医学のあゆみ
Volume 230, Issue 1, 2009
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【7月第1土曜特集】乳癌治療Update − 最新診療コンセンサス
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- 診 断
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乳癌における超音波診断の新展開
230巻1号(2009);View Description Hide Descriptionデジタル技術の進歩に支えられて乳癌の超音波診断の進歩はめざましいものがある.基本であるBモード画像も,ハーモニックイメージをはじめとするデジタル技術により向上し,さらにフローイメージングやエラストグラフィといった手法も有用となっている.乳癌の治療も近年あらたな研究がつぎつぎに進み,それにつれて超音波診断に求められるものも,単に病変の存在診断や良悪性診断のみではなく,組織型診断にはじまり,その拡がり診断,術前薬物療法の効果判定など幅広いものとなってきている.また,超音波以外の画像診断の有用性も増しており,総合画像診断として超音波診断をより有効に臨床応用していくことが求められている. -
乳癌診療におけるPET/CTの有用性
230巻1号(2009);View Description Hide Description18F fluoro deoxiglucose(FDG) PETの原理は,癌細胞の糖代謝が正常組織より高く,FDGの集積が高いことを利用し,腫瘍の代謝機能を画像化する装置である.空間分解能が低いことが欠点であったが,PET装置とCT装置を組み合わせることによって集積部位の解剖学的な部位が正確にわかるようになり,正診率が向上した.現在,乳癌の診療においては,原発巣,腋窩リンパ節転移の描出,局所再発,遠隔再発,転移の検出に威力を発揮している.造影CT画像との融合画像を利用すれば治療効果判定や,広がり診断にも活用できる可能性がある.しかし,FDGの代謝は癌に特異的なものではないため,偽陽性・偽陰性の原因についてはよく理解しておく必要がある.また,最近は空間分解能を改善させたpositron emission mammography(PEM)も開発され,わが国での早期導入が期待される. -
乳房温存手術における断端診断
230巻1号(2009);View Description Hide Description温存乳房内再発を抑えるために断端陰性を保つことが強調されており,温存乳房内への癌遺残の可能性を知るために乳房温存手術の断端診断が行われている.癌研では,癌が取り切れていることが病理学的に保証できる場合には放射線照射を併用しないという方針で乳房温存療法に取り組んでいる.癌の完全切除が病理学的に保証できない場合には放射線照射を併用するか,あるいは温存乳房内再発の危険が高いと判断された場合には乳房切除術が施行されている.癌研での“断端陰性”は,癌が完全に取り切れていることを保証できることを意味する.断端診断を論じるときに,どのような手術標本であるのか,どのような病理検索方法であるのか,そのうえでどのような判定基準で行っているのかということが大事である.本稿では著者らが日常行っている断端診断の方法を紹介しながら,その考え方について述べる. -
家族性乳癌の診断と治療
230巻1号(2009);View Description Hide Description家族性乳癌は遺伝的背景により同一家系に多発するもので,その多くはBRCA1またはBRCA2遺伝子の変異が原因と考えられている.BRCA1/2遺伝子変異による乳癌は,若年発症,両側性などの特徴があり,これを考慮して治療計画を立てる必要がある.欧米ではこれら遺伝子変異保因者に対する予防的乳房切除や卵巣切除,およびtamoxifenなどによる乳癌発症予防がすでに実地臨床として行われている.一方,わが国では最近になってようやくBRCA1/2遺伝子の変異検査が実地臨床として可能になったばかりで,変異保因者における浸透率や対側乳癌発症率などに関して,多くのデータを今後蓄積していかねばならない.健康保険制度のもと,いかに変異保因者を検診し発症予防をはかっていくかが今後の課題である. - 最新治療トピックス
- 【ホルモン療法】
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ホルモン療法耐性の分子機序−エストロゲン関連細胞内シグナル経路の変化
230巻1号(2009);View Description Hide Description乳癌の過半数はエストロゲン受容体(ER)が発現しており,ERを標的とした治療であるホルモン療法の対象となる.しかし,治療後に再発する例もあり,その機序の解明が求められている.当初から耐性である場合もあるかもしれないが,多くは治療中に耐性を獲得したものと思われる.近年,エストロゲンシグナル経路の分子レベルでの研究が進展し,ホルモン療法耐性獲得につながると思われるメカニズムが明らかとなってきた.リン酸化シグナル経路の関与によるエストロゲン非依存性のER活性化もその候補のひとつである.このような場合,どのリン酸化経路が必須な役割を果たしているかが明らかとなれば,耐性乳癌に対する治療として,その経路を抑制する分子標的治療やホルモン療法と分子標的治療との併用が有効となる可能性がある.いずれにせよホルモン療法耐性のメカニズムを解明することは,乳癌の診断と治療の進歩,患者の利益と乳癌死亡率の低下に大きく貢献するものと思われる. -
ホルモン耐性と薬物療法−シグナル伝達阻害薬との併用
230巻1号(2009);View Description Hide Descriptionホルモン受容体陽性で閉経後進行再発乳癌の臨床試験の結果からは,タモキシフェン耐性乳癌に対してもアロマターゼ阻害薬によって23~46%のクリニカルベネフィットが得られている.また,アロマターゼ阻害薬耐性の乳癌においても,タモキシフェン投与によって30~50%のクリニカルベネフィットが報告されている.このように,タモキシフェンとアロマターゼ阻害薬ではかならずしも交差耐性は生じておらず,耐性メカニズムは異なることが推測され,ホルモン抵抗性の乳癌に対しては作用の異なるホルモン剤の投与が考慮される.さらに,ステロイド性と非ステロイド性アロマターゼ阻害薬間でのスイッチも有効性が認められており,アロマターゼ阻害薬間での変更も効果が期待される.ホルモン抵抗性獲得機序として増殖因子の活性化が重要な役割を果たしていることから,活性化したシグナルを阻害することによってホルモン感受性が回復すると考えられる.Trastuzumabとアナストロゾールを併用する臨床試験では,アナストロゾール単独より有意に良好な臨床効果が示されている.現在,HER1(EGFR)阻害薬のgefitinibやerlotinib,HER1,HER2阻害薬であるlapatinib,mTOR阻害薬やc Kit阻害薬とホルモン剤を併用した臨床試験が進行中である.シグナル伝達阻害薬とホルモン剤の併用は有効性が期待されるものの,ほとんどデータがないのが現状であり,今後これらの臨床試験によってホルモン抵抗性の克服にどの程度有効か,明らかになっていくであろう. -
アロマターゼ阻害剤を取り巻く最近の話題−ステロイド系と非ステロイド系阻害剤の差異
230巻1号(2009);View Description Hide Description閉経期以降のエストロゲン受容体(ER)陽性の乳癌患者の内分泌療法では,アロマターゼ阻害剤(AIs)がタモキシフェンなどのER拮抗薬に代わりおもな選択薬となっている.AIsはその化学構造および作用機序から,非ステロイド系とステロイド系阻害剤に分類される.この両者とも効果的にアロマターゼ活性を阻害し臨床的抗腫瘍効果を示すが,アロマターゼ分子の阻害部位が異なることから,微妙な差異が認められる.臨床的に重要なのは,この両者間でcross resistanceが認められない症例があること,すなわちどちらかの阻害剤に抵抗性を示す症例でも他のクラスの阻害剤には反応する可能性を有していることがまずあげられる.つぎに,いまだ完全に確立はされていないが,ステロイド系阻害剤の有するアンドロゲン作用が注目されている.将来的には科学的エビデンスに基づいて,より効果のあるAIsを個々の患者に使い分けることが期待される. -
タモキシフェン代謝酵素の遺伝子多型と効果− CYP2D6遺伝子多型解析による乳癌のオーダーメイド医療
230巻1号(2009);View Description Hide Descriptionホルモン感受性乳癌に対する治療薬タモキシフェン(TAM)は,乳癌根治術後の再発予防にある一定の効果を示すことが証明されている.TAMは肝でCYP2D6という酵素によって代謝を受け,エンドキシフェンとなり乳癌細胞増殖抑制効果を発揮するが,CYP2D6には酵素活性に変化をもたらす多くの遺伝子多型が存在する.われわれは日本人に頻度の高いCYP2D6*10(活性減弱型)とTAM治療効果との関係を検討したところ,CYP2D6*10をホモでもつ症例で有意に無再発生存期間が短縮していた.欧米においてもCYP2D6*4とTAMの効果の関係を検討したところ,*10同様*4のホモ(活性消失型)で有意に無再発生存率の低下を認めており,TAMの治療効果の指標としてCYP2D6の遺伝子検査を用いることにより,乳癌治療におけるオーダーメイド医療が可能になるものと考えられる. - 【最新の治療戦略】
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術前薬物療法の新展開−JBCRG Studyのあゆみ
230巻1号(2009);View Description Hide Description当初,進行乳癌のdown stagingを目的に臨床に導入された術前薬物療法は,術後薬物療法に成績が劣らないこと,組織学的完全緩解(pCR)群で予後が改善されることが示されてから,早期乳癌の治療にも積極的に用いられるようになってきた.pCRを生存率改善の代理マーカーとすることによって比較的短期間で結果を得ることができることや,in vivoでの薬剤感受性を知ることができることは大きなメリットである.また,試験の結果を科学的に検証するtranslational researchと組み合わせることによって,効果予測や効果のモニタリング,効果や耐性のメカニズムの解明が進めば,個々の患者に最適な治療が行えるようになると予想される.JBCRGではさまざまなプロトコールを通して良質な多施設共同臨床試験,関連する臨床研究を遂行している. -
トリプルネガティブ乳癌に対する治療戦略
230巻1号(2009);View Description Hide Descriptionエストロゲンレセプター(ER),プロゲステロンレセプター(PgR),HER2(human epidermal growth factorreceptor 2)のすべてが陰性であるトリプルネガティブ(TN)乳癌は,ホルモン療法,抗HER2療法の標的とならず,確立された標的療法はない.TN乳癌は単一の疾患ではなく,種々の腫瘍の集まりであるが,その大部分は遺伝子発現パターン分類による基底膜細胞型(basal like)乳癌である.Basal like乳癌はTN乳癌であることに加えて,EGFRやサイトケラチン5/6,C Kit癌遺伝子が陽性であるとされ,これらを標的とする治療が試みられている.また,basal like乳癌とBRCA1遺伝子機能不全とは関連があり,DNA修復機構の異常を修飾するようなDNA障害性抗癌剤やDNA単鎖修復酵素の阻害薬,さらには血管新生阻害薬なども検討されている. -
トラスツズマブ耐性とその対策
230巻1号(2009);View Description Hide Description乳癌全体の15%を占めるHER2陽性乳癌の治療成績は,HER2を明確なターゲットとした分子標的治療薬(トラスツズマブ)の開発により,ここ数年で飛躍的に向上した.しかし,初回治療からトラスツズマブ抵抗性の腫瘍や,いったん治療効果を示しながら経過とともに耐性となるケースも多い.近年,トラスツズマブ耐性機構の解明も急速に進歩し,腫瘍だけの変化にとどまらず,宿主側(患者側)の要因も重要と考えられるようになった.さらに,この耐性腫瘍への新規薬剤の開発も急ピッチで進み,臨床試験でも高い有効性が示され,今後は多彩な薬剤を個別化する因子の標準化が求められる.本稿では,現在わかっているトラスツズマブ耐性機構と新規薬剤開発の現状について述べる. -
ビスホスホネート製剤の最新知見−再発予防としての術後補助療法
230巻1号(2009);View Description Hide Description骨転移成立には,癌種を問わず破骨細胞の活性化が重要であることが証明されている.骨転移巣微小環境において破骨細胞の活性化は骨内の増殖因子を溶出することにより転移巣の増殖を促進する悪循環が認められ,病状進行により病的骨折,高カルシウム血症,骨痛の原因となり,さらに骨痛に対する放射線治療などのいわゆる骨関連事象(skeletal related events:SRE)を招き,QOL阻害因子となっている.破骨細胞活性によって起こされるこれらSREは,生理的ピロリン酸の類縁物質であるビスホスホネートにより抑制できることから,ビスホスホネートは現在,骨転移治療の中心的薬剤となっている.現在もっとも強力なビスホスホネートはゾレドロネートで,前臨床では骨転移抑制のみならず抗血管新生作用,癌細胞浸潤能抑制,癌細胞のアポトーシス誘導,さらにγδT細胞の誘導など,抗腫瘍作用が注目されている.それを裏づけるようにゾレドロネートを用いた再発予防試験では無再発生存率の向上などが示されつつあり,ヒトにおいても抗腫瘍効果が証明されつつある. - 【治療効果予測】
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Oncotype DxとTAILORx−治療効果予測はどこまで可能か?
230巻1号(2009);View Description Hide Descriptionホルモン受容体陽性の乳癌は予後良好で,術後の補助療法は内分泌療法のみが選択される場合が多い.ただ,中間リスク群の患者に化学療法を行うかは判断が曖昧である.近年,乳癌組織から21種類の遺伝子を解析し,再発スコアを算出して患者をリスク分類し,個別的に治療方針を決定するOncotype DXとよばれる検査が普及してきた.対象はエストロゲン受容体陽性乳癌で,タモキシフェン投与予定の患者である.大規模多施設臨床試験の検体で,再発スコアが再発率や死亡率の予測因子になること,従来のリスク分類より正確であること,高リスク群への化学療法が有効なことなどが立証されている.さらに,中間リスク群の治療方針を決定するため,TAILORxという臨床試験が進行中である.Oncotype DXで再発・転移の可能性が低い集団を特定して化学療法を回避できれば,患者の生活の質を向上させられるであろう. -
MammaPrintとMINDACT trial−予後予測と補助療法個別化はどこまで可能か
230巻1号(2009);View Description Hide Description乳癌における術後の再発リスクと治療方針は,ホルモン感受性とHER2発現を含めた臨床病理学的因子により決定されることが多い.再発リスクが中等度以上の患者には術後化学療法が推奨されるが,抗癌剤の副作用に起因するリスクと,再発の軽減というベネフィットを考慮して選択する必要がある.再発リスクの評価はこれまでの方法では限界があるため,新しいリスク評価法として遺伝子発現プロファイルに基づいた予後予測が検討され,マイクロアレイ技術を応用して誕生した予後予測ツールがMammaPrintである.MammaPrintは早期の再発予測に有用な70遺伝子セットからなり,予後予測ツールとしての有用性を明確にするための前向き臨床試験としてMINDACT(Microarray for Node negative Disease may Avoid ChemoTherapy)trialが現在進行中であり,抗癌剤の効果予測因子としての側面も期待が寄せられている. -
遺伝子発現情報に基づいた乳癌薬物療法の有効性診断−乳癌の抗癌剤感受性予測
230巻1号(2009);View Description Hide Description薬剤選択の明確な指標,すなわち薬剤に対する感受性を正確に予測することは,個々の薬剤の治療効果を最大限に発揮させるだけでなく,個別化医療(オーダーメイド医療)を実現させるうえでも重要な研究課題である.近年のマイクロアレイに代表されるゲノム科学の進歩に伴い,癌をはじめ多くの疾患で分子レベルでの解明が進んでいる.癌細胞における遺伝子発現プロファイルや患者個人の遺伝子多型などの分子レベルでの情報が,癌の発生や進展だけでなく治療効果や副作用にも影響することが明らかとなってきている.これらを臨床に応用させ,薬剤に対する治療効果を正確に予測し,癌の性質や一人ひとりの患者の体質に合わせて最大の治療効果が期待される治療法が確立されつつある. - 【新規抗がん剤】
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副作用対策を考慮した新規薬剤
230巻1号(2009);View Description Hide Description乳癌治療の中心薬剤であるアンスラサイクリン,タキサンの毒性軽減をめざして,新規薬剤が開発されている.心毒性を軽減するリポソゾーム抱合型のドキソルビシン,アレルギー症状を回避するナノパーティクル・アルブミン結合型パクリタキセル,可逆性の末梢神経障害であるイキサベピロンなどが臨床に登場している.遺伝子発現検査による予後予測から抗癌剤適応を適正化することも広義の毒性軽減である.分子標的薬剤は癌細胞標的へより特異的に作用するため正常細胞への影響が少なく,毒性の軽減を図ることが可能である.抗HER2治療としてトラスツズマブ,ペルツズマブ,トラスツズマブ DM1,ラパチニブ,ネラチニブ,血管新生抑制剤としてベバシズマブ,スニチニブ,パゾパニブ,アキシチニブなどが研究中である.これらの新規薬剤の導入によって,毒性が少なく効果の高い治療が現実のものとなりつつある. -
血管新生と乳癌治療戦略
230巻1号(2009);View Description Hide Description乳癌の薬物療法は,抗血管新生治療薬であるベバシズマブ(アバスチン)の登場により変革期を迎えている.現在,血管新生の基礎的背景に基づいた新規分子標的治療薬剤やメトロノミック治療の開発が進められている.抗血管新生療法と従来の治療法を有効に活用することにより,さらに高い治療効果,低い毒性の治療法が期待される.今後あらたな治療戦略の構築が望まれる. - 最新研究トピックス
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乳癌幹細胞
230巻1号(2009);View Description Hide Description白血病においてその存在が証明された癌幹細胞は,乳癌を含む固形腫瘍においても存在する証拠が蓄積されてきている.腫瘍形成能を指標とした評価方法により,ヒト乳癌幹細胞はおそらく基底細胞を起源として発生したアルデヒドデヒドロゲナーゼ1を高発現するCD24陰性・CD44陽性細胞であることが示されている.また,抗酸化遺伝子などの発現が高く,治療に対して抵抗性を示す細胞であることがわかってきた.癌幹細胞の特性や周辺の微小環境との相互作用を明らかにすることは,あらたな治療戦略を考案するために重要である. -
非浸潤性乳管癌の基礎と病理−最新知見
230巻1号(2009);View Description Hide Description乳癌の大部分は乳管上皮が癌化したものとされ,最初は乳管上皮を置き換えて乳管内のみで増殖し,間質浸潤を示さない.この状態の乳癌を非浸潤性乳管癌(DCIS)とよぶ.病理学的にはDCISは数種類の亜型に分類され,その多くが篩状型と面疱型,それ以外に充実型,乳頭型,低乳頭型,平坦型などがあり,それぞれ形態的特徴を有し生物学的ふるまいにも差がある.遺伝子レベルでは篩状型,乳頭型は16q欠失,1q増多が高頻度でみられ,これらは転座による派生染色体der(1;16)またはder(16)t(1;16)形成を伴うことが多いとされる.一方,面疱型はHER2遺伝子増幅,Tp53変異,種々の染色体領域の増減など,多数の遺伝子変化が蓄積している.DCISは臨床的にTisN0M0,病期0に分類され,乳房切除で完全に取り切れれば治癒するが,近年,乳房温存療法が行われる例も増えた.乳房温存療法後の局所再発リスク因子としてVan Nuys予後係数分類が提唱されている. -
がんペプチドワクチン療法の新展開
230巻1号(2009);View Description Hide Description近年,がんワクチン療法は臨床応用が開始され,がんに対する新規治療法として期待・関心が急速に高まりつつある.著者らは網羅的遺伝子解析から標的分子を同定し,がん細胞に特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導するがんペプチドワクチン療法を開発し,トランスレーショナル・リサーチを実施してきた.研究者と臨床医が一体となって,がんに対する新規治療法のエビデンスを確立し,世界へ発信する試みははじまったばかりである.著者らの研究グループにおいて,ゲノム包括的解析により同定された新規腫瘍抗原や,腫瘍新生血管を標的としたVEGF受容体に由来するHLA A*2402拘束性エピトープペプチドを用いた特異的ペプチドワクチン療法は,医師主導型臨床試験として,化学療法が効果を示さなくなった各種進行再発癌に対して第I相臨床試験が実施された.さらに,膵癌においては,全国規模の第II/III相治験が実施されている.これらがんワクチン療法の広がりのなかで,乳癌に対するがんペプチドワクチン療法についても国内数施設で第I相臨床試験が開始された.
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