Volume 229,
Issue 7,
2009
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あゆみ 炎症と糖尿病・メタボリックシンドローム
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医学のあゆみ 229巻7号, 505-505 (2009);
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医学のあゆみ 229巻7号, 507-511 (2009);
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近年,メタボリックシンドロームの基盤病態として肥満の脂肪組織における炎症性変化が注目されている.肥満の脂肪組織では,脂肪細胞の肥大化や数の増加という脂肪細胞自身の変化のみならず,血管新生や細胞外基質の増加,マクロファージを中心とした免疫担当細胞の浸潤のような脂肪組織リモデリングとでもいうべきダイナミックな変化をきたしている.このような変化は脂肪細胞の肥大化に伴うストレスシグナルの活性化や脂肪細胞とマクロファージの相互作用を惹起し,炎症関連因子の産生亢進をもたらすと考えられている.脂肪組織リモデリングは脂肪組織の形態的変化のみならず機能的変化を伴うものであり,肥満の病態や全身のエネルギー代謝に関与していると予想される.
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医学のあゆみ 229巻7号, 512-518 (2009);
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肥満では脂肪細胞が肥大化し,アディポネクチン(Ad)が低下し,脂肪組織において酸化ストレスが増加するなどしてケモカインであるMCP 1の発現・分泌が増加し,動脈硬化巣と同様,classicalに活性化されたM1マクロファージの浸潤が認められる.肥大化した脂肪細胞と活性化されたM1マクロファージの相互作用によって炎症が惹起され,TNF αやFFAなどの悪玉アディポカインの発現・分泌が協調的・統一的に増加し,善玉アディポカインであるAdの低下と相まってインスリン抵抗性,メタボリックシンドローム(MS),糖尿病,心血管疾患が惹起・増悪される.脂肪細胞を小型化させたりAd/AdipoRの経路を活性化させることが,これら疾患の原因に基づいた治療法として期待される.
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医学のあゆみ 229巻7号, 519-522 (2009);
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メタボリックシンドロームは,内臓脂肪の蓄積に伴って耐糖能異常や脂質異常症,高血圧が集積した疾患概念であり,動脈硬化性疾患の危険性が高い.近年,肥満に伴う脂肪細胞の肥大とマクロファージの集積がこれらの病態の原因であると考えられており,脂肪組織から産生されるTNF αやIL 6などの炎症性サイトカイン,活性酸素種(ROS)の産生増加が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはインスリン抵抗性とアディポサイトカイン産生異常を引き起こしており,メタボリックシンドロームの病態形成に重要な因子である.
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医学のあゆみ 229巻7号, 523-525 (2009);
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肥満に伴うインスリン抵抗性は,全身の低レベルの炎症状態であると考えられている.脂肪組織は炎症の場としてもっとも重要な臓器のひとつであるが,そこではM1/M2とよばれる2種類のマクロファージが異なる働きをしている.正常脂肪組織に常在するマクロファージのほとんどはM2である.これらは抗炎症性サイトカインを高発現し,インスリン感受性維持への関与が示唆されている.一方,肥満に伴い脂肪組織にはM1マクロファージの数が著増する.M1マクロファージはTNF αなど炎症性サイトカインを高発現し,インスリン抵抗性の発症に関与する.本稿では,脂肪組織に浸潤するM1/M2マクロファージに関する最近の知見を紹介する.
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医学のあゆみ 229巻7号, 526-530 (2009);
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脂肪細胞からはさまざまな生理活性を有するアディポカインが分泌されるが,その分泌異常により脂肪の蓄積や脂肪細胞の大型化,インスリン抵抗性,さらには動脈硬化などの慢性血管合併症が引き起こされる.近年,新規アディポカインが同定されてきているが,著者らは新たなアディポカイン,vaspinを同定した.Vaspinはα1アンチトリプシンと約40.5%のホモロジーを有し,セリンプロテアーゼインヒビター(serpin)に属している.OLETFラットにおけるvaspinの発現調節の検討や,ICRマウスへのリコンビナントvaspin蛋白の投与実験から,vaspinは抗肥満・抗糖尿病効果を有することが明らかになった.その作用機序についてはプロテアーゼの阻害や,受容体また低分子との結合などの可能性が考えられ,現在詳細な検討を進めている.
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医学のあゆみ 229巻7号, 531-537 (2009);
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脂肪組織の過剰状態である肥満は,遺伝的素因に加え,過食や運動不足などの生活習慣により発症すると考えられている.肥満による生活習慣病の発症と深くかかわっていることが明らかとされている病態にインスリン抵抗性があり,脂肪細胞より分泌されるアディポサイトカインや脂肪組織での慢性炎症が中心的役割を果たすことが示唆されている.著者らは生活習慣病治療のターゲットとして脂肪細胞に着目し,肥満によるインスリン抵抗性の発症機構の解明とその制御に取り組み,脂肪細胞分化のマスターレギュレーターである転写因子PPARγを誘導する転写因子群のひとつであるKLF15を同定した.さらに最近,ChIP chip解析と遺伝子発現プロファイリング解析から,脂肪細胞でのKLF15の新規標的遺伝子としてアドレノメデュリンを見出した.これら標的遺伝子の発現制御を介して,KLF15が肥満病態における脂肪細胞の性質を決定している可能性が推定される.
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医学のあゆみ 229巻7号, 539-542 (2009);
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著者らは,レーザー共焦点顕微鏡と分子プローブを用いることにより,未固定の脂肪組織をそのまま観察できる方法や,脂肪組織内の血流・細胞間相互作用をリアルタイムで解析できる手法を開発した.この方法を用いて脂肪組織の肥満を観察した結果,間葉細胞や血管との相互作用による脂肪新生,脂肪細胞死とマクロファージによる貪食,血管新生,血管内皮 白血球相互作用などダイナミックな組織学的変化が生じており,脂肪組織肥満は慢性炎症性疾患であることが明確に示された.このように生組織分子イメージング法は,肥満における脂肪組織の変化をまったく新しい視点からとらえることを可能にするだけでなく,分子へのインターベンションや細胞機能解析用の分子プローブを用いることにより,細胞・遺伝子機能の解析,さらには診断や治療法へと発展するポテンシャルをもつ.
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医学のあゆみ 229巻7号, 543-546 (2009);
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著者らは新規生理活性物質を探索する目的でスクリーニングを行い,延べ26,000遺伝子のなかから最終的に3T3L1細胞において,脂肪分化とともに強く発現誘導が起こる未知の分泌蛋白として同定したのがケマリンである.ケマリンは,ケモカイン受容体のファミリーであるChemR23に特異的に結合することから,ケモカインの一種として免疫や炎症を調節するのではないかと考えられていた.2007 2008年にかけて著者らを含む4つのグループから,独立してケマリンがアディポカインであるということが報告された.ケマリンは脂肪分化とともに発現するアディポカインのひとつであり,代謝の状態によって調節され,脂肪細胞機能を制御している.さらに全身の代謝調節に重要な役割を果たしていることが,ノックアウトマウスの解析,ヒト血中濃度の解析によって明らかになってきた.
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医学のあゆみ 229巻7号, 547-552 (2009);
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肥満に伴う代謝異常のおもな要因のひとつとして,過栄養下に皮下脂肪を十分に蓄えられない遺伝的背景が内臓脂肪組織あるいは骨格筋,肝,膵,血管周囲などの非脂肪組織に過剰な脂質蓄積(ectopic lipid overload)をもたらし,インスリン感受性の悪化や臓器(組織)機能の異常を招来するという知見が集積してきている.著者らが取り組んできたヒト皮下脂肪組織解析で浮き彫りになったことは,マウス病態モデルで肥満と強い関連性が示された分子群の発現がかならずしもヒトの肥満脂肪組織で増加しているとは限らないという事実であり,ヒトの肥満脂肪組織における遺伝子発現の変化を正確に再現する脂肪細胞培養系はいまだ確立されていないという認識をあらたにしたことであった.本稿では,肥満や過栄養に伴う脂肪細胞肥大と代謝異常の関連についての最近の知見を概観し,ヒトの肥満脂肪組織の解析から得られた著者らの研究結果の一端を紹介したい.
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フォーラム
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建築物環境とその健康影響−
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医学のあゆみ 229巻7号, 553-554 (2009);
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TOPICS
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再生医学
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医学のあゆみ 229巻7号, 557-557 (2009);
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感染症内科学
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医学のあゆみ 229巻7号, 558-559 (2009);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 229巻7号, 559-560 (2009);
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連載
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がん診療連携拠点病院にみる工夫−レベルアップをめざして2
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医学のあゆみ 229巻7号, 561-568 (2009);
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がん対策基本法〔平成18(2006)年法律第98号〕および“がん対策推進基本計画”(平成19年6月15日閣議決定)に基づき,都道府県は専門的ながん医療の提供などを行う医療機関の整備をはかるとともに,がん診療の連携協力体制の整備をはかるほか,がん患者に対する相談支援および情報提供を行うため,都道府県がん診療連携拠点病院にあっては都道府県に1カ所,地域がん診療連携拠点病院にあっては二次医療圏に1カ所整備することになった. 本稿では当院(がん・感染症センター都立駒込病院)が都道府県がん診療連携拠点病院としての役割として担うべき責務について,ついで当院ががん診療連携拠点病院として特別に行っていることと,それにかかわる臨床上の取り組みについて概説する.
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医師のための臨床統計学16
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医学のあゆみ 229巻7号, 569-575 (2009);
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統計的推測の3つの枠組み(現実の有限母集団からのランダムサンプリング,仮想的母集団からの仮想的ランダムサンプリング,ランダム化)を,それぞれの“確率”の定義とともに述べる.推測の4つの形式(推定,検定,予測,選択)についてベイズ流も含め簡単に紹介し,推測の枠組みの正しさがかならずしも保証されない点で,統計的推測が純粋数学の推論と異なる点を強調する.