Volume 237,
Issue 7,
2011
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あゆみ 肥満・糖尿病と悪性腫瘍
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医学のあゆみ 237巻7号, 739-739 (2011);
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医学のあゆみ 237巻7号, 741-746 (2011);
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“糖尿病との闘いは合併症との闘い”といわれ,糖尿病患者の死因からみても然りである.わが国の 30 年間(1971~2000 年)にわたる糖尿病患者の死因に関するアンケート調査の成績は血管合併症が死因に占める頻度はきわめて高く,諸外国の成績も同様である.とりわけ,心血管系疾患は無視できない.しかし,1990年代ではわが国の糖尿病患者も日本人一般と同じく,悪性新生物が死因の第 1 位を占め,この観点からの早期発見と適切な対応は糖尿病とその合併症対策と同じといえる.一方,死因を寿命からとらえると,日本人糖尿病患者は男女とも日本人一般と同じように,ここ 30 年間で寿命が延びているにもかかわらず,糖尿病患者は約 10 年短命である.この両群の差の短縮こそが対糖尿病戦略の一目標といえる.糖尿病患者の死因に影響を与える因子として糖尿病罹病期間は大きく,血管合併症を死因として無視できないことから,血糖をはじめとした血圧,体重,血清脂質などのコントロールに際して質の高い治療が求められる.
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医学のあゆみ 237巻7号, 747-753 (2011);
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わが国における肥満者の割合は男性では増加傾向にある一方,女性では減少傾向にある.アジアおよびアメリカにおける大規模疫学研究から,肥満度の高い人,または低い人で総死亡のリスクが高まるという U 字型の関連が一致して報告されている.日本においては他のアジア諸国同様,痩せでのリスク上昇が顕著であり,BMI の正常範囲上限あるいは過体重下限で死亡のリスクがもっとも低い.また,中高年では肥満,高齢者では痩せに伴う死亡リスクが高く,年齢によって異なる傾向を認める.さらに,一時点での体重のみならず,中年期における体重の大幅な増減は死亡のリスクを高めていた.以上のことから,寿命の延伸には体重を適正範囲に維持し,成人期における体重変化を一定範囲に抑えることが大切といえよう.
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医学のあゆみ 237巻7号, 755-760 (2011);
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糖尿病とがん罹患リスクの関連を検証する疫学研究においては,糖尿病とがんのいずれにも関連する喫煙や肥満などによる交絡,因果の逆転や診断機会の増加など系統的に起こるバイアス,確率的に起こる偶然などの可能性を否定しながら因果関係を検討する必要がある.これまでの疫学研究のメタ解析からは,糖尿病の保有は,肝,膵,子宮体部のがんリスクをそれぞれ約 2 倍,結腸がん(とくに男性)のリスクを約 1.3 倍上昇させることが示されている.これらのがんは 2 型糖尿病と同様に,肥満でリスクが増加し,身体活動によりリスクが低下することが知られている.著者らの日本人を対象としたコホート研究においても,糖尿病歴の保有者で同様のがんの部位の増加が観察され,全部位のがんリスクが 20~30%高かった.糖尿病や肥満でがんのリスクが高くなる共通の病態としてインスリン抵抗性があり,高インスリン血症やインスリン様成長因子の生体利用率の高まりなどが,標的臓器における腫瘍の成長を促したりアポトーシスを阻害したりすることによるメカニズムが想定される.肥満の防止や身体活動度を高めるなどの糖尿病予防は,がん予防にもつながるものと思われる.
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医学のあゆみ 237巻7号, 761-764 (2011);
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わが国では胃癌はいまだ頻度の高い癌腫であり,もっとも重要な危険因子は H. pylori 感染である.加えて塩分の過剰摂取も胃癌発症の危険因子であるが,さらに最近,発癌リスクを増大させる一因として糖尿病,肥満の関与が注目されている.疫学研究により糖尿病・肥満は胃癌の危険因子であることが報告され,糖尿病・肥満の改善が胃癌予防につながる可能性が示唆されつつある.胃癌予防のための糖尿病の治療目標や発癌機序についてはいまだ明らかになっておらず,今後さらなる検討が必要である.
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医学のあゆみ 237巻7号, 765-768 (2011);
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大規模な疫学研究から,肥満や糖尿病が弱いながらも膵癌のリスクファクターであることが明らかにされている.若い成人期からの肥満が膵癌の危険性を高め,運動や野菜摂取がリスクを下げる可能性も示されており,日常の生活習慣に示唆を与える.肥満と糖尿病に共通するのはインスリン抵抗性であり,慢性的な高インスリン血症や血中の活性型インスリン様成長因子(IGF)の高値が膵発癌を促進する可能性が示されている.脂肪組織は単なるエネルギー源ではなく,さまざまな炎症性サイトカインやアディポサイトカインとよばれるペプチドを分泌し,炎症・免疫・発癌などに積極的に関与する臓器ととらえられるようになってきた.
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医学のあゆみ 237巻7号, 769-773 (2011);
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従来,わが国の原発性肝癌のほとんどはウイルス性肝癌によるものであったが,近年ウイルス性肝炎に起因しない肝癌(非 B 非 C 肝癌)が増加しており,肥満者の増加および肥満と強く関連する脂肪肝・糖尿病患者の増加がその原因であると考えられている.肥満,脂肪肝,糖尿病はそれぞれが肝発癌の危険因子であるというエビデンスが蓄積されつつあるが,相互に強く関連する一連の病態と考えられる.実際に非ウイルス性肝癌の患者数は増加しはじめており,肥満から脂肪肝,糖尿病を背景とした肝発癌までには数十年のタイムラグがあることを考慮すると,今後も長期にわたって増え続けることが予想される.詳細な病態機序の解明とともに,高危険群をどう絞り込むかが今後の課題である.
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医学のあゆみ 237巻7号, 775-778 (2011);
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前立腺癌は欧米諸国に多く,人種的な遺伝的要因とともに動物性脂肪摂取の多い,欧米型の食事を中心とする環境因子の要因も強く示唆されている.肥満は悪性度の低い前立腺癌と診断されるリスクを低下させるが,悪性度の高い前立腺癌の発生と前立腺癌死のリスクを高める.肥満は手術,放射線,内分泌治療といった前立腺癌治療成績への直接的な悪影響もあり,肥満のコントロールは治療成績向上の観点からも重要である.糖尿病患者は,前立腺癌の発生リスクが 16%程度低下する.前立腺癌は欧米人とアジア人でかなり異なる部分もあるので,肥満・糖尿病との疫学的関係についてもわが国独自のデータを解析していくことが今後重要であろう.
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医学のあゆみ 237巻7号, 779-785 (2011);
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肥満女性ではホルモン依存性腫瘍を発症するリスクが高いことが知られており,子宮体癌や乳癌はその代表的疾患である.性ステロイドホルモンのなかでもエストロゲンのそれらホルモン依存性腫瘍発生への影響については,かねてより検討されてきた.女性におけるエストロゲンのおもな産生部位は,閉経前が卵巣,閉経後は脂肪などの末梢組織である.つまり肥満者にみられる月経障害や脂肪過多は内因性エストロゲンの相対的増加をもたらし,エストロゲン曝露の期間を延長することにつながり,結果としてホルモン依存性腫瘍の発生を助長しうると考えられてきた.本稿ではおもに肥満女性の発癌リスクについて積み重ねられたエビデンスの一端を示し,日常診療での患者への啓発活動への一助としたい.
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医学のあゆみ 237巻7号, 787-791 (2011);
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近年の大規模な疫学研究から,肥満がさまざまな癌の危険因子であることが明らかとなりつつある.そのメカニズムはいまだ不明な点が多いが,肥満に伴うインスリン抵抗性やアディポカイン分泌プロファイルの変化がその鍵を握っていると推察されている.肥満によって生じた高インスリン血症や高 IGF-Ⅰ血症は,癌細胞増殖促進作用や抗アポトーシス作用を有し癌化を促進すると考えられている.また,肥満によって生じる脂肪組織の慢性炎症が癌促進的に働く可能性や,さらにはレプチンやアディポネクチンなどのアディポカインも,間接的・直接的にさまざまな形で癌化に関与している可能性が報告されている.今後激増することが予想されるこの病態において,そのメカニズムの解明と治療・予防法の探索は非常に重要な課題である.
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連載
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本当は子どもに“使えない”薬 の話―実際と,これをどう打開するか 3
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医学のあゆみ 237巻7号, 798-802 (2011);
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子どもに“使えない”薬というのは,“本当は子どもに使ってはいけないことになっているけれども,使わざるをえない”,つまり,“やむをえず使っている薬”のことにほかならない.子どもの薬物療法で大切なのは,使われる薬の臨床試験が実施・評価されていること,臨床試験がないとしても,客観的にきちんと評価されていることであろう.そうでなければ診療でそれらを使うことも,本当は子どもに“使えない”薬を使っているということになる.子どもに使える薬の創出は決して難しいことではないと思う.一例として,パッチ製剤は内服薬であれば味が苦くて飲めなかったり,注射薬であれば痛かったりということがなく,初回通過効果を受けにくいことなどからも,使いやすいがための濫用防止などに努めれば,子どもに有用なもののひとつといえよう.子どもに使える薬の創出をよりしやすくする方法や,それらが小児医療の現場で適正使用されていく環境を整えていくことが重要である.
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フォーラム
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遺伝医療と社会 4
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医学のあゆみ 237巻7号, 803-805 (2011);
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TOPICS
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 237巻7号, 793-794 (2011);
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アレルギー学
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医学のあゆみ 237巻7号, 794-795 (2011);
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臨床栄養学
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医学のあゆみ 237巻7号, 796-797 (2011);
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