Volume 237,
Issue 4,
2011
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あゆみ 多発性硬化症と視神経脊髄炎
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医学のあゆみ 237巻4号, 277-277 (2011);
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医学のあゆみ 237巻4号, 279-283 (2011);
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多発性硬化症(MS)は中枢神経の炎症性脱髄疾患であり,時間的空間的に多発する病変を特徴とする.MSの発症には遺伝および環境要因の両者が複雑にかかわっている.近年 MS の免疫学的解析の進歩が著しく,また有効な治療薬の登場によっても MS の病態が明らかになってきた.しかし,MS の病態はかなり heterogeneousであり,究極的な発症要因は不明である.今後の研究の発展により,特異な概念のユニークな一群が分離されることが期待される.一方,視神経脊髄炎(NMO)は重症の視神経炎と横断性脊髄炎が特徴であり,わが国では以前は視神経脊髄型 MS ともよばれていたが,NMO に特異的な自己抗体である抗アクアポリン 4 抗体の発見以後,この抗体が NMO の診断に重要であるのみならず病態に直接関与しており,NMO は MS とは異なりアストロサイトパチーと分類すべきあらたな疾患概念であることが明瞭になってきている.
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医学のあゆみ 237巻4号, 284-290 (2011);
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わが国では 2004 年に第 4 回目の多発性硬化症(MS)全国臨床疫学調査が実施され,過去 3 回(1972 年,1982 年,1989 年)と比較した日本人 MS の有病率と病像の変遷および特徴が明らかにされた.すなわち,有病率の著明な増加,発症時年齢ピークの若年化,女性の比率の増加,高度の視神経・脊髄障害の減少,単相性視神経脊髄炎の減少などである.さらに,全 MS に占める CMS(通常型 MS)の比率や Barkhof の基準を満たす MS らしい脳 MRI 病巣を有する頻度は南日本より北日本で有意に高いこと,北日本から南日本への移住例では CMS における Barkhof の基準を満たす頻度が北日本に在住を続けた例に比べて有意に減少すること,北日本では若い患者ほど CMS かつ Barkhof の診断基準を満たす患者数が多いことも明らかにされた.MS は戦後の急速な欧米化などの環境因子の影響を受けて,病像が欧米で典型的な CMS へと変化しつつあり,それは緯度の影響を受け,北日本でより顕著であることがわかった.
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医学のあゆみ 237巻4号, 291-295 (2011);
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多発性硬化症(MS)は慢性炎症性脱髄性疾患であり,病態には髄鞘蛋白への自己免疫応答が関与すると考えられている.急性増悪と寛解を繰り返す再発寛解型ではリンパ球などの獲得免疫が病態形成の中心となるが,再発寛解型から明らかな再発を伴わずに慢性に進行する病型に移行した二次進行型に至ると,ミクログリアなどの活性化など自然免疫細胞が病態形成の中心となることなどが提唱されている.再発寛解型における免疫病態の研究は,ヘルパー T 細胞のさまざまなサブセットの研究の進展に伴い,Th1/Th2 バランスに立脚した病態解釈から制御性 T 細胞や Th17 細胞を加えたあらたな病態理解の時代に入った.また,分子標的薬の治療の結果から,自然リンパ球や B 細胞の重要性もふたたび注目されている.本稿ではこれらの知見を交えて,MSの病態を考える.
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医学のあゆみ 237巻4号, 297-302 (2011);
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視神経脊髄炎(NMO)は壊死生脱髄を呈する急性の視神経炎や脊髄炎を特徴とする.ここ数年,NMO の病態はおもにアストロサイトの足突起に局在するアクアポリン 4(AQP4)に対する自己抗体や補体を介した自己免疫性アストロサイトパチーであることが判明した.とくに,病理学的検討や in vivo ・in vitro の実験的検証により,AQP4 抗体が病理性を有する抗体であることが示されている.臨床的には髄液中 GFAP 濃度を測定することにより,治療効果,重症度や予後を判断できることが分かっている.
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医学のあゆみ 237巻4号, 303-306 (2011);
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多発性硬化症の現在の標準治療薬は IFN-βであるが,障害進行を抑制しえないことが多く,escalating therapyに用いる Mitoxantrone も副作用により使用が制限される.こうした欠点を克服する第二世代薬が開発され,治療が大きく変わろうとしている.欧米ですでに使用されている抗インテグリンモノクローナル抗体(Natalizumab)は有効性が高く,PML 発症リスクも JCV 抗体測定で予測可能となりつつある.経口 fingolimodも高い有効性と安全性が確認され,使用がはじまっている.抗 CD52(Alemtuzumab),抗 CD20 や抗 CD25モノクローナル抗体や,経口薬である Cladribine,Fumarate も強い効果と安全性から非常に有望である.国内への導入が急がれる.
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医学のあゆみ 237巻4号, 307-311 (2011);
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視神経脊髄炎(NMO)の急性期治療は発症早期のステロイドパルス治療が必須であるが,無効時には血液浄化療法(「サイドメモ 1」参照)を併用することによって劇的な回復がみられることがある.NMO の再発予防には経口ステロイド剤の内服が絶対的に必要であり,発症あるいは再発から半年程度はプレドニゾロンで 1 日当り 15 mg 以上の内服が望ましい.免疫抑制剤はアザチオプリンとミコフェノール酸モフェチルなどによる再発予防効果が報告されているが,効果発現までに数カ月以上要することもあり,少量の経口ステロイド剤との併用が望ましい.
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連載
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本当は子どもに“使えない”薬 の話―実際と,これをどう打開するか 2
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医学のあゆみ 237巻4号, 318-324 (2011);
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小児は感染症などを含め成人と比較し薬物治療の機会が多いにもかかわらず,小児に用いられる医薬品で小児への適応を取得し使用されているものは少ない.いわゆる“適応外使用”として,医師の経験と判断に依存しているのが現状である.しかし,“小児は小さな大人ではない”と言われるように,投与用量,安全性,剤形などそこにはさまざまな問題点があり,医療現場では試行錯誤され臨床使用されている.小児領域における適応の取得のためには小児臨床試験実施を含め,成人向け医薬品開発より多いいくつかの高いハードルがある.現在,小児医薬品創出のため,製薬企業団体および規制当局において非臨床安全性評価を含めた体制整備が進みはじめている.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち 112
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医学のあゆみ 237巻4号, 325-325 (2011);
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遺伝医療と社会 3
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医学のあゆみ 237巻4号, 326-327 (2011);
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逆システム学の窓 39
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医学のあゆみ 237巻4号, 328-333 (2011);
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東日本大震災での事態に対し,防災や原発の関係者から“想定外”だったという発言がしばしば聞かれる.この“想定外”という発言の背景について,今一度考えてみる必要がある.釜石市の防災アドバイザーとして働いていた群馬大学の片田教授は,20 メートルを超える津波は“想定外”ではないという.専門家からみれば,太平洋と北米プレートの境界である三陸沖沿岸では,マグニチュード 8 以上の地震が想定されないわけがない.歴史的にも明治以降,二度の三陸津波で20 メートルを超える津波が記録されている.それでは,なぜ想定されないかというと,「あまりに厳しい状況を想定すると,対応が現実離れしてしまう」という科学とは別の政治的判断である.だが一度,甘い“想定”が発表されるとそれが一人歩きを始める. 福島原発においては,設計に携わった東芝の技術者が,「ゼネラル・エレクトリック社(GE)のコピーで地震や津波は想定になかった」と明らかにしている.2006 年の国会で,チリ地震津波のレベルで炉心融解がおこる可能性が議論され,当時の経産相が“善処”を答弁している.2007 年には,最大の揺れ 300 ガルの想定に対し 993 ガルが記録された新潟県中越沖地震により,柏崎刈羽原発で火災と放射能の漏出が起こった.柏崎の事故のあとの「新耐震設計基準」でも原子炉の改善は行われていない.なぜなら,1 キロワット 7 円という経済性の上限を掲げることで,原発が太陽電池や風力発電など再生可能エネルギーより効率がよいとされたため,コストのかかる安全策や改修は,“現実的”とは考えられなかった. 専門家は,属性でなく本質に基づき,経験でなく歴史に基づいて考えることが求められる.今回の震災を“想定外”として,事実に基づく真摯な検証を怠れば,日本の科学技術の進歩はない.
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【再掲載】
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医学のあゆみ 237巻4号, 334-337 (2011);
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“エビデンス”という言葉が臨床研究で用いられる.だがチェルノブイリ原発事故が甲状腺癌を増加させるというコンセンサスをつくるのに 20 年かかった歴史は忘れてはいけない.チェルノブイリの健康被害の研究に国際的に関わられた長崎大学名誉教授の長滝重信先生に,その 20 年の歴史と教訓をお聞きした. 第一は,安易な“エビデンス”論への疑問である.アメリカ型の多数例を集めるメガスタディを行ってもエビデンスとはならず,その地域における疾患の全体を長年をかけて網羅的に把握することのみが,コンセンサスを得るエビデンス発見法であったことである. 第二は,ある原因での疾患の発症は特定の時間経過でのみあらわれ,すぐ消えていくため,注意深い観察が必要である.我々の想像を上回る長い時間の経過が関わり,対策の求められているその瞬間には「エビデンスはない」ということがしばしば起こることである. 逆システム学の見方でいえば,「統計より症例報告」という法則が重要である.多数例の軽微な変化より,極端な,しかし端的な特徴をもつ少数例を現場でつかむことが,同時代の患者のために役立つ情報をもたらす可能性が強い.“エビデンスがない”ということは,“証明不能”を語るだけで,因果関係の否定ではない.エビデンスを確立するには多数例の長い時間が必要であるため,短期においてはある地域に従来みられない特殊な患者が現れた時に即時に対応することが重要である.例えばベラルーシに 1991 年,肺転移を伴う小児の甲状腺乳頭癌が次から次にみられた.これらの患者から次第に RET プロトオンコジーンの変異が見つかったということが,実はチェルノブイリ事故と甲状腺癌をつなぐ“同時性”をもったエビデンスであり,甲状腺発癌のダイナミズムを教えてくれるサインだったのである.
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医学のあゆみ 237巻4号, 338-339 (2011);
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医学のあゆみ 237巻4号, 340-345 (2011);
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TOPICS
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 237巻4号, 313-313 (2011);
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免疫学
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医学のあゆみ 237巻4号, 314-315 (2011);
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救急・集中治療医学
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医学のあゆみ 237巻4号, 315-316 (2011);
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