Volume 229,
Issue 4,
2009
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あゆみ “熱帯病”研究の最前線
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医学のあゆみ 229巻4号, 229-229 (2009);
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医学のあゆみ 229巻4号, 231-235 (2009);
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人類の歴史とともに古い歴史をもつ結核菌は18世紀に欧米で大流行し,その後生活水準の向上とともに低蔓延化した.しかしその後,熱帯を中心とする発展途上国の工業化や都市化,保健対策の失敗などによって,このような国や地域の重要な保健問題となっている.1990年以降,この問題が“再興感染症”として見直され,ようやく本格的な対策が講じられることとなり,その成果もみられるようになった.しかし,アフリカを中心に結核蔓延を悪化させているHIV合併結核の問題,治療が困難な多剤耐性結核のようなあらたな課題が浮上しており,それに対して資金,技術,とくにあらたな技術の開発などが,国際社会の一致した努力のもとでいっそう求められている.
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医学のあゆみ 229巻4号, 237-240 (2009);
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熱帯感染症,とりわけ多くの寄生虫疾患は“顧みられない病気(neglected diseases)”ともよばれ,その対策に世界の関心があまり払われてこなかった.しかし,日本は第二次世界大戦後,官民それぞれの立場で途上国の熱帯感染症対策に地道に取り組んできた.政府開発援助(ODA)としてはオンコセルカ症,シャーガス(Chagas)病,フィラリア症などの征圧のために資金や技術援助を行っている.また,日本人研究者,研究機関,製薬企業などの努力により熱帯感染症の治療法の研究開発が行われている.こうした日本の貢献により,世界各地で熱帯感染症対策が功を奏しており,2008年に開催された北海道洞爺湖サミットにおいても,日本が熱帯感染症対策のリーダーシップを発揮した.
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医学のあゆみ 229巻4号, 241-245 (2009);
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デング熱・デング出血熱は蚊で媒介されるウイルス感染症であり,地球温暖化とともに世界的に拡大しており,患者数も増加している.重症型であるデング出血熱の特徴は血管からの急速な血漿の漏出であるが,その機序はまだ解明されていない.2008年にデングウイルス粒子が,マクロファージの細胞膜にあるレクチンのひとつ,CLEC5Aに結合することにより,種々の血管透過性を亢進させるサイトカイン分泌を刺激することが報告され,注目を集めている.予防のためのワクチン開発は進展してはいるが,実用化までには時間がかかりそうである.
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医学のあゆみ 229巻4号, 247-251 (2009);
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AIDS,結核と並び世界の三大感染症のひとつであるマラリアは毎年,3億人がかかり,百万人以上の命を奪っている.マラリアなどの感染症の伝播や流行を研究する分野は疫学であるが,伝播・流行という現象は,病原体の側からみると,病原体がそのゲノムをある世代からつぎの世代へ伝える集団レベルの遺伝現象である.最近,マラリアの集団遺伝学的研究が進展し,従来の疫学研究にはなかったマラリア感染の新しい見方が生まれつつある.本稿では,そうした新しいマラリア感染像を紹介する.そのなかで,1.マラリア原虫の遺伝的多様性が地理的に大きく異なり,それがマラリアの免疫病態と関係していること,2.マラリア原虫は集団中に抗原遺伝子の変異をため込み,多様性を維持しながら感染・伝播を繰り返していることについて,最近の知見と著者らの仮説を紹介する.
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医学のあゆみ 229巻4号, 252-256 (2009);
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マラリアは熱帯地域に広く分布する感染症である.薬剤耐性マラリアの脅威からワクチン開発が緊急の課題と考えられているが,いまだ実用化されたものはない.また,現在もっとも研究の進んでいるワクチン候補ですら,50%の防御効果を示すにとどまっている.マラリア原虫はヒトと媒介蚊の間で複雑な生活環を有しているため,より有効なワクチン開発のためには複数の原虫発育ステージを標的とする新規ワクチン候補分子の探索が必須と考えられている.そこで著者らは2002年に公開されたマラリアゲノム情報をもとに,熱帯熱マラリア原虫の約5,400個の遺伝子のうち6割を占める機能未知分子のなかに新規ワクチン候補抗原が存在すると考えた.大腸菌など既存の技術と比べてマラリア原虫の組換え蛋白質合成に効率のよいコムギ胚芽無細胞蛋白質合成法を用いて,その探索を行っている.
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医学のあゆみ 229巻4号, 257-263 (2009);
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マラリアは世界中で毎年100万人以上の死者を出す寄生原虫感染症であり,再興感染症として現在注目を集めている.日本では40年以上前に駆逐されたマラリアが,現在もなお世界で猛威をふるっている.マラリアが征圧されないひとつの原因として,既存抗マラリア薬に対する耐性原虫の出現と蔓延があげられる.世界人口の40%が感染の危険にさらされているマラリアを征圧するためには,耐性原虫にも有効な抗マラリア薬を数多く開発することが必要である.現在WHOは,中国の生薬からの抽出成分を原料とするアルテミシニン系薬剤と他の抗マラリア薬との併用を推奨している.著者らのグループは,アルテミシニンと同様に環状過酸化構造を有し,構造が簡単で化学合成が容易な化合物群から,抗マラリア活性の強い化合物を見出した.この化合物は単剤でネズミおよびサルマラリアを完治し,クロロキン耐性の原虫にも有効で,ラットに対する毒性も低く,優れた抗マラリア薬である可能性が高い.現在,臨床使用に向けて研究を進めている.
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医学のあゆみ 229巻4号, 264-267 (2009);
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マラリアはハマダラカ属の蚊によって媒介されることをロナルド・ロス(Ronald Ross)が発見して約100年が経った.マラリアコントロールを効率化させるためには,媒介蚊がどこにどれだけいるかを明らかにして,集中的に叩くべき場所を定める必要がある.筆者がベトナムで行なってきたマラリア媒介蚊の分布調査を紹介し,そこで明らかになった村はずれの一軒家への媒介蚊の集中という現象がマラリア感染でどのような意味をもつのかを,Rossらの単純な数理モデルを用いて考察する.平衡状態でのマラリア感染者の割合が蚊の密度およびヒトの密度によってどう変わるかを比較し,マラリア感染者の割合はヒトの密度とともに減少し,ヒトの密度があるレベルを超えるとマラリアは維持されなくなることを示す.この単純な関係はこれまでほとんど忘れられていたが,マラリアコントロールの重点ターゲットの設定に大きな意味をもつと考えられる.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち88
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医学のあゆみ 229巻4号, 269-269 (2009);
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逆システム学の窓24
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医学のあゆみ 229巻4号, 270-274 (2009);
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超高齢社会を進みつつあるわが国は,世界史上例をみない数の知的機能の障害をもった老人とともに生きるという課題が生まれつつある.わが国の疫学調査では,65歳以上の7.8%が認知症と推定され,年齢が5歳増す毎に倍増することが報告されているため,今後も患者の増加は続く可能性が高いという厳しい現実がある.そこで新たに必要とされるのは,家族が認知症を恥と思わず,正面から見ることである.認知症で記銘力が低下するときに,即時型(数分のごく短期),近時型(数分から数カ月の中期),遠隔型(長期)のうち,近時型がまず落ちていく.認知症の老年者に強制的なリハビリが負担となることや,リフォーム詐欺のような財産損失を避けるには,この記憶力の低下のパターンを理解することが大事である.記銘力低下は生活と財産を守る上で,特別の配慮を必要とする.平成12(2000)年に従来の「禁治産者」制度が廃止され,本人を支援する「成年後見人」制度が設けられた.平成16(2004)年に痴呆という用語が尊厳を損なうとして,認知症に変えられた.これらの変化のもつ意味をよく理解して,近時記憶ができなくなっていく患者の生活を守ることが大事である.
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医療関連死問題をかんがえる20
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医学のあゆみ 229巻4号, 275-279 (2009);
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医学のあゆみ 229巻4号, 280-281 (2009);
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医学のあゆみ 229巻4号, 282-287 (2009);
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TOPICS
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 229巻4号, 293-294 (2009);
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糖尿病・内分泌代謝学
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医学のあゆみ 229巻4号, 294-295 (2009);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 229巻4号, 296-297 (2009);
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連載
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医師のための臨床統計学15
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医学のあゆみ 229巻4号, 298-302 (2009);
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データから計算される統計量の分布を研究する分野が標本分布理論である.解析的に正確な議論を行うことはしばしば困難で,中心極限定理を利用した正規近似や,in silico実験と呼ばれるコンピュータ・シミュレーションを用いることが実用上はほとんどである.一様分布の和の分布についての実例を示し,大数の法則と中心極限定理についても整理する.