Volume 236,
Issue 12,
2011
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あゆみ 腎細胞癌の分子標的治療
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医学のあゆみ 236巻12号, 1083-1083 (2011);
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医学のあゆみ 236巻12号, 1085-1089 (2011);
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分子生物学,分子遺伝学の進歩に伴い,かつてはひとつの疾患として扱われていた腎細胞癌は,VHL 遺伝子の異常で生じる淡明細胞型腎癌,MET 遺伝子・FH 遺伝子の異常で生じる乳頭状腎癌,BHD 遺伝子異常で生じる嫌色素性腎癌など,異なった発癌機序によって生じる性質の異なった癌の集合体であることが明らかになった.同時に,その発癌機序を標的とした分子標的治療薬が開発され,臨床において腎癌の治療を著しく改善しつつある.このような経緯で開発されてきた分子標的治療薬を有効に使用するためには,その背景にある腎細胞癌の発癌メカニズムを正しく理解することが重要である.
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医学のあゆみ 236巻12号, 1090-1094 (2011);
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分子標的薬の出現で転移性腎細胞癌の治療は大きく変わりつつある.これまで転移性腎細胞癌の標準治療薬であったインターフェロンα(IFN-α)やインターロイキン 2(IL-2)といったサイトカインの位置づけも変わりつつある.著者らは分子標的治療の時代におけるサイトカイン治療の位置づけとして,大きく 2 つの可能性を考えている.ひとつは分子標的薬とサイトカインの併用療法で,もうひとつはサイトカインが効きやすい患者に投与するという個別化医療である.著者らはサイトカイン治療をけっして過去の治療法とは考えておらず,これら 2 つの可能性を有効に活用することで,患者の治療の選択肢が増え,有用であると考えている.
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医学のあゆみ 236巻12号, 1095-1101 (2011);
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ソラフェニブは転移性腎癌治療に用いられる分子標的治療薬である.腫瘍細胞の RAF/MEK/ERK pathwayの Raf1 を阻害すると同時に,さまざま増殖因子受容体のチロシンキナーゼを阻害する薬剤である.とくにVEGF や PDGF といった血管新生にかかわる因子を阻害するため,血管新生阻害剤として知られている.臨床的にはサイトカイン不応性例に対する生存期間延長効果を示し,転移性腎癌症例の予後延長に寄与している.1st line としては心機能低下例,透析患者など,スニチニブの投与が難しい患者に対して治療の適応があると考えられる.日本人では重症副作用の発生率が高いが,適切な対策により大きな問題なく投与することができる.
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医学のあゆみ 236巻12号, 1102-1106 (2011);
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スニチニブは進行性腎癌に対し,わが国ではソラフェニブに次いで 2 番目に保険適応となった分子標的薬であり,2008 年 6 月から使用可能となった.腎癌に対する効果のおもな作用点は,血管内皮細胞増殖因子受容体や血小板由来成長因子受容体のチロシンキナーゼ阻害による血管新生阻害に基づく.そのため,血管新生阻害薬ともよばれている.ソラフェニブと比較したスニチニブの特徴は,有効性においては転移巣に対する腫瘍縮小効果が強い点であり,反面,副作用も強く,骨髄抑制,心毒性,甲状腺機能低下など,ソラフェニブではあまりみないものも認められる.本稿ではスニチニブの有効性,副作用や医療経済的な問題点について概説した.
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医学のあゆみ 236巻12号, 1107-1110 (2011);
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経口 mTOR 阻害剤 everolimus は 2010 年に,転移性腎細胞癌患者に対する第 3 の分子標的治療薬として厚生労働省に承認された.本稿では,第III相臨床試験により抗腫瘍効果が明らかにされている腎細胞癌を中心に,mTOR シグナルの基礎から乳癌や胃癌,悪性リンパ腫など現在進行中の他の癌腫での現況など,私見を交えて解説する.
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医学のあゆみ 236巻12号, 1111-1115 (2011);
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わが国における転移性腎癌に対する治療は 1987 年以来,インターフェロン(interferon:IFN)-αやインターロイキン(interleukin:IL)-2 によるサイトカイン治療が主流であった.しかし,IFN-αや IL-2 による奏効率は 15%前後と低く,転移性腎癌の予後は不良であった1).2007 年にソラフェニブ2)が保険適応となり,IFN-α抵抗性転移性腎癌に対する一定の治療効果が得られ,その後スニチニブ3),エベロリムス4),テムシロリムス5)が認可された.テムシロリムスは転移性腎癌の予後不良群に有効であるが,間質性肺疾患の発現に注意を要する5,6).
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医学のあゆみ 236巻12号, 1116-1120 (2011);
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Pazopanib は経口投与が可能な血管新生阻害剤のひとつである.これまでに行われた有転移腎癌に対する臨床試験(第II相試験,第III相試験)の結果から,奏効率は 30~35%,無増悪生存期間は 9~13 カ月であった.有害事象としては下痢,高血圧,毛髪の変色,悪心,食欲不振および嘔吐などの頻度が高かった.また,注意すべき有害事象として肝機能障害が指摘されている.今後,pazopanib は日本においても使用可能になると思われるが,予期せぬ薬剤関連有害事象が起こる可能性もあり,治験や市販後調査などを通して日本人における治療効果や有害事象のプロファイルの把握が必要である.
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医学のあゆみ 236巻12号, 1121-1124 (2011);
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Axitinib は VEGFR-1,VEGFR-2,VEGFR-3 の強力かつ選択的な経口阻害薬である.半減期は約 5 時間である.投薬された 80%以上に腫瘍縮小が得られ,30%以上の腫瘍縮小も 50%にみられる.有害事象として,血液毒性は少なく,もっとも多くみられる高血圧も降圧薬でコントロール可能である場合が多い.また,有害事象としての高血圧は治療効果のバイオマーカーになると期待されている.日本人に多くみられる特徴的な有害事象は蛋白尿である.非常に使用しやすく neoadjuvant 療法に用いられる薬剤としても有望であり,開発治験が進行中である.さらに,抗癌剤との併用で相加あるいは相乗効果が得られることも示されている.
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連載
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動物の感染症から学ぶ 20
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医学のあゆみ 236巻12号, 1131-1138 (2011);
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抗酸菌であるヨーネ菌の感染によって引き起こされるヨーネ病は,反芻動物の慢性肉芽腫性腸炎であり,長い潜伏期間(6 カ月~数年)の後,持続性の下痢,栄養状態の悪化により削痩し,やがて死に至る疾病である.わが国ではヨーネ病を家畜法定伝染病として規定し,乳牛,種雄牛などの全頭検査を行い,摘発・淘汰により蔓延防止に努めている.ヨーネ菌の人工培地での発育がきわめて遅いことや,潜伏期間が数年に及ぶ慢性感染症であるために,診断や有効な防疫対策を講じることが難しく,世界中の多くの国で蔓延している重要な家畜疾病である.諸外国でのヨーネ病の発生状況と比較すると,わが国におけるヨーネ病摘発率はきわめて低い状況にある.最近,ヨーネ菌が炎症性腸疾患である Crohn 病患者から分離されるとの報告が諸外国では多く,本菌とヒト疾患との関連が疑われている.
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フォーラム
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医学のあゆみ 236巻12号, 1139-1142 (2011);
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逆システム学の窓 38
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医学のあゆみ 236巻12号, 1143-1147 (2011);
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多剤耐性の結核菌の出現をうけた2005年の法律改定により、患者を結核と診断した医師はすぐに保健所に届け、自治体の責任で入院などの措置が行えるような法的仕組みができている。この仕組みは一歩間違えると、患者の孤立感・不安感を高め、感染の広がりを職場などでチェックするという作業を行ううえでの影響も大きい。筆者の職場でも学生の結核患者が発見され、現在感染の広がりをチェック中であるが、まず患者をサポートすることが大事である。そこから、職場の連帯感や前向きの取り組みが生まれる。感染の広がりを知るには、BCGの影響を受けずに正確に検査できるクォンティフェロン(QFT)検査による疫学検査が大事である。これは数ヶ月かかる慎重なプロセスであり、しかも個人別の結果とともに、疫学的頻度も問題になる。自治体が責任をもって痰の培養を基本に把握し、治療は目視により確認するDOTSのシステムが求められる。若い人、外国人、高齢者などにおける治療中断の原因は副作用、貧困、生活の場の欠如、無理解などさまざまである。患者の悩みに緻密に向かい合うことぬきに、ただ薬を飲めと強要しても多剤耐性菌がうまれることは予防できないのである。
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TOPICS
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毒性学
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医学のあゆみ 236巻12号, 1125-1126 (2011);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 236巻12号, 1126-1128 (2011);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 236巻12号, 1128-1129 (2011);
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