号, 259-263 (2009);
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被験者の安全と利益を確保しつつ,研究データが信頼できるという保証を与える品質保証の考え方がこれからの医学研究実施には不可欠である.研究方法論によって生みだされるエビデンスの強さはある程度決定されるものの,これは一定の質が前提となる.