医学のあゆみ
Volume 230, Issue 12, 2009
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NOTES(経管腔的内視鏡手術) − 体表面に創を作らない新しい低侵襲手術
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世界の現状とわが国の基礎・臨床研究への取組み
230巻12号(2009);View Description Hide Description創を作らない新しい低侵襲手術手技NOTES(Natural orifice translumenal endoscopic surgery)は世界中の外科医や消化器内視鏡医の関心を集め,その研究は急速に進んでいる.動物モデルを用いた基礎研究では卵巣切除術,胆 嚢摘出術,虫垂切除術,胃空腸吻合術や膵尾側切除術などさまざまな手術手技がNOTESにより可能であることが示されてきた.2007年からは胆 嚢摘出術をはじめとして本格的に臨床応用がはじまり,これまでに数百例に施行されている.わが国では2007年にNOTES研究会が設立され,わが国の研究事情を考慮した研究指針“NOTES白書”が発表されている.わが国での臨床応用は,経胃的腹腔内観察による膵癌の術前病期診断や経腟的胆 嚢摘出術,経腟的胃局所切除術など16例である.体にやさしい手術手技を求める社会のニーズもあり,今後,この分野の研究はますます発展していくものと期待される. -
内視鏡的全層切除術(EFTR) −わが国独自のNOTES発展へ向けた取組み
230巻12号(2009);View Description Hide DescriptionNOTESの登場によって内視鏡関連機器,なかでも軟性内視鏡専用縫合機器の開発が加速し,消化管壁は内視鏡医にとって越えられる“壁”となりつつある.これにより消化管壁全層を軟性内視鏡を用いて治療目的に切除する内視鏡的全層切除術(EFTR)が,内視鏡的粘膜下層 /離術(ESD)と外科手術との隙間を埋める低侵襲治療として,また内視鏡医によるわが国独自のNOTESとして,その発展がおおいに期待されている.しかし,新規開発機器の認可に厳しい薬事法の存在や,軟性内視鏡関連機器すべてが腹腔内では適応外使用となってしまう点など,実際の発展にはハードルも多い.このような現状も含め,本稿ではEFTRの概念,諸施設におけるEFTRへの取組みの現状と問題点,将来展望について概説した.本稿が外科医のみならず消化器内視鏡医にとっても,今後のNOTES発展へと参画していく端緒となれば幸甚である. -
経腟NOTES胃局所切除術
230巻12号(2009);View Description Hide Description経腟NOTESは,婦人科で確立された“腟式”手術の方法論を背景として北米や南米の先進施設を中心に2007年に臨床導入され,その後“現時点でもっとも安全で現実的なNOTES”として世界中で取り組まれるようになった.経腟NOTESは腹腔内のさまざまな手技に適応可能と考えられているが,著者らはとくに上腹部臓器へのアクセスが良好で大きな標本の摘出が可能という点に着目し,胃粘膜下腫瘍に対する局所切除術を導入対象に選定して基礎的研究を行ってきた.その後,婦人科,消化器内科と合同チームを編成して,経皮経路を併用したハイブリッド経腟NOTES胃局所切除術のシミュレーションを繰り返した後,2008年その臨床導入に成功した.本稿では著者らの経腟NOTES胃局所切除術の臨床経験を紹介し,臨床導入に至る準備過程,NOTESが抱えるさまざまな課題やその将来展望についても触れる. -
NOTES胆嚢摘出術
230巻12号(2009);View Description Hide DescriptionNOTES胆 嚢摘出術は2007年に臨床応用が開始され,これまでに60例ほどが論文報告されている.その大部分は腹腔鏡鉗子の補助を伴うhybrid NOTESで施行され,腹腔鏡手術に比べて長時間を要しているものの,合併症の頻度は低く,術後疼痛が軽度との報告がある.新しい低侵襲手術手技NOTESの確立に向けて手技を容易にするための機器開発とともに,その有用性の評価を進めていくことが今後の課題である. -
虫垂切除術−いくつかの低侵襲手術開発の経緯
230巻12号(2009);View Description Hide Description虫垂切除術において,minimal access surgeryの観点から手術の術式を検討してきた.1994年にsingleportassisted laparoscopic surgeryを報告して,その後に,いわゆる臍アッぺに展開した.また,2008年にはNOTESに向けての検討としてのendoscopy−assisted laparoscopic surgeryを行ってきた.それぞれに長所短所があるが,minimal access surgeryの理念は共通である. -
機器開発の現況−安全確実な創閉鎖およびアクセスをめざした機器開発
230巻12号(2009);View Description Hide Description体の表面に傷がつかないという経管腔的内視鏡手術(NOTES)の理念を実現することはだれにとっても福音である.しかし,現在の内視鏡用器具はすべて消化管管腔内で診断や治療を行うために開発されたものであり,消化管外でさまざまな作業を行うには厳しい手技的制限を受ける.アメリカの消化器内視鏡学会と消化器内視鏡外科学会は2005年に白書という形でNOTESが克服すべき8つの課題を提言した.とくに,確実な穿孔部の閉鎖と安全なアクセス方法の確立は急務であり,それなくしてNOTESの概念は成立しないことを明記している.以来,世界中の内視鏡機器メーカーが内視鏡用縫合器や複雑で繊細な外科的手技を再現できるような治療システムの開発に取り組んでいる.本稿では,これまでに開発された最新のテクノロジーの概要を紹介する. -
あらたな3D画像支援システム:経管腔的内視鏡ナビゲーションによるNOTES・Single port surgery
230巻12号(2009);View Description Hide Description経管腔的内視鏡手術(NOTES)は視野や操作が制限され,内視鏡鉗子の同軸操作や窮屈な視野展開でのビデオ手術が強いられる.安全な臨床導入には画像支援ナビゲーションの研究開発が重要である.内視鏡形状観測装置(UPD)は非侵襲的な磁界を利用し,リアルタイムに三次元の内視鏡形状を表示することで,オリエンテーションの的確な可視化に有効である.経管腔的アクセスルート作成時,隣接臓器を損傷せず安全に臓器を穿孔させるには,MDCT・MRIより仮想内視鏡像や仮想腹腔鏡像を立体構築した画像支援が有用である.管腔内視点から管腔外臓器を透見するような再現が容易である無償DICOM画像解析ソフトウェアOsiriXは,的確で安全な臓器穿孔などの参照として有用である.単孔式腹腔鏡下手術(SPS)もNOTES同様に視野や手技の制限があり,これらの画像支援による目的臓器への多角的アプローチが,安全性向上に有効である.
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フォーラム
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TOPICS
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- 再生医学
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- 遺伝・ゲノム学
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- 産業衛生
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連載
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- 医師のための臨床統計学20
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統計的推測の基礎(10)推定論3
230巻12号(2009);View Description Hide Description最尤推定の例題として,医学統計の2つの事例−標準化死亡比(SMR)の計算と有意性検定,打ち切りデータからのハザードの推定−を取り上げる.