医学のあゆみ
Volume 233, Issue 4, 2010
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あゆみ “高安病”発見から1世紀 ─ 研究と診療のあゆみ
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高安病発見から1世紀―研究と診療のあゆみ
233巻4号(2010);View Description Hide Description高安病は1908年に眼科医の高安右人が報告した疾患で,わが国の医学者の名を冠した数少ない疾患のひとつである.わが国では大動脈炎症候群ともよばれるが,海外ではTakayasu’s arteritisのほうが一般的な病名である.大半は若い女性が罹患する疾患であり,症状が非特異的であるため,長く診断されずに経過することもまれでない.大動脈とその分枝に狭窄・閉塞が生じ臨床症状を呈する大型血管炎である.脳虚血発作や大動脈弁閉鎖不全,大動脈瘤,心不全,失明,腎不全など,重篤な合併症が知られている.比較的まれな疾患であるが,最近は画像診断の進歩で早期発見が可能となった.とくにMRAによる閉塞・狭窄の診断,MRIによる血管炎症の診断は有用である.免疫抑制剤の進歩もあり,予後は格段に改善しており,以前に増して早期診断・早期治療が重要となってきている. -
難治性血管炎研究の進歩
233巻4号(2010);View Description Hide Description全身性血管炎とは血管の慢性炎症性病変を基盤にする全身性疾患であるが,原因はいまだ明確になっておらず,しばしば急性の経過をたどり致死的となる.そのなかで近年,血管炎診療を取り巻く環境は大きく変化しつつある.新しい血管炎の分類基準が提唱され,新規治療法についても多くの報告がなされている.大/中血管をおもに侵す血管炎についての記載は別稿にゆだね,本稿では小動脈以下の血管炎のなかでもanti-neutrophilcytoplasmic antibodies(ANCA)関連血管炎に関する分類および治療の進歩について,世界およびわが国における最新の研究報告を交えて記載する. -
大動脈炎症候群の臨床症状と臨床検査
233巻4号(2010);View Description Hide Description大動脈炎症候群(高安病)は,大動脈およびその主要分枝や肺動脈,冠動脈に病変をきたす原因不明の非特異的大型血管炎である.病変の生じた血管の支配領域により臨床症状が異なるため,多彩な臨床症状を呈する.ステロイドや免疫抑制剤が有効であるものの,その使用によっても進行する傾向があり,疾患の活動状況をより的確に評価することが肝要である.その評価のため,これまでC-reactive protein(CRP)や赤沈(ESR)が用いられてきたが,近年,IL-6やMCP-1など炎症性サイトカインや血中matrix metalloproteinases(MMPs)値が有用であると報告されている.とくに,血中MMPs値測定の意義は,疾患活動性に加え,血管障害も反映しうるはじめての血液マーカーであるということである.今日,さまざまな臨床検査項目が診断ツールとして提供されつつある.これらツールを用い,個々の患者に対して,より適切な治療法選択が可能となるよう期待したい. -
高安病における画像診断の進歩―高安病診断に必要な各画像のモダリティ
233巻4号(2010);View Description Hide Description高安病は,大動脈とその主要分枝,肺動脈,冠動脈における狭窄・閉塞・拡張病変をきたす原因不明の非特異性炎症性疾患である.高安病の初発診断やその後の管理では,多彩な臨床症状と炎症性マーカーの上昇の解釈が重要である.画像診断では血管造影検査,頸動脈エコー,MDCT,MRなどが重要であるが,器質的狭窄所見や動脈壁性状の描出能についてはそれぞれの特性に差異がみられる.各症例や医療環境によって,どの撮像法を第1に選択するか異なってくると思われる.撮像法の特性を理解したうえで使い分けをする必要がある. -
内科的治療の現況―免疫抑制療法の進歩
233巻4号(2010);View Description Hide Description高安病は大動脈およびその基幹動脈,冠動脈,肺動脈を主座とする大血管炎である.かつては鎖骨下動脈閉塞による撓骨動脈触知不良により,“脈なし病”とよばれていた.近年の画像検査の進歩により早期診断が可能となってきており,早期に治療すれば,慢性炎症による血管狭窄,閉塞・拡張などによる臓器障害を防ぐことが可能となってきている.内科治療の目標は疾患活動性のコントロールと,長期的に進行する血管病変への対応ならびに高率に合併する高血圧症や大動脈弁閉鎖不全症などへの対処である.早期の副腎皮質ステロイド薬(以下,ステロイド)投与開始は高安病の炎症抑制に非常に効果的であるが,ときに治療に抵抗を示す症例もある.そのようなステロイド抵抗例に対しては新規療法も試みられている.本稿ではおもにステロイドによるスタンダードな治療法に加え,免疫抑制剤および抗TNF-α製剤ほか,新規生物学的製剤治療の試みについて紹介する. -
外科治療と長期予後―半世紀にわたる外科治療の経験に学ぶ
233巻4号(2010);View Description Hide Description東京大学第二外科・血管外科で1955~2000年に外科治療を行った高安病患者106例の遠隔追跡結果を分析し,以下の結論を得た.高安病症例の罹患年齢は若く,本疾患の生命予後は以前考えられていたよりも比較的良好であることから,手術適応はすくなくとも20年以上の超長期の状態も考慮して決定する必要がある.術後遠隔期の死因の約半数は心疾患が原因だったことより,心臓に注目した治療介入を検討していく必要がある.また,人工血管移植後長期になると吻合部動脈瘤を合併する頻度が高くなるため,生存しているかぎりは吻合部を中心とした定期的な経過観察が必要である. -
大動脈瘤に対するステントグラフト治療の現状―高安病による大動脈瘤への対応
233巻4号(2010);View Description Hide Description大動脈瘤に対するステントグラフト治療は,その低侵襲性により急激に市民権を得るようになってきた.今後さらなるデバイスの進化により,あらゆる大動脈部位において第一選択術式になる可能性も期待できる.高安病はステロイドさらには免疫抑制剤を投与する必要があり,高安病因性大動脈瘤に対して術後合併症予防の観点からもステントグラフト治療は有効であると考えられる.ただ発症年齢が若年女性であり,遠隔期成績が乏しい当治療はそのフォローアップを慎重に行う必要がある.本稿では文献的考察を加えて,高安病による大動脈瘤に対するステントグラフト手術の有用性を検討した. -
高安病患者の妊娠と出産―安全な妊娠分娩管理のために
233巻4号(2010);View Description Hide Description高安病は生殖年齢女性に好発する疾患であり,本症を合併する女性が妊娠を希望する場合も少なくない.妊娠に際しては病勢が沈静化し安定した段階で,血管病変の広がりと程度,および心機能,腎機能を評価した後に計画的に妊娠することが望ましい.また,本症合併妊娠では妊娠中期から後期にかけて血圧が上昇することが多く,また胎児発育不全を併発することも多い.したがって,妊娠経過中は血圧の厳密なコントロールと胎児発育の評価が重要である.分娩開始前にも心機能,循環機能の評価を行い,経腟分娩の可否について検討しておく.これらに問題がなければ分娩に際しては経腟分娩も可能であるが,分娩中は十分な母体循環動態のモニタリングを行い,血圧の急上昇や心不全徴候の有無を確認し,これらに異常が認められたときにはいつでも帝王切開に切り替えられるように,ダブルセットアップしておく必要がある.
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フォーラム
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- 切手・医学史をちこち100
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- 第74回日本循環器学会総会・学術集会緊急レポート2
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Cardiomyopathy UP to DATE
233巻4号(2010);View Description Hide Description心筋症は臨床的に肥大型(HCM),拡張型(DCM),拘束型(RCM),および不整脈源性右室心筋症(ARVC)に分類される.近年の分子生物学的・遺伝学的解析法の進歩により,これらの心筋症の病因遺伝子について多くの知見が得られたが,全容の解明には至っていない.本年の第74回日本循環器学会総会・学術集会のプレナリーセッション4“心筋症Up toDATE”では日頃議論する機会の少ないARVCに関して多くの業績を有するイギリスのWilliamMcKenna先生と,DCMの病態形成メカニズムについて研究を進めているカナダのPeter Liu先生に御講演いただいた.また,心筋症の病因遺伝子変異の機能解析について最先端の知見を木村彰方先生に,さらに臨床での診断・治療・管理の進歩について最新の情報をわが国の3名のエクスパートの先生方にご報告いただいた. -
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注目の領域
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世界ではじめての超高速インターネット衛星“きずな” (WINDS)を用いた遠隔病理診断(テレパソロジー)の実証実験
233巻4号(2010);View Description Hide Description
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TOPICS
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- 呼吸器内科学
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- 腎臓内科学
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- 小児外科学
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