Volume 232,
Issue 8,
2010
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あゆみ ここまで進んだ 心臓リハビリテーション
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医学のあゆみ 232巻8号, 827-830 (2010);
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心臓リハビリテーション(以下,心リハ)は質の高い社会復帰に必要な包括的介入であり,継続的な治療および予防戦略である.対象となる患者は,一部の急性疾患や発症期および不安定期を除くほとんどすべての心血管疾患患者であり,さらにそれらの疾病の発症の危険が高いと予想されるメタボリック症候群など生活習慣病の患者である.すなわち,心リハは“治療”であると同時に“primary prevention”(一次予防,公衆衛生学では二次予防)かつ“secondary prevention”(二次予防,同三次予防)である.たとえば,動脈硬化性心疾患に対しては,冠動脈バイパス術や血管形成術がすでにできてしまった病変に対する局所療法であるのに対し,心リハはその原因に介入するup−stream治療であり,医学的ならびに医療経済的にその意義は大きい.
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医学のあゆみ 232巻8号, 831-835 (2010);
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食事や生活習慣の欧米化により虚血性心疾患患者は若年化してきていると考えられ,以前は珍しかった若年発症の急性心筋梗塞,急性大動脈解離などの動脈硬化による疾患が当たり前のように経験されるようになった.将来の潜在性心不全患者を増やさないためにも,心臓リハビリテーションは近年ますますその重要性が増してきている.運動療法を中心とした包括的心臓リハビリは,運動耐容能の向上,冠危険因子の是正,冠循環や自律神経機能,QOLや生命予後といった多くの指標を改善させることが知られている.しかし,わが国においては,いまだに心臓リハビリが広く普及しているとはいえないのが現状である.心臓リハビリのスタンスは,今後はいわゆる再発予防から発症の予防へとシフトさせる必要があるであろう.
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医学のあゆみ 232巻8号, 836-841 (2010);
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慢性心不全とは,慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し,末梢主要臓器の酸素需要量にみあうだけの血液量を拍出できない状態であり,肺または体静脈系にうっ血をきたし生活機能に障害を生じた病態のことをいう1).近年の研究から,慢性心不全は多臓器の機能異常や種々の神経体液性因子が複雑に関連しあったひとつの症候群と考えられるようになった.運動療法が慢性心不全の病態やその機序に対しどのような効果を及ぼしているか,神経体液性因子を中心に研究が進んでいる.
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医学のあゆみ 232巻8号, 842-846 (2010);
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末梢動脈疾患において,運動療法は生命予後とQOLを改善する土台となる治療方法である.末梢動脈疾患の国際ガイドライン(Inter−society consensus for the management of peripheral arterial disease:TASC II )では,重症虚血肢を除く中等度以下の末梢動脈疾患に対する初期治療として,禁煙や生活習慣病の管理とともに運動療法を強く推奨している.間欠性跛行を有する患者に歩行運動習慣を身につけてもらうには,非監視型よりも監視型での運動療法のほうが成績よく,エビデンスAで監視型運動療法での導入が推奨されている.運動療法が本疾患患者において運動耐容能を改善する機序は,筋肉の酸素利用効率の改善,側副血行路の発達,血管内皮機能の改善,血管内皮前駆細胞の増加と血管内皮成長因子(VEGF)を介しての血管新生などが推察されている.血行再建術を施す場合でも運動療法との組合せプログラムの重要性を認識し,病態と適性に応じて長期間楽しんで継続できる運動指導を行うことが肝要である.
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医学のあゆみ 232巻8号, 847-851 (2010);
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心臓リハビリテーションは急性期の機能回復効果と維持期の再発予防効果を有する.開心術後において急性期の心臓リハビリテーションは,開心術時の胸骨切開に伴う換気制限や疼痛による活動レベルの低下などに対して介入を行い,無気肺予防効果やデコンディショニング改善効果を有する.維持期の心臓リハビリテーションは,CABG患者では動脈硬化性疾患の再発予防効果を有し,弁置換術後患者では心不全からの回復効果を有する.開心術の基礎病態に応じて,どのような効果を期待するかを考えながら心臓リハビリテーションを実施するべきである.
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医学のあゆみ 232巻8号, 852-854 (2010);
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心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)による,抑うつ・不安,怒り・敵意,ディストレスなどの心理的問題に対する効果が認められる報告がなされている.運動療法に心理的介入を加えるプログラムにおける各心理状態への影響について,無作為化対照試験のメタアナリシスでは,対照群よりも心理的介入を加えた群のほうが不安や抑うつが有意に低下し,さらに死亡率や再発率も低下したことを見出している.したがって,心臓リハビリプログラムには運動療法だけでなく,心理的介入プログラム導入が重要である.また近年,欧米ではタイプD傾向と抑圧型対処が心疾患の発症要因として注目されている.タイプDと抑圧型対処行動の傾向は,心疾患による死亡率や心事故の発生率に対する非常に高い予測要因である.さらに,心理的介入を加えたプログラムはタイプD傾向の低下に効果があり,34%も死亡率を低下させる.この結果からも心理的介入の重要性が実証されている.
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医学のあゆみ 232巻8号, 855-860 (2010);
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心臓リハビリテーション(以下,心臓リハ)の医療経済的効果について,ミクロとマクロの視点から概説した.ミクロの視点では,患者の健康に及ぼす影響や他の診療技術との相対評価でその有用性(費用対効果など)が示された.マクロの視点では,長期的には医療資源全体の消費を適正化すると同時に,職場復帰を促し労働生産性の向上に寄与すると考えられた.一方,心臓リハの普及は十分とはいえない.そのおもな要因として,施設基準の厳しさ,採算上の問題,患者・医療関係者双方のリハ知識の欠乏,などがあげられる.心臓リハは社会全体に経済的な恩恵を及ぼす可能性が高い診療技術である.心臓リハを普及させるために,今後の診療報酬改訂に期待するとともに,心臓リハのエビデンスを患者・医療関係者双方に周知徹底させ,患者・医療関係者への心臓リハ,とくに回復期心臓リハの重要性の啓蒙することが重要である.
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医学のあゆみ 232巻8号, 861-866 (2010);
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虚血性心疾患の回復期以降の管理において,適切な薬物療法や運動療法を中心とした包括的な介入が予後改善やQOL改善に有効であることはもはや疑いようもない.退院後以降の疾病管理については包括的な介入が可能である心臓リハビリテーションが理想であるが,その普及度の低さが問題である.その対策として,退院後の患者管理についてあらかじめ専門医と家庭医が役割分担をして,医療の質や継続性を維持しながら患者にとって不安のないシステムを構築することが必要である.その重要なツールが地域医療連携クリティカルパス(連携パス)である.著者らは循環器疾患連絡協議会を設置し,循環器疾患連携パスの準備を進めてきた.その骨子は,心血管イベントへの対応,再発予防に向けた慢性期管理を役割分担することにあるが,そのための各種ガイドラインを遵守するためのマニュアルやツール,患者自身が自らの疾病管理に参加するための生活日誌を活用している.また,協議会での活動は医療者間の密な連携につながり,心臓リハビリテーション(心臓リハ)を含めた医療資源の共有をも可能としている.
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フォーラム
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感染症法と保険診療6
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医学のあゆみ 232巻8号, 867-870 (2010);
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日本紅斑熱,つつが虫病は1999年施行の感染症法で第4類感染症に指定され,診断した医師は直ちに届出する義務がある.ところが両疾患ともに届出のための検査や治療薬は健康保険ではほとんど認められていない.また,ロッキー山紅斑熱など類似疾患についても同様である.本稿では,両疾患の疫学と臨床について述べるとともに,実際にこれらの疾患に遭遇した場合の保険診療上の問題点を指摘したい.
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書評
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医学のあゆみ 232巻8号, 872-872 (2010);
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注目の領域
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医学のあゆみ 232巻8号, 882-884 (2010);
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スポーツがこころの状態に影響を与えることは経験的にもよく知られている.スポーツは健常人のQOLを高めるだけでなく,精神疾患の治療の補助手段としても応用が可能であり,これを扱う新しい精神医学の領域がスポーツ精神医学である.
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TOPICS
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 232巻8号, 875-876 (2010);
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心臓血管外科学
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医学のあゆみ 232巻8号, 876-877 (2010);
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免疫学
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医学のあゆみ 232巻8号, 878-880 (2010);
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