Volume 234,
Issue 2,
2010
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あゆみ 麻酔の質と手術患者の覚醒
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医学のあゆみ 234巻2号, 121-121 (2010);
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医学のあゆみ 234巻2号, 123-126 (2010);
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自然睡眠と麻酔は一過性に意識消失が認められるという共通項があり,脳波像も non-REM(rapid eyemovement)睡眠は,プロポフォール,バルビツレートや揮発性麻酔薬など GABAA(γ-aminobutyric acid)受容体を活性化するような麻酔薬との類似性が指摘されている.陽電子断層法(PET)による脳血流の研究でも,脳幹部,視床や大脳皮質の血流低下という共通性が認められている.近年,自然睡眠を引き起こす神経回路や伝達物質の研究が進み,この点においても non-REM 睡眠と GABAA受容体やα2受容体におもに作用する全身麻酔薬は,すくなくとも一部は同様の経路を介して作用していることが示されている.しかし,ケタミン(脳全体の血流を増加させる)や亜酸化窒素には,上記の脳波パターンや脳血流の共通性は当てはまらない.
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医学のあゆみ 234巻2号, 127-130 (2010);
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手術侵襲によって,視床下部下垂体副腎皮質系の賦活化,および交感神経を介した副腎髄質系の活性化と,末梢の炎症細胞からの各種炎症性および抗炎症性サイトカインが誘導される.また,それらのサイトカインに加えて,好中球を遊走させる IL-8 に代表されるケモカインとよばれる一群の炎症因子も手術侵襲により産生が誘導され,活性化した白血球を肺などの重要臓器に集積させる.これらの生体反応は適度な範囲であれば,周術期の生体防御に働くと考えられる.しかし,こうした反応がまったく制御されずに過剰な炎症反応として放置されれば,免疫能をはじめとする生体防御能を抑制する方向に働く可能性がある.本稿では,手術侵襲により惹起される炎症反応と免疫修飾について概説する.そして周術期管理としての麻酔の質の差異が長期予後にまで影響する可能性についても展望を行いたい.
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医学のあゆみ 234巻2号, 131-135 (2010);
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麻酔薬の作用として,鎮痛・鎮静・筋弛緩作用が知られている.強い鎮痛作用をもつレミフェンタニルと鎮静作用をもつプロポフォールの組合せで行われることが多い TIVA(全静脈麻酔法)は,吸入麻酔を用いた麻酔と比較研究され,麻酔の適切な“深度”が従来の吸入麻酔濃度の多寡のみでは十分に理解できなくなった.プロポフォールは海馬における GABAA受容体,レミフェンタニルは脳,脊髄のオピオイドμ受容体を通して効果発現し,異なるレセプターに作用する麻酔薬は相乗的に作用する.高用量レミフェンタニル麻酔が試みられているが,併用する鎮静薬が少量となった場合の術中覚醒が問題となる.鎮静要素の客観的な定量を目的として BIS などの脳波モニターがあるが,吸入麻酔使用時の有用性に疑問が生じている.新しい筋弛緩薬拮抗薬スガマデクスの登場により,十分な筋弛緩薬が投与可能となり,麻酔深度の概念も修正が必要になるであろう.
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医学のあゆみ 234巻2号, 137-140 (2010);
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吸入麻酔薬や静脈麻酔薬,あるいは区域麻酔と全身麻酔の併用のいずれの場合でも,術中覚醒を完全に予防するのは困難である.術中覚醒は全身麻酔薬を至適量投与するのが困難な場合や,適正な鎮静状態を評価できない場合に起こりやすい.術中覚醒を減少させるためには,術中覚醒の兆候(循環変動,流涙,体動など)を見逃さないことに加え,脳波や聴性誘発電位のモニタリングが必要である.今後,術中覚醒を予防するためには,全身麻酔薬の鎮静・記憶抑制作用のメカニズムの基礎的研究と,臨床への translation 研究が不可欠である.
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医学のあゆみ 234巻2号, 141-147 (2010);
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記憶には短期記憶と長期記憶があり,長期記憶には海馬を介する宣言的記憶と,海馬を介さない非宣言的記憶がある.海馬は記憶の保存場所ではないが,記憶形成過程,記憶の想起や記憶の再生に重要な役割を果たしている.麻酔薬は宣言的記憶に対して記憶の減退(健忘)をきたすが,その作用は海馬そのものや短期記憶から長期記憶への encoding に作用するのではなく,むしろ記憶の忘却過程を促進しているようである.また,宣言的記憶や非宣言的記憶に及ぼす作用が麻酔薬によって異なるのは興味深い.恐怖・悲しみなどの感情を伴った記憶には @桃体が関与し,プロポフォールやミダゾラムはこの領域の GABA 受容体を介して記憶の減退をきたす.今後,awake craniotomy などの意識を保持する必要がある手術では,より意識レベルの高さが要求されるかもしれない.記憶に及ぼす麻酔薬の影響がより明確になれば,意識は完全にあるが術中の記憶は完全に消失するような薬物の開発が期待され,それは術中の麻酔の質を高めることになる.
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医学のあゆみ 234巻2号, 149-152 (2010);
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麻酔薬は種々のレセプターやイオンチャネルに作用し,意識消失や記憶形成抑制を生じさせる.同時に麻酔薬は脳波や誘発電位を大きく変化させるため,これらが麻酔のモニターとして用いられるようになってきた.とくに GABAAレセプターの作用を増強することによって麻酔作用を発揮するとされている麻酔薬に関しては,脳波変化には共通する部分も多く,脳波波形からも麻酔薬の効果判定は可能である.現在使用されているモニターは,周波数解析などでこれらの特徴を数値化している.現在の麻酔は麻酔薬と鎮痛薬を組み合わせて使用するバランス麻酔が基本となっており,麻酔薬と鎮痛薬(オピオイド)のそれぞれの中枢への作用や相互作用にも注意が必要である.脳波は意識状態そのものを示すものではなく,モニターを適切に使用するには使用者にも適切な基礎的知識が要求されるのが実情である.
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医学のあゆみ 234巻2号, 153-156 (2010);
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近年の麻酔管理における変化は,これまでの医師の勘と経験に頼った麻酔管理から,エビデンスベースの理論的背景に立脚した麻酔管理へと変化してきている.これは麻酔関連医療機器の進歩をもとに,薬物動態学の臨床への応用がきわめて大きな変化に関与している.また,超音波診断装置の進歩や術後管理における患者自身による疼痛管理における精密持続薬剤投与機器の利用など,これまで臨床麻酔において麻酔科医があまり関心を示さなかった領域における急速な浸透がみられる.さらに教育においても,高精度麻酔管理シミュレーターの医学教育への導入など,医療安全とともに研修の質の向上への試みがなされてきている.本稿では,この 10 年位で変化した麻酔の管理について医療の質と安全の面から解説する
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医学のあゆみ 234巻2号, 157-160 (2010);
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麻酔の発見で患者は手術の痛みと恐怖から解放されたが,麻酔はそれ自体危険を伴い,死亡事故も報告されている.麻酔の質向上のために麻酔の黎明期から麻酔事故について調査されてきた.近年になり麻酔関連の死亡率,障害発生率に関する大規模調査が行われ,対策がとられたことにより麻酔による死亡あるいは障害は過去数十年の間に低下した.麻酔科医の教育,専門医の増加,麻酔器・モニターの発達と定期点検の義務化,麻酔薬の進歩,術後管理の進歩などが麻酔の質の向上につながっている.一方,患者からみた麻酔の質には安全に加えて快適がある.全身麻酔中意識がないこと,麻酔が原因の障害がないこと,術後耐えがたい痛みがないこと,嘔気・嘔吐がないことなどが,患者からみた麻酔の質の評価にかかわっている.麻酔診療では,患者の安全と満足度を評価し改善することにより質の維持向上をはかることが重要である.
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フォーラム
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医学のあゆみ 234巻2号, 161-163 (2010);
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医学のあゆみ 234巻2号, 164-166 (2010);
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連載
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連載女性医師復帰支援プログラム⑦(最終回)
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医学のあゆみ 234巻2号, 173-181 (2010);
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国立大学法人島根大学では 2007 年,“地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム”に,附属病院の“新しいキャリア継続モデル事業~しなやかな女性医療職をめざして~”が選定され,事業の推進母体として医学部附属病院に“女性スタッフ支援室”が設置された.翌年には,科学技術振興調整費による“女性研究者支援モデル育成”事業に,島根大学の“地方から開く女性研究者の未来 in 島根”が採択され,全学組織として“男女共同参画推進室”が新設された.本学では,これらの採択事業による女性研究者・女性医療従事者への支援体制構築が大学全体の職場環境・学業環境改善のための先行的試行であると位置づけ,学内全構成員への事業効果の波及をめざしている.
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 234巻2号, 169-170 (2010);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 234巻2号, 170-171 (2010);
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血液内科学
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医学のあゆみ 234巻2号, 171-172 (2010);
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