Volume 230,
Issue 2,
2009
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あゆみ “光る動物”の医学への応用
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医学のあゆみ 230巻2号, 127-127 (2009);
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医学のあゆみ 230巻2号, 129-133 (2009);
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ゲノムプロジェクト終了後,多くのヒト疾患関連遺伝子がショウジョウバエにおいても保存されていることが明らかになっている.ヒト疾患関連遺伝子の機能や発症機構の理解を目的としたショウジョウバエ・ヒト疾患モデルが多数作出されており,これまでショウジョウバエモデルにおいてあらたに発見された知見は他のモデル動物を用いた実験系の追随を許さない.本稿では感染症,神経科学,癌研究などおもに医科学分野において利用されたショウジョウバエ・ヒト疾患モデルに関して,とくにGFPに代表される螢光蛋白質を用いたモデルを中心に,その概要および最新の知見,そして今後の展望について述べる.
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医学のあゆみ 230巻2号, 135-140 (2009);
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半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨で,自己修復能に乏しいため,再生医療の開発が望まれている.間葉幹細胞の関節内投与により半月板が再生されるか,ラット広範囲半月板切除モデルで検討した.移植細胞追跡のため,ルシフェラーゼとLacZ遺伝子を同時発現するダブルトランスジェニックラット由来の滑膜幹細胞を移植用に用いた.幹細胞を関節内に注射すると,切除した半月板の再生が促進された.また,注射した細胞が損傷組織に生着し,直接半月板様細胞に分化する機序が存在すること,関節内注射した間葉幹細胞は一過性に増殖するがその後漸減すること,注射した細胞は他臓器へ移動しないことが明らかになった.マウスでは小さすぎて解析困難な実験モデルに対してラットは有用であり,ルシフェラーゼとLacZのダブルトランスジェニックラット由来の細胞は,移植後の挙動を生きたままダイナミックに観察でき,さらに組織学的に詳細に解析できる点で有用性が高い.
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医学のあゆみ 230巻2号, 141-145 (2009);
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バイオマーカーでマーキングした細胞や組織はin vivoで容易に同定できるため,緑色螢光物質EGFPを全身に発現するトランスジェニック動物の細胞や組織は,移植治療や再生医療の研究分野において移植細胞の分化誘導や組織の生着再生をトレースする重要なツールとして汎用されている.一方,中型実験動物のウサギは大きな飼育スペースを必要とすることが利用を大きく制限しているが,小型実験動物では難しい高度な外科的手技も施せることから見直されている.そこで,ユビキタスプロモーター(CAG)を用いて全身にEGFPを発現するトランスジェニックウサギの作製に取り組んだ.発現させたEGFPは生体に毒性を示して,強発現のファウンダーは性成熟前に死亡した.多数のファウンダーのなかからEGFPを適度に発現して細胞をマーキングでき,次世代に遺伝子伝達ができるトランスジェニックウサギを得て系統を樹立することができた.
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医学のあゆみ 230巻2号, 147-151 (2009);
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本稿では,新規に開発された赤色系螢光蛋白であるKusabira Orange遺伝子を導入したトランスジェニッククローンブタの作出について紹介する.Kusabira Orange遺伝子はヒラタクサビライシ(学名Fungiaconcinna)というサンゴからクローニングされた,最大励起波長が558 nm,放出波長が583 nmの二量体蛋白質である1).著者らは,レトロウイルスベクターによってKusabira Orange遺伝子を導入された胎仔線維芽細胞を用いて体細胞核移植を行い,全身性に赤色螢光を発現するトランスジェニッククローンブタを作出することに成功した2).螢光細胞マーカーをもつ齧歯類実験動物は有力な研究手段としてすでに多用されている.同様に,赤色螢光ブタは大型動物を用いたトランスレーショナルリサーチに役立つことが期待される.
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医学のあゆみ 230巻2号, 153-157 (2009);
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マラリア原虫の染色体に緑色螢光蛋白(GFP)遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子を導入した.これらトランスジェニック原虫を用いることで,マラリア原虫の生活史をより正確にとらえることができるようになった.すなわち,マラリア原虫をもったハマダラカが刺咬すると,原虫はまず皮膚にとどまること,一部は血管内に移動して肝に至りそこで増殖すること,肝以外では増殖していないこと,その後血流中に入り増殖を続けることなどが明らかとなった.これらの新知見に基づき,著者らはハマダラカ刺咬直後に刺咬部を加熱することで,マラリア原虫を不活性化し,マラリアの発病を抑えられることを見出した.光るマラリア原虫を用いることで今後は抗マラリア薬の効果判定を行ったり,マラリア再発のメカニズムを探ったり,さらに多くの研究が進展するものと思われる.
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フォーラム
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医学のあゆみ 230巻2号, 159-162 (2009);
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逆システム学の窓26
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医学のあゆみ 230巻2号, 163-166 (2009);
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がんを手遅れにしないためには早期発見が鍵である.がんの確定診断は病理検査によるが,組織を採るバイオプシーは痛みを伴い,危険である.ゲノム解読とともに,がんに特異的なマーカーが数多く同定され,血液検査で疑いがもたれた患者に限って病理検査をすれば,効率よく早期発見が可能となる.現在,前立腺癌はアメリカでは男性罹患率1位,死亡率2位のがんで対応が急がれる.わが国でも,80歳以上の男性の3割以上に存在し,多くはゆっくりと進展する.前立腺癌の検査には血液PSA検査というよいマーカーがあるが,わが国のガイドラインでは,予防検診でPSAを測定することは,死亡率を減少させる証拠がないのでがん対策としては認められないとしている.ところが,前立腺癌はある時点で悪性度が増し,骨など全身に転移し,痛みと多臓器不全から致命的疾患へ転化する. 今年,PSA検査の有効性について,2つの大規模スタディの結果が発表され,ヨーロッパでは有効,アメリカでは無効と真っ向から対立している.内訳をよくみると,アメリカの大規模試験では,PSAを測らないとした群で50%以上が実は測定していたことがわかった.ヨーロッパのスタディは,PSA検査は,その後のバイオプシーの適応を選ぶのに有効であることを示している.的確な診断は治療の基礎となるだけでなく,病気の理解と治療法開発にも鍵となる.「証拠となるスタディがないから医療費削減」というガイドラインは適切ではない.アメリカではPSA検査の導入後,国全体での前立腺癌の死亡率は4%も減少していることをきちんと評価すべきであろう.
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書評
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医学のあゆみ 230巻2号, 167-167 (2009);
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 230巻2号, 171-172 (2009);
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消化器外科学
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医学のあゆみ 230巻2号, 172-174 (2009);
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眼科学
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医学のあゆみ 230巻2号, 174-175 (2009);
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連載
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がん診療連携拠点病院にみる工夫− レベルアップをめざして7
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医学のあゆみ 230巻2号, 177-181 (2009);
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杏林大学病院は東京都地域がん診療連携拠点病院に指定されたことを受けて,2008年4月に“がんセンター”を開設した.がん治療は外科切除,化学療法,放射線治療,さらに緩和医療や地域連携など,診療科の垣根を超えた包括的な医療が重要である.当がんセンターでは診療科間の緊密な協力関係を構築し,集学的ながん治療の実施体制をめざしている.とくに進歩の著しいがん化学療法では,安全かつ確実な治療を行うための専門的な病棟や外来治療室を整え,化学療法レジメン評価委員会による客観的な評価に基づく治療を実施している.また,疼痛などの緩和医療やがん相談支援の体制をつくっている.がん診療では地域連携が必須であり,三鷹・武蔵野地域ではいち早く,五大がん(胃,大腸,肺,肝,乳腺)および前立腺癌について地域連携パスの運用を開始している.