医学のあゆみ
Volume 232, Issue 13, 2010
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あゆみ 免疫in vivo イメージング ─ 免疫疾患のダイナミクス研究へ
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リンパ節へのリンパ球のエントリーとmigrationのイメージング―リンパ球動態制御分子の機能解析
232巻13号(2010);View Description Hide Descriptionリンパ球は二次リンパ組織と脈管系を循環しながら,異物の侵入を監視している.この過程ではリンパ球の動きと停止,すなわち動態調節が重要となる.2光子レーザー顕微鏡などを用いた観察技術と可視化技術の開発と普及によって,生体内のリンパ球動態を直接観察することが可能となった.これは多様な細胞間の接触に依存した免疫過程を解き明かすうえでブレークスルーとなる技術である.In vivoイメージングで得られた生体内の複雑なリンパ球動態をin vitroで再現・操作することによって,動態制御の機序が明確に理解できるようになるであろう.本稿ではリンパ球動態について,in vivoイメージングの手法とin vitro再構築系による解析を用いて,リンパ球の動態を制御するRAPL,Mst1による接着制御研究を紹介する. -
2光子ライブイメージングで解析する腫瘍浸潤T細胞のダイナミクス
232巻13号(2010);View Description Hide Description細胞傷害性T細胞(CTL)は癌免疫応答において非常に重要な位置を占める.しかし,腫瘍組織内に浸潤した細胞傷害性T細胞が効率的に癌細胞を駆逐するためには,どのような細胞移動や癌細胞との相互作用を行う必要があるのか不明な部分が多い.最近,二光子顕微鏡を用いたイメージングによって,CTLの腫瘍組織内での挙動を個々の細胞レベルで解析することができるようになってきた.本稿ではこれまでに二光子イメージングによってわかってきたことを概説し,問題点や将来展望について述べる. -
骨組織・骨髄内の2光子励起ライブイメージング―その方法論と免疫学・生命科学研究への応用
232巻13号(2010);View Description Hide Description硬い石灰質に囲まれた骨組織の内部は従来,生きたままでの観察がきわめて困難であると考えられていた.実際にこれまで骨や骨髄の研究では,固定して摘出した骨をカルシウムキレート剤に1週間ほど漬け込んで脱灰して薄切したり,未脱灰の骨組織を硬質の剃刀で切片にしたりして観察していた.この従来法でも骨内の細胞・組織の“形態”や“分子発現”(免疫染色による)を解析することはできたが,決定的な情報が欠落していた.それは細胞の“動き”である.細胞の“動き”を観察するためには,生きた細胞を生きた組織のなかで観察する必要がある.さらに,骨髄腔のように血管床を介した豊富な循環血流を保ったままで,そこで流入・流出する細胞の動きをとらえることが重要な組織では,“摘出して生かした骨組織”ではなく,“生きた個体のなかの骨組織”を観察する必要がある.著者は最近,2光子励起顕微鏡を駆使して,マウスを生かしたままで骨組織内を観察するイメージング法を立ち上げた.この方法を用いることによって,骨組織のリモデリングにかかわる破骨細胞や骨芽細胞,骨髄内で分化・成熟を遂げる単球・顆粒球・リンパ球,その他の間葉系細胞や血液幹細胞などの生きた動きをリアルタイムで観察することが可能となった.本稿では,これを用いて明らかにした破骨細胞動態に関する著者の最近の研究成果の紹介に加え,この方法論の実際や,その免疫学・生命科学研究における今後の応用と発展性について概説する. -
多発性硬化症の動物実験モデルにおける抗原特異的T細胞動態のin vivoイメージング
232巻13号(2010);View Description Hide Description多発性硬化症の原因として自己反応性T細胞の中枢神経系への浸潤が考えられる.著者らは動物実験モデルを用いて,CD4陽性自己反応性T細胞の中枢神経系への浸潤過程の視覚化を行った.螢光標識した細胞を前臨床期から発症期にかけて,多光子顕微鏡を用いて生体内で追跡した.その結果,中枢神経抗原特異的T細胞は,臨床症状を示す前に脊髄に到着して血管内腔をインテグリン依存的に遊走すること,その後,血管外に浸潤し,血管外壁を遊走すること,さらに血管外壁に存在する抗原提示細胞と会合し活性化された後に,中枢神経系の深部に浸潤することが明らかとなった.本稿では,生体内における細胞レベルでの自己反応性T細胞の視覚化と,その動態解析および分子メカニズムにより得られた結果を紹介する. -
喘息肺でのTh2細胞リアルタイムin vivoイメージング
232巻13号(2010);View Description Hide Description喘息の臨床研究やマウスモデルを用いた研究からアレルギー性喘息の発症においてCD4陽性Th2細胞(Th2細胞)が中心的な役割を果たしていることがわかっているが,肺への集積過程などその体内動態についてはよくわかっていなかった.また,生きている動物の肺のなかで炎症が起こる際の実際の細胞の動きについてもほとんどわかっていなかった.それは,1呼吸により肺自体が動く,2心臓に近いために鼓動による振動がある,などの理由で肺の動きを止めて観察することが難しいためである.最近,著者らはこれらの困難を克服し,喘息が誘導される際の肺のなかでのTh2細胞の動きを動物が生きたまま細胞レベルで観察することに世界ではじめて成功した.本稿では,この新しいイメージング系を用いて明らかになった喘息の誘導過程における肺のなかでのTh2細胞の動態観察結果を紹介する. -
生体分子細胞イメージング手法でみる肥満脂肪組織における慢性炎症・免疫異常のかかわり─目でみる肥満脂肪組織
232巻13号(2010);View Description Hide Description著者らは,生体内で細胞をみて働きを知る“生体分子イメージング手法”を独自に開発し,脂肪組織に適用し,メタボリックシンドロームの病態を検討した.その結果,肥満脂肪組織で,脂肪細胞分化・血管新生が空間的に共存して生じることを示し,さらに微小循環において炎症性の細胞動態が生じていることを明らかにした.脂肪組織の間質には多くのリンパ球が存在し,肥満に伴いCD8陽性T細胞の増加,CD4陽性T細胞・制御性T細胞の減少が認められた.増加したCD8陽性T細胞は肥満脂肪組織における炎症とマクロファージの浸潤を引き起こしていた. -
リステリア感染脾臓における宿主─病原体ダイナミクス
232巻13号(2010);View Description Hide Descriptionマウスにおけるリステリア感染モデルは,細胞内寄生菌に対する細胞性免疫の研究に重要な役割を果たしてきた.2光子励起顕微鏡や螢光顕微鏡などのイメージングデバイスを用いて,リステリアの感染および免疫誘導の主要臓器である脾臓を生きたままで,あるいは固定してより詳細に観察することで,脾内の各組織学的なコンパートメントにおけるリステリアの感染病態や,それに対する宿主免疫反応の進展過程のダイナミクスの一端を明らかにした. -
皮膚における2光子ライブイメージング
232巻13号(2010);View Description Hide Description皮膚は外来抗原と戦う最前線の免疫臓器であり,そこではさまざまな免疫反応が誘導されている.皮膚を対象としたイメージングははじまってまだ日が浅いが,アクセスの容易さ,実験モデルの多彩さは大きなアドバンテージであり,これから開拓が進んでいくことが期待される分野である.皮膚においてライブイメージングを行う際には,皮膚を構成する細胞について理解し,どの細胞に着目し,どの免疫反応を研究対象とするかの選択が重要である.
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フォーラム
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- 切手・医学史をちこち99
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- 異常死をさぐる1
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注目の領域
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新型インフルエンザ─現状と今後の対応
232巻13号(2010);View Description Hide Description2009年4月,ブタインフルエンザに由来する,これまでにヒトの間で流行したことのないインフルエンザウイルスがヒトの間で流行しはじめ,新型インフルエンザとなって世界中で大流行した.その症状は季節性インフルエンザと酷似している.小児を中心とした若年者がおもに罹患し,感染者の致死率は0.001%程度と軽症な疾患である.日本は当初水際対策を行ったが,これがかえって国内患者発生の検知を遅らせ,大混乱のなかで流行開始を迎えることとなった.ワクチン接種が開始されたが,現在日本では流行は下火になりつつある.新型インフルエンザに関する知見はまだまだ限られており,あらたにわかったことに対応して対策を柔軟に変更していくことが重要である.
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TOPICS
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- 生化学・分子生物学
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- 臨床検査医学
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- 皮膚科学
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