Volume 231,
Issue 11,
2009
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あゆみ 組織幹細胞の あらたな発見とその臨床応用
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医学のあゆみ 231巻11号, 1089-1089 (2009);
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医学のあゆみ 231巻11号, 1091-1095 (2009);
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皮膚再生医療の展開があらたな局面を迎えている.重度熱傷という限定はつくものの,培養表皮が国産初の厚生労働省認可医療機材として保険収載され,いよいよ再生医療が現実化してきた.当教室では1985年以来,培養表皮を用いた広範囲皮膚欠損治療を手がけて,すでに日常医療として定着している.近年,この培養表皮細胞を用いたあらたな適用として,同種培養表皮を用いた難治性皮膚潰瘍治療への応用を手がけはじめた.その結果,数カ月から数年にわたり治療に難渋した難治性皮膚潰瘍も,培養表皮幹細胞シートの貼付,培養表皮幹細胞そのものの適用によって,約40日前後(最短6日)でのほぼ完全な上皮化を認めるにいたった.さらにあらたなる治療法として,これら表皮幹細胞を脊髄内に投与することで脊髄神経再生を試み,外傷性脊髄損傷に対してもその運動機能を改善できることを実験的に示した.これらの結果から,表皮幹細胞利用によるあらたなる治療戦略が期待される.
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医学のあゆみ 231巻11号, 1097-1100 (2009);
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自家培養骨髄幹細胞を静脈内に投与することで,脳梗塞の亜急性期の後遺障害を軽減できる可能性があることが判明した.幹細胞の培養・調整はGMP準拠の専用の細胞培養施設内で,厳格な管理の下で行われなければならない.幹細胞を用いた再生医療の発展には,科学的および医学的進歩はもちろんのこと,インフラや支援体制の整備が充実される必要がある.また,医療行政全般の意識改革と同時に,われわれ医療人にとってもパラダイムシフトが要求される時代となるかもしれない.
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医学のあゆみ 231巻11号, 1101-1105 (2009);
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胚性幹細胞や人工多能性幹細胞の発見により,再生医療によるさらなる治療法の開発,新薬創出,臨床応用が期待されている.一方,現在臨床応用の主役は組織幹細胞である.近年,乳歯や智歯(親知らず)など医療廃棄物として廃棄されていた歯の歯髄中にも,再生医療にとって重要な役割を果たす“幹細胞”が存在することが発見された.この歯髄幹細胞は増殖能が高く,採取が容易なことに加え,同種移植の可能性,バンキング(保存)による再利用可能などの利点を有し,脳梗塞,脊髄損傷など難治性疾患への応用も報告されている.本稿ではとくに骨再生医療に焦点をあて,歯髄幹細胞による臨床応用の可能性について述べる.
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医学のあゆみ 231巻11号, 1107-1111 (2009);
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脂肪組織は細胞レベルでゆっくりとターンオーバーしており,組織特異的前駆細胞が毛細血管周囲に存在する.この間質細胞のなかに多能性間葉系幹細胞といえる性質をもつ細胞の存在が認められ,脂肪由来幹細胞とよばれている.この前駆(幹)細胞は血管新生や脂肪新生に寄与する潜在能力があり,すでに多くの臨床研究が行われている.著者らは従来の自家脂肪移植法に前駆細胞の特徴を生かした移植法(CAL法)を開発し,乳房再生(乳房再建や豊胸術など)をはじめ良好な臨床成績を得ている.移植組織内の前駆細胞を増やすことにより血管新生を促すとともに,移植組織の長期的な萎縮を予防することを目的としている.脂肪幹細胞は今後,血管新生治療をはじめ,数多くの用途へ臨床応用が広がることが期待されている.
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医学のあゆみ 231巻11号, 1112-1116 (2009);
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幹細胞とは自己複製能と多分化能を兼ね備えた細胞である.神経系の細胞を産生する幹細胞は神経幹細胞とよばれ,脳を構成するニューロンおよびグリア細胞はすべて神経幹細胞より生みだされる.発生期においては,おもに脳室帯(ventricular zone:VZ)に存在する神経幹細胞がニューロンおよびグリア細胞を産生して脳組織を形成する.一方,成熟した個体の脳に神経幹細胞は存在しないとされていたが,近年の研究により霊長類を含む高等生物の成体脳においても神経幹細胞が存在し,ニューロンおよびグリア細胞が一生にわたり産生されていることが明らかにされた.齧歯類の成体脳では海馬歯状回および脳室下帯に神経幹細胞が存在し,あらたなニューロンを供給している.本稿では神経幹細胞について概説するとともに,脳室下帯における神経新生に焦点を当て解説する.
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フォーラム
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逆システム学の窓29
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医学のあゆみ 231巻11号, 1117-1119 (2009);
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2009年の新型インフルエンザ流行において,人類は史上始めて,ほぼ正確にパンデミックをとらえ,対策を考えるという未曾有の経験をしつつある.H1N1新型インフルエンザは潜伏期が4日と,従来型の季節性の2日と比べて臨床経過が異なり,若い人にも重症化が多いという特徴がある.11月12日のアメリカCDCの集計では3,900人が死亡したと推計している.人口百万人あたりの死亡者数は,アメリカ3.3人,オーストラリア8.6人と比べて日本は,0.2人と際立って低い.この違いの理由に,わが国ではインフルエンザ治療薬が広く使用されていることがあげられている. インフルエンザ治療薬には酵素の構造からコンピュータ設計を駆使して生まれたノイラミニデース阻害薬と,細胞を使って生物学的にスクリーニングされたポリメレース阻害薬がある.前者は副作用が少ないが耐性が生まれやすく,後者は耐性が生まれにくいが副作用がわかっていない.動物実験では,豚由来のH1N1ウイルスの感染は,マウスでは重篤な肺炎を示すが,無菌的に飼育されているミニブタでは臨床症状が見られなかったという.2種のインフルエンザ治療薬は,動物実験で有効であった.H3N2型のインフルエンザウイルスを用いた動物実験では,両者の併用は,比較的低い薬物投与量でも生存率を劇的に上昇させ,重症化を防げる可能性が生まれている.AIDSでも3種の治療薬の併用が顕著な予後の改善をもたらした. 今回の新型インフルエンザは,遺伝子検査からワクチン,治療薬まで,今までになく医学,疫学,薬学の知識基盤が整いつつある中でのパンデミックであり,予防,診断,治療にこれまでにない形で,思い切って挑戦し,多くのデータを得るまたとないチャンスである.
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医学のあゆみ 231巻11号, 1121-1123 (2009);
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TOPICS
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臨床医学
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医学のあゆみ 231巻11号, 1125-1126 (2009);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 231巻11号, 1126-1128 (2009);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 231巻11号, 1128-1129 (2009);
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連載
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がん診療連携拠点病院にみる工夫− レベルアップをめざして16
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医学のあゆみ 231巻11号, 1131-1136 (2009);
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徳島赤十字病院は地方の急性期総合病院であり,平成19(2007)年1月に地域がん診療連携拠点病院に指定された.入院患者の在院日数が非常に短いなかで,がんの診断と治療方針を決定する初期診療を行い,外来では化学療法を行っている.また,地方であるため高齢者が多く,治療に関する理解のむずかしさや,外来で抗がん剤治療をすることへの不安もあり,患者に安心して抗がん剤治療を受けてもらえるよう安全で適切な医療を提供することが望まれている.そのため,医師のみならず薬剤師・看護師・臨床心理士・栄養士・ソーシャルワーカーなど,さまざまな分野の専門職種が組織横断的にがん患者をサポートする,チーム医療の体制が必要とされる.当院ではカンファレンスや緩和ケアチーム,医療相談支援センター,救急外来との連携によりチーム医療体制が整備されつつある.その取組みについて紹介する.
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注目の領域
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医学のあゆみ 231巻11号, 1137-1142 (2009);
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現在わが国では冠動脈硬化症のリスクを反映する診断薬として,2種類のレムナント様リポ蛋白コレステロール測定用キット(RLP C法ならびにRemL C法)が診断薬として市販されている.しかし,レムナント・リポ蛋白(レムナント)測定の定義がかならずしも統一されていないため,トリグリセリド(TG)やVLDL(very low density lipoprotein)コレステロール(VLDL C)測定との臨床的意義の違いが明確となっていない.とくにTGと比較してレムナント測定の保険点数は10倍と高く,TG検査とは明らかに異なる臨床的意義が求められている.現在市販されている2種類のレムナント測定試薬による血清レムナント測定値には両法による乖離が頻繁に認められ,TGやVLDL Cとの相関に対してもこれらのキット間で違いが認められている.本稿ではレムナントの定義を明確にし,とくにTG検査法との違いについて述べ,さらに現在までに報告された2種類の測定キットの相違点について比較検討し,新しい検査法の確立の過程で出てきた問題点として紹介する.