医学のあゆみ
Volume 234, Issue 10, 2010
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【9月第1土曜特集】 TGF-βシグナル研究─メカニズムの解明から新たな治療へ
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- 総論
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TGF-βシグナル伝達研究の新展開
234巻10号(2010);View Description Hide Description代表的な多機能性サイトカインである TGF-βは広範な組織で産生され,標的細胞の増殖・運動性・分化などを調節することにより多彩な生命現象に関与している.また,その活性発現は細胞外・細胞内において量的および質的に厳密な制御を受けている.TGF-βシグナル伝達調節の破綻が疾病につながる例(癌,免疫異常,線維症,骨軟骨疾患,血管病変など)も多く知られるようになった.これら疾病の治療戦略開発のうえでは,それぞれの作用の場における TGF-βのシグナル伝達および制御機構の深い理解が重要である.TGF-βシグナルの細胞膜から核への流れの概要はすでに明らかにされているが,疾病の克服という観点からは未解明な課題も多い.本稿では細胞内シグナル調節研究を中心に新しい知見を概説し,今後の研究展開について考える. - TGF-βのシグナル伝達機構
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TGF-βファミリーシグナル抑制機構
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTGF-βファミリーシグナルは,発生初期より成熟個体に至るまで細胞増殖,細胞分化などさまざまな生命現象に携わり,生体のホメオスタシスの制御にかかわっている.したがって,TGF-βファミリーシグナルの異常は,さまざまな先天性疾患に加え,癌化,線維化など生命維持を脅かす疾患を引き起こす.TGF-βファミリーシグナルは,リガンド特異的な膜受容体が細胞内シグナル伝達分子 Smad を介して多様な生理活性を現すが,生体は過度のシグナル伝達を防ぐため,綿密に TGF-βファミリーシグナルの強度ならびに持続時間を制御している.本稿では TGF-βシグナル抑制をつかさどる制御分子のなかで,最近著者らが明らかにしたTGF-βの直接標的遺伝子である TMEPA(I transmembrane prostate androgen-induced RNA)による SARA(Smad anchor for receptor activation)を標的とした新規 TGF-βシグナル抑制機構を含めて,最新の知見を概説する. -
TGF-βによる転写制御―ChIP-sequencingがもたらす転写制御研究の新たな局面
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTransforming growth factor-β(TGF-β)ファミリーのサイトカインは多彩な生理的・病理学的な役割をもつ.その細胞内シグナル伝達経路のおもな分子 Smad ファミリーは,多くの制御因子により修飾を受けてコンテキスト依存的な転写制御を行う.しばしばそれは MAP キナーゼなどを介した non-Smad 経路による制御を受けている.タイリングアレイを用いた ChIP-chip 法や,次世代シーケンサーを用いた ChIP-sequencing法が転写制御研究において急速に普及している.この方法により,ある局面でのゲノム上の Smad ファミリー分子の結合部位を網羅的に同定することが可能になった.この,いわゆるシストローム解析を通して,Smad の機能を制御する細胞・組織特異的な分子の役割や,その病態にかかわる異常などが明らかになっていくことが期待される. -
TGF-βによる細胞内レドックス制御とミトコンドリア
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTGF-βシグナルはおもに Smad,non-Smad シグナルに大別されるが,TGF-βの生物活性の多様性と呼応するかのように,近年ますます複雑化している.著者らは,TGF-β刺激下において細胞内活性酸素(ROS)濃度が上昇して細胞内レドックスが変化することを見出し,それらが二次シグナルとして機能する可能性について検討している.たとえば乳腺上皮細胞を TGF-βで処理するとミトコンドリアに依存した持続的な ROS 濃度上昇が観察され,同時にミトコンドリア膜電位と細胞内 GSH 濃度が低下する.現在,その意義とメカニズムについて,ミトコンドリア枯渇により TGF-β誘導性遺伝子のうち約 15%が影響を受けることや,ミトコンドリア膜電位により PKC 類似分子の cleavage 過程が制御される可能性を得て,詳細を解析中である.近年,多くの癌でミトコンドリア DNA に変異がみつかり,ミトコンドリア活性と悪性化形質との関係が注目されている.TGF-βの細胞悪性化誘導能と本ミトコンドリア介在レドックスシグナルの関連に興味がもたれる. -
癌における上皮間葉転換(EMT)―癌におけるTGF-β誘導性EMTの作用機構
234巻10号(2010);View Description Hide Description上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition:EMT)は上皮細胞が間葉系様細胞に形質変化する現象で,近年,癌における EMT がとくに注目されている.EMT を獲得した癌細胞は低分化型の性質をもつようになり,運動性の亢進など転移に有利な性質を獲得する.また,癌周辺の上皮細胞も EMT を獲得し,癌関連線維芽細胞様の性質をもつ細胞が出現し,癌の浸潤に関与している可能性もある.TGF-βは EMT を強力に誘導する因子のひとつであり,個体発生のみならず線維症や組織修復,そして癌における EMT に深く関与している.細胞が EMT を獲得するプロセスは多段階に分かれており,それぞれにおける TGF-βの作用機序も徐々に解明されつつある.そこで本稿では,TGF-βが誘導する EMT の分子機構を中心として,著者らの研究結果を含め最近の話題を概略する. -
TGF-βによるヘルパーT細胞の分化制御
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTGF-βは免疫抑制あるいは抗炎症性サイトカインとして古くから知られているが,その作用機構はこれまで不明であった.最近,TGF-βにはヘルパー T 細胞の分化を制御する機能があることが明らかにされ,TGF-βの免疫制御機構が明らかにされつつある.とくに Foxp3 陽性抑制性 T 細胞(Treg)を産み出す能力があることが発見されて免疫抑制やホメオスタシス維持のメカニズムのひとつとして注目を集めている.しかし一方で,TGF-βは IL-6 と共存すると炎症性の Th17 細胞も誘導する.TGF-βによる Treg の誘導は Smad2/3 に依存するが,Th17 の誘導は Smad2/3 非依存性である.このような分子機構の解明により免疫制御のあらたな方法が開発されることが期待される. -
TGF-βファミリーによる血管新生制御機構
234巻10号(2010);View Description Hide Description血管は,内腔を覆う血管内皮細胞(EC)とそれを保持する血管壁細胞〔ぺリサイトと血管平滑筋細胞(VSMC)〕から構成される.Vascular endothelial growth facto(r VEGF)のように EC に作用して血管新生を促進するサイトカインと違い,TGF-βは EC だけでなく VSMC にも作用し血管新生を調節している.とくにEC への作用は複雑で,「通常は血管新生を抑制し血管構造の安定化に寄与しているが,新生血管では血管新生を促進する」という二面性を有している.血管新生における TGF-βの重要性は,培養細胞に加えて遺伝子改変マウスや TGF-βシグナル系の遺伝性疾患の解析からも示唆されてきた.そこで本稿では,遺伝子改変マウスを用いた in vivo 解析から得られた結果を中心に,血管新生における TGF-βシグナルの役割とシグナル異常がもたらす疾患について概説する. -
In vivo 光イメージング―光技術を駆使したシグナル伝達研究
234巻10号(2010);View Description Hide Description2008 年度ノーベル化学賞受賞者の下村 脩博士が緑色螢光蛋白質(GFP)を発見してから 50 年経た現在,新しい螢光・発光蛋白質や螢光色素の発見やその改良,レーザーや光学検出系などの光学機器の性能の飛躍的向上により,in vivo 光イメージング技術が急速に発展しつつある.この技術は複雑かつ多様な生命現象を動物が生きたまま解析することを可能にし,ポストゲノム時代の遺伝子,分子や細胞の包括的研究を加速させると期待されている.しかし一方で,生体組織の光イメージングにおいては光の吸収や散乱などのためにさまざまな問題が生じ,とくに深部での観察が難しいという欠点がある.そこで本稿では in vivo 光イメージング技術の現状と展望について,著者らの癌と TGF-βシグナル研究におけるデータを紹介しながら,その問題点と将来の可能性を探る. - TGF-βシグナルとがん
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胃癌におけるTGF-βシグナルの役割
234巻10号(2010);View Description Hide Description胃の上皮細胞において,TGF-βは Smad,Runx3 を介して多くの標的遺伝子の発現を制御している.これらの標的遺伝子のなかには p21 や Bim などが含まれており,TGF-βは細胞の増殖を抑制,あるいはアポトーシスを誘導し,癌抑制因子として作用している.そのため TGF-βの受容体,Smad,Runx3 の発現異常による TGF-βシグナル伝達の破綻は胃の上皮細胞の癌化を促進すると考えられている.さらに最近では,TGF-βが胃癌における腫瘍血管新生にかかわる遺伝子や,胃癌幹細胞にかかわる遺伝子の発現調節にもかかわることがわかってきており,TGF-βの胃癌抑制因子としての多彩な作用に注目が集まっている. -
ウイルス性慢性肝疾患におけるリン酸化Smadを介する可逆的な癌化・線維化シグナル―リン酸化Smadシグナルからみたウイルス性慢性肝疾患の病態把握と治療への応用
234巻10号(2010);View Description Hide Descriptionウイルス性慢性肝疾患,とくに C 型肝炎は肝線維化の進行に伴い発癌率が高くなることから,肝線維化シグナルは癌化シグナルと密接なつながりがある.Transforming growth factor-βはシグナル伝達因子 Smad3の C 末端がリン酸化した分子(pSmad3C)を介して細胞増殖阻害やアポトーシス誘導など癌抑制シグナルを伝達する.一方,ウイルス構成成分,炎症性サイトカイン,ならびに Ras などは c-Jun N-terminal kinase(JNK)を活性化し,Smad3 中央に位置するリンカー部のリン酸化した分子(pSmad3L)を形成させる.核移行したpSmad3L は,細胞増殖や細胞外マトリックスの蓄積を促すことにより癌化・線維化シグナルを伝達する.ウイルス性慢性肝疾患の発癌過程で,ウイルスと慢性炎症は協調して pSmad3C から pSmad3L シグナルへの転換を促進する.特筆すべき事象として,慢性肝炎症例に抗ウイルス療法を行いウイルスと炎症が終息すると,pSmad3L を介する癌化・線維化シグナルは pSmad3C を介する癌抑制シグナルに回帰することがあげられる.これらから,Smad3 リン酸化は抗ウイルス療法の際,肝発癌・線維化ポテンシャルが減弱したかどうかを判断する新規バイオマーカーとしてウイルス性慢性肝疾患に用いることが期待される. -
膵癌とTGF-βシグナル
234巻10号(2010);View Description Hide Description難治癌の代表である膵癌の病態形成において,TGF-βシグナルのもつインパクトは非常に大きい.膵癌の発育・進展過程において,このシグナルは早期では腫瘍抑制に,後期では腫瘍促進に働く二面性をもつと考えられる.まず第 1 に,ヒト膵癌の大半を占める通常型膵癌(pancreatic ductal adenocarcinoma:PDAC)の 50%以上に Smad4 遺伝子の欠失・変異などの異常がみられ,他の散発性の癌に比べ格段に高頻度である.すなわち,TGF-βシグナルは正常な膵上皮細胞の増殖を抑制し,腫瘍抑制のブレーキとして働いており,Smad4の変異などによりその効果が失われて発癌に至ると考えられる.遺伝子改変マウスにおいても,膵特異的な恒常活性型 Kras 発現に TGF-βⅡ型受容体のノックアウトが加わると,ヒト膵癌の組織学的特徴をよく近似した著明な線維化・間質の増生を伴う PDAC が急速に出現した.一方,膵癌成立後の遅い時期には,TGF-βシグナルは癌細胞に上皮間葉移行を誘導し浸潤能を高めるなど,癌細胞に対する直接的作用に加え,線維化の促進・細胞外マトリックスの増生・腫瘍免疫や腫瘍血管新生の調節など,癌細胞を取り巻く間質に作用することで,間接的に癌細胞に好適な環境を形成し,腫瘍促進的に働く.この癌の微小環境への作用は,膵癌のように間質の豊富な癌においてはとくに重要と思われ,TGF-βシグナルの阻害がこの難治癌の治療標的のひとつとなる可能性がある. -
乳癌におけるTGF-βの癌抑制因子から癌促進因子への転換機構
234巻10号(2010);View Description Hide Description乳癌を含め,ほぼすべての進行癌で TGF-βの高発現が認められ,TGF-βのシグナル伝達の異常はさまざまな癌の進行に寄与している.TGF-βシグナルを阻害する薬剤は悪性度の高い癌に対して有用であり,すでに悪性黒色腫や腎癌を対象とした臨床試験がなされている.しかし,TGF-βは悪性の癌に対する作用と異なり,初期癌に対して癌抑制因子として働く.そのため,TGF-β阻害は癌を悪性化する要因ともなりうる.TGF-βの相反する生理作用はジェネティックやエピジェネティックな変化を含め複雑な遺伝子発現の相違に起因すると考えられているが,その詳細は不明な点が多い.本稿ではマウス実験を中心とした分子生物学的な知見から,TGF が示す癌抑制作用と癌促進作用について概説する. -
白血病におけるTGF-βシグナル
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTGF-β-Smad シグナルは細胞増殖,発生,分化などの多様な生命現象をつかさどるサイトカインシグナルである.TGF-βシグナルの制御にかかわる遺伝子の変異や発現の低下が,急性骨髄性白血病(AML),急性転化期の慢性骨髄性白血病(CML),T 細胞型急性リンパ性白血病(T-ALL)などの白血病において報告されている.したがって,TGF-βシグナルはこれらの白血病においてがん抑制メカニズムにかかわると考えられている.一方,白血病幹細胞は白血病の抗がん剤抵抗性の再発の原因となる細胞である.最近,著者らは慢性期のCML においてフォークヘッド転写因子 FOXO が白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性に必須な役割を担うことを発見した.TGF-βシグナルは,この FOXO の活性化を介して白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性にかかわることが解明された. -
脳腫瘍の発生・進展における TGF-βシグナル
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTGF-βは一般的に上皮由来の腫瘍細胞をはじめとして多くの細胞に対して増殖抑制作用を示すことから,腫瘍抑制因子として知られている.しかし,非上皮由来である神経膠腫細胞などにおいては逆に腫瘍促進因子として作用していることが報告されている.その作用機序として,TGF-βシグナルによる細胞増殖の促進作用に加えて,近年では神経膠腫の癌幹細胞の維持にも TGF-βシグナルが寄与していることが明らかとなった.本稿では脳腫瘍,とくに神経膠腫の発生・進展における TGF-βシグナルの作用とそのメカニズムについて議論するとともに,それらの作用を標的とした脳腫瘍の新規治療戦略の開発の現在の状況についても紹介する. - 疾病とTGF-βシグナル伝達異常
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TGF-βと線維症―TGF-βを標的とした線維症の予防・治療法,診断法開発の試み
234巻10号(2010);View Description Hide Description線維化は正常な組織修復過程の病的過剰状態である.TGF-βは, ①細胞増殖抑制活性, ②細胞外基質産生促進活性, ③上皮-間葉細胞分化転換(EMT)誘導活性,の三大活性を介してさまざまな組織の線維症と深くかかわる.TGF-βシグナルは組織修復に必須であるが,異常過剰シグナルは線維症の病因となる.そこで,組織修復・線維化における TGF-βシグナルの研究が精力的に進められ,その成果をもとに,各種線維症に対する治療・予防法,診断法の開発が試みられている.ここでは線維症との関連で TGF-βの研究がどのように発展してきたかを概説し,著者らが進めているプロテアーゼ依存 TGF-β活性化反応を標的とした肝線維化の治療・予防法,診断法開発の試みについて紹介する.TGF-βが産生されてから働くまでのステップごとに,線維症ではどのような変化が惹起され,それをどのように検出・制御する試みがなされているか説明する. -
アレルギー疾患と母乳中 TGF-β―TGF-βの経口摂取によって食物アレルギーの予防は可能か
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTransforming growth factor-β(TGF-β)はヒト母乳中に豊富に存在している.ここ数年来,母乳中に TGF-βが多い母親から生まれた子どもほど,乳幼児期のアレルギー疾患の発症率が低いという疫学的な報告があいついで発表され,母乳から経口摂取される TGF-βが,乳幼児期のアレルギー疾患発症を予防する鍵となる因子である可能性が示唆されている.最近,著者らを含む国内外の研究グループは経口あるいは母乳中に存在する TGF-βが腸管内でも活性を保つこと,経口免疫寛容の増強効果があり,食物抗原への感作を抑制できること,胃酸で活性化されることなどを明らかにし,疫学報告に対する実証的なエビデンスが蓄積されつつある.将来,飲食物に TGF-βを加えるといった非常に簡便な方法によって,食物アレルギーなどのアレルギー性疾患の発症が予防できるかもしれない. -
TGFシグナル異常による骨・軟骨疾患―単一遺伝子病からありふれた疾患まで
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTransforming growth facto(r TGF)ファミリーメンバーは多様な生理活性をもつサイトカインであり,骨・軟骨の発生やリモデリングにも深くかかわっている.このシグナル系の異常で骨・軟骨の疾患が発症することがこの 10 年の間に明らかになった.単一遺伝性骨系統疾患では,過剰な膜性骨化を特徴とする常染色体優性遺伝病 Camurati-Engelmann disease が TGF-β1 のミスセンス変異で発症することや,fibrillin1 に変異が同定できない Marfan syndrome 患者の一部が,TGFⅡ型受容体(TGFBR2 )の変異により発症することが報告されている.また,これらの単一遺伝性骨系統疾患のみならず,変形性関節症といったありふれた疾患の感受性と,TGF ファミリーメンバーや TGF シグナルを調節する細胞外マトリックス蛋白質の多型との関連性も明らかにされている. -
バイオマーカーとしての TGF-β
234巻10号(2010);View Description Hide Description炎症性疾患や癌においてトランスフォーミング成長因子(TGF-β)のバイオマーカーとしての評価はかなり以前よりなされているものの,TGF-β自体が生体において非常に普遍的に存在し,かつ多面的に機能を発揮しており,さらには血液中での動態(とくに生成箇所)が明確でないことからその解釈には注意が必要で,詳細な検討が必要な場合が多い.現在までに炎症性疾患,動脈硬化性疾患,そして癌と多くの疾病でバイオマーカーとしての有用性の報告がされている.最近では Marfan 症候群(MFS)での検討のように,大動脈疾患の本態をうかがい知れるマーカーとしても注目が集まっている. - 新たな治療へ向けて
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TGF-β阻害剤の臨床応用―難治性疾患への新たな治療法
234巻10号(2010);View Description Hide DescriptionTGF-βの作用の亢進により,腎や肺,眼における線維症や進行癌における癌の進展が引き起こされることが明らかとされてきた.TGF-β阻害剤による線維症や進行癌への治療の試みが近年行われており,さまざまな種類の TGF-β阻害剤が開発されている.TGF-β阻害剤は,高分子阻害剤と低分子阻害剤,アンチセンスオリゴヌクレオチドの大きく 3 つに分類され,その機序に応じた適用をすることが肝要である.本稿ではTGF-β阻害剤を用いた治療について,その作用機構と最近の治験の進行状況を紹介し,そして難治性疾患へのあらたな治療開発の取組みについても概説する.
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