Volume 228,
Issue 8,
2009
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あゆみ 頸動脈狭窄の血管内治療
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医学のあゆみ 228巻8号, 807-807 (2009);
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医学のあゆみ 228巻8号, 809-815 (2009);
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頸動脈狭窄の治療目的は,第1に健康寿命の延伸と生活の質の改善,ついで同側の虚血性脳卒中の発症予防であり,狭窄部位の安易な拡張や血管整形より,まず最良の内科治療を開始する.症候性と無症候性とでは血管イベントの頻度や病態に大きな差異がある.症候性では50%未満,無症候性では60%未満の狭窄では外科治療の適応はなく,内科治療を行う.ステント留置術は,無症候性の場合,80%以上の高度狭窄が対象で,内科治療開始後,慎重に経過観察し適応を考慮する.抗血小板薬は症候性では全例に,無症候性では心筋梗塞予防も視野に,中等度以上の狭窄で投与を考慮する.高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙習慣,冠動脈・末梢動脈疾患の合併に留意し統合的に治療する.禁煙指導を徹底し,肥満には食事・運動療法を徹底する.これらの多角的治療で総合的にイベントを予防し,健康寿命の延伸と生活の質の改善を図る.
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医学のあゆみ 228巻8号, 816-819 (2009);
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MRIを使って頸動脈のプラーク性状評価を行うことが可能となってきた.3D heavy T1強調画像による高信号プラークはプラーク内出血を意味し,同側の脳血管障害や頸動脈内膜 /離術中の塞栓と密接な関連のあることが明らかとなっている.頸動脈ステント(carotid artery stenting:CAS)術前における頸動脈プラークのMR画像診断は,術中での微小脳塞栓が少ない,安全なCASを施行するための有用な検査法になるポテンシャルを有している.
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医学のあゆみ 228巻8号, 820-824 (2009);
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頸動脈ステント設置術(CAS)は,カテーテルを用いて経皮的に頸動脈に金属ステントを設置する新しい血行再建術である.2004年に発表されたSAPPHIRE試験〔アメリカで行われた頸動脈血栓内膜切除術(CEA)の高危険群を対象としたCEAとCASの前向き無作為割り付け試験〕において,CASはCEAに劣らないこと(非劣勢)が証明された.この結果を受け,わが国では2008年4月にCASが保険収載された.現在,使用できる器具はプリサイス(自己拡張型ステント)とアンジオガードXP(フィルターデバイス)である.適応はCEAの高危険群で,症候性(脳虚血症状および一過性黒内症などの眼動脈虚血症状を呈する病変)であれば50%以上の狭窄症,無症候性であれば80%以上の狭窄症がCASの適応となる.適応となる内頸動脈の径は5 9 mmである.また,CASを施行するには術者と施設の承認条件を満たさなければならない.
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医学のあゆみ 228巻8号, 825-833 (2009);
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頸動脈狭窄症に対する血行再建術としての経皮的血管拡張術や頸動脈ステント留置術(CAS)は,1990年代前半にはじめられた.わが国でも1997年ごろからCASが導入されはじめ,当初は四肢血管用のバルーン拡張型ステント,その後,四肢血管や胆管用の自己拡張型ステントが用いられるようになり,また1998年にはバルーンを用いた遠位塞栓防止が行われるようになった.その後,わが国における臨床試験のプロセスが手間取るなか,欧米でのCASの普及は著しく,さまざまな頸動脈用ステントや遠位塞栓回避のためのフィルターデバイスが開発,供用された.わが国でもようやく2007年9月にPreciseステントおよびAngioGuardXP(遠位塞栓回避フィルター)が薬事承認され,CAS手技とともに2008年4月から保険収載となった.CAS実施医の資格は関連12学会によって策定されたCAS実施基準に定められており,実施医にはCAS手技についても標準手技の遵守が求められている.ガイドラインに基づいた適切な手技による治療成績の積み重ねにより頸動脈狭窄症に起因するアテローム血栓性脳梗塞の発症,再発予防に貢献することがCAS実施医の責務である.
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医学のあゆみ 228巻8号, 835-838 (2009);
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頸部頸動脈症に対するステント留置術の際には遠位塞栓が最大の問題点となり,これまで,バルーンカテーテルでの段階的distal protection(末梢保護),バルーン付きワイヤーでのdistal protection(手技の全般にわたるtotal protection)が行われてきたが,血行遮断が必要なため,側副血行が乏しく虚血耐性のない患者では使いにくかった.血行遮断を必要としないフィルター付きワイヤーでのdistal protection下での手技は簡便ではあるが,フィルターに多量のdebrisが捕捉され,あるいは血栓形成を生じてslow flowやno flowを生じることも少なくはない.また,フィルターの100μmの孔をすり抜けて多量のdebrisが流される可能性もある.ポリウレタンのfilterには,ウロキナーゼを吸着させることで血栓形成を抑え,soft and fragile plaqueによる狭窄を拡張する場合には,balloon guiding catheterによるproximal protectionを併用したdouble insuranceprotectionが有用と考える.
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医学のあゆみ 228巻8号, 839-842 (2009);
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血行再建後過灌流は脳組織の需要をはるかに越えた脳血流の急激な増加と定義され,過灌流による神経学的脱落症状の出現を過灌流症候群とよんでいる.過灌流は頭蓋内出血および高次脳機能障害の原因となる.脳循環の測定で予知および早期診断が可能である.また,血圧コントロールなど適切な管理で発生・悪化を予防できる.最近,内膜 /離術後過灌流との相違が明らかとなった.
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医学のあゆみ 228巻8号, 843-846 (2009);
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頸部頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術(CAS)は,頸動脈内膜 /離術(CEA)に代わる低侵襲的な治療法として,1990年半ばより出現した.この治療は将来の脳梗塞を予防することが最大の目的であり,長期成績が明らかにされることは頸動脈狭窄の治療を考慮するうえで非常に重要である.比較的新しい治療法であったため長期成績の報告は散見されるのみであったが,2008年に3つの無作為化比較試験の結果が明らかにされた.その結果,CAS後2 4年の長期成績において,CAS治療群の治療側の再発脳梗塞の発生率は2%前後と低く,長期にわたり脳梗塞の再発を抑えられていた.CEA群との比較では有意な差はなく,長期成績に関しては良好と考えられる結果であった.
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フォーラム
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医学のあゆみ 228巻8号, 847-848 (2009);
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医療関連死問題をかんがえる17
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医学のあゆみ 228巻8号, 849-854 (2009);
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医療関連死の問題の議論や検討が進み,厚生労働省から“医療安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止などの在り方に関する試案 第三次試案”が発表され1),法制面でも“医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案”がだされるに至った2).第三次試案においても,これまで通り調査チームの解剖担当医は“病理医や法医”と記されているが,いまなお医療関連死の問題に法医が関与することに大きな抵抗感を覚える臨床医も少なくない. 本稿では,なぜ医療関連死の問題に臨床医学的な視点だけでなく法医学的な視点も重要なのか,また,臨床医が日頃,法医や警察の活動になぜ違和感を覚えるのか,法医学的視点はなぜ臨床医になじみにくいのかについても,病理専門医を取得後に法医となり病理解剖と法医解剖の両者を行った自らの経験をもとに考えてみたい.
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TOPICS
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 228巻8号, 859-860 (2009);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 228巻8号, 860-861 (2009);
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 228巻8号, 861-862 (2009);
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連載
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医師のための臨床統計学9
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医学のあゆみ 228巻8号, 863-869 (2009);
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実臨床あるいは公衆衛生上の意思決定のために,医学研究の証拠の強さはどこまで必要か.意思決定の指針を与えるのがEBMあるいはregulatory scienceの目標であり,本稿では新薬認可と疾病予防の2つの事例を取り上げて議論する.研究成果の適切な普及のために,研究論文形式の標準化の果たす役割は大きい.臨床試験に対する標準形式CONSORTを紹介し,また研究倫理の確保と出版バイアスを防ぐための臨床試験登録制度についても紹介する.
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速報
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医学のあゆみ 228巻8号, 871-872 (2009);
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中高年男性の自殺が急増しているが,自殺完遂者の90%は何らかの精神障害罹患があり,70%はうつ状態であったという報告がある1,2).近年,労働負荷と裁量権のバランス3),上司や同僚のサポート4)などのストレス要因とうつ状態との関連が解明された.しかし,これらの研究は大企業労働者を対象としていた. 中小規模事業場における労働者のストレスと精神健康状態の実態は長年未解明であったため対策もきわめて立ち遅れていたが,近年,大企業以上にうつ状態の人が多いこと5)やメンタルヘルス対策へのニーズも高いこと6)が明らかに