Volume 232,
Issue 9,
2010
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あゆみ 副腎皮質疾患とメタボリック症候群
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医学のあゆみ 232巻9号, 885-885 (2010);
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医学のあゆみ 232巻9号, 887-891 (2010);
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Subclinical Cushing症候群(SCS)は副腎腫瘍からのコルチゾールの自律性分泌を認めるが,満月様顔貌,中心性肥満などの典型的なCushing徴候を欠く病態である.わが国の全国調査では副腎偶発腫瘤の10.5%にコルチゾール産生を認めた.SCSから顕性Cushing症候群への移行は稀である.SCSではメタボリック症侯群が表現型であり,2型糖尿病や高血圧,骨粗鬆症の病因となっている.SCSと診断された副腎腫瘍の摘出後,高血圧や糖尿病が50%以上改善したとの報告があり,高血圧,耐糖能異常,糖尿病合併例は腫瘍摘出を考慮する.しかし,海外を含めてSCSはその診断基準や手術適応が確立されておらず,今後の前向き臨床研究が必要である.また,わが国では1995年にSCS診断基準が策定されたが,デキサメタゾン抑制試験のcut−off値を含めて改訂が検討されている.
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医学のあゆみ 232巻9号, 892-896 (2010);
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間脳下垂体副腎系疾患の診断にもっとも重要な内分泌検査であるコルチゾールの多くはイムノアッセイ法によって測定されるが,合成ステロイドとの交差性に注意しなければならない.特異的にコルチゾールを測定する目的では,液体クロマトグラフィ・タンデム型質量分析計を用いる必要がある.コルチコステロイド結合蛋白の低下によって血中コルチゾールは見かけ上,低下するため,尿中遊離コルチゾールとの乖離に注意を要する.早朝血中コルチゾール6μg/dl未満あるいは早朝2番尿中遊離コルチゾール25μg/g creat未満で副腎皮質機能低下症を疑う.2008年アメリカクリニカルガイドラインでは,Cushing症候群診断に重要な少量デキサメタゾン(1 mg)抑制試験のコルチゾールcut−off値が1.8μg/dlとなった.
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医学のあゆみ 232巻9号, 897-900 (2010);
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コルチゾールを代表とするグルココルチコイドの作用はあまりにも広汎であるが,合成〜代謝経路や受容体前後の仕組みについてはかなり整理されてきた.フィードバック調節の代表でもある視床下部−下垂体−副腎(HPA)系により巧妙な調節を受けるほか,11β水酸化ステロイド脱水素酵素(11βHSD)などによる局所での代謝もレセプター前の重要な調節機構である.いわゆるメタボリック症候群を構成する危険因子がいずれもCushing徴候の軽微なものと一致することから,グルココルチコイド作用の増幅機構である11βHSDタイプ1のreductase活性亢進などに起因するHPA系の過活性化が機能的な高コルチゾール血症を引き起こし,危険因子の増悪を惹起する可能性が示唆されている.
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医学のあゆみ 232巻9号, 901-905 (2010);
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腹部内臓肥満に起因する高血圧,脂質異常症,耐糖能異常はメタボリック症候群(Mets)と称され,心血管疾患の危険因子となる.Metsはインスリン抵抗性を基盤として発症し,レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系の亢進が発症にかかわっている.アルドステロン過剰は,遊離脂肪酸やTNF−αなど炎症性サイトカインを誘導してインスリン抵抗性を促進し,耐糖能異常,高血圧を生じることが明らかにされている.原発性アルドステロン症では糖代謝異常を合併するが,その機序として膵β細胞からのインスリン分泌能の低下,脂肪細胞からのサイトカインの産生,酸化ストレスを介するインスリン作用の抑制などがある.近年,糖新生酵素やインスリンシグナルに対してアルドステロンが阻害的に作用するメカニズムも解明されつつあり,アルドステロンの新たな生体作用として注目されている.
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医学のあゆみ 232巻9号, 906-910 (2010);
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アルドステロン(aldo)の作用は,腎におけるNaの再吸収や心・血管のリモデリング,腎における炎症,酸化ストレスの誘導以外に,内臓脂肪におけるサイトカイン,活性酸素種を介するメタボリックシンドロームの病態への関与が考えられる.原発性aldo症における脂質代謝異常としてHDLコレステロールの低下やトリグリセリドの高値が報告されているが,本態性高血圧症と差がないといった報告もある.原発性aldo症患者では内臓肥満を合併していることが多く,腺腫摘出術やaldoブロッカーによる治療により改善がみられる.今後,内臓脂肪を介するaldoの病態生理学的役割の解明が期待される.
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医学のあゆみ 232巻9号, 911-915 (2010);
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摘出した副腎皮質腫瘍の機能性特色と形態学的特徴との関係は,かならずしも成書に示されているようにはいかない.たとえば,黄金色の割面を呈する副腎皮質腺腫は原発性アルドステロン症の患者に多く認められるのは事実であるが,非機能性副腎皮質腺腫でも多くみられる.加えて腫瘍組織でのステロイド合成酵素の発現・活性を検討しても,かならずしも機能性と非機能性病変が明確に鑑別できることは少ない.そこで,腫瘍組織そのものではなく非腫瘍性副腎皮質の病理学的検索が注目された.副腎皮質腺腫がコルチゾールを過剰に分泌する場合は患者の視床下部・下垂体・副腎皮質系が抑制され,付随副腎皮質は萎縮するか,形態学的に正常でもDHEA−STなどのステロイド合成酵素の発現は低下する.このように術前に糖質コルチコイド分泌過剰を伴っていたのかどうかという鑑別には付随副腎の検索が非常に有用である.原発性アルドステロン症の腺腫の付随副腎はアルドステロン過剰合成を伴わない球状層の過形成が特徴であるが,非機能性腫瘍の副腎でも認められることがあるためそれほど特異性はない.
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医学のあゆみ 232巻9号, 916-919 (2010);
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褐色細胞腫は,カテコールアミン過剰により糖・脂質代謝異常を高頻度で合併する.アドレナリン優位型における合併頻度が高いことから,おもにβ受容体を介する作用が関与する.一方,血中・尿中ホルモン値が一見正常範囲である“正常型”の例でも,一定の頻度でこれらの糖・脂質代謝異常を合併する.それらの合併は偶然の合併である可能性もあるが,血中・尿中検査では確認できない軽度のカテコールアミン過剰が関与している可能性も否定できない.そのため,糖・脂質代謝異常を認める症例では生活習慣病と決めつけず,つねに褐色細胞腫の可能性を考えて診療に従事する必要がある.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち98
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医学のあゆみ 232巻9号, 921-921 (2010);
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マラリアのいま(1)
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医学のあゆみ 232巻9号, 922-925 (2010);
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医学のあゆみ 232巻9号, 926-927 (2010);
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医学のあゆみ 232巻9号, 928-930 (2010);
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注目の領域
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医学のあゆみ 232巻9号, 940-946 (2010);
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石綿関連疾患には,石綿肺,肺癌,中皮腫,良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚がある.これらの石綿関連疾患の多くは,石綿を吸入してから20年以上の潜伏期間を経た後,発症する.一般に曝露濃度が高いほど潜伏期間は短く,低いほど長い傾向にある.中皮腫では潜伏期間が50年以上の例もまれでないが,10年未満の例はこれまでにない.石綿関連疾患の診断はいずれも容易ではなく,石綿曝露歴に関する問診,胸膜プラークの所見のとらえ方に習熟する必要がある.これら石綿関連疾患は労災補償の対象疾病であり,また肺癌と中皮腫については石綿救済法の対象疾病でもある.これまでにわが国で消費された石綿は100万トンに上り,戦後の石綿輸入量の推移を考慮すると,呼吸器専門医はもちろん,一般医家にとっても,これら石綿関連疾患に遭遇する機会は増えるものと推測される.その場合は患者救済の観点から,労災補償制度,石綿救済制度についての基礎知識も必要になる.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 232巻9号, 933-934 (2010);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 232巻9号, 934-935 (2010);
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疫学
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医学のあゆみ 232巻9号, 936-937 (2010);
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