Volume 234,
Issue 13,
2010
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あゆみ エビデンスに基づくアフェレシス療法
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医学のあゆみ 234巻13号, 1139-1139 (2010);
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医学のあゆみ 234巻13号, 1141-1143 (2010);
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アフェレシス療法は血液浄化療法とほぼ同義と考えられ,血液中の不要物質を除去する治療法を総称したものである.広い意味では血液透析,腹膜透析もアフェレシス療法の一部ということになる.血液浄化というと,種々の疾患で血液が汚染してしまい,それを浄化するという印象を与える用語で,誤解を生じやすい.どこか,中世ヨーロッパで行われた瀉血治療を思わせるものがあり,より的確な日本語の用語が望まれる.実際,種々の炎症性サイトカインなどはそれぞれに重要な役割があり,それがすべて悪影響を与えているということではなく,過剰な場合に有害作用を発揮するため,それを調整するのがアフェレシスの役割といえる.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1144-1152 (2010);
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多臓器障害(multiple organ failure:MOF)とは,生体への種々の侵襲によって短時間の間に重要臓器がたがいに関連性をもって機能障害に陥る病態である.一方,肝不全は急激な肝細胞の壊死に伴う,凝固能異常,肝性脳症を特徴とする疾患である.近年,MOF,急性肝不全の多くを占める劇症肝炎は,いずれも高サイトカインによる SIRS(systemic inflammatory response syndrome)であると考えられている.このサイトカインなどの病因物質の除去,さらに恒常性維持の目的で持続血液濾過透析(CHDF)を中心としたアフェレシス療法が広く行われている.重篤で死亡率の高い急性肝不全に対し,わが国では血漿交換(plasma exchange:PE)と同時に CHDF を施行する PE+CHDF 療法が広く行われている.これは恒常性の維持とサイトカインなどの病因物質除去を目的とし,肝細胞の再生を促す補助療法である.しかし,現在のところその成績には限界があり,肝移植などの根本的治療を必要とする場合も多い.今後いっそう成績を上げるためには,さらなる工夫と発展が望まれる.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1153-1157 (2010);
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重症敗血症・敗血症性ショックに対するガイドラインとして,2004 年,Dellinger1)などにより Survivingsepsis campaign guidelines(SSC guidelines)が報告された.その後,改定されたガイドラインも出されたが,大きな変化はあまりなく現在に至っている.しかし,わが国で臨床で多く用いられてきたエンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)や持続的血液浄化療法などの評価は SSC guidelines のなかでは十分とはいいがたい.近年,イタリアで行われた EUPHAS Study で,PMX-DHP は,呼吸,循環動態や死亡率の改善などの効果があるとの結果が出された.今後,アメリカでも FDA の認可を受けた後に PMX-DHP の臨床治験が行われる予定である.将来的には,より確固たるエビデンスに基づく治療手段になることを願っている.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1158-1164 (2010);
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Guillain-Barré 症候群(GBS),重症筋無力症(MG),多発性硬化症(MS),視神経脊髄炎(NMO)などの免疫性神経疾患は従来,治療困難な難治性疾患に分類されてきたが,アフェレシス療法を含むさまざまな治療法の開発により現在は治療が可能となっている.なかでもアフェレシス療法は,疾患病勢の沈静化・改善を目的として,おもに疾患活動期において施行され,急性期治療における治療戦略のひとつとして確立されている.一方,各疾患において関与するサイトカイン,IgG サブクラスなど各疾患における病態が解明されるに従って,その病態に即した治療が可能となりつつあり,各疾患の病態・重症度に合わせたアフェレシス療法を選択することによって,より高い治療効果が期待される.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1165-1168 (2010);
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薬物中毒における血液浄化療法の検討は系統だったコントロールスタディを行うことが困難であり,どの血液浄化療法にも薬物中毒患者の予後を改善するという明確なエビデンスは存在しない.わが国でも頻度は少ないながら,薬物中毒に対して血液浄化療法が行われている.血液浄化療法の方法には血液透析・血液吸着などさまざまな方法があるが,近年の海外の報告では血液吸着の施行例は減少してきており,血液透析の技術が向上したことから,血液吸着に対する意見は否定的なものが多い.血液吸着の合併症発生率は血液透析と比較していぜん高く,注意が必要である.薬物中毒患者に血液吸着をはじめとした血液浄化療法を行う場合,患者の臨床症状と血液浄化療法による合併症を十分に考慮しながら適応を判断することが重要である.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1169-1173 (2010);
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潰瘍性大腸炎,Crohn 病に代表される炎症性腸疾患は,わが国で急増する特定難治性疾患である.その病態には免疫学的異常が大きく関与するものと考えられ,種々の治療法が存在するが,いまだに根治の得られる治療法は存在しない.白血球除去療法は,流血中の白血球をカラムを用いて除去する治療法である.明確な作用機序は判明していないが,活性化した白血球の除去などを介して効果を発現するものと考えられている.重症潰瘍性大腸炎に対し約 60%程度の効果を認め,大きな副作用も認めないことから,わが国では広く用いられている.海外での臨床研究も複数報告され,一定の効果が得られている.通常は週に 1 回の施行により加療するが,週に 2 回以上施行する集中治療の有効性が報告され,近年集中治療についても保険適応となった.Crohn 病に対しても一定の効果が得られることが報告され,近年保険適応となった.作用機序,効果を規定する因子の検討,より効果を高めるための研究も多くの施設で検討されており,研究結果が待たれる.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1174-1178 (2010);
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予後不良の難治性ネフローゼ症候群をきたす巣状糸球体硬化症(FGS)に対する LDL アフェレシスは,脂質異常症による組織障害を阻止するのみならず,寛解導入にも効果があり,そのエビデンスが前向きコホート試験で示されつつある.再発例にも有効で,その効果発現には脂質除去のみならず,薬剤の効果発現促進も考えられる.現時点で,ステロイドやシクロスポリン治療後,難治性を示すものにできるだけ早期に本治療を施行することで,寛解導入と腎機能維持が期待できることが示され,わが国から発信する有望な治療法と考えられる.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1179-1183 (2010);
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Stevens-Johnson 症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は,おもに薬剤が原因で引き起こされる,皮膚と粘膜に広範な紅斑や水疱・びらんを形成する疾患である.『SJS および TEN の治療指針 2009』によると,副腎皮質ステロイド薬の全身投与が第一選択となっており,ステロイド治療に反応しない症例や重篤な感染症などでステロイド薬を使用できない症例では免疫グロブリン静注療法(IVIG)または血漿交換療法が推奨されている.本稿ではステロイドパルス療法,IVIG に抵抗性で血漿交換療法が有効であった TEN の症例を提示し,SJS および TEN における血漿交換療法について解説する.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1185-1189 (2010);
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血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,止血因子である von Willebrand 因子(vWF)を特異的に切断し,その機能発現を調節している酵素である ADAMTS13 の活性低下により全身の細小血管に微小血栓が形成され,その結果として溶血性貧血,消耗性血小板減少による出血傾向および循環障害による臓器障害が引き起こされる重篤な疾患である.先天性ならびに後天性 TTP 患者ではそれぞれ ADAMTS13 遺伝子異常による同酵素の産生・分泌異常とインヒビターの産生により同酵素活性が消失あるいは著減していることから,その治療としては先天性 TTP には定期的は血漿輸注が血栓症の予防に有効であり,後天性 TTP には血漿交換が奏効し,副腎皮質ホルモンや抗血小板薬の併用が行われている.そして最近では,後天性 TTP の血漿交換不応例や再発症例などの難治例に対するリツキシマブの有用性が報告されている.注意するべき点として,血小板減少に対する安易な血小板輸血は病状の悪化を招くことから,活動性出血の止血目的以外には使用しないことが重要である.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1191-1196 (2010);
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免疫抑制薬や分子標的薬,生物学的製剤などの薬物療法の開発によって膠原病・リウマチ性疾患の治療はめざましい進歩を遂げ,それらの薬物療法が治療の主流をなしている.一方で,薬剤療法によっても効果が乏しい難治性症例や,臓器障害や薬物アレルギーを有する症例,組織障害性を有する薬物の副作用や合併症などによって十分な治療が行えない症例など,治療に難渋するケースも少なくない.アフェレシス療法は薬物療法とはまったくコンセプトが異なり,病因関連物質や病態形成に深くかかわる細胞や因子を体内から取り除くことによって病勢を抑える治療法である.アフェレシス療法自体の効果のみならず,併用する薬物療法の効果を増強したり薬物投与量を減量可能にするなど,より安全により効果的な治療をもたらす可能性がある.ここでは膠原病・リウマチ性疾患におけるアフェレシス療法の種類と基本的な方法,適応,臨床効果や新しい知見などについて触れてみたい.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1197-1201 (2010);
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2008 年 4 月より二重濾過血漿交換療法(DFPP)が C 型慢性肝炎に保険収載となった.インターフェロン(IFN)療法と組み合わせ,C 型肝炎ウイルス(HCV)粒子をサイズバリアにて効率よく除去し,早期のウイルス量低下を得ることが可能になった.開発試験においては,とくに IFN 療法再燃・無効例に効果が高い.現在問題となっている PEG-IFN-α/Ribavirin 療法の再燃例のみならず,無効例に対しての再治療時に併用することにより,早期のウイルス量低下が得られており,考慮すべき IFN 療法の工夫のひとつである.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち105
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医学のあゆみ 234巻13号, 1203-1203 (2010);
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2008 年 4 月より二重濾過血漿交換療法(DFPP)が C 型慢性肝炎に保険収載となった.インターフェロン(IFN)療法と組み合わせ,C 型肝炎ウイルス(HCV)粒子をサイズバリアにて効率よく除去し,早期のウイルス量低下を得ることが可能になった.開発試験においては,とくに IFN 療法再燃・無効例に効果が高い.現在問題となっている PEG-IFN-α/Ribavirin 療法の再燃例のみならず,無効例に対しての再治療時に併用することにより,早期のウイルス量低下が得られており,考慮すべき IFN 療法の工夫のひとつである.
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書評
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医学のあゆみ 234巻13号, 1204-1204 (2010);
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2008 年 4 月より二重濾過血漿交換療法(DFPP)が C 型慢性肝炎に保険収載となった.インターフェロン(IFN)療法と組み合わせ,C 型肝炎ウイルス(HCV)粒子をサイズバリアにて効率よく除去し,早期のウイルス量低下を得ることが可能になった.開発試験においては,とくに IFN 療法再燃・無効例に効果が高い.現在問題となっている PEG-IFN-α/Ribavirin 療法の再燃例のみならず,無効例に対しての再治療時に併用することにより,早期のウイルス量低下が得られており,考慮すべき IFN 療法の工夫のひとつである.
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医学のあゆみ 234巻13号, 1205-1206 (2010);
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医学のあゆみ 234巻13号, 1207-1210 (2010);
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連載
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動物の感染症から学ぶ 6
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医学のあゆみ 234巻13号, 1218-1225 (2010);
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サルモネラ(Salmonella )はグラム陰性通性嫌気性桿菌で,腸内細菌科の一属(サルモネラ属)に属する細菌である.おもにヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌の一種であり,その一部はヒトや動物に感染して病原性を示す.サルモネラ症は起因血清型が同じでも宿主の種類や年齢により病型が異なることが知られており,急性敗血症型(チフス様疾患)と胃腸炎型に分けられる.本稿では各種動物におけるサルモネラ症について概説するとともに,近年,ヒトの食中毒や家畜のサルモネラ症の原因菌として世界中で問題となった多剤耐性 SalmonellaTyphimurium ファージタイプ 104(DT104)と成牛型サルモネラ症の増加との関連に関する分子疫学的解析について紹介する.また,著者らは DT104 が細胞内の情報伝達因子である G 蛋白を ADP-リボシル化する百日咳毒素様の酵素を産生することをあらたに見出したので,これについてもあわせて紹介する.
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 234巻13号, 1215-1216 (2010);
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神経精神医学
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医学のあゆみ 234巻13号, 1216-1217 (2010);
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