Volume 235,
Issue 4,
2010
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あゆみ 重粒子線治療─最新治療エビデンス
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医学のあゆみ 235巻4号, 281-284 (2010);
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医学のあゆみ 235巻4号, 285-288 (2010);
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重粒子線の特長は,優れた線量集中性と強い生物効果にある.また最新の画像医学,あるいは情報工学技術を応用した融合画像の利用や呼吸同期など,照射技術が飛躍的な進歩をとげている.精密にデザインされた重粒子線治療ビームを呼吸運動などに伴う生理的動きや容易に変形の生じる人体内に存在する病巣(target)にmm 単位以下の精度で安全・確実に hit させる高精度の照射技術が実現している.
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医学のあゆみ 235巻4号, 289-292 (2010);
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炭素イオン線は高い生物学的効果から,従来の放射線抵抗性癌に対して有効な治療法である.また,病巣への優れた線量集中性を有することで,腫瘍浸潤がない状態であれば,周囲の重要臓器(脳,脊髄,眼球,視神経など)を保護できる可能性が高い.頭頸部領域では頭蓋底から第 2 頸椎までに発生する脊索腫や,顎顔面部に発生する腺様嚢胞癌,腺癌,粘膜悪性黒色腫などがおもな対象となっており,炭素イオン線治療の安全性と有効性が確認されている.とくに,これまで重要臓器との関係から手術非適応とされていた放射線抵抗性癌では他に有効な治療法がなく制御困難であったが,炭素イオン線治療によって根治を期待した治療が可能になると考えている.
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医学のあゆみ 235巻4号, 293-296 (2010);
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手術によって根治が期待できるI期非小細胞肺癌であっても手術ができない,あるいは希望しない症例がある.このような患者に対して安全で確実な治療を開発することが,肺癌死亡を低減させるためには重要な課題である.肺癌に対する炭素イオン線治療は 1994 年 11 月から開始され,2009 年 12 月までにのべ 918 名の治療が行われた.末梢型I期肺癌に対しては,治療期間を 6 週間(18 回分割照射)から 3 週間(9 回分割照射),1 週間(4 回分割照射)と安全性と効果を確認しながらしだいに短縮し,現在は 1 日で照射を終了する臨床試験を行っている.第Ⅰ相試験の結果では,正常組織の有害事象は臨床的に問題となる症状を呈するグレード 3 以上の肺反応は認めず,5 年局所制御率は 91.8%であった.炭素イオン線治療は手術ができない患者にとって手術に代わりうる局所療法として,肺癌死亡の低減に貢献すると考える.
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医学のあゆみ 235巻4号, 297-301 (2010);
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慢性肝疾患を背景に有する肝細胞癌の治療には,腫瘍の制御とともに可能なかぎり肝機能を温存することが求められる.従来から放射線治療に用いられている X 線に比べて線量集中性に優れる陽子線や炭素イオン線などの荷電粒子線を用いた治療は肝の一部に限った照射が可能で,肝機能低下のリスクを抑えながら治療を行うことができる.放射線医学総合研究所では 1995 年 6 月に開始した肝細胞癌に対する炭素イオン線治療の 4つの臨床試験において,至適線量を求めるために線量増加を行うとともに治療回数を減らして治療期間の短縮も試みられ,5 週間 15 回の治療から 2 日 2 回の治療まで短縮できた.重粒子線治療による局所制御率は,腫瘍の大きさ,部位,および治療分割回数にかかわらず 90%前後と良好であった.また,ほとんどの症例において肝機能の変化は軽微であった.腫瘍の大きさにかかわらず,安全で高い治療効果を発揮できる重粒子線治療は,肝癌の治療の選択肢のひとつとして,病態に応じて他治療と連携して集学的治療のなかで有効に利用できる治療であると考えられる.
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医学のあゆみ 235巻4号, 302-305 (2010);
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局所進行子宮頸癌に対する標準治療は放射線治療と化学療法の同時併用療法である.ただし本治療法をもってしても腫瘍の進行とともに局所制御率は低下し,とくに放射線抵抗性の腺癌の治療成績はきわめて不良である.放射線医学総合研究所(放医研)では,局所進行子宮頸癌の治療成績の向上をめざして重粒子線治療の臨床試験を行ってきた.これまでに数回の臨床試験を通して照射法に改良を加えた結果,正常組織に重篤な副作用を発生させることなく,安全に腫瘍に高線量を投与する照射法を確立した.腫瘍への線量の増加とともに局所制御率は向上し,現在では良好な治療成績が得られている.重粒子線治療は従来の治療法では制御困難な局所進行癌に対する有効な治療法と考えられる.
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医学のあゆみ 235巻4号, 306-308 (2010);
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近年,術式や手術操作の改良および術前・術後併用療法の施行により直腸癌の骨盤内局所再発率は低下してきているが,現在でも 5~20%といぜんとして高い値を維持している.再発病巣に対する治療は外科的切除が第一選択であり,再切除後の 5 年生存率は 30%前後と比較的良好である.すなわち,局所を確実にコントロールできれば予後が期待できるといえる.しかし,患者への侵襲が大きいことから,外科的手術の適応にならないことが多い.そのため多くは放射線治療が選択されるが,成績は満足すべき数字ではない.これは再発巣が放射線抵抗性であり,さらに消化管など放射線感受性の高い重要臓器に隣接していることより,十分な線量を腫瘍に照射することができないことが原因であった.直腸癌術後再発に対する炭素イオン線治療は 2001 年 4月から phaseI/II臨床試験が開始された.今回,2009 年 8 月までの 129 例(134 病巣)について解析したので,その結果を紹介する.
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医学のあゆみ 235巻4号, 309-312 (2010);
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重粒子線治療は前立腺癌に対する放射線療法として理想的ともいえる性質をもっている.物理的に他の放射線に比べて集中性が優れているばかりではなく,生物学的特性からも安全に効果の高い治療を行うことができる.その適切な使い方を確立し,さらにその有用性を実証するために,15 年にわたって臨床研究を行ってきた.結果として副作用発生率が低く,非再発率が高い短期間の治療法を確立することができた.その成績は各種の最新放射線療法に比べ,副作用,治療効果の両面で勝っている.とくに高リスク群(予後が悪いと判断される条件をもつ症例群)における高い非再発率,生存率と非常に低率な直腸の副作用発生率は特筆に値する.ただ,この治療がこれで完成したとは考えておらず,より短期での治療で,非再発率を低下させずに副作用のリスクをさらに低くして治療後の高い生活の質(Quality of life:QOL)を維持できる治療をめざしている.
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医学のあゆみ 235巻4号, 313-316 (2010);
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骨軟部腫瘍はまれな疾患であり,治療法は切除が基本である.切除ができない症例に対しては放射線治療が効きにくい腫瘍が多く,化学療法(抗癌剤)が有効な一部の腫瘍を除いては根治的な治療法がなかった.また,脊椎や骨盤骨に発生した腫瘍の場合,切除できても機能損失が大きく,その後の生活の質(QOL)が低下することもある.重粒子線治療は炭素イオン線の性質を生かし,このような難治性腫瘍に対して大線量を腫瘍に集中させて照射することが可能である.治療開始から 15 年が経過し安全性が確立され,良好な成績を収めている.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち106
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医学のあゆみ 235巻4号, 317-317 (2010);
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逆システム学の窓35
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医学のあゆみ 235巻4号, 318-322 (2010);
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筆者は,家内の肝不全への生体肝移植のドナーとなり,現在(9 月 18 日)は術後 1 カ月目である.移植のため,肝臓の 65%を提供すべく,右葉の肝静脈の V5と V8,MRHV(右中肝静脈)を再建するという切除方針のもと,事前のコンピューターによる精密な容積推定シミュレーションで行ったとおりに切除された.傷は J 字型開胸開腹で,正中 20 cm,横で 20 cm,肋骨に沿って 10 cm であった. ドナー手術の体験から,移植手術の驚異的な進歩を体感できるとともに,一方で一般外科手術の術後管理では,体を動かせない患者にとって,拘束器具のような苦痛を与えるベッドの問題を体験した.指揮者の小澤征爾氏も,実際の指揮を不可能にしたのは,食道がん手術自体ではなく,手術時に悪化した腰痛であった.今日の医療技術の進歩のなかで,術後の患者のためのベッドは世界から求められ,新しい機能ベッドの開発も模索されていたのに,小泉・竹中医療費抑制時代に頓挫していた.しかし政権交代から,医療費抑制が解除され新たな試みが始まり,日本のベッドメーカーの世界進出も加速化している.世界への成長戦略として,術後管理の腰痛,背部痛対応のベッドや治療法の開発が期待される.他方,レシピエントの家内は,ICU においては間断ない警報の音や光,さらには 1 日 6 回血糖自己採血などで,異常な精神状態に追い込まれる経験もした. “手術室の中”に偏りがちな医学に対して,“手術室の外”の患者の苦痛を理解し,治癒を促す看護学の発展が必須であろう.
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新“事故調”のあり方―診療関連死調査モデル事業から③
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医学のあゆみ 235巻4号, 323-326 (2010);
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医学のあゆみ 235巻4号, 328-329 (2010);
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医学のあゆみ 235巻4号, 330-334 (2010);
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連載
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動物の感染症から学ぶ 9
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医学のあゆみ 235巻4号, 345-350 (2010);
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鶏大腸菌症は世界各国でもっとも経済的被害の大きいニワトリの細菌感染症である.原因菌は家禽病原性大腸菌(APEC)とよばれ,ヒトに尿路感染症や新生児髄膜炎を引き起こす一群の大腸菌と同じ腸管外病原性大腸菌(ExPEC)の範疇に入る.主要な感染経路は呼吸器(気 *)で,初期の敗血症とそれに続く諸臓器の炎症により死亡する場合がある.APEC は付着因子,侵入因子,鉄捕捉因子,血清抵抗性因子,毒素など多くの病原因子を保有している.これらは APEC が進化の過程で水平伝播により獲得した外来遺伝子と考えられており,染色体やプラスミド上の特定の領域に近接して存在する傾向が認められる.病原性関連遺伝子の多くはヒト由来ExPEC と共通することが,最近の研究から明らかとなってきた.APEC はヒトの ExPEC 感染症の原因菌となる可能性が考えられ,公衆衛生の観点からも注意すべき病原体である.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 235巻4号, 341-341 (2010);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 235巻4号, 342-343 (2010);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 235巻4号, 343-344 (2010);
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