Volume 235,
Issue 12,
2010
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あゆみ 自己炎症性疾患―発熱性疾患における認知
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1151-1151 (2010);
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1153-1158 (2010);
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前駆体として産生された IL-1βが分泌型として放出されるためには 2 つ目のシグナルが必要となり,このステップとして IL-1 変換酵素として知られるカスパーゼ 1 を制御する蛋白複合体の総称として提唱されたのがインフラマソーム(inflammasome)である.侵入する病原体や異物特有の分子配列,それに応じて生体自らが発する危険信号を 2 つ目のシグナルとして認識してインフラマソームが形成される.しかし,同一の分子配列を有しているとは考えにくい多種多様な物質が,いかにして NLRP3 というひとつの分子を活性化しているかに関しては,残念ながら明確な説明はなされていない.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1159-1163 (2010);
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家族性地中海熱(FMF)は,漿膜炎などを反復する自己炎症疾患(autoinflammatory diseases)である.典型例では月に 1 回ほどの発熱を繰り返す.発熱期間は数日以内で,発熱に伴って激しい腹痛か胸背部痛を訴える.発熱時には CRP は 10 mg/ml 以上と高値になり,発作間欠期にはその値は正常化する.本症は炎症を制御する分子群の異常によって発症する自己炎症疾患のなかでも代表的な疾患であり,責任遺伝子 MEFV(蛋白はpyrin)が同定されている.治療は好中球機能を抑制するコルヒチンが大多数例で奏効する.また,発熱期間が比較的に長く,さまざまな随伴症状を呈し,MEFV の exon 3 に変異がみられる非典型例が見出されている.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1164-1169 (2010);
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TNF receptor 1(TNFR1)の変異によって起こる TNF receptor-associated periodic syndrome(TRAPS)は,常染色体優性の遺伝形式をとる自己炎症性疾患であり,比較的長い発熱発作を繰り返すことを特徴とする.本症における自己炎症のメカニズムとして当初,TNFR1 が変異によって切断されにくくなるために,TNF-αの結合後も TNFR1 が細胞表面に残って過剰発現となり,さらに細胞外で TNF-αのアンタゴニストとして作用する soluble TNFR1 の産生が低下するという“shedding 仮説”が提唱された.しかし,この仮説にあてはまらない症例があることから,その後,これに代わって変異 TNFR1 から惹起される炎症シグナルの役割が注目されるようになった.さらに最近,ノックインマウスを用いた研究により,正常 TNFR1 からのシグナルと変異 TNFR1 からの MAP キナーゼを介したシグナルとの協調によって強い炎症が引き起こされるというメカニズムが提唱されている.今後はこの仮説を中心に病態の解明が進むものと思われる.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1170-1174 (2010);
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近年,病原体認識機構としての自然免疫系の受容体の解析が進み,病原体に対する防衛機構のみならず宿主自体における炎症惹起物質を認識し,各種炎症病態にかかわっていることがわかってきた.本稿では,そのなかでもっとも解析が進んでいる NLRP3 について自然免疫系における役割について述べるとともに,NLRP3が原因遺伝子である cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)について解説した.さらに,CAPS の最重症型である CINCA 症候群/NOMID では約 40%で変異は同定されなかったが,それらの患者の大半で潜在性 NLRP3 体細胞モザイクが原因となりうることを概説した.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1175-1179 (2010);
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高 IgD 症候群(HIDS)は,乳児期早期に炎症反応高値の不明熱疾患として発症する自己炎症性疾患である.その原因はコレステロール代謝にかかわるメバロン酸キナーゼの欠乏であることから,体内の多くの細胞がその欠乏を共有することになり,その臨床像は他の自己炎症性疾患と比べて多様である.近年,わが国においても HIDS の患者が診断されつつあるが,多くの症状は他の炎症性疾患群と共通のものであることから,臨床の場で即座に診断するのは難しく,乳児期発症の不明熱をみた際に積極的に疑うほかないのが現状である.さらに,病名にある血清 IgD 値の高値は診断を考慮するタイミングではほとんど認められておらず,本症候群の診断をさらに混乱させている要因となっている.臨床的に HIDS を疑った患者に対し確定診断するための方法や,正確に否定するためのプロセスを認知しておくことが必要である.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1180-1184 (2010);
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家族性の Blau 症候群(Blau)と孤発性の若年発症サルコイドーシス(early-onset sarcoidosis:EOS)は,いずれも乳幼児期に発症し,組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫からなる皮膚炎・関節炎・ぶどう膜炎を 3 主徴とする特異な自己炎症疾患である.Blau/EOS の原因遺伝子は細菌ペプチドグリカンの共通成分 MDP の細胞質内受容体をコードする NOD2 であるが,リガンドである MDP 誘発性の NF-κB 活性化が低下する機能喪失型変異が Crohn 病と相関するのに対し,Blau/EOS の原因は MDP 非存在下での NF-κB 基礎活性化が亢進する機能獲得型変異である.わが国の症例を集めて解析した結果,NOD2 変異による NF-κB 基礎活性化比と臨床的重症度にある程度の正の相関を認めた.NF-κB 阻害作用をもつサリドマイドの応用や変異導入細胞の解析により,一塩基変異によって類上皮細胞肉芽腫という特異な病理変化を示す Blau/EOS の病態解明が進みつつある.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1185-1190 (2010);
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近年,自己炎症性疾患の概念が確立され,とくに炎症あるいは炎症の制御に関連した遺伝子異常によって遺伝性自己炎症性疾患が発症する病態の理解が急速に進んだ.これは,臨床的観察,分子生物学的基礎研究の進歩の両者を強く結びつけるものである.自己炎症は内因的な自然免疫機構の活性化によって起こり,自己抗体や抗原特異的 T 細胞の活性化との関連は認められない.自己炎症性疾患発症の中心的エフェクター分子を明らかにすれば治療に結びつけることが可能である.実際に IL-1 receptor antagonist が cryopyrinopathy などでは有効であることが確認されている.したがって,自己炎症性疾患の病態解明は,直接その治療法の開発と密接に関連しているといえる.ここでは PAPA syndrome,DIRA などの自己炎症性疾患について,その臨床像,病態を含めて概説する.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1191-1195 (2010);
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中條-西村症候群(MIM 256040,ORPHA 26159)は皮疹,脂肪萎縮(リポジストロフィー)と同部位の筋萎縮(顔面,上肢中心),手指を中心とした関節症状(肥大性骨骨膜症・関節拘縮),大脳基底核の石灰化を特徴とし,発熱,持続炎症,高γ-グロブリン血症などを示す常染色体劣性遺伝形式(両親血族婚)をとる,症状が多彩な症候群である.昭和 14 年(1939),中條 敦先生が報告して以来,多くの臨床家が邦文を中心に,症状や検査データを詳細に報告した.遺伝疾患でありながら出生時にはまったく異常がみられず,成長していくうちに症状が出現,その後,各症状が進行していくのが特徴である.持続炎症が病態の中心で,自己炎症症候群のひとつと考えられる.これだけ興味深い症状を示しながら,世界だけでなくわが国でもこれまで注目されてこなかった.しかし,近年の遺伝学の発展に伴い,中條-西村症候群の遺伝子・病態解析が進みつつある.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1197-1202 (2010);
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PFAPA とは,周期性発熱,アフタ性口内炎,頸部リンパ節炎,咽頭炎を主症状とし,おもに乳幼児期に発症する非遺伝性自己炎症性疾患である.病態にはサイトカイン調節異常の関与が考えられているが,疾患遺伝子は同定されていない.診断にあたっては臨床症状に加えて,他の反復する発熱疾患の十分な除外診断を行う.特異的な治療法はないが,ステロイド薬は QOL 改善に効果がある.一般に予後は良好であるが,いぜん不明な点の多い疾患である.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1203-1205 (2010);
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血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の病態の中心は,細胞障害性 T 細胞(CTL)ならびにマクロファージの異常な活性化と,それに伴う炎症性サイトカインの異常産生である.これまで CTL や NK 細胞の細胞障害活性機構を中心に病態解析が行われてきたが,炎症性疾患における自然免疫系の重要性の認識とともに,本症候群におけるマクロファージの重要性が再認識されつつある.HLH におけるマクロファージの活性化は alternative経路とよばれる活性化様式をとっており,その誘導機構や病的意義に関してはまだまだ謎が多い.今後,HLHにおけるマクロファージの活性化機構や CTL・NK 細胞との相互作用の究明により,あらたな HLH の原因分子同定や診断・治療法の確立につながることが期待される.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち108
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1207-1207 (2010);
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逆システム学の窓36
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1209-1213 (2010);
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筆者は今年 8 月に生体肝移植のドナーとなって家内に移植を行った.その後,多くの人から「HLA が違っても問題ないのか?」と質問されたが,移植の常識は大きく変わった.FK506(タクロリムス:商品名プログラフまたはグラセプター)の登場以来,肝臓移植では急性期拒絶がほぼコントロールされ,非血縁者でも移植の成功率は変わらなくなっている.その結果,わが国でも生体肝移植はすでに 5 千例を超え,5 年生存率は非常に高くなっている.家内も 2 度の急性期拒絶をステロイド,FK506,セルセプト(代謝拮抗剤)で乗り越えて,6 週間で無事退院してきた. こうした移植医療の革命的変化を反映して,今年 8月のアメリカの外科雑誌『Surgical Clinics of NorthAmerica 』では,肝硬変があり肝臓以外への転移のない肝臓癌については,肝移植が“gold standard”としている. FK506 は,人体内でサイクロスポリンの 100 倍以上の有効性を示し,免疫抑制剤の副作用を激減させたが,その有効性の機序には不明の点も多かった.最新のスーパーコンピュータを駆使して FK506 と結合蛋白の FKBP12 について,分子動力学のシミュレーションが行われた結果,プロリンの cis/trans 転移酵素である FKBP12 が水溶液中で揺らぐ構造をとるのに対応して,FK506 の環状構造がそれに寄り添って揺らぐことで高い親和性を生み出しているという想像外の挙動がわかってきた.FKBP はいわば細胞内の薬物安定化にかかわるシャペロン様の働きを果たし,その結果カルシニューリンを安定的に阻害し,T リンパ球の免疫を特異的に抑制する.こうした一つの薬の発見が,診療の世界を全く変えてしまうのである.
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1215-1216 (2010);
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1217-1220 (2010);
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注目の領域
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1229-1233 (2010);
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(235 巻 11 号,1143-1148 頁掲載より続く) 前号ではカナダ保健省の安全対策および州の医療データベース(DB)の概要を紹介した.
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TOPICS
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細菌学・ウイルス学
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1223-1224 (2010);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 235巻12・13号, 1224-1227 (2010);
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