Volume 232,
Issue 10,
2010
-
【3月第1土曜特集】てんかん治療Update
-
-
最新・研究トピックス
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 951-955 (2010);
View Description
Hide Description
てんかん責任遺伝子や遺伝子多型に基づく薬剤反応性の違いから個別化治療の可能性について論じる.常染色体優性遺伝てんかん熱性痙攣プラスや乳児重症ミオクロニーてんかんでは,同じNa+チャネル異常でありながら遺伝子変異の差異によって抗てんかん薬(AED)の治療効果が異なる.また,薬物代謝酵素や薬物排出トランスポーター多型もAED治療反応性に影響し,AEDにより誘発される重篤な薬疹についてもヒト白血球抗原多型との関連が示唆されている.将来的にこれらの遺伝的因子は,副作用発現および薬剤反応性の予測指標として強力なツールとなることが期待されている.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 959-964 (2010);
View Description
Hide Description
てんかんは古代紀元前より知られる神経疾患であり,人口100人に1人が罹患する疾患でありながら分子生物学の介入を拒んできた.一方,1985年にMullisがPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を発見して以来,遺伝子工学の技術は飛躍的進歩を遂げ,2003年にはヒトゲノム塩基配列の解読が一応完了した.てんかんもこの10年間にてんかんを起こす遺伝子異常が同定されはじめ,それらを足がかりとして,てんかんの分子病態に迫ることが可能となった.最近ではヒトのてんかんで発見された遺伝子異常をもつ動物が作出されている.今後は,病態に基づいたてんかんの診断や分類の改革や,その病態の一部に介入する革新的な治療法が期待される.
-
最新・診療トピックス
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 965-972 (2010);
View Description
Hide Description
わが国では新規抗てんかん薬としてgabapentin,topiramate,lamotrigineが承認・発売され,また2010年にはlevetiracetamが承認・発売される予定であるが,いずれも併用薬として認可され,lamotrigine以外は部分発作への適応となっている.新規抗てんかん薬の現状と動向を述べ,その作用機序と薬理動態(半減期,ピーク時間,投与量など),相互作用をまとめた.その臨床効果を,難治性てんかんに対する有効性と忍容性,小児てんかんに対する効果,部分発作以外の発作型およびてんかん症候群に対する効果,対象となる発作型・てんかん症候群のまとめ,各国のガイドラインにおける位置づけ,新規抗てんかん薬は旧来薬よりよく効くか,という観点から述べた.また,問題点についてまとめた.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 973-977 (2010);
View Description
Hide Description
高齢者の1~2%がてんかんに罹患しており,脳卒中後遺症をはじめとする加齢に伴う脳の器質病変を原因としていることが多い.高齢者のてんかん診断はかならずしも容易ではなく,失神や一過性脳虚血発作(TIA)との鑑別が困難である.複雑部分発作のように痙攣のない発作は見すごされることがある.治療においては,適切な抗てんかん薬内服により高齢発症てんかんの大部分は発作を抑制することができる.併存疾患のため他の薬剤を服用していることが多く,抗てんかん薬との相互作用を考慮する必要がある.焦点性てんかんの第一選択薬としてはカルバマゼピンがガイドラインでは推奨されているが,近年の臨床試験結果からはガバペンチン,ラモトリギン,レベチラセタムが,副作用の少なさからは有利とされている.てんかんは高齢者において,身体的のみならず精神・心理的にも大きな影響をきたすことを考慮して治療にあたることが重要である.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 978-983 (2010);
View Description
Hide Description
近年急速に普及している3T MRI装置では,高いsignal-to-noise ratio(SNR)により高分解能の画像を比較的短時間で撮像できる.2.5 mmスライス厚を用いた冠状断像高分解能T2強調像では歯状回,Ammon角,分子層などの海馬構造の描出が可能であり,海馬層構造の構築の乱れが軽微な海馬硬化症の診断において有用な情報を提供する.また最近,核医学のみならずMRIの領域においても画像統計解析の手法が盛んに用いられており,今後てんかん患者の病態解明への応用が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 984-988 (2010);
View Description
Hide Description
在来の抗てんかん薬ならびに新規抗てんかんを用いたてんかんの薬物治療ガイドラインについて概説した.後者については厚生労働省ガイドライン研究班による先行研究の一部を紹介した.海外の主要なガイドラインでは新薬の導入にもかかわらず,部分発作にはcarbamazepine(CBZ),全般発作にはvalproate(VPA)が,いまなお,一次選択薬に位置づけられている.新薬は在来薬より副作用が少なく,使いやすさの面で優れている.新薬の選択については個々の薬物の長所・短所を勘案して患者個別に決めていくのがよい.てんかん薬物治療の基本は新薬の導入後も変わらない.適剤の選択には発作型診断の正しいことが前提である.
-
最新・外科治療動向
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 991-997 (2010);
View Description
Hide Description
笑い発作(GS)は抗てんかん薬の効かない珍しいてんかん発作で,生後2歳前に発病する.GSのある患者では視床下部過誤腫(HH)の存在を強く疑う必要がある.てんかんは大脳皮質の神経細胞の異常興奮によって発生すると定義されているが,GSはそれ以外から起こるてんかん発作の代表として,特異なてんかんモデルと考えられている.しかし,HH自体にてんかん原性が存在することが明らかになったのは1995年である.20万人に1人という稀少疾患であり,脳の最深部に存在することから,脳神経外科手術のなかでも難易度のもっとも高い手術とされてきた.直達手術に代わって内視鏡手術や定位放射線治療が開発されてきたが,適応制限があり,安全性と有効性は高くなかった.著者らはもっとも安全で有効性の高い定位温熱凝固術(SRT)を開発した.GSの病態生理研究に基づいた純国産の標準的脳外科治療として,小児期の早期手術を提唱し,視床下部過誤腫センターを設立した.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 998-1002 (2010);
View Description
Hide Description
迷走神経刺激療法(VNS)は難治性てんかんに対する手術治療である.左迷走神経に刺激電極を留置し,電源内蔵の刺激装置を体内に埋設して慢性的に刺激を行う.開頭によるてんかん手術と比較して治療による合併症が少なく低侵襲である.VNSの発作抑制率は治療開始時にはけっして高いとはいえないが,治療期間が長くなればなるほど上昇する.開頭によるてんかん手術後に発作が残存した患者や,開頭手術では治療困難な患者においても適応がある.また,発作抑制以外にもQOL,覚醒度,気分障害,認知機能などの改善効果が報告されている.わが国では現在,薬事法承認への手続きが進行中であり,近い将来に承認される可能性もみえてきている.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1003-1007 (2010);
View Description
Hide Description
小児難治てんかんに対する外科治療の目的は発作頻度の減少・消失や症状の軽減化のみならず,発達遅滞を食い止め生活年齢に応じた発達のcatch upをはかることである.手術に際してはまず,切除可能な焦点が明らかなものとそうでない症例とを判別する.てんかん術前検査において,前者ではMRIに加えて脳血流SPECTやPETなどの脳機能画像が有用であることはいうまでもない.焦点が広範囲であっても,最近では機能温存を目的とした半球離断や多脳葉離断などが実施される.一方,後者では全般てんかんの症例が多いが,著者らの施設では脳梁離断術を積極的に行っており,症状の緩和が得られるとともに発達の改善が見込まれる.小児であれば全離断を実施しても永続的な離断症候群は出現しない.術後の残存発作を詳細に検討していくと,焦点切除が可能になる症例が含まれており,二期的に切除手術を実施することによって手術成績が飛躍的に向上する.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1008-1011 (2010);
View Description
Hide Description
大脳半球離断術は,一側大脳半球を同側の大脳基底核および対側半球より完全に離断する手術法であるが,従来の解剖学的に大脳半球を摘出する方法(大脳半球切除術)に比べ手術侵襲と合併症が少なく,乳児期における片側巨脳症(hemimegalencephaly)に対しても適応可能であり,皮質形成異常,瘢痕脳回,Sturge-Webar症候群などに対する切除外科手術の適応が広がっている.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1012-1017 (2010);
View Description
Hide Description
難治性てんかんのなかでもっとも外科治療の効果が期待できるのは側頭葉てんかんであるが,記銘力中枢である海馬を切除する手術が主体となるため,術後の記銘力障害が問題となっている.手術法としては一般的に前側頭葉切除による海馬 扁桃体摘出術と選択的海馬 扁桃体摘出術が行われているが,2法の発作予後に大きな差はなく,術後の記銘力予後の優劣についても明確にされていない.選択的手術は海馬への到達経路の違いからいくつかの方法が発表されており,到達法による記銘力予後についても多くの議論がなされている.当施設では経シルビウス裂到達法による選択的海馬 扁桃体摘出術を行い,術後の記銘力温存に良好な結果を得ている.海馬硬化症74例に対して左側手術群で言語性記銘力が術後に温存され,右側手術群では有意に言語性記銘力が改善した.発作消失率は両群とも85%を超える結果を得ている.本法は,前側頭葉切除による海馬 扁桃体摘出術に比べて切除範囲が小さく低侵襲で,かつ記銘力温存についても非常に有用な方法である.
-
最新・てんかん診療動向
-
【新しい診断】
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1021-1030 (2010);
View Description
Hide Description
1981年のてんかん発作分類1,2),1989年のてんかん症候群分類3,4()1981/1989年分類)はInternational LeagueAgainst Epilepsy(ILAE)による国際分類であるが,診断・治療方法および病態解明において既知の理解以上の発展があり,現状に合わない部分が生じてきた.“てんかん発作とてんかんの診断大要案”(2001年大要案)5,6),発作型とてんかん症候群の改訂案(2006年提言)7),用語と概念の改訂案(2009年報告)8,9)が順次発表され,脳波と臨床症状を基軸とした初期の分類から,とくに遺伝子を基軸として病態(発作起始,神経ネットワークによる伝播,抑制機構,薬物反応,遺伝素因など)に基づく疾患分類へと発展中である.最近,てんかんにおける免疫学的機序の重要性も指摘されており,今後も病態解明の進歩に応じた進展が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1031-1036 (2010);
View Description
Hide Description
生理学的検査としての臨床脳波には80年の歴史があるが,現在においても狭義のてんかん原性を診断できるのは脳波であり,てんかんの診断の中核とみなされる.最近の非侵襲的検査の進歩として,空間分解能に優れる機能的MRIと脳波を同時計測することにより,てんかん性放電に関連した脳領域を皮質のみならず皮質下構造物を含めて評価することが可能となった.侵襲的検査の進歩としては,デジタル脳波計の進歩に伴い,従来の発作時脳波変化に加えて頭蓋内電極から超低周波・超高周波成分の記録・解析が可能となり,てんかん焦点の診断の向上が期待される.てんかん焦点からのてんかん性放電の脳葉内・間の投射を理解するうえで大脳皮質領域間のネットワークは重要であるが,硬膜下電極からの単発皮質電気刺激を用いて皮質-皮質間誘発電位(CCEP)を記録することにより,個々の患者で正常の皮質間ネットワークとてんかん病態下の変容の探索が可能となり,臨床応用が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1037-1042 (2010);
View Description
Hide Description
α波をはじめ,脳波には基礎律動があることはよく知られている.脳活動に伴ってこの脳律動の状態が変化することが知られており,αblockingなどはその代表例である.脳律動変化の領域は脳活動領域を反映しており,とくにγ帯域の脳律動変化は従来の脳機能マッピングの結果とよく一致し,あらたなマッピング手法として期待される.また,てんかん活動は種々の内因性,外因性の要因により影響を受けるが,運動に伴う脳律動変化によりてんかん活動が抑制されることが報告されており,てんかんと脳律動のメカニズム解明や診断・治療への応用が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1043-1049 (2010);
View Description
Hide Description
脳磁図は脳波と同様に脳の電気活動で生じる信号である.脳磁図は局在診断能力が高いとする考え方だけがこれまで強調されることが多かったが,こうした過大評価は危険である.脳磁図の利点の第1は,複数の信号源の“分離能力”であると考える.脳波では背景活動に埋もれた棘波を,脳磁図だけがしばしばとらえることがある.左右で同期した活動の分離も脳磁図は得意とする.突発波の伝播も脳磁図では理解しやすい.第2の利点は,頭皮に水平な“電流の方向”を把握しやすい点である.てんかん棘波の頂点では皮質電位は表面でマイナスであり,これをもとに脳溝で向き合う2つの壁のどちらが信号源なのかを脳磁図では簡単に診断できる.第3の利点は,従来から強調されてきた“局在診断能”である.ただし,信号源が1個か2個に限定され,興奮面積も小さいことが前提条件であることをあらかじめ承知したうえで,脳磁図の局在診断能力を評価すべきと考える.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1050-1055 (2010);
View Description
Hide Description
ビデオ脳波モニタは,てんかんや意識消失発作を有する患者の発作症候,発作時の脳波活動,発作のない時期のてんかん性放電の出現部位と頻度をビデオと脳波で長時間同時記録する検査で,てんかん診断のみならず失神や転換性障害との鑑別に大きな役割を果たす.また,てんかんの手術治療を目的とする場合は,てんかん原性がどこに存在するかを調べる検査として不可欠である.ビデオ脳波の解析には発作のポイントとなる症候を把握し,脳波を正しく判読することが重要である.長時間を要する検査なので,患者の理解と看護師や脳波検査技師の協力が必要である.
-
【小児てんかん】
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1056-1061 (2010);
View Description
Hide Description
東京女子医科大学小児科では,小児の難治性てんかんに対してケトン食療法を1968年から行っている.1971年にはMCT(2:1)ケトン食が考案され,当院小児科でも導入している.その後,症例によってMCT(2:1)ケトン食と古典的(4:1)ケトン食を使い分けてきた.当科でのケトン食療法の効果を検討したところ,ケトン食療法開始後1年での有効以上は35%であった.効果があったてんかん型は単発のてんかん性スパスムスや強直発作を合併するWest症候群(WS)からLennox-Gastaut症候群(LGS)への移行例(WS-LGS),焦点性運動発作と非定型欠神発作を合併する未決定てんかん,潜因性ミオクロニー失立てんかん(CMAE),症候性部分てんかん(SLE)であった.副作用として重篤なものはなかったが,長期継続が難しい例が多かった.そのひとつの理由としてケトン食の食べにくさと空腹感の強さがあげられる.そこで提唱されたのが,カロリー制限や蛋白制限のないアトキンス食変法である.当科でも2007年よりアトキンス食変法を導入し試みている.やや尿ケトン体が出にくい傾向にあるが,現時点である程度の効果を得ている.
-
【新しい治療と病態の理解】
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1062-1068 (2010);
View Description
Hide Description
てんかんは大脳神経細胞の過剰放電に由来する反復性の発作を主徴とする疾患で,人口の約1%が治療を受けている.このうち薬物治療を尽くしても発作が続く難治性てんかんが約30%存在し,日常社会生活に多大な支障をきたしている.この難治性てんかんには手術療法が施されているが,侵襲性,危険性の問題から,すべての症例が手術適応となるわけではない.このような背景から,あらたな低侵襲てんかん治療法の開発が望まれている.そこで著者らは難治性てんかんに対する新しい治療法として,てんかん焦点の局所冷却による発作抑制法を確立し,それらに関するbrain/machine interfaceを用いた埋込み型治療装置の開発を行う.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1069-1075 (2010);
View Description
Hide Description
症候性てんかんは何らかの脳損傷から神経細胞の電気生理学的興奮が最終的に導かれて発病するものであることは間違いないが,その過程に免疫分子が関与していることが最近わかってきた.サイトカインは血液脳関門やグルタミン酸受容体などへの作用で神経興奮性の獲得に寄与し,抗グルタミン酸受容体抗体は興奮毒性,アポトーシス誘導などで病態に関与し,補体からなる膜侵襲複合体は細胞死誘導で関与している可能性がある.これらのてんかんにおける免疫分子の関与の解明は,抗てんかん薬以外のあらたなてんかん治療の扉を開くものとして期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1076-1079 (2010);
View Description
Hide Description
もっとも標準化されたてんかん病態仮説は“バランス破綻仮説”であり,てんかん発作を神経伝達の過剰亢進,すなわち神経細胞の過活動状態としてとらえ,興奮性神経伝達機構の相対的機能亢進,あるいは抑制性神経伝達系機能の相対的機能抑制状態によって,てんかん発作が発現すると考えている1-3).この“バランス破綻仮説”に従い,多くの第二世代抗てんかん薬が開発されてきたことからも,この仮説は根源的なてんかん病態にかかわる重要な病態仮説ではある1-3).一方,てんかん発作が繰り返し発現するために,epileptogenesisとictogenesisとよばれる機構の成熟が必要と考えられている.すなわち,epileptogenesisは恒常的な伝達機構機能変異であり,ictogenesisはepileptogenesisを獲得したうえで,てんかん発作発現に必要な条件が集積した発作トリガー機構と考えられている4).本稿では,epileptogenesisとictogenesisにかかわる分子機構の一部を紹介したい.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1080-1085 (2010);
View Description
Hide Description
てんかんの患者人口は100人に1人といわれ,その約5~10%が脳外科治療適応のある難治性てんかんである.わが国でも1980年代からの脳外科治療の普及により,さまざまなてんかん原性脳病変の病理像が明らかになってきた.おおよその疾病構造は脳形成異常,海馬硬化,脳腫瘍,その他の瘢痕性病変であり,てんかんを引き起こす脳の器質的変化はある意味で多様である.それらのうち脳外傷後の晩期てんかんにおいて,軸索発芽現象や海馬硬化に類似する病変が惹起されることなど新しい知見がいくつか明らかになっており,脳障害後の可塑性異常に起因するてんかんの研究対象となりうる.
-
【心理・社会的研究】
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1086-1091 (2010);
View Description
Hide Description
てんかんに関連するさまざまの精神症状に関して総括する.精神病状態は頻度は低いものの,QOLに対する衝撃から重大な病態である.発作後精神病,発作間欠期精神病のいずれであるかは,治療戦略の選択にも重要である.抑うつ状態はとくに側頭葉てんかんにおいて頻度が高く,通常のうつ病とは異なる症状プロファイルを示す.また,心因性発作に関しては,てんかん併発例・非併発例の従来の区別に加えて,Freud型とKretchmer型の区別が有用ではないかという視点を提示する.
-
Source:
医学のあゆみ 232巻10号, 1092-1097 (2010);
View Description
Hide Description
てんかんをもつ子どもの支援においては,てんかんそのものへの治療に加えて,その生活へのさまざまな配慮を欠かすことはできない.最近のてんかん患者の生活の質(QOL)に関する研究について,わが国の研究を中心にいくつか紹介した.患者の考えるQOLは主治医の受取り方と乖離があり,留意が必要である.近年注目されているレジリエンスは,さまざまな疾患をもつ子どもと家族の支援を考えるうえで有用である.てんかんをもつ子どもとその家族への支援は,QOLやレジリエンスを踏まえた包括的な視点が必要である.