Volume 235,
Issue 7,
2010
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あゆみ 低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)
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医学のあゆみ 235巻7号, 749-749 (2010);
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医学のあゆみ 235巻7号, 751-755 (2010);
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脳脊髄液減少症は「脳脊髄液腔から脳脊髄液が持続的ないし断続的に漏出することによって脳脊髄液が減少し,頭痛,頚部痛,耳鳴り,視機能障害,倦怠などさまざまな症状を呈する疾患」と定義されている.本稿では,本疾患の診断にとってきわめて重要な診断基準や論文[「国際頭痛分類第 2 版(ICHD-II)における 7.2 低髄液圧による頭痛」,「脳脊髄液減少症研究会の診断基準」,「Mokri & Schievink の論文」,「厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業―脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する調査研究について)」]から,症状に着目して詳述した.また各々の症状の発症メカニズムに関しても文献的に考察した.
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医学のあゆみ 235巻7号, 757-764 (2010);
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低髄液圧症候群の画像診断には MR が有用で第一選択となる.本症における画像診断の役割は, ①低髄液圧症候群の診断,ならびに ②髄液漏出の検出である.典型的な臨床徴候に加えて,びまん性の硬膜肥厚と造影効果,および硬膜下水腫があれば低髄液圧症候群と診断できる.髄液漏出の診断には,MR myelography や RI cisernography単独の“漏出”所見のみでは髄液漏出の確定診断にはならない.髄液漏出が疑われたときは,さらに MR(脂肪抑制 T2 強調画像および Gd 造影脂肪抑制 T1 強調画像)あるいは CT myelography による高空間分解能な局在画像診断が必要となる.
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医学のあゆみ 235巻7号, 765-769 (2010);
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脊髄脳槽シンチグラフィ(radioisotope cisternography)は脳脊髄液の動態を画像化する手法である.これまで,脳脊髄液漏,水頭症の鑑別診断,脳脊髄液短絡路の機能評価などに用いられてきた.最近では起立性頭痛の症例で特発性低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)が疑われる場合に行われる.脊髄脳槽シンチグラフィによって髄液の漏出を検出することが可能であり,漏出部位を特定することができる.特発性低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)では頭蓋内くも膜下腔の描出遅延が特徴的である.尿路系の早期描出は正常でも起こるので,これだけで診断の根拠にすることはできない.穿刺部位近傍の漏出は手技に伴うことがある.漏出部位の同定に際しても感度が 100%ではないので,漏出がないからといって特発性低髄液圧症(脳脊髄液減少症)を否定することはできない.
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医学のあゆみ 235巻7号, 771-774 (2010);
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ブラッドパッチ(EBP)療法は,脊髄レベルの髄液漏出を認める患者に対し硬膜外腔へ患者自身の血液を注入することにより,mass effect による脳脊髄液圧の上昇と,それに引き続いて起こる硬膜外腔の癒着と器質化により髄液漏出部位の閉鎖を期待する手技である.患者を腹臥位とし透視下に穿刺部位を決め硬膜外針(TOUHY 針)を使用して穿刺する.抵抗消失法で硬膜外腔を確認し自家血を注入する.注入量は,男性 30~40 ml,女性 20~30 ml を目安にしているが,注入中に患者と相談しながら痛みが出現した時点でその場所の注入は終了とし無理はしない.必要に応じて複数個所の穿刺をすることもある.術後しばらくは安静を心がけ,症状の変化をみて再施行が必要かどうか検討する.この手技は現在のところ保険収載されていないため,自費診療で行われる.
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医学のあゆみ 235巻7号, 775-780 (2010);
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比較的軽度の交通外傷後に多彩な症状が長期間続く病態は従来,脳震盪後症候群,むち打ち関連傷害,外傷性頸部症候群,外傷後心身症,補償金関連詐病などと診断されていたが,病態は解明されず適切な治療法も確立していなかった.外傷により脊髄神経根部から脳脊髄液が持続的に漏出し髄液が減少するために多彩な症状が生じ,硬膜外ブラッドパッチなどで髄液漏出を止め髄液を増加させることにより症状が改善することはすでに多くの医師が経験している.この疾患は特発性低髄液圧症候群(SIH)と多くの点で類似しており,髄液漏出・減少という点では同じであるが,症状や画像は微妙に異なっている.交通外傷例では起立性頭痛,髄液圧低下,脳 MRI のびまん性硬膜造影はむしろ少数であり,多彩な症状,RI 脳槽シンチグラフィなどでの髄液漏出所見が診断上重要である.生理食塩水硬膜外注入も診断に役立つ.治療は,臥床安静・水分摂取による保存的治療が無効な場合,硬膜外ブラッドパッチ治療がきわめて有用である.
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医学のあゆみ 235巻7号, 781-786 (2010);
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低髄液圧症候群は,髄液の漏出が原因となって生じる低髄液圧によって引き起こされる病態である.起立性の頭痛を代表とする体位による症状の変化がその特徴である.近年,外傷性頸部症候群(むち打ち症)などをはじめとする多くの不定愁訴を有する症例の多くが低髄液症候群(脳脊髄液減少症と提唱する考え方もある)によるという報告がなされ,医療現場のみならず社会的な問題に発展している.日本脳神経外傷学会では 2006年より,このような諸問題を解決するために医学的見地から学術的な検討を重ねた.すなわち,具体的には各施設へのアンケート調査,文献検討,症例登録による前向き調査などを行った.そして,2010 年 3 月にこれらの結果に基づいた最終的な報告として,診断基準について公表した.交通事故などの外傷後に多彩な不定愁訴を呈するような疾患の診断には,だれからみても明白な診断基準を作成することが重要である.とくに画像診断を中心とした診断方法の標準化を行うことはきわめて重要である.
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医学のあゆみ 235巻7号, 787-790 (2010);
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わが国では外傷後に遷延する頭痛の原因のひとつとして,いわゆる“外傷性脳脊髄液減少症”が注目されており,“脳脊髄液減少症ガイドライン(以下,ガイドライン)”に基づいて診断される場合が少なくない.しかし,このガイドラインにより診断された外傷例は,特発性脳脊髄液減少症とは臨床像や画像所見が異なるとの指摘があり,診断基準の適格性が問われている.著者らが同ガイドラインを満たす外傷例 16 例を検討したところ,1 例の髄液漏出確実例を除き特発例との間に以下の相違点が認められた.①起立性頭痛は特発例に多く,外傷例に少なかった.②髄液検査では特発例で圧低下と蛋白増加が多く認められ,外傷例はほぼ正常所見であった. ③MRI 上の異常所見は特発例に多く,外傷例には認めなかった. ④脳槽シンチグラフィ上の漏出部位は特発例では胸椎部が多かったのに比べ,外傷例では腰椎部であった.このように特発例と外傷例には大きな相違が認められたことより,両者を同一の病態とみなすことは難しい.本結果は外傷性脳脊髄液減少症を否定するものではないが,おもに RI 脳槽シンチグラフィ所見による本ガイドラインでは,医原性漏出などによって本来髄液漏出のない症例を過剰に診断する可能性がある点が問題と考えられる.
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医学のあゆみ 235巻7号, 791-795 (2010);
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明らかな外的誘因なく発生する低髄液圧症候群は,1938 年に Schaltenbrand によりはじめて報告された.その後,本疾患に関しては,画像診断,治療法も含め多くの研究がなされてきた.現時点で公になっている本疾患のガイドラインには, 1 国際頭痛学会の国際頭痛分類, 2 日本脳神経外傷学会の診断基準, 3 本疾患を積極的に治療してきた医師で構成された脳脊髄液減少症研究会の“脳脊髄液減少症ガイドライン 2007”がある.しかし,これらのガイドラインはいまだ公認されるには至っていない.このような状況のもと,本疾患に関連のある日本脳神経外科学会,日本整形外科学会,日本神経学会,日本頭痛学会,日本脳神経外傷学会,日本脊椎脊髄病学会,日本脊髄障害医学会からの代表を含む研究者で構成された,厚生労働省科学研究費補助金“脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究(研究代表者:嘉山孝正)”により,「学会間の垣根を取り払い,だれがみても納得できる診療指針」の作成が試みられている.
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フォーラム
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医学のあゆみ 235巻7号, 797-799 (2010);
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新“事故調”のあり方―診療関連死調査モデル事業から④
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医学のあゆみ 235巻7号, 800-802 (2010);
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ヒトを対象とする医学研究に対しては,倫理的原則や指針の遵守が求められ,医学部や研究機関内で実施される研究倫理委員会の意識や審査の質も近年高まりつつある.遺族との接触が制限される司法解剖の遺族から,法医学教室において保存されている臓器に関する十分な説明を国に要望する文書が提出されている.このように,司法解剖にかかる臓器をはじめとする人体試料の採取・保存,さらに利用に関しては,遺族の意識も高まってきており,法的にも倫理的な側面からも多くの問題が残されている.本稿では,現況を概観した上で,問題解決への方向性を模索する.
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連載
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連載動物の感染症から学ぶ 10
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医学のあゆみ 235巻7号, 810-814 (2010);
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種々の動物で認められる増殖性腸炎は,Lawsonia intracellularis(LI)という偏性細胞寄生性細菌によって引き起こされる疾病である.増殖性腸炎自体は古くから知られていたが,原因菌の分離が困難であったため,LI はその菌名が確定してから 15 年ほどの新しい菌である.本疾病で特徴的なことは,LI の腸上皮細胞への感染・増殖により腸上皮細胞の腺腫様過形成が誘導されることである.この病変は腫瘍化することはなく,腸上皮細胞内の LI の消失に伴い回復する.また,原因菌である LI の宿主域が家畜から実験動物まで幅広いことも特筆されるが,現在までにヒトでの感染報告はなく,ズーノーシス(人獣共通感染症)とは考えられていない.ブタでは感染率が高く生産性低下の原因となることから,重要な疾病のひとつとなっている.
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TOPICS
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 235巻7号, 805-806 (2010);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 235巻7号, 806-807 (2010);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 235巻7号, 807-808 (2010);
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